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【11位】ニューカッスル
13勝10分15敗/勝ち点49/得点44 失点62
■降格争いから死神へのジャンプアップ
今年のプレミアはいろいろあったが、とりわけニューカッスルはその中でもいろいろあったチームといえるだろう。スティーブ・ブルースが指揮を執るところからシーズンをスタートしたのがまるではるか昔のことのようである。
序盤戦はサン=マクシマンがシュート精度を改善した分、攻撃の破壊力はアップ。ただ、別にそれをチームに組み込んでどうこうするみたいな感じでもないので、純粋にサン=マクシマンの馬力でチームの成否が決まっていく試合が続いていた。
そうなってしまうと、やはり残留争いに首を突っ込んでしまうのは当然といえるだろう。毎年通りの歩みを続けるニューカッスルに例年とは違うことが起きたのが10月。ファンにとっては憎きマイク・アシュリーからサウジアラビアの王族チームにオーナーが変更に。残留争いに沈んでいる中で1試合だけ猶予をもらったブルースはトッテナムにボコボコにされてあっさり解任。エディ・ハウに後任を託すことになった。
とにかく降格だけは回避しなければいけないニューカッスル。ハウが取り組んだのはニューカッスル型のバランスを見つけること。ブルース期から取り組んでいたシェルビーを組み立ての中心に据える形を完成させることと、サン=マクシマンに過度に頼らない保持の仕組みの運用だった。
その結果、ニューカッスルが行きついたのは4-3-3。展開力はあるが守備のカバー範囲に難があるシェルビーをアンカーに置き、馬力があり動けるIH2人で中盤をプロテクトするやり方である。
献身的なストライカーであるジョエリントンや新戦力のギマランイスはこの仕組みにフィット。中盤が終盤戦を前に固まったのが大きかった。
その他の補強も派手さはないが堅実。ターゲット、トリッピアー、バーンなどプレミア経験者を中心とする補強で堅実に戦力を底上げしたのも大きかった。
春以降のブーストでようやく降格の心配の必要がないところまで順位を上げると、終盤戦は死神ビジネスを立ち上げる。37節ではアーセナルのCL行きを阻み、最終節ではバーンリーをチャンピオンシップ送りに。両者の狙いとはきっちり逆に連れていく見事な死神ぶりを発揮していた。
終わってみれば順位は11位。終盤戦はかなり内容も含めて上がってきて、死神ロールをこなす余裕も出て来た。やはり楽しみなのは夏の補強だろう。軍資金はあるがFFPやCL出場権などビッグクラブとの競合は不利も予想される。立地もいいところにあるとは言いにくい。
そうした中でどこまで上を目指せるのか。いずれにしても噂されるビックネームの名前にファンは心を躍らせるというニューカッスルファンにとっては新鮮な夏になりそうだ。
Pick up player:ジョエリントン
ストライカーのIHのハーフ&ハーフを持ち前の献身性の高さで成立させていた。見た目によらずまじめな部分がハードなタスクとマッチしており、継続性の部分でも大きな収穫。ジョエリントン柄のアロハを着るファンまで登場した。
■今季のニューカッスル
【12位】クリスタル・パレス
11勝15分12敗/勝ち点48/得点50 失点46
■土台作りに異分子組み込みと充実のシーズンに
『かつてプレミアで鳴らした名選手が監督として帰ってくる』というパターンは多くのファンにとっては地雷の匂いがプンプンする案件としてとらえられる。今年でいえば、パレスのヴィエラはこの条件に当てはまる監督であった。
しかしながら、ヴィエラの元でパレスは素晴らしい1年を過ごしたといえるだろう。4-3-3の基本フォーメーションから3-2-5に変形する保持でビルドアップを安定させることにトライしたがこれがマッチ。開幕から完成度の高いサッカーを披露する。
リーグの中で上位勢とは言えないチームが保持型でシステマティックに舵を切るときに陥りやすいのは枠からはみ出る理不尽さが足りないこと。その部分を完璧に補っていたのがチェルシーからレンタルでやってきたギャラガーだった。組み立てに顏を出して良し、フィニッシュに絡んで良し。守備での粘り強さも含めて90分フルでコミットできる強度も備えており、パレスの攻守をワンランクスケールアップさせることに成功していた。
加えて、異分子だったザハもこのシステムの中にハマっていた。従来に比べれば規律を守りながら保持を行う姿を見ると、ヴィエラは彼のことをうまくコントロールしているのだろうと思う。ある程度の枠の中で働いてくれるのならば、1枚剥がすことができるザハの能力は保持型のチームにとってはのどから手が出るほど欲しいスキルである。逆サイドのオリーズも含めてWG型の選手には困らなかったのも大きかった。
CBの新コンビもパレスの新しい旗印。もって良し、守って良しのグエーイとアンデルセンのコンビは開幕から1年間レギュラーを守り通したといっていいだろう。グエーイは代表にも呼ばれるなど進境著しいシーズンとなった。
残念だったのは要所に見られたセットプレーの拙さ。緊迫した展開やリードした状況においてセットプレーの守備の甘さのせいで台無し!!という場面は腐るほど見て来た。これで落としてきた勝ち点がなければトップハーフ入りも見えていただけに惜しまれる部分でもある。
それでも、4-3-3の仕組みを作りつつ、はみ出す余白も残したヴィエラのチーム作りは見事。来季はギャラガーの退団と向き合う必要があるが、2年目はどんな余白と伸びしろを見せてくれるだろうか。
Pick up player:ウィルフレッド・ザハ
ギャラガーではなくこちらを選択。正直、アナーキーすぎて出番はなくなるだろうなと思っていただけに今季すんなりフィットしたことは意外であった。
今季のクリスタル・パレス
【13位】ブレントフォード
13勝7分18敗/勝ち点46/得点48 失点56
■ラヤの離脱も耐えて、文句なしの台風の目に
今季一番のサプライズ。台風の目といっていいだろう。トーマス・フランクとブレントフォードのプレミア初挑戦の旅はなんと残留争いにほとんどタッチしない状態でシーズンを駆け抜け切った。
アーセナルを打ち破った開幕戦で勢いにのった序盤はすさまじかった。後方からのフィードを2トップに当てて、IHが落としを拾い、左右のWBに展開しクロスをあげるという一連の攻撃パターンはほとんどオートマティック。一見すると単調になりがちな攻めをカバーしているのは軸となる選手のスキルである。
空中戦に強いトニーとムベウモが相手のバックラインに勝てなければ難しいし、ラヤが後方から正確なフィードを飛ばせなければ話にならない。結果が出ているということは彼らがその部分を成功させたという証である。
特に存在感を発揮したのはラヤ。不在となった時期の勝率の悪さを見てみれば、彼の存在の大きさは一目瞭然である。内容を見ても、彼がいないことで先に紹介したクロスまでのオートマティックなサイクルは起動することすらままならなかった。
もう1つ、特筆して挙げられるのは工夫を施すことで能力をカバーする仕組みである。例えば、攻撃の仕上げとなるクロス。ブレントフォードのサイドの選手はボールを受けると即座にファーにあげることが多い。
おそらく、これはチームとしての決まりなのだろう。サイドで深い位置を取ることが出来たらノータイムでファーに蹴る。逆にクロスを受けるほうはファーに飛び込む。こうした約束事を設けることである程度認知不可を下げながら集中的にそのプレーの精度を上げることができていた。
ラヤの居ない時期は苦しんだが、そうした中でもローテンポでの保持に取り組んで試合を異なる方法で制御しようとしたり、あれこれ試行錯誤するスタイルには個人的には好感。結果はあんまりだったけども。トニーとラヤといったわかりやすい柱はもちろんだが、ムベウモやノアゴールのような献身的な選手たちが脇を固めていたのも躍進を支えた一因である。
繰り返しにはなるが主力の離脱がありながらも安定したシーズンを残した功績は非常に大きい。シーズン前半に比べると、後半の方が勢いがなかったのも事実なので、尻すぼみ感がある人もいるかもしれないが、粘り強く強豪チームに正々堂々立ち向かう今季のブレントフォードの姿は多くのプレミアファンの心にしっかりと残っている。
Pick up player:イヴァン・トニー
チームが昇格するよりも先んじてブレントフォード産のストライカーはプレミアで猛威を振るっていたが、ブレントフォードで大暴れしたストライカーがブレントフォードの看板を背負ってプレミアでも大暴れした初めてのケースとなる。それだけでもファンにとっては特別な選手。圧倒的なフィジカルと献身的な守備とスコアリング能力を併せ持つオールラウンダーはどこのチームも恐れるエースである。
今季のブレントフォード
【14位】アストンビラ
13勝6分18敗/勝ち点45/得点52 失点54
■脱・グリーリッシュ計画の行く末
質実剛健なチームを作り上げたディーン・スミスの今季のテーマは『大エース・グリーリッシュとの別れをどう乗り越えるか?』である。多くのお金を残し、多くの新戦力を連れて来た今シーズンのビラ。1年間を振り返ると要所で強さは見せたが、勝負弱さが顔をのぞかせることもあり、波のあるシーズンになったといえるだろう。
もっとも開幕直後は調子が良かった。目立ったのは中盤の3人。ドウグラス・ルイス、ラムジー、マッギンの3人は年間を通して強力な3センターとしてビラの中盤に君臨した。特にマッギンはさすが。連戦すればするほどパフォーマンスを伸ばす男は当然EURO後のシーズンでも絶好調。前年以上のタフガイぶりを見せつけた。
一方で前線の組み合わせにはだいぶ苦心したシーズンとなった。ワトキンスの少々出遅れとフルシーズン出ずっぱりは難しいイングスというそれぞれの事情から少し軸が定まらない感じが強かったのが大きかった。
加えてグリーリッシュに代わって加入した2列目のタレントもフィットに時間がかかった。ブエンディア、ベイリーは序盤戦は主力になり切れず、前線の形と人選は猫の目のように変わっていった。
最終ラインがそうした状況を支えられれば良かったのだが、ミングスとマルティネスは共に昨シーズンの方がいいパフォーマンスだったといえるだろう。最終ラインの要の不安定なパフォーマンスも序盤戦が安定しなかった要因だ。
割と早くスミスを諦めたビラは後任にジェラードを招聘。冬の移籍市場でプレミア経験者を中心とした大型補強を行うと一気に反撃に打って出る。
特に輝きを放ったのは監督の現役時代のチームメイトでもあるコウチーニョ。ワトキンスの下にコウチーニョとブエンディアというシャドーストライカーを置き、横幅はSBとIHに任せるという後方の運動量と前線のキャラクターをかけ合わせたフォーメーションは今季のビラがたどり着いたゴールといえそうだ。
しかし、春になるとコウチーニョをはじめ徐々に前線から勢いが失われていきトーンダウン。チームはジリジリ順位を落とし14位で終わることになった。エバートンという大きな隠れ蓑がいるためにあまりバレてはいないが、基本的にはもう少し上の順位を狙うべきチームのように思う。スリーセンターが踏ん張っていただけにこの結果は寂しい。
脱・グリーリッシュ計画は完全に成功したとはいえないだろう。早くもジエゴ・カルロスに手を伸ばすなど今年も補強の動きは早そうで、少しでも早くスカッドをくみ上げてジェラードに準備の時間を与えたい。
Pick up player:ジェイコフ・ラムジー
開幕から期待していた選手だったが、今季は大幅にプレ―タイムを伸ばす充実のシーズンに。運ぶドリブルは他の2人にはない攻撃のアクセントに。リーグ屈指の完成度を誇る3センターの一角を1年間務めあげた。
今季のアストンビラ
【15位】サウサンプトン
9勝13分16敗/勝ち点40/得点43 失点67
■今年もジェットコースターは健在
例によって今季もジェットコースターのようなシーズンを送ることになったサウサンプトン。4-4-2というハーゼンヒュットルらしいフォーメーションからスタートする。
20-21はCFに縦パスを入れたところから落としを受けたSHがドリブルを開始して攻撃を行う形がサウサンプトンの主流。だが、今季はサイド偏重に切り替えて攻撃を行う機会が増えた。
というわけで存在感を増したのは大外のSBである。左のウォーカー=ピータースはジェネリック・カンセロという感じで内に絞っての斜めのパスなどは他のサイドバックにはない独特のセンスを感じる。配球で奥行きを示すことができる希少なSBである。
インパクトでいえば逆サイドのリヴラメントの方が上だろう。大外を駆け上がる馬力はリーグ随一。多少の守備の拙さに目をつぶっても使いたくなる魅力はある。こちらも安定のチェルシー産である。
保持においてはイケイケではあったが、割と前線に収まりどころがなくチャカチャカした展開になりやすいのが難点。前線にブロヤ(彼もチェルシー産)ががっちりポジションを掴んだ中盤戦は相対的に安定したけども、序盤戦と終盤戦はボールの収まりどころがなく、カウンターからひっくり返されることもしばしばである。
シティ戦では覚醒の予感を漂わせる圧巻のパフォーマンスを見せたサリスも安定感の部分でもう一声ほしいところ。最大出力は見せることが出来たので、安定感を備えることができればリーグを代表するDFに成長することもできるはずなのだが。
サリスの出来はサウサンプトンのシーズン全体と似通うようにも見える。リーグ戦でシティには一度も勝たせないなどチームとしても最大出力は十分。ただし、シーズンを通してみると残留争い一歩手前という状況である。
攻守の切り替えが多い激しいプレスの応酬やスリリングな試合展開など客を盛り上げることに関しては屈指の存在であることは間違いない。一方で不確実性を伴うハイテンポ化がチームの足を引っ張っている可能性だってあるだろう。SBの対人守備に難があることもそこに拍車をかけている。
ということでどこまでエンタメ感とスリリングさが隣り合わせのハーゼンヒュットル体制を引っ張るのかは問われる部分。見ている分には面白いが、前線の得点力の陰りもありやや苦しくなっているのも否めない。来季は正念場になるだろう。
Pick up player:ジェームズ・ウォード=プラウズ
いわずと知れた稀代のプレースキッカー。流れの中での司令塔としての存在感も年々増しており、サウサンプトンにとって最も欠かせない選手といっていいだろう。
今季のサウサンプトン
【16位】エバートン
11勝6分21敗/勝ち点39/得点43 失点66
■とりあえずはハッピーエンドだけど
耐えた――――――!!!!!!!!というわけで残留を確定させるのには37節まで待たなくてはいけなかったエバートン。確かに今季は苦しいシーズンになると思ってはいたが、ここまでとは思わなかった。
21-22の頭、アンチェロッティでも整備しきれなかった守備の課題を残したスカッドで新たに招聘したのは隣のクラブで長年指揮を執ったベニテスだった。だが、これが悪手。アンチェロッティに比べると高い位置からプレスに行く傾向が強かったベニテスの守備のメソッドは昨年以上に運動量豊富なドゥクレにかかる負担が重たくなる傾向に。
攻撃においても昨シーズンのエースだったキャルバート=ルーウィンが負傷で出遅れてしまい、攻撃の核が見いだせない状況に。リシャルリソンや新加入のグレイといったドリブルジャンキーが独力で駆け回ってチャンスを作るしかなかった。
というわけで組織を整備をできなかったベニテスとは冬でお別れ。直前にバリバリの主力でありながらベニテスと衝突して以来干されていたディーニュを退団させておきながら、結局ベニテスもクビにするというわけのわからないムーブであった。
そんな切迫した状況であるにも関わらず、監督にはロマン派で時間のかかりそうなランパードを据えて、SBには未来を見据えた投資の意味合いが強そうなマイコレンコを獲得してくる始末。パニックバイ気味だったエル・ガジ、ファン・デ・ベーク、アリのプレミア3点セットも含めてフロントの迷走ぶりが浮き彫りになる冬だった。
いざ動き出してみると、案の定やりたいことが定まらずに苦心することになったランパード。ボールを持つ意識を高めたいのはわかるのだけども、受け手を楽にする仕組み作りがセットになっておらず、個人でタメを作って運べる選手もいないため、ただただショートパスを押し付け合う流れに。個人的にはマイコレンコの守備のお守りをするイウォビを見て『なんか、成長したんだな』という気持ちにもなったりした。
そんなこんなで残留争いにどっぷりとハマるハチャメチャな終盤戦ではあったが、最後の最後に編み出した苦し紛れの5バックでチェルシーを撃破したあたりから希望が出てくるように。エバートンにとってはプレミア史上初という2-0からの逆転劇を見せたホーム最終節のクリスタル・パレス戦でようやく残留が決まることとなった。
ほっと一息というところだろうが、はっきり言って問題は山積み。監督人事がこれでいいのか、つぎはぎだらけのスカッドはどう整えるのか。フロントを含めた抜本的な見直しが進まなければ、来シーズンも同じ肝の冷やし方をすることになっても不思議ではないだろう。
Pick up player:ジョーダン・ピックフォード
残留争いのゴールマウスを守る姿、画になりすぎ。
今季のエバートン
【17位】リーズ
9勝11分18敗/勝ち点38/得点42 失点79
■マイルドな変化で達成したドラマチックな残留劇
ギリギリ耐えたーーーーーー!!!!!序盤戦から今季は苦戦。正面からぶつかり合ったり、対4-4-2専用機である3-3-3-1を積極投入したりなど、スタイルを崩すことはしなかったのだが結果がついてこなかった。
原因は自明。スタイル云々よりも相次ぐ主力の欠場である。特に痛かったのはアンカーであるフィリップスと1トップであるバンフォードの不在。最終盤に戦列復帰したフィリップスは最後にチームの力にはなれたが、バンフォードは実質全休といってもいいだろう。時折、復活しては再び離脱を繰り返すという本人にとってはもどかしいシーズンになった。
大きな展開でサイドにつけられるフィリップスがいなくなり、ラフィーニャの負担は増大。1トップを張ったジェームズは頑張ってはいたし、中心選手として一皮むけたシーズンではあったが、バンフォードの穴を埋められたかというとまた別の話。アバウトなボールでも収める力と2人のCBのプレス役を一手に引き受けて後方のプレスを助ける役割を兼ね備えたバンフォードがいかに偉大だったかを知るシーズンとなった。
というわけで常にメンバーのやりくりは火の車。強度の高いビエルサのスタイルはメンバー落ちのスカッドには負荷が過大という側面もあっただろう。12月のアーセナルとの対戦はコロナの影響もあり、11人をギリギリ並べた感じでベンチメンバーにはプレミア経験がほぼ0の顔ぶれがずらり。正直何回やっても勝てるだろうなと思った。
リーズをプレミアに引き上げたビエルサとは2月にお別れ。代わりにマーシュを呼び込み、残留を目指すことになった。ビエルサの作ったベースをマイルドにすることでなんとか着地どころを図ったマーシュ。尖りを抑えながら軟着陸を目指した。
終盤戦はダラスの長期離脱やジェームズやエイリングの出場停止など映画のクライマックスかよというくらい、序盤から戦った仲間が次々といなくなるという大ピンチに。最後の最後で1年間踏ん張り続けたハリソンが残留を確実にするゴールを決めるところまでやたらドラマチックだった。
マーシュは非常にいい仕事をしたが、来季うまくいくかは別の話。リーズはそもそもプレミアではかなり厳しい選手層ながら、ビエルサが尖らせることで引き上げた感のあるチームでもある。尖りが減れば安定はするが、突き抜けるものもなくなってしまう。ラフィーニャやフィリップスなど主力の退団が現実のものになれば、来季はより厳しい戦いが待っている。マーシュの腕の見せ所はこれからである。
Pick up player:ラフィーニャ
加入2年目のシーズンも右サイドで1on1を一手に引き受けて好調をアピール。手詰まりになりやすいチームの突破口として勝ち点への道を切り拓き続けた。
今季のリーズ
【18位】バーンリー
7勝14分17敗/勝ち点35/得点34 失点53
■ダイチの切れ目が縁の切れ目
やっちまったーーーーーーー!!!長年、プレミアでのサバイバル術を体現し続けていたバーンリーもついに今季は降格の憂き目である。
毎年のことではあるが、序盤戦は苦しかった。バックラインのメンバーは揃わず、そもそもベースの堅守が成り立たない。その上、攻撃も不発。前線では昨年チームを引っ張ったウッドが鳴かず飛ばす。ボールを収めることも、競り勝つことも、ゴールに叩き込むことも昨年に比べると大幅に割引。ニューカッスルに行った後も同じような状況が続いていたので、おそらく本人のコンディションに拠るところが大きいのだろう。五輪もいってたしね。
そんな中で頼りになったのは新加入組のコルネ。少ないチャンスをモノにする決定力の高さはチームとしては貴重。なのだけども、いかんせん負傷交代が多い。筋肉系の負傷を慢性的に抱えていたのかもしれない。
それでもベン・ミーとターコウスキが復帰してからは戦績は安定。勝てずとも相手をドロー沼に引き込むことで地道に勝ち点をかせいでいった。
冬にはウッドが引き抜きに遭い退団。合わせてベグホルストの加入というFWの入れ替えを実施することになる。ベグホルストはフィットも早くて高いテクニックも備えており悪くはなかったが、ブーストにもならないという感じで得点力の大幅な改善には至らなかった。
終盤はマクニールがキックで魔法をかけることで徐々に調子を上げてきたが、再びミーとターコウスキがセットで離脱してしまったのは痛恨。彼らがいなくなることで守備はもちろん、攻撃も弱くなってしまう。セットプレーからのベン・ミーはバーンリーにとっては貴重な得点源である。
シーズン途中にはダイチの解任でバーンリーファンのみならず、プレミアファンに驚きをもたらしたバーンリー。すべてを投げうって残留を目指したがダイチの切れ目がプレミアとの縁の切れ目になってしまい無念の降格が決定してしまう。
ターコウスキがエバートンにいく話が出たり、ベグホルストが『チャンピオンシップでプレーする気はないのでよろ』とか言い出したりなどすでに来季に向けて困難がたくさんという感じ。次期監督と噂されているコンパニには多くの仕事が待ち受けている。
Pick up player:ニック・ポープ
終盤戦は鬼のようなパフォーマンス。エバートンとの残留争いはポープとピックフォードのスーパーセーブ演舞にかかっているところがあった。チームとしては屈してしまったけども、個人のパフォーマンスではピックフォードと同等かそれ以上といっても過言ではない。
今季のバーンリー
【19位】ワトフォード
6勝5分27敗/勝ち点23/得点34 失点77
■守備ユニットの整備の遅れが致命傷に
開幕戦でアストンビラに勝った時は『あれ?破壊力もあるし結構強い?』と思ったのだけど、どうやら単にあの日のアストンビラが調子が悪かったようである。そこからあれよあれよという間に調子を落とし、秋にはもう明らかにやばい雰囲気が漂うところまで落ちてしまっていた。
開幕から失点を続けてプレミアでの連続クリーンシートなし記録をシーズン中盤まで継続するなど課題が守備面にあるのは明白である。特にひどかったのは左サイドだ。とりわけローズは序盤戦はSBとしてスタメンに名を連ねる試合もあったが、はっきり言って個人のパフォーマンスでいえば今季のプレミアで断トツワーストである。今時CFでも怒られるような怠惰な戻り方をして自陣に穴を空けるのだから当然である。同サイドのデニスにお守りをさせて守備の負荷を増やすのだからチームとしてはたまったものではないだろう。
同サイドのCBも含めて、クラブは冬にカマラとサミルを補強。バリバリいいパフォーマンスを見せた!とは言うよりも、及第点の彼らが不動のレギュラーを獲得するあたりがワトフォードの今季の左サイドの守備ブロックの苦しさを物語っている。
攻撃は時折思い出したように大量得点を重ねる試合があったのが特徴である。ただし、ビラのスミス、エバートンのベニテス、ユナイテッドのスールシャールなど大量得点をした相手がことごとくシーズン途中で解任されているので、シンプルに相手の状態が悪かったタイミングで当たれたことが大きかった可能性もある。
特に生命力に定評があったスールシャールを解任に追い込んだのはポイントが高い。何のポイントかは知らないけども。まぁ、そんなワトフォード自身は今季どのチームよりも監督交代しているんだけどな!
攻撃陣は破壊力はあるが、基本的にはデニスやサールなど優れた個人に『行ってこい』で守備のブロックは引退したホジソンを引っ張り出しても整備できず。中盤はそれをなんとかしようと走り回るがどうにもならないという状況。その状況をホジソンがまぶしそうにただただ見つめる画がやたらと中継で抜かれるというのが終盤戦のワトフォードだった。
ワトフォードが失敗するのならばこういうパターンやろなっていう典型例を踏み抜いてしまった感がある。昇格組の中では一番の戦力層を有していただけに、無抵抗で降格一直線というのは少し寂しい結果なのは否めない。
Pick up player:イスマイラ・サール
負傷にAFCONと満足にチームのために働き続けられる1年ではなかったが、出るとやはり別格。速さだけでなく味方の上がりも促せるキープ力でワトフォードの攻撃を牽引した。
今季のワトフォード
【20位】ノリッジ
5勝7分26敗/勝ち点22/得点23 失点84
■スタイルに合った通じる武器が見つからず
こちらはワトフォードとは異なり、開幕戦から無理ゲーな雰囲気がめちゃめちゃ漂っていた。とにかく、誰がでてきても守れない。そもそも、前線で縦に急がしい形で攻撃色の強いチームというのはプレミアで粘って勝ち点を獲るのは難しいのでは?という仮説があったのだけども、その予想がばっちり当たってしまった形である。
保持はショートパスを基調とするのだけど、結局最後は裏抜けになってしまうので成功率と押し上げの部分で微妙。プッキはバレていてもなんとかなる動き出しの質の高さは見つけてはいたけども、他の選手に同じことを求めるのは酷である。
その結果、攻撃があっという間に終わり、相手の攻撃の機会が増えた結果、脆弱な守備陣がやたらと晒される時間が長くなるという負のスパイラルに完全に陥った感じがあった。
中盤にチェルシーからギルモアを借り受けたところを見ると、ボールを持つ気はあったのだろうが、バックラインのスキルと前線のキャラクターが非保持に晒される時間を減らすためのポゼッションという概念との相性が悪かったのではないか。EUROでのスコットランド代表に続き、ギルモアは『おれ、このチームでどうすれば?』という表情になっている感じがやたらと印象的だった。
ビラをクビになったばかりのスミスを新監督に登用し、年末にはやや持ち直したものの、復調は長くは続かず。サイドから裏を取られ、プレスの意識を利用されて間延びしての繰り返し。結局、スカッドに合っていてプレミアで戦えるスタイルを見つけることは1年間を通してできなかったという印象だ。
何とか粘りたい終盤でチームでの中でも経験が豊富なクルルがミスを連発したのも誤算である。残留争いにおいて最も頼りたいポジションの人が崩れてしまうと立て直しは難しい。
というわけでノリッジにとっては非常に厳しい1年になってしまった。一部と二部を行ったり来たするエレベータークラブとして名高いノリッジではあるが、次のプレミア挑戦こそなんとか1年での逆戻りを避けたいところである。
Pick up player:テーム・プッキ
裏抜けバカ一代でこれだけプレミアでもやれるのか!という部分には感動があった。ノリッジの武器の多くはプレミアで通用しなかったが、プッキの裏抜けだけは別。ノリッジのわずかな突破口として、エースとしての責務は十分に果たしたといえるだろう。
今季のノリッジ
終わり。