Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第29節
2022.9.10
川崎フロンターレ(3位/15勝4分7敗/勝ち点49/得点45/失点30)
×
サンフレッチェ広島(2位/14勝8分6敗/勝ち点50/得点45/失点29)
@等々力陸上競技場
戦績
近年の対戦成績
直近5年間で川崎の7勝、広島の2勝、引き分けが2つ。
川崎ホームでの戦績
直近10試合の対戦で川崎の5勝、広島の3勝、引き分けが2つ。
Head-to-head
過去の対戦成績は川崎が大幅に有利。直近6回での対戦で無敗となっている。特に広島が苦しんでいるのは得点力。直近4試合で2得点しか奪っておらず、等々力で最後に複数得点を挙げたのは2012年のこと。等々力と広島はあまり相性が良いとは言えず、23試合で4勝しかしていない。
このカードの特徴として強調できるのは川崎ホーム開催においての逆転勝利がないこと。先制したチームは少なくともこれまでの全試合で引き分けを確保していた。先制点はどんな試合に置いても重要だが、この試合に置いてはジンクス的にもこと重要度が高まるといえるだろう。
スカッド情報
【川崎フロンターレ】
・レアンドロ・ダミアンは右足関節外側じん帯損傷および右腓骨筋肉離れで10週間の離脱。
・永長鷹虎、高井幸大は代表招集のため出場不可。
【サンフレッチェ広島】
・東俊希は左下腿コンパートメント症候群で離脱中。
・塩谷司は前節の退場により出場停止。
・佐々木翔、茶島雄介はミッドウィークの天皇杯で負傷交代
・満田誠、藤井智也は欠場が続いている。
予想スタメン
Match facts
【川崎フロンターレ】
湘南戦で敗れてしまい、この試合で負ければ今季2回目の連敗。今季はやたらと逆転負けが多いのが気がかり。横浜FM戦、C大阪戦、湘南戦と3つも逆転負けを喫している。
しかし、この3試合はいずれもアウェイの話。ホームでは今季最多の4連勝でこの間12得点と好調。リーグで敗れている相手はC大阪と湘南というダブルを食らった2チーム。ちなみに引き分けたのは磐田だけである。この3チームにおける共通点はいずれも川崎がアウェイでもポイントを落としているチームである。この法則でいえばアウェイで勝っている広島には勝つことになる。
湘南戦で与えたPKは今季初めてのPK献上。PKは川崎絡みの試合でここ数節やたら増えている。今季初めてPKをもらったのが埼スタの浦和戦であり、その試合を含めた以降の6試合で4つのPKが与えられている。湘南戦以外は川崎が得たものだ。それ以前の20試合はPKを取る方も取られる方もなかった。
得点の部分で頑張りたいのは知念慶。この試合でゴールを決めれば3年ぶりの3試合連続ゴール。フィジカルで優位を取りにくい広島は正直めちゃめちゃ相性が悪い相手だと思うが、何とかここでも結果を残してほしいところだ。
【サンフレッチェ広島】
リーグ戦は現在5連勝中と絶好調。根性マイニングなので間違えもあるかもしれないが、リーグ戦6連勝となればおそらく2008年のJ2時代以来のこと。ちなみにJ1では何度も何度も5連勝で止められている。
好調の要因の1つは得点数だ。ここ7試合で20得点。横浜FM、C大阪、柏、鹿島などことごとく上位チームと対戦しているにも関わらず、複数得点で全て蹴散らしている。もう1つ好調の要因を挙げるとすれば逆転勝利が多いこと。14回のビハインドのうち、8回は勝ち点を獲るところまで持っていけている。
セットプレーからの失点はここまで少なく2だけ。リーグ最少だが2つのうち1つはエディオンスタジアムで川崎が決めたオウンゴールである。
チームを支えている強固なバックラインはプレータイムが非常に長い。荒木、佐々木はリーグトップクラスのプレータイムを誇り、佐々木に至ってはGKを含めてもトップ3に入るという状況である。それだけに前節の負傷交代は心配だ。
攻撃面では野津田と満田がアシストでリーグ2位という好スタッツ。満田はチームでの最多シュート数も記録しており、文字通りチームを牽引する存在といっていいだろう。
予習
第26節 G大阪戦
第27節 C大阪戦
第28節 清水戦
展望
■エースの交代で広がったプレースタイル
5連勝という圧倒的な成績を残して優勝争いに再び参入してきた感のある広島。消化試合数の関係から依然不利な状況には変わりはないが、今の勢いならばあるいはという予感もあるのも確かである。川崎戦は広島にとって優勝争いにチャレンジするための大きなチャンスという位置づけになるだろう。
Match factsの項でも触れたが、今の広島を支えるのは得点力。得点者を見てみるとG大阪戦でハットトリックを決めたベン・カリファが頭一つ抜けている印象を受けるが、あとは多くの選手が満遍なく得点を決めている様子だ。チームとしていい攻撃が出来ている裏返しのように思う。
攻撃の特徴としてはWBが非常に得点に絡むパターンが多いことが挙げられる。どんな相手でもひたすら突破にチャレンジできる藤井、往年のパフォーマンスを取り戻している感がある柏の2人のように突破力があるタイプが健在な一方、鹿島戦と清水戦で決勝ゴールを決めてラッキーボーイ感がある川村など多士済々。
川村はクロスに入ってくる動きが秀逸で、このあたりは万能性というかインサイドでもプレーできる選手のセンスなのかなという感じ。ちなみにC大阪戦では茶島が逆サイドからのクロスに合わせて得点を決めており、WB→WBのゴールは広島の攻撃の頻出パターンといえるだろう。
その一方で直線的に突き進むタイプのゴールは減少傾向にある。このあたりはFWのカラーの影響が大きいだろうか。新しくエースになったベン・カリファはジュニオール・サントスに比べると馬力や縦の鋭さは見劣りする分、横に広く動きながら崩しに関わりつつフィニッシュも優れている万能型。
パスを引き出しながら流れる動きと左右にも広いシュートレンジは魅力。G大阪戦では左右異なるサイドからそれぞれ角度のあるシュートを決めている。
チーム全体としてはトランジッションからWB主体で相手を片側サイドに寄せつつ、そのサイドを突破し、手薄になったエリア内や逆サイドにクロスを上げていくという流れが多い。特に逆サイドの選手の飛び込みの早さはえぐい。守備側が迷ったりサボったりするとすぐ遅れてしまう。大きな広島の武器の1つといっていいだろう。
インサイドでもアウトサイドでもプレーができる森島や満田もこうした攻撃にぴったりの存在だ。ややプレースピードが落ちる中でサイド攻撃を支えるのは野津田。ワンタッチで正確に速くサイドを変えられるキックは広島のサッカーにおいては欠かす事ができない。直近で敗れたリーグ戦の3試合のうち、首位の横浜FM戦を除いた2試合はいずれも彼が欠場した試合だ。
トータルでいえば攻撃のバリエーションは増えた。直線的なカウンターのイメージからはやや離れたが、むしろ一時期のように強度で勝負できなければどうしようもない!という状態を脱した分、ポジティブに映る。ゆっくり攻めても問題がないというか、余裕があるというか。
守備においてもその余裕は同じ。プレスの意識が高いのは同じではあるが、何が何でも相手を捕まえなくては!みたいな強迫観念からは解き放たれた感じがする。その結果、中盤での無理筋なボールの追い方は減り、後方で穴を空けるようなエラーも減った。
バックラインの強度は相変わらず。相手のCFをパワーで無効化しまくっており、加藤やサンタナのような実績十分のFWも苦戦を強いられている。野上の出場が不透明の中、塩谷の出場停止でやや層は薄くなっているが、前線と同様に広島が自信をもって送り出せるユニットといえるだろう。
■後ろの2つは忘れていい
広島と対峙する上で川崎がまず考えなければならないことがある。それは苦しかった湘南戦で通用した武器はこの試合では通用しないかもしれないという可能性である。
1つ目はセットプレー。今季の広島はセットプレー関連のスタッツが大幅に改善している。Match factsの項で述べた通り、セットプレーからの失点はリーグでは最小。エディオンスタジアムではセットプレーからのゴールを奪った川崎だったが、その再現ができるかは怪しい。今季は大事なところでセットプレーでの得点に頼ってきただけにここは不安要素になる。
もう1つは知念慶である。思うように前進ができない湘南戦で強引にボールを収めてくれた知念は非常に頼りになるパフォーマンスを見せている。しかし、知念が得意な降りて受けるようなプレーは広島がつぶすのが非常にうまい。特に体をぶつけやすい長いボールになればより勝率は高まる。荒木、佐々木あたりとの競り合いに勝ち続けるのは明らかに難しい。
できれば走りながら裏に抜ける形でボールを受ける頻度を増やしたいところ。降りてきて手前で受けるよりはボールをロストした際のリスクが段違いだからである。安易なロングボールは罰を受ける可能性が高いだけにボールの出し手側も慎重に行きたいところである。
では、逆に広島のどこを狙い目にしたらいいか。マルシーニョの裏抜けと右サイドのユニット以外という川崎の定番のパターン以外だとCH周辺のスペースだと自分は思う。
広島は前からプレスに行くけどもマンマークでつぶしてくるわけではない。ボールと味方の位置を見ながらどこまでプレスを追い立てるかを決めている感じ。この判断において、最も負荷がかかっているのがCHもしくはIHの2人のように思う。よって、彼らの周辺にはなるべく多くの人を置きたい。動けば、空く選手ができるような状態を作り、判断にさらに負荷をかけていきたい。
特に相手のWBをピン留めできるマルシーニョがいる左サイドは有望。おそらく同サイドのWBのフォローは期待できないし、川崎のSBのポジション次第ではシャドーとの距離も空けることができる。
もちろん戦況次第だが、湘南戦で全く機能しなかった家長の左サイドへの出張もこの試合では効果がある可能性がある。まずはCHの基準点をずらすところから始めていきたい。楽はせず、ズレは1つずつ利用するイメージを忘れないようにしたい。
守備においてはなるべくサイドからボールの脱出を許したくないところ。エリア内でベン・カリファやソティリウ、そして逆サイドのWBの飛び込みをカバーしきるのは至難の業。守勢に回るのは確実だ。
仮に藤井が出てきたら、彼の負けん気の強さを利用し2枚で挟みながらつっかけさせたいところ。マルシーニョのプレスバックは重要になるだろう。
右サイドはユニットごとのスライドが前提。PKを取られてしまったジェジエウはこの試合できっちりリベンジを果たしたい。シミッチ、脇坂と連携しながらなんとかサイドに鍵をかけたいところだ。
川崎はここから3連戦だが、とりあえず後ろの2つは忘れていい。広島はそれだけの相手である。一週間空いた分のエネルギーをすべてぶつける総力戦で臨みたい。