Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第30節
2022.9.17
柏レイソル(6位/13勝5分11敗/勝ち点44/得点40/失点39)
×
川崎フロンターレ(2位/16勝5分7敗/勝ち点53/得点50/失点31)
@三協フロンテア柏スタジアム
戦績
近年の対戦成績
直近5年間の対戦で川崎の7勝、柏の1勝、引き分けが2つ
柏ホームでの戦績
直近10試合で柏の5勝、川崎の3勝、引き分けが2つ
Head-to-head
以前は天敵だった柏だが、直近の戦績では圧倒的に川崎が優勢。柏は勝利どころか得点もここ3試合は挙げられておらず、対川崎戦で苦しい戦いが続いている。
日立台でも傾向は基本的には同じ。結果だけ見れば川崎は完全に苦手意識を克服したように見える。しかし、一筋縄ではいかないスタジアムというイメージが消えないのは勝利に至るまでの展開のせいだ。川崎が直近4試合で日立台で勝ち点を獲った試合のうち、スコアレスドローの前回対戦を除く3試合はいずれも柏が先制している。しかも、そのうち2試合は柏の2点リードを追いつく、もしくはひっくり返す形だ。これでは楽なイメージなど持てるはずがない。
そもそも直近10回の公式戦の日立台での対戦で川崎が柏に先制点を挙げたのは2016年の一度だけ。川崎にとっては勝ち点は取れるようになっても、先制点はとにかく取らせてくれないスタジアムなのである
スカッド情報
【柏レイソル】
・大南拓磨は累積警告による出場停止。
・田中隼人は代表招集のため出場不可。
・高橋祐治は脳震盪によって負傷交代したFC東京戦以降出場がない。
【川崎フロンターレ】
・レアンドロ・ダミアンは右足関節外側じん帯損傷および右腓骨筋肉離れで10週間の離脱。
・永長鷹虎、高井幸大は代表招集のため出場不可。
・登里享平、車屋紳太郎、大島僚太は前節メンバー入りが出来ず。
・脇坂泰斗は前節負傷交代。
・山根視来は累積警告による出場停止。
予想スタメン
Match facts
【柏レイソル】
リーグ戦は直近5試合勝利から見放されており苦戦中。しかしながら、負けと引き分けが交互に来ており連敗はない。川崎に負ければ今季2回目の連敗となる。
停滞の要因になっているのはあまりにも多い失点。ここ5試合の1試合平均失点は3点を超えており、全く守ることが出来ていない。
ただし、後半追加タイムでの失点はなく、終盤は堅さも見せる。逆転での勝利が多いこともあり、乗せるとめんどくさいチームであることは明白だ。
後半の強さを牽引するのは交代選手の得点力。武藤はここまで途中投入から6得点に関与しており、リーグ屈指のスーパーサブとなっている。森も武藤と同じく途中出場から4得点を挙げており、前線の控え選手は心強い。鬼木監督になってから川崎に相手にめっきり魔法が効かなくなったネルシーニョは気がかりだが、チームとして90分を戦える戦力は十分整っている。
【川崎フロンターレ】
前節の名古屋戦は明らかにフィジカルコンディションが底。プレスの間合いは見誤る、頭は越されると状態の悪さが如実に出ていた川崎の面々。警告4枚は疲労の証左だろう。ちなみに、今季1試合で最も多い警告は5枚。等々力の柏戦である。
苦手なアウェイなのもネガティブ材料。今季残り3試合のアウェイで少しでも成績を取り返したいところ。湘南、名古屋とリードを守り切れなかった試合をこれ以上見るのはごめんだ。ただ、中2日の戦績はいうほど悪くはない。今年柏に勝利した等々力のゲームも中2日だったりする。
日立台が得意なのは家長。日産と並び、所属したことのないクラブのスタジアムとしては最も多くの得点を挙げている。山根の不在は痛いがデータ的には克服は出来ている。唯一の敗戦はコロナウイルスで他にも多くの離脱者を出した浦和戦。やや例外的なとらえ方もできるはず。なんとか難所を乗り越えたいところだが。
予習
第27節 FC東京戦
第28節 磐田戦
第29節 浦和戦
展望
■大量失点の陰に隠れる懸念点
6月の代表ウィークからおよそ3カ月弱。長く続いたリーグ戦ラッシュもようやく今節でひと段落を迎える。
中断前最後の試合は日立台における柏戦である。柏は直近の試合ではリーグ戦5試合勝ちなしとなかなか結果を出すことが出来ていない。大きな理由は度重なる失点である。ここ3試合での失点数はなんと12。これでは勝ち点を獲るのが難しくなるのは仕方がない。
柏の守備は5-3-2が基本線。IHに広めの裁量を持たせながらピッチを広く守ってもらい、バックラインは5枚を維持する形で陣形を組んでいる。この5-3-2ブロックが攻略されてしまうことが大量失点の要因になっている。
直近3試合のうち、敗れた2つの試合を見てみると失点パターンは見えてくる。6失点をしたFC東京戦は柏から見て左サイド側に紺野という基準点を持たれてしまったことが大きかった。紺野といえばドリブルを仕掛けながらのカットインのイメージが強いプレイヤーだが、この試合では止まりながら対面するDFと駆け引きするのが見事だった。
ドリブルをチラつかせながら柏のバックラインを足止めし、それに合わせて周りの選手たちが一気に抜け出す。IHの松木、塚川や前線のオリベイラ、渡邊あたりが紺野に合わせて抜け出して裏を取る。紺野自身も受ける前に裏に走りながら動いたりと縦方向の揺さぶりも意識していた。FC東京戦は前半には紺野を基準とした抜け出す選手を生かす一点突破型、後半にはアダイウトンがロングカウンターで大暴れという二本立てでお送りされていた。
一方の浦和戦はもっと根本的なところからぶっ壊された感があった。前の3-2ブロックが浦和陣内の深いところまで引き込まれたせいで全体の陣形が間延び。1人1人の管理するスペースが広がったところに浦和の中盤にビシバシ顔を出されてしまい、一気に柏の5バックの手前まで運ばれてしまった。ここから浦和は裏に抜ける形を作りながらゴールに一気に迫っていく。
FC東京とはアプローチは違うが、5バックの裏をラインブレイクするという最終形は同じ。異なる2つの方法論に柏は大量失点を喫してしまった。間に挟まった磐田戦も2点差を追いつかれるという展開であり、ダメージが大きいリーグ戦が続いてしまっている状況だ。
だが、正直大量失点に至った原因はそもそもの柏のウィークポイントである分、納得感がないわけではない。そういう意味では予習の時に気になったのはボール保持における振る舞いの方かもしれない。
バックラインはGKをはじめとして、プレッシャーを受けるととにかく簡単に蹴り飛ばしてしまうのである。序盤に対戦した時の柏はプレッシャーを裏返すトライは出来ていたはず。左サイドを中心に不定のポジションを取り、ズレを生かしながら1つずつ前進。サヴィオのタメから細谷などスピード豊かなストライカーが抜け出す形が強力だった。
だが、今の柏はそうした形へのトライが少ない。長いカウンターが全くダメというわけではないが、鋭い縦パスが2つくらいつながらないと抜け出すチャンスにならないし、直線的過ぎると相手のバックラインをピン留めして抜け出す動きも使いづらく、純粋なかけっこになってしまう。前線を生かすための時間作りが見られないのである。
選手個人の調子が極端に悪いようには見えないので、プランの問題なのだろうか。疾走感のある攻撃もないわけではないのだが、シーズン序盤に感じたフレッシュなパワーが鳴りを潜めているのは気になる部分である。
■動ける気がしなくてもやるしかない
柏攻略のケーススタディは川崎に当てはめてもイメージできるものではあると思う。FC東京における紺野の役割は家長にはうってつけだろうし、広島戦のように相手を引き込むバックラインでの駆け引きができれば浦和のように中盤を空洞化しての攻略もできるかもしれない。
しかし、いずれのアプローチにおいても重要になるのはIHの動き出しの鋭さである。家長のタメに抜け出したり、どこのポジションを取るかの判断を繰り返しながら細かな移動を連続して行ったりなど、川崎のIHの仕事は多岐に渡っている。心と体がフレッシュでなければ務まらないだろう。
すでに名古屋戦で重さを感じた橘田と程度不明の負傷交代をした脇坂(試合後に歩いていた情報あり)が中2日でこのタスクを100%完遂するのは想像がつかないのが正直なところである。
家長を活用するという観点でいえば出場停止の山根の不在も大きいだろう。日立台は得意な家長だが山根と脇坂という2人の頼れる相棒を失う危機に陥っている。
ただ、形としてよりマネしたいのはFC東京よりも浦和の方。GKをビルドアップに組み込み、CBが幅を取りながら相手を引き込む。そうして、相手の3-2ブロックを間延びさせるアプローチを取りたいところ。これができればだいぶ楽に前進ができる。
柏の守備を前後で分断し、最終ラインの手前でフリーの選手を作る。それができれば攻略にグッと近づくだろう。フリーの選手を作れたのならば、5バックは面で壊すイメージで。1つの動き出しで5人を無力化する裏抜けを積極的に狙っていきたい。
ボールを持つのは上に示した形を作るための下準備。それができるかどうかが柏攻略のポイントになる。疲れているのは知っているがやるしかない。勝たないと勝ち点はもらえないもの。
湘南、名古屋と同じく柏のシステムも5-3-2。すでに直近で2回トチっているフォーメーションと川崎は向き合うことになる。
日本にはこういう状況を示唆することわざが2つある。「二度あることは三度ある」と「三度目の正直」だ。ことわざと占いは良いことしか信じないというマイルールがあるので、当然「三度目の正直」にフルベット。厳しい前評判を覆る奮起に大いに期待することとする。