Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第18節
2022.6.25
川崎フロンターレ(3位/10勝3分4敗/勝ち点33/得点25/失点19)
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ジュビロ磐田(14位/4勝6分7敗/勝ち点18/得点21/失点26)
@等々力陸上競技場
戦績
近年の対戦成績
直近10試合で川崎が7勝、磐田が1勝、引き分けが2つ。
川崎ホームでの戦績
直近10試合で川崎が7勝、磐田が2勝、引き分けが1つ。
Head-to-head
前回対戦においてはラストプレーで三浦のキャッチミスに漬け込んだ知念が同点ゴール。川崎からするとギリギリのところで磐田相手の無敗記録を保った格好である。
等々力での戦績は川崎が安定して優位。ただし、2017年の2-5のように時折磐田がド派手な勝利を決めている。磐田が勝つときはこの試合のようにド派手なスコアの物が多いのが特徴。逆に川崎が勝つときは試合を手堅く進めながら磐田を封じられたときという傾向の違いがある。
スカッド情報
【川崎フロンターレ】
・離脱中の登里享平、ジェジエウはトレーニングには合流済み。
・知念慶は前節の札幌戦で負傷交代。
【ジュビロ磐田】
・鈴木雄斗はコンディション不良でベンチ外が続く。
・大津祐樹は突発性難聴により全治未定の離脱。
・負傷中の高野遼は練習復帰。
予想スタメン
Match facts
【川崎フロンターレ】
前節は札幌相手に強烈な5得点での逆転勝利。点を獲って勝つという今季鳴りを潜めていた川崎の破壊力の部分が久しぶりに顔をのぞかせた試合だった。
しかしながら、またしても複数失点や先制点を許すなど連敗時の不安定な戦い方を引きずっている節もある試合だったことは否めない。今季のリーグの勝ち方からしても、ボール保持からもう少し守備を助けていきたいところであるが。
ようやくリーグ戦初ゴールが出た小林は6月との相性が抜群。2019年には6月に磐田からゴールを奪った経験もある。次にゴールが待たれるのはダミアン。2019年の5月に記録した7試合連続のリーグ戦ノーゴールを塗り替えてしまうピンチになっている。小林に続いてチームを助けるゴールが欲しいところである。
【ジュビロ磐田】
こちらも前節の鳥栖戦は快勝。リーグ戦の未勝利を川崎と同じく3で止めるなど境遇は似ている。ただし、アウェイゲームは6試合勝ちなしと悪い流れを止めていない部分である。等々力は先述の通り相性はよくはないが、なんとかして勝ち点を奪いたいところ。
個人的に今季の磐田はここまで想定以上の出来。その要因になっているのは得点力が大きい。大量得点ではないが、コンスタントに得点を積んでおり、無得点で終わる試合が非常に少ないのが特徴である。
前節は小林同様ゴンザレスも奮起しての2ゴール。こちらも続けての活躍に期待がかかる。ヤマハでは悔しい思いをした三浦もリベンジに燃えていることだろう。
予習
第15節 神戸戦
第16節 横浜FM戦
第17節 鳥栖戦
展望
■コンスタントな得点力の秘密は?
後半戦の幕開けになるのはアウェイで引き分けた磐田との対戦である。昇格組としてJ1で奮闘中の磐田。残留という目標に向けて予断を許さない状況ではあるが、直近での連敗はなく、下位の中では大きな波がない状況を作っている。
方針としては前回対戦時とは大きく変わっていない。3-4-3という基本布陣も前回と一緒。守備に関しては直近では立ち上がりの積極さが目立つ。シャドーがCBを外切りで内に追い込み、中で取り切ってショートカウンターに移行する。2CBとアンカーでビルドアップを行いたい川崎に対しては結構ハマりやすい形かもしれない。
しかしながら、こうしたプレスはあくまでこれでなんとかなれば!という様子見の様相が強い。プレスがかかるのが難しいとなれば、潔く撤退を選んでスペースを消す方針に切り替えることができる。
守備ブロックは前回対戦時よりも安定してきた印象がある。今回チェックしたリーグ戦3試合ではいずれも同じメンバーがDFラインを形成していたので、この部分はメンバーを固定することで連携が高まっていったのかもしれない。
保持においてのスタンスはショートパス+ポゼッション志向の強さが目立つ。バックラインは人数をかけてのビルドアップを大事にしている印象で3バック+2CHで丁寧に繋ぐ傾向が強い。
シャドーの大森はギャップに入り込んでボールを引き出すというフリーマン的な役割である。逆サイドのシャドーである上原はよりバランスを見てではあるが、引いてよし動いて良しの万能型。展開によらない貢献が期待できる。
直近で勢いがあるのはゴンザレス。前線に張ることで相手のラインを下げて、サイドからの抜け出しもこなす。前節は2得点とシュートも好調。継続的にエリア内での得点感覚がついてくればより怖い存在になるだろう。大津の離脱によって流動的な前線のレギュラーをがっちりと掴みたいところである。顔ぶれは前回対戦とやや変わったが、3トップのキャラクターによって前進の仕方が割と変わりやすいのも磐田の特徴だ。
さて、磐田が残留争いに巻き込まれていない理由の1つとしては得点力が挙げられる。Match factsの項でも取り上げたが、無得点の試合が少なくボトムハーフの中では唯一得点が20点以上のチームである。
3得点を挙げた鳥栖戦の得点パターンをチェックすると、彼らの得意な得点パターンはショートパス主体の形というよりも、縦に早い攻撃を少ない手数で完結させる形なのではないかと思う。
彼らの早い攻撃における強みは後方の選手の押し上げの速さ。山本、吉長、松本などサイドの選手も一気に押し上げて、同サイドをこじ開けながら一気にシュートまで持ち込んでいく形が得点パターンの共通項だった。
見ているサンプル数の少なさからここは仮説になるのだけど、おそらくロングカウンターの方が後方の選手が攻め上がりのタイミングを掴みやすいのではないか。長いパスが通れば、それが攻め上がりの合図。ショートパスでせめている際には、後方からのサポートが遅れて前線が潰されるパターンをよく見るが、早い攻撃が成功する際にはサイドで厚みのある攻撃を行うことができている。
この早い攻撃を成立させるキーマンは2人。1人は上原。降りてくるだけでなく裏やサイドに流れることで時間を稼いで、後方のオーバーラップを促したりなど味方の攻め上がりを使うのがうまい。スペースの嗅覚は仙台時代に素晴らしいと感じたことをよく覚えているが、周りを使うという意味でもう少し精度を増した印象である。個人的にも好きな選手だ。
もう1人は鹿沼。CHの彼がPAに入り込むことで手早いサイドの攻撃を完結させることができる存在だ。鳥栖戦の2点目と3点目はいずれも彼がエリア内に入り込む形。攻め上がりの思い切りの良さが得点パターンで生きており、存分に持ち味を発揮していると言っていいだろう。
■一つずつ手順を踏んで攻略を
まず川崎が行うべきは立ち上がりのプレスを回避して磐田を押し込むことだ。大まかには前半は天皇杯での東京V戦と同じ試合展開に持ち込みたい。相手のハイプレスを回避し、撤退に頭を切り替えさせる形に追い込む。
ハイプレスを諦めさせるにはいくつか方策はあるが、磐田相手に1番効果がありそうなのはGKのビルドアップ参加。これでCBの幅を取るのがベターだろう。幅をとれば外切りの角度はつけにくい。
押し込む、人数をかける攻撃を行う、そして跳ね返されたボールをきっちりと回収する。このサイクルを成立させることで、波状攻撃を行いながら得点の形を模索していきたい。
攻撃の崩し方に関しては鳥栖が挙げた得点は教科書になるだろう。同サイドで3人目が抜け出し、それにインサイドが合わせてフィニッシュまで持っていく。まさしく川崎が撤退ブロックに対して行いたいモデルケースである。
まずは同サイドで抜け出す選手を作ること。ここは天皇杯の東京V戦ではほとんどできていなかった。3人目が抜け出す形を作り、エリアにボールを送り込まれる前にラインを下げること。
その上で、ファーへのクロスは意識したいところ。鳥栖戦ではファーのクロスで視野の確保が難しくさせられる状況に苦しんでいたし、横浜FM戦ではファーのサイドのクロス甘くなった形から失点をしている。
ニアに抜け出す形とファーに合わせる形を両方用意する。ブロックを崩すために基本的なことではあるが、まずはここからきっちりと見直しておきたいところである。
波状攻撃を成功させるにあたってのもう一つのポイントは磐田に攻撃の起点を作らせないこと。ここ最近は相手のFWに対して後手を踏み、カウンターの起点を作られる形が多い。ゴンザレスに前を向かせる前に決着をつけて、すぐにボールを奪い返して攻撃に繋げられるか?がポイントになる。
撤退守備時においてはやはり厚みのあるサイド攻撃に要警戒。左SBの人選は読めないが、左サイドは上原の対応には苦慮することにはなるだろう。同サイドに相手を追い込んで閉じ込めるということが最近は苦手なので、磐田の得点パターンは川崎にとっては試練。スペースを圧縮しにいって、外されてガラガラな中央を使われる形はもう見たくない。出ていくのならば潰しきる。それを徹底したい。
出ていく形を曖昧にしてはいけないというのはプレスにおいても同じ。WGの外切りプレスが外されて、IHのカバーがちっとも間に合わず、サイドに一度展開をされてしまったら中央もサイドもスカスカな場面が最近はとても多い。ビルドアップに枚数をかけてくる磐田だからこそ気をつけたい場面である。
天皇杯のあとがきで書いた課題はまずは試合の展開を握る握力をつけること。カウンターを圧縮して潰す、CFに起点を作らせないなどはそのために必要である。
それを実現するにはボールの失い方、攻撃の完結のさせ方は重要。まずは、プレスを諦めさせる、押し込んだ後はニアで抜け出す選手を作る、ファーでクロスを待つ形も作る。当たり前であり、目新しいことでもない。だからこそ大事。水準を引き上げるにはまずは当たり前にやるべきことを徹底するしかない。
補強や故障者、出番の少ない選手に希望を持つ人が出てくるのも理解できる状況ではあるが、まだ出ている選手たちでできることは十分にある。天皇杯での敗戦は個人的にも残念だが、当たり前を積み重ねる前に投げ出すほど、希望がない状況ではないことは確かである。
最後になるが、大津のピッチへの復帰を心からの祈っていることをサッカーファンの1人として記しておきたい。磐田のサポーターではないが、僕も彼がサッカーする姿を見ることを心待ちにしている人間である。