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「良くも悪くも最低限」~2019.2.9 プレミアリーグ 第26節 ハダースフィールド×アーセナル レビュー

 前節のレビューはこちら。

   前回対戦のレビューはこちら。

   ワーグナー監督解任後も浮上の兆しが見えないハダースフィールド。25節終了時での勝ち点11はプレミア史上3番目に悪い数字らしい。深刻なのは得点力不足。年始1試合目のバーンリー戦でのゴールが2019年唯一のゴールと言うのだから頭が痛い。まだ25節とはいえ、降格圏脱出には10ポイント以上が必要に。残留争いには赤信号が灯っており、一刻も早く勝ち点を積み重ね始めなければいけない状況だ。アーセナル相手にはなるが、浮上のきっかけをつかみたいところである。

 アーセナルも状況は芳しくない。チェルシー戦の勝利を除けば年明けにポジティブな材料は皆無。勝利を拾えるのは降格圏のチームばかりで、強豪相手には完敗と言っていい状況が続いている。CL争いで劣勢になっているピッチ内での状況に加えて、エジルの起用法やミスリンタートの退団で宙に浮いた後任TDの話などピッチの外でもゴタゴタは継続。ただ、この試合でより緊急度が高いのはピッチの内の方だ。長期離脱選手とソクラティスに加えてジャカ、ラムジー、エジル、オーバメヤンも欠場。デニス・スアレスの補強というポジティブな話題を吹っ飛ばすほどのケガ人の多さである。しかし相手はハダースフィールドであり、ここをしのげばリーグは2週間お休みになることを考慮すれば、是が非でも勝ち点3を取りたいゲームになる。

スタメンはこちら。

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目次

【前半】
隙を見逃さなかったムヒタリアン

 立ち上がりは両チームにとって落ち着かない試合となった。果敢にプレスを仕掛けるハダースフィールドに対してアーセナルは若干面を食らったように見えた。ハダースフィールドのプレスにアーセナルはつなぎの局面でミスを連発。ただ、ハダースフィールドも高い位置で機能的にバンバンボールを拾っていたわけではなく、ボールの行き来が多い展開になった。GKのフィードの質が低くてロストが多かったのは少しもったいないように感じた。GKにボールを戻す場面が多かったので、意識的にここを組み込んでる感じはしたけど。

 それでも試合が進むごとにアーセナルがボールを握る時間が増えてくる。現地予想スタメンは4-3-3だったけど、ハダースフィールドのプレス隊はトップ下+2トップのプレス隊のように見えた。中盤がダイヤモンドになっているので、中央での密度は高め。アーセナルは中央でのパスは割とひっかけていた。3枚のCBもなかなか数的優位を生かせないため、ボールの前進はWBへの依存度が強まる。アーセナルのWBにはハダースフィールドのSBがマークについていたが、ここのマークが外れるときにアーセナルはチャンスを作っていた。いつものアーセナルと少し違うのは、左だけでなく右からもチャンスを作っていたこと。イウォビのシュートがサイドネットに突き刺さったシーンは、大外のナイルズから、アンカー脇→最終ラインに侵入したイウォビへのキーパスでシュートまで持ち込んだシーンだった。

 しかしながら、得点につながったのは左サイドから。秀逸なのはムヒタリアン。ファウルへの抗議でリスタートが遅れたバクーナのスペースに顔を出してアンカーを釣りだすと、対応に迷ったスミスの裏をかけあげるコラシナツへのスルーパス。中央は数的同数だったが、大外のイウォビが沈めて先制。ハダースフィールドが採用した4-3-1-2は、構造上そもそもサイドのケアがしにくいが、リスタートからの中央での対応の遅れがサイドのプレイヤーの判断の迷いを生んだのは致命的だった。

【前半】-(2)
お互いの泣き所

 先制点を決めたアーセナルだが、試合をコントロールして進められたわけではない。ゲームは引き続きボールが行き来する展開で、落ち着かないまま進むことに。すなわち、ハダースフィールドにもチャンスがやってくる展開だ。配置上、中盤に斜めのパスコースができやすい4-4-2ダイヤモンド形なので、アーセナルのCHはどこで捕まえるかかなり苦労していた。アーセナルの守備はハダースフィールドのFWに合わせて前に出るCBが空けたスペースを埋めるのにも苦戦。特にモンレアルが出ていったときは、コラシナツとほかの選手の距離感が遠いこともあり、コシエルニーが気合でカバーというシーンが目立つ。

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 逆にムスタフィサイドが押し込まれた時は、アーセナルがボールを取った後になぜか人の多い内側にクリアする場面が多く、即インターセプトから再度ピンチという場面が。それは何とかしてよ。。

 逆にハダースフィールドの守備にも泣き所はあった。ビルドアップ隊の人数は基本3人でトライするのだが、2トップ以外のもう1人のプレス役が流動的だった。おそらく配置上はパンチョンが行くべきなのだろうが、結構プレス隊への参加が気まぐれで、ムーイが出ていく場面がかなりあった。
 問題点はもう1つ。前線のプレスのスイッチ役がいまいち定まらなかったこと。

 前半の最後に泣き所が失点につながってしまったのはハダースフィールド。失点シーンは2トップに加わり、ムーイとパンチョンがなんとなく前線守備に参加。しかしホルダーであるコシエルニーにプレッシャーはかかっておらず、楔を通させてしまい、そこから一気にスピードアップを許す。最後はナイルズのオーバーラップとエリア内のラカゼットをともにケアできず、失点することに。盤石の試合運びじゃないながらも、アーセナルが2点をリードして前半を折り返す。

【後半】

流れはホームチームに

 後半開始とともに若干プレスを修正したハダースフィールド。前線のプレスは2トップがメインにシフト。特にムーイは前線へのプレス参加を自重。その分、彼を含むセントラルハーフに課された役割はサイドに蓋をすること。インサイドハーフがスライドして、アーセナルのビルドアップをサイドに追い込んだところでボールを奪取することで、比較的高い位置からのカウンターを発動することができた。惜しむらくは奪ったあとのカウンターの精度の低さだろう。1回ワンタッチでつながってシュートまで持って行けたシーンはあったものの、それを除けば質の部分でかなり苦しんでいるように見えた。

   アーセナルは後半からイウォビとムヒタリアンのサイドを入れ替えた。狙いとしてはイウォビ+コラシナツユニットでの左サイドの攻撃力強化。そしてこちらのサイドを押し込むことで、勘案だった自陣左サイドの守備時における連係の悪さを隠してしまおうという算段もあったのではないかという推察。後半のアーセナルは左からの攻撃の機会は増えたように感じた。

 エルネニー、デニス・スアレスを同ポジションの選手と入れ替えたアーセナルと前線中央にドゥポワトルを投入したハダースフィールド。終盤は再度ペースを握ったのはホームチームの方だった。ドゥポワトルの投入が効果を発揮するのはやや時間がかかったものの、シャドーが低い位置や開いた位置でボールを持っても中央の人口密度が担保されるため、より自由度が増した印象。さすがに後半の序盤と比べればハダースフィールドもロスト直後のプレスの精度と強度が落ちたため、アーセナルにボールを運ばれてしまう場面はあったものの、基本的にはハダースフィールドがボールを握る展開に。
    アーセナルはブロック守備、プレス共に半端であり、DFラインの前も後ろも簡単に使われる状況が解決できない。ロングボールを起点に簡単に裏を取られたオウンゴールのシーンも、2点リードの場面で何を優先するのかがはっきりしていないことが浮き彫りになっているようだった。ハダースフィールドにとっては、勝ち点には結びつかなかったものの、うれしいうれしい久しぶりのゴールになったようだ。ファン、めっちゃ楽しそうだった。
 試合はそのまま終了。アーセナルが勝ち点3を獲得した。

まとめ

 割とうまくいっていたように見えたハダースフィールド。アーセナル相手に相性がいいやり方だったのか、単純にチーム状況が上向きなのかはわからなかったけど。個人的な感想としてはハダースフィールドは目下の勝ち点の積み重ねに全力!というよりはスタイル浸透を狙いながら、降格にも備えるという方向に舵を切ったようにも思えた。気になった部分としてはショートカウンターとセットプレーの精度の部分。特に後者はキッカーを含めた精度の改善がほしいところ。前者の修正も含めてうまくいけば、スタイルの構築と勝ち点の積み重ねを両立できるシーズン終盤を過ごせる可能性もある。

 最低限の目標である勝ち点3を確保したアーセナル。病欠メンバーが大量に出た状況で最低限の目標を達成したことはまずはポジティブにとらえるべきだ。その上でディスゲームの話をすれば、課題が山積み。好材料は復帰したムヒタリアンが好パフォーマンスを見せたことと、懸念の右サイドの攻撃にナイルズがうまく絡んだ場面もあったくらいか。
    2点をリードした状況から、ゲームをどうコントロールしたいのかは見えてこなかったし、本文中で述べたようなイウォビとコラシナツの連係から後半は相手陣地にくぎ付けにするというプランがあったとしたら、効果は限定的でしかなかった。ハダースフィールド相手に通用しなかった部分は、プレミアリーグの大半のチームには通用しないと考えるべきで、終盤の5バックのようなブロック守備はこのメンバーでは強度を保てないことも証明してしまった格好である。慢性的な負傷を抱えるコシエルニーにはかなりの負担がかかっている。
 リーグ戦での破竹の連勝が止まった第10節以降、16位以上のチームとの対戦では11戦でわずかに3勝のみ。次節はこの法則には当てはまらない降格圏のサウサンプトンが相手になるが、今季唯一アーセナルが降格圏に勝ち点を落としたカードがセント・メリーズでのサウサンプトン戦だ。前に控えるELや後に控えるボーンマス戦も含めて、エメリとアーセナルには試練が続く。怪我人事情が指揮官の選択肢を狭めているのは事実だが、残念ながらコンペティションはそれを考慮はしてくれない。内容の改善が早い段階で見えてこなければ、ファンがチェフやラムジーと共に掲げたいと願うトロフィーへの可能性が早々に潰える可能性すらあるはずだ。

試合結果
プレミアリーグ 第26節
ハダースフィールド 1-2 アーセナル
ジョンスミス・スタジアム
【得点者】
HUD: 93′ OG
ARS: 16′ イウォビ, 44′ ラカゼット
主審: ジョナサン・モス

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