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「Catch up AFC Champions League」~2023.9.19 グループI 第1節 ジョホール・ダルル・タクジムFC×川崎フロンターレ レビュー

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クラシコは予行演習だった説

 因縁のメンバーが揃ったグループI。川崎のACL初戦は昨年の集中開催の舞台となったマレーシアからスタート。国内で無双状態のジョホールのホームに乗り込んでの一戦となる。

 ジョホールの守備ブロックは少し変わっていた。4-4-1-1ベースということでいいのだろうけども、アンカーの橘田をヘベレチが監視し、2人のCBをベルグソンとハナピが抑えにいく。

 その結果、中盤はファザイルがスライドし、ムニスが下がる形で3センターのような形に。非保持においては4-3-1-2でプレスをかけているようにも見えた。

 ジョホールの中盤の守備は人基準が基本で近くに来た人を捕まえるような動きを見せる。後方でワンが浮いていることで家長がインサイドに入ってきても数的には問題なく捕まえることができる。

 4-3-1-2気味の変形をジョホールがすることで、時間がもらえるのは川崎のSB。山根と登里はプレスの外からボールを持つことができていた。ただし、川崎が敵陣に入る時はハナピやベルグソンがラインを下げて守るため、登里や山根が出しどころを迷っているうちにスペースは消えることとなる。その分、川崎がサイドから運べばジョホールをきっちり押し下げることができるとも取れるけども。

 チャンスメイクは最終ラインの高さを決められるゴミスによって、MFとDFのラインが空いた形を作ることによって可能になっていく。ゴミスが高さを決めてくれる分、川崎のIHは手前で相手を引きつければ引きつけるほどチャンスができる状態だった。

 ジョホールの中央の陣形は固くなっているので、川崎からしても空いたライン間を活用するのはリスクが伴う。実際、強引な縦パスのミスからカウンターを受ける場面もそれなりにあった。

 逆に、こうしたカウンター以外では川崎はジョホールに対しては比較的よく守れていたと言えるだろう。FC東京戦を継続する3トップがインサイドに絞り、大外に3センターが出ていくという外に押し出すシステムに対して、ジョホールはただただバックラインでU字にパスを回す場面もあった。FC東京相手にこのやり方がハマっていたかは微妙だが、ジョホールにはかなりフィットしていたやり方のように思える。むしろ、ジョホール相手の予行演習をクラシコで行ったという方がしっくりくるくらいである。

 そんなジョホールの川崎のブロック守備に対する攻め手は右サイドのアイマン・ハナピ。彼と登里のマッチアップは川崎にとってかなり怖い箇所。同サイドのCBの車屋は中央のベルグソンへの警戒が強いため、SB-CB間の距離がかなり空いていることも川崎にとっては同サイドの突破が大きなダメージになる要因だった。橘田が気にかけてはいたものの、彼が間に合わない時はジョホールはここからかなり危険な形を作れていた。

 だが、そこ以外のジョホールのチャンスメイクはイマイチ。川崎と同じく強引に中央につけてはカウンターに移行されてしまう場面もあり、密集打開では後手を踏んでいたと言えるだろう。

 カウンターによって瞬間的に前に顔を出せるかどうかは特にACLでは明暗を分けるワンプレーになりがちである。そういう意味では先制点の瀬古は大仕事だった。ゴメスの背後に入り込んで家長からのクロスに競り勝ち、マルシーニョがフリーになる形を演出。前線への顔出しでゴールをお膳立てして前半のうちにリードを手にする。

 後半、川崎は家長のクロスからマルシーニョが決定機を作る。そしてジョホールもアイマン・ハナピが登里をぶち抜いたところからソンリョンにシュートを防がれてのスタート。バタバタした立ち上がりだったが、それ以降の後半は川崎がよく展開を制御していたと言っていいだろう。

 リードを奪っているから、だらっとしたポゼッションは正当化できるし、前半の項でも述べたが川崎はサイドから押し下げることができれば、アイマン・ハナピが自陣まで下がる役割を担っているため押し下げる意義は大きい。これだけでもカウンターの脅威はだいぶ減る。

 後半の川崎の攻撃は中盤でパスを回しつつ、瞬間的に後方に抜ける選手を作って決定機を演出することが狙い目になっていた。マルシーニョ、瀬古、そして交代で入った瀬川は前線に走る役割を託されてあわやという場面を作る。放っておいてもスピードで勝てるマルシーニョ以外の選手の抜け出しはタイミングが重要。横パスやマイナス方向のパスを作ってジョホールのバックラインや中盤を食いつかせて逆を取れれば裏抜けの効果は最大化できる。

 しかし、川崎が横パスやマイナスパスを行う際にはジョホールは容赦無くラインを上げるため、このタイミングでボールをロストすれば、あっという間にアイマン・ハナピが前がかりの形のカウンターを受けることになる。逆に川崎は裏抜けのトライができるところまで行けば、そのパスが通らなくてもある程度は美味しい。その代わり、その手前で引っ掛ければ失敗というポゼッションを川崎は繰り返していた。カウンター対応においては中盤がすれ違ってしまい、あわやという場面も何回かあったが、飛び出していって体を張った大南のリカバリーとソンリョンの冷静さでかなりチームは救われていた。

 ジョホールの攻撃においてカウンター以外だと脅威なのはセットプレー。だが、ここも川崎はACL仕様に作り替え済み。CKのニアの高さが保証されているのがCFのゴミス起用のいいところの1つ。ジョホールは高さの面でもなかなか川崎相手にアドバンテージを取ることができなかった。

 後半は川崎のWGはインサイドにこだわることなく、アウトサイドで低い位置のスペースを埋める役割にも積極的に取り組むように。マルシーニョに代わって入った瀬川は低い位置まで下がっての守備と高い位置に出ていく役割の二役を任されており、この両方を見事に遂行したと言えるだろう。特に最後の5-3-2移行後に時間を作るプレーは素晴らしかった。ちなみに5-3-2はC大阪戦の先発で使った形であり、川崎は直近のリーグ戦で使ったフォーメーションのフルコースでジョホールに挑んだことになる。

 最後はプレーの切れたところでも乱戦に持ち込まれていたが、その分野でも立派に渡り合っていたのは心強いところ。タイムアップまで集中を切らさなかった川崎が初戦を白星スタートで飾った。

ひとこと

 決してチャンスたくさんの楽しい試合ではなかったが、リーグ戦で使ったやり方をACLできっちり生かしてくれたこと。相手の嫌がる時間の使い方でチャンスを作れる手法を限定できたことなどしたたかさが上回った試合だったと言えるだろう。リーグ戦でやや低調だった家長が守備でも奔走し、攻撃では起点として頼もしい存在になるなど、チームはACLにきっちり照準を合わせている感もある。天敵・蔚山を前に敵地で勝ち点3を獲得できたのは何よりの朗報と言えそうだ。

試合結果

2023.9.19
AFC Champions League
グループI 第1節
ジョホール・ダルル・タクジム 0-1 川崎フロンターレ
スルタン・イブラヒム・スタジアム
【得点者】
川崎:45′ マルシーニョ
主審:アブドゥルラフマン・アルジャシ

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