①マンチェスター・ユナイテッド【6位】×チェルシー【3位】
■支配的なチェルシーだったが…
FA杯の決勝開催の影響で37節唯一の先行開催となったこのカード。立ち上がりから主導権を握ったのはアウェイのチェルシーだった。攻めの主体になったのはWBのところ。ユナイテッドのSHの戻りが遅いことを利用し、高い位置をとるWBがフリーでボールを持ち上がることができていた。
ユナイテッドはCHがスライドして対応するが、2枚で横幅をカバーするのは非常に難しく、十分にサイドを防ぐことができているとはいい難い。高い位置をとって良さが出るマルコス・アロンソとスペースを与えればボールを運ぶことができるリュディガーの2人がいるチェルシーの左サイドも、ジェームズが大外からも内側からも仕上げに向かうことができる右サイドもユナイテッドは守るのに苦労していた。
ユナイテッドはそもそもの方針が読み取りにくかった。特に中途半端なのがSHの2人のポジショニング。特にラッシュフォードの動きが不安定だった。前残りするのならば、残しておけばいいのだけども、ふらふらと遅れて戻ってくる形の繰り返し。何がしたいのかがよくわからない。どうせ戻るならば素早くリトリートしてほしいし、前に残ってカウンターで刺す役割に専念するなら守備の不利を承知でそのリスクを受け入れるべきのように思うのだけど。
いずれにしても定点から攻める形を作るという点ではチェルシーに大きく遅れをとっているのは確か。それだけにトランジッションの局面では上回りたかったユナイテッドだったが、その部分でも優位を取れたといえるかは怪しい。早い展開においてはCHがカンテに置いていかれる場面が目立ち、むしろ苦しい状況になることが多かった。
それでもチェルシーがなかなか先手を奪えなかったのはひとえにデ・ヘアのお陰である。彼のセービングがチェルシーに立ちはだかったおかげで、ユナイテッドは前半をスコアレスで終えることができたと言っても過言ではない。
後半は縦に早い展開の応酬でスタート。チェルシーペースだった前半に比べればペースはフラットに。これはチェルシーの前線は早い展開における仕上げが思ったよりも拙かったことが原因として挙げられる。特にここ数試合はハフェルツが精彩を欠いているのが気がかり。展開も相手も選ばず輝くことができていた今季だったが、最終盤にプレー精度を欠いて試合中に無駄にイライラする場面が増えている。
それでも後半開始から10分経てば再びチェルシーのペースに。そしてようやく先制点に辿り着く。空いていたサイドからジェームズがクロスを上げて逆サイドのアロンソまで展開に成功し先手を奪う。
しかし、ユナイテッドもすぐさま反撃。わずかに猶予をもらったマティッチが浮き玉でラストパスをロナウドに送ると、これを豪快に沈めてわずか2分で試合を引き戻す。
追いつかれたものの依然主導権を握っているチェルシーはルカクとプリシッチというウェストハム戦で勝利に貢献した選手たちをセットで投入する。ユナイテッドは5-2-3で噛み合わせる形で撤退するが、最終ラインを増やした分、ラインの乱れがかえって目立ってしまい、ブロックが強固になったかと言われると微妙なところ。
だが、チェルシーも終盤に強度を上げきれず、攻撃の回数を十分に担保することができない。試合は終始支配したチェルシーだったが、3ポイントを呼び込むための2点目を奪うことができず。優勢を勝利に結びつける一撃は最後まで決めることができなかった。
試合結果
2022.4.28
プレミアリーグ 第37節
マンチェスター・ユナイテッド 1-1 チェルシー
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:62′ ロナウド
CHE:60′ アロンソ
主審:マイク・ディーン
②トッテナム【5位】×バーンリー【17位】
■気圧される場面もありながらノルマ達成
ノースロンドンダービーを制し、4位のアーセナルとの勝ち点差は1。ミス待ちではあるが、残りの対戦相手はトッテナムの方が楽である。元来、こういう局面が得意なチームではないことは確かだが、勝ってアーセナルにプレッシャーをかけたいところだろう。
逆にこういう局面が得意とされているバーンリーだが、今年ばかりは事情が違う。ミーの負傷はコリンズが何とか埋めてきたが、ここに加えてターコウスキも離脱。この2人が同時に抜けたバーンリーがやばいことはすでに過去の実績で立証済み。明らかに例年以上に危機感がただよう終盤戦になっている。
というわけでバーンリーは撤退第一の5-3-2を採用。ボールを捨てるのはもちろんのこと、序盤はボールを奪ったら相手ゴールのコーナーフラッグ方向にまっしぐらにかけていき、コーナーキックの獲得一直線なのかな?と思わせるくらいの割り切りの潔さだった。
トッテナムは5-3-2を壊すためのボールの動かし方をすることが求められる展開に。縦パスが入れば一番楽なのだが、もちろんそこはバーンリーも心得ている部分。機会は絞られてしまっている。とはいえ、2トップ脇のデイビスを起点に外循環でのボール回しはそこまで効果はない感じであり、どこかでチャレンジのパスをする必要がある。
セセニョンが早い段階でエリアに入ったり、ワイドから抉ってマイナスの折り返しにチャレンジしたりなど、割と前半から5バック崩しのジャブを打ち続けることはできていた感のあるトッテナム。ポープがやたらキャッチでセーブするのは誤算だったかもしれないが、比較的流れはよかったように思う。
25分くらいにようやくバーンリーはボールを持つ機会を得る。トッテナムで余計だったのは非保持におけるルーカス。適当な守備であっさり入れ替わられてしまい、相手の持ち上がりを許したせいでコルネが決定機を迎えるところまでいかせてしまった。バーンリーはこのシーンのルーカスのように『手助け』がなければゴールに向かうことはできなかった。
そして、前半終了間際。押し込んでいたトッテナムがPKを獲得。バーンズは不用意なハンドだったが、これもアタッカーがPA内で守備をする機会が多いことの弊害ともいえるだろう。ケインは落ち着いてこれを決めて前半のラストプレーで先制する。
後半、一気にプレスのギアをあげてきたバーンリー。シンプルにトッテナムは勢いに気圧されていた。アーセナルファンからすると負けてはしまったものの、ノースロンドンダービーのプレスに行くスタンスは間違っていなかっただなと再認識させられる慌て方だった。ルーカスの軽さも健在で、下手な飛び込みからバーンリーの望むセットプレーを与えていた。
トッテナムからするとなんとか15分凌げたのが大きかった。ひとまず落ち着きを取り戻すと徐々にボール保持の時間帯を増やしながらバーンリーを鎮圧する。
ベグホルストやレノンのようにアタッカーを次々入れるバーンリーを前半ほどはなだめられはしなかったが、前半のPKを守りきり何とか勝利。アーセナルにプレッシャーをかける暫定4位浮上のノルマを達成して見せた。
試合結果
2022.5.15
プレミアリーグ 第37節
トッテナム 1-0 バーンリー
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:45+8′(PK) ケイン
主審:ケビン・フレンド
③アストンビラ【12位】×クリスタル・パレス【11位】
■対策と対策やぶりと両エースの奮闘と
目新しい並びを披露したのはアウェイのクリスタル・パレスの方だ。5-3-2という今季のクリスタル・パレスではあまり見慣れないフォーメーションでアストンビラを迎え撃つ。
パレスの陣形は一見すると5バックなので守備的な要素が強いのかな?と思ったのだが、基本的にはアストンビラ対策といっていいだろう。前線がナローで大外はSBが突撃してくる彼らの攻撃に対して5レーンを埋めつつ、中盤は3枚で人を捕まえに行くという形でアストンビラの攻撃を封じようという魂胆である。
アストンビラはこのクリスタル・パレスの守備にうまく対応したように思う。彼らのやり方は攻撃の際にSBが上がり切るのではなく、パレスのWBの手前の段階でアーリー気味にクロスを上げることであった。これによって、待ち受けるパレスのWBはビラのSBとデュエルする前にフリーでクロスを上げられてしまう。
ビラが秀逸だったのはインサイドとの関係性である。スペース感覚に優れたイングスとワトキンスはディーニュとの相性が抜群。競り合うというよりも走り込みで見事な合わせてクロスをシュートまで持ち込む。
一方のパレスは思ったように早く攻め込むことができない前半。コンパクトなビラの守備陣を前にカウンターの起点を作れずに苦戦。いつもだったら、大外のザハとオリーズに預けて陣地回復をするところである。
だが、この日はオリーズは不在でザハはトップ。サイドに起点を作れなかったことは5-3-2という新しいフォーメーションの弊害といってもいいかもしれない。というわけでライン間のザハが強引に起点を作ることでしか、前進ができない。
後半、パレスが3センターをスライドさせながらビラのSBの攻め上がりを早めに抑制する修正を実施。これによりビラの鉄板であるSBのアーリークロスを封じる。ビラの守備の陣形が徐々に間延びをしてきて、パレスがカウンターを打ちやすくなったことも相まって試合は均衡する展開になる。
そんな中で先手を取ったのはアストンビラ。忘れたころのディーニュ→ワトキンスのクロスで先手を奪う。しかし、81分にパレスも同点に。広い方、広い方にボールを動かして押し込み返したところで得たセットプレーからシュラップで追いつく。
同点の中で最後まで体を張って起点としての働きをしていたのはワトキンスとザハの両エース。懸命にゴールに向かう動きでチームを牽引したが、スコアは1-1のままでタイムアップ。試合は引き分けで終わることとなった。
試合結果
2022.5.15
プレミアリーグ 第37節
アストンビラ 1-1 クリスタル・パレス
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:69′ ワトキンス
CRY:81′ シュラップ
主審:クリス・カバナフ
④ウェストハム【7位】×マンチェスター・シティ【1位】
■リカバリーできなかったPKの失敗
後ろにはリバプールがぴったり。1つも勝ち星を落とせないプレッシャーの中、シティが今節立ち向かうのは今季も昨季に引き続き堅調なシーズンを過ごしているウェストハムである。
試合はウェストハム×シティという組み合わせから想定できる展開となった。ボールを持つのはもちろんシティ。ウェストハムの4-5-1ブロックを彼らが攻略するという流れである。
動きが大きかったのは左サイド。低い位置まで降りてくるベルナルドはほとんど2CHとして振る舞っていたし、内側に絞ってでもプレーできるジンチェンコと位置を入れ替えながら、ウェストハムの守備陣に的を絞らせないように動き回る。左の大外にタメが効くグリーリッシュがいたのも、ベルナルドやジンチェンコが自由に動くことができる要因の一つだ。
まず、手始めのアプローチはエリアの外からのミドル、そして大外からのピンポイントクロス。これでこじ開けることができればとても楽ではあるが、シティにとってはまずはジャブといった形になるだろうか。
ウェストハムは自分たちが持った時はショートパスからの打開にも意欲的ではあったが、いかんせん相手はシティ。押し込まれた状態からでは簡単に前を向けない。そのため、左にアントニオを流しながら陣地回復を図るという黄金パターンから打開を狙う。しかし、これもなかなか起点にはなり切れず、終始試合はシティペースで進んだ。
試合が動いたのは突然だった。シティにとってはそろそろジャブから第二段階に動き出そうとしていたところだっただろうか。だが、先制点を奪ったのはウェストハム。ボーウェンの抜け出しからこの日のファーストチャンスをゴールに結びつける。
シティにとっては試行錯誤しているうちの失点。まさしく青天の霹靂という場面である。それ以降もウェストハムも反撃が徐々に目立つように。アントニオの背負いから2列目が前を向き、ボーウェンが裏に抜けるという形を共有し、だんだんとシティを脅かしていく。
すると45分には再び同じ形でボーウェンが抜け出して追加点。シティは大事な試合でまさかの2点ビハインドを背負うことになってしまった。
しかし、後半シティは反撃。一方的に保持から崩しの機会を作り続けると、反撃の狼煙を上げたのはグリーリッシュのミドル。今季はそこまで目立たなかったかもしれないが、彼もまた魔法を使える選手である。これで試合は1点差に。
両サイドから勢いに乗って攻め立てるシティはその勢いのまま同点ゴールを奪う。失点のきっかけになってしまったのはコファルの対応ミス。勢いよく自陣のゴールネットを揺らすヘディングを決めてしまった。
完全に勢いに乗ったシティはその流れでPKを獲得。PKを与えたのはドーソン。だが、このPKをマフレズが失敗。シティはこのシーンでリードを奪うことに失敗する。
終盤は一方的に攻め立てるシティ。サイド攻撃にこだわりながら敵陣深くからクロスを上げ続けることはできていたが、いずれもマフレズのPK失敗をカバーできる決勝点にはつながらず。ウェストハムもノーブルを本拠地ラストプレー機会を確保しつつ、最後まで勝ちに行ったがこちらも勝利とはならなかった。
リバプールに勝ち点差を縮めるチャンスを与えてしまったシティ。だが、現時点で最終節を首位で迎えることは確実。そういう意味では最低限の結果は確保できたとするべきだろうか。
試合結果
2022.5.15
プレミアリーグ 第37節
ウェストハム 2-2 マンチェスター・シティ
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:24′ 45′ ボーウェン
Man City:49′ グリーリッシュ, 69′ コファル(OG)
主審:アンソニー・テイラー
⑤リーズ【18位】×ブライトン【9位】
■新星が土壇場で叩き出した勝ち点1
残留争いも佳境。リーズはギリギリの戦いを強いられている。というのも、ここに来て主力の離脱が相次いでいるからだ。チームを縁の下の力持ちとして支えてきたダラスが負傷で離脱。コンスタントに活躍してきたエイリングとジェームズがそれぞれアーセナル戦、チェルシー戦で一発退場となりシーズン終了。主力が1人ずつ抜けていく中で残留のかかったホーム最終節に向かう。
だが、立ち上がりにペースをつかんだのは残留争いとは無縁のブライトン。ビルドアップで相手のバックラインのプレッシャーをすり抜ける形で、前線に侵入していく。ウェルベックをターゲットとして素早く前線にボールを放り込み、陣地をかせいでから横のドリブルでタメを作り、抜け出して仕上げる!という形でリーズの陣内に攻め込んでいく。
リーズはそのブライトンの攻め方にやや気圧された感じ。プレスで圧をかけることに失敗し、自陣深くまで侵入されてしまいプレッシャーに晒されることの繰り返しだった。
先制点はブライトン。右のハーフスペースから抜け出したウェルベックが対面のDFをかわすとそのまま技ありのシュートを探し込んで先手を取った。
追いかけなければいけないリーズ。ブライトンはリーズ側がボールを持つことは許してくれていたので、そこに漬け込んで何とか反撃に打って出たいところ。
しかし、頼みのラフィーニャは対人お化けであるククレジャとビスマの挟み撃ちに合ってしまい起点を潰されてしまう。ウェルベックという明確な解決策があったブライトンに比べると、リーズの打開策はやや苦しいものになってしまっていた。
迎えた後半、リーズはやや速攻の機会が増えた。ハリソンのワイドの攻撃などラフィーニャに過度に頼らないやり方で両翼からバランスよく攻めることで、ブライトンに的を絞らせないアプローチを行う。
一方のブライトンは前半よりもさらにロングボールを集中的に使用。トロサールのようにカットインに優れた選手に前を向かせる機会を与えながらリーズのPA内に攻め込んでいく。
前半に比べればリーズにもチャンスはあったが、なかなかブライトンの懐に刺さる攻撃を繰り出すことができない。ブライトンはウェブスターを入れて店じまいの空気を出すなど、堅実策に移行し確実に勝利を手中に収めようとする。
しかし、それに待ったをかけたのがジェームズに代わり1トップに入ったゲルハルト。試合の終盤、ラストプレーに近い時間で右サイドから抜け出し、粘りのクロスを上げる。すると、これをストライクが押し込んで同点に。
土壇場で追いついたリーズにとっては価値ある勝ち点1。主力不在、切り札は徹底マークという苦境を打開したのは若き新星だった。
試合結果
2022.5.15
プレミアリーグ 第37節
リーズ 1-1 ブライトン
エランド・ロード
【得点者】
LEE:90+2′ ストライク
BRI:21′ ウェルベック
主審:マイク・ディーン
⑥ワトフォード【19位】×レスター【10位】
■DFラインの乱れを成敗する
試合は立ち上がりいきなりスコアが動く展開から始まる。先制したのはワトフォード。セットプレーからのジョアン・ペドロのゴール。開始早々の先制点でいきなりレスターの出鼻をくじいて見せた。
もっとも、セットプレーからワンチャンスをモノにした!というよりもこの日のレスターが相手であれば、ワトフォードは無理なくボールをつなぎながらチャンスを作れるクオリティはあるチームである。レスターがアンカー脇が比較的甘く、ワトフォードにはライン間に入り込むスペースが十分。奇襲ではなく、バックラインからボールを動かしながら前進することが出来た。
逆にレスターも保持に回ればボールをゆったりと回すことができる、ワトフォードのプレッシャーが弱く、まずは相手に持たせるというスタンスなのは彼らにとってはもはや平常運転である。
そうした中でレスターは追いつく。レスターファンにとっては既視感溢れる得点だろう。なにせ、前節のエバートン戦でダカがエバートンのDFラインのミスに漬け込んだゴールとそっくりだからである。前節に引き続き、今節も相手の最終ラインの連携ミスをかっさらって得点を奪ったレスター。最終ラインのミスを成敗することを生業としているのだろうか。
同点になった試合はその後非保持側がボールを取れないおおらかな展開になる。徐々に差が出て来たのは守備ブロックの精度である。段々とブロックの間延びが目につくようになったのはワトフォードの方。こちらは人基準の守備を敷いているせいか、相手が広がってしまうと陣形がそれに合わせて間延びしていってしまう。
すると同点弾からあっという間にヴァーディが勝ち越し。スペースを許してしまうと一番怖いタレントの登場である。
試合が進むにつれて間延びして訳が分からない守り方にワトフォードを尻目に、リードを奪ったレスターは後半にも畳みかける。開始早々にヴァーディを囮にバーンズが追加点を叩き込むと、4点目は再びヴァーディ。この日のヴァーディは相手の最終ラインのズレを見つけてボコボコにする仕事に終始していた。
逆に言えばそれだけワトフォードが粗末なDFラインだったということである。ワトフォードは前半同様に保持から打開策をもってはいるが、それ以上にレスターのアタッカー陣にあっさり咎められてしまうことが多かった。
仕上げとなる追加点はこの日2得点目となるバーンズ。レスターが大量5得点。ワトフォードのDFラインの乱れを成敗し続け、大勝を飾った。
試合結果
2022.5.15
プレミアリーグ 第37節
ワトフォード 1-5 レスター
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
WAT:6′ ペドロ
LEI:18′ マディソン, 22′ 70′ ヴァーディ, 46′ 86′ バーンズ
主審:ジャレット・ジレット
⑦ウォルバーハンプトン【8位】×ノリッジ【20位】
■右に入った突貫小僧が同点の切り札
すでに欧州カップ戦出場権争いに絡めないことが確定しているウルブスとすでに降格が決まっているノリッジ。実質、消化試合となった一戦が今シーズンのモリニューのラストゲームとなる。
力関係でいえばやはりウルブスの方が上。積極的に攻めるのは彼らの方だった。バックラインからボールを動かしながら相手のプレスの穴を伺う。ノリッジの守備は5-2-3と5-3-2のハーフ&ハーフのような感じ。シャドーのうち、ダウエルが高い位置で残りつつ、レース・メルは低い位置まで下がりスペースを埋める役割もこなしていた。
ウルブスはノリッジのプレス隊の脇から侵入。3バックがシンプルに持ち上がったり、モウチーニョやネベスが低い位置まで下りてきたりなど、手段は様々。とりあえずノリッジの1stプレス隊の脇から侵入することで、プレスを回避する。
この日のウルブスの3トップはターゲットマンができるヒメネスがいたものの、彼は最前線ではなくシャドー。トップに起用されたのはファン・ヒチャンであった。
ウルブスの崩しはヒチャンの機動力を存分に生かしたもの。具体的にはサイドに流れながら相手の最終ラインの裏に入り込み、押し下げる形で前進する。
どちらかといえば、ヒチャンが流れるのは左サイド。右はヒメネスを軸としてクロス待機の姿勢だった。
ワイドで深さを作ることで徐々にライン間も空いてくるノリッジの守備陣。ウルブスはワイドに縦にと自由に攻め込める時間が続いていく。
一方のノリッジは一点突破の姿勢。左に流れ気味のプッキの裏抜けからスピードが足りないウルブスのバックラインの裏を狙うことで反撃していく。
先制点にこぎつけたのはプッキ。まさしく一点突破のスタイルで得点まで。左サイドを一気に抜け出し、エースとしての務めを果たして見せた。
優勢ながらビハインドになったウルブスは後半シキーニョを入れて右サイドを強化。両サイドから突破口を増やして、逆転を狙う。
右サイドにWBとして入ったシキーニョはとても元気。1枚なら余裕で剥がせる暴れっぷりでノリッジ守備陣はたじたじに。シキーニョの突破からファウルを得て、混戦からアイト=ヌーリが沈めて同点に追いつく。
以降も試合はウルブスペース。一点突破だったノリッジは後半はほとんど押し込まれて見せ場がない状況に。
それでもなんとかPA内は死守。同点での勝ち点1を奪い取り、なんとか先制点を勝ち点につなげることが出来た。
試合結果
2022.5.15
プレミアリーグ 第37節
ウォルバーハンプトン 1-1 ノリッジ
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:55′ アイト=ヌーリ
NOR:37′ プッキ
主審:トニー・ハリントン
⑧エバートン【16位】×ブレントフォード【13位】
■リーチからの特大足踏み
残留にリーチを賭けたエバートン。ホームでブレントフォードを下せば自力での残留が確定することとなる。立ち上がりからゴール前の展開が多かった両チーム。エバートンはゴードンの抜け出しからリシャルリソンにつなぐなど、いきなりの決定機を見せてブレントフォードのゴールを脅かす。
そのままの勢いで先手を奪ったのはエバートン。10分に先制点を決めたのはキャルバート=ルーウィン。今季苦しんだエースがチームに貴重な先制点をもたらす。ブレントフォードの守備陣はやたら淡白なエリア内の対応になってしまった。
しかし、そんな先手を取った勢いを台無しにしがちなのが近頃のエバートンである。18分、ブランスウェイトが文句なしの決定機阻止で一発退場。70分以上の残り時間を10人で過ごすことが確定してしまう。
数的優位を得たブレントフォードは立ち上がりの打ちあいの展開から徐々にぼーるを持ちながら支配していく形を模索していく。対角のパスを使いながらのクロスで敵陣に迫っていく機会を徐々に増やしていく。
そして結局ブレントフォードが追いつくことが出来たのは37分。サイドに振った後の角度のないところからのウィサのシュートがコールマンのオウンゴールを呼びこみ、試合をタイスコアに戻す。
しかしながら、数的優位を得ているブレントフォードが安定して試合を運べていたかというとそういうわけでもない。浮ついたパフォーマンスに終始している選手もおり、リシャルリソンはそこに抜け目なく漬け込んでいった。
前半終了間際、エバートンにPKを与えてしまったのはこの日不安定だったセーレンセン。2枚目の警告だけは許してもらったのはブレントフォードにとっては幸運。これをリシャルリソンがバッチリ決めてエバートンが10人でリードを奪う。
後半、不安定だったセーレンセンを外した5-3-2で勝負するブレントフォード。左の大外に配置されたジャネルトが持ち上がる形から安定して押し込む機会を得るように。大外をうまく使えた時は数的優位感があるブレントフォード。クロス攻勢で逆転を狙う。
対するエバートンもカウンターから十分にチャンスはある展開。何とかトランジッションでは優位を確保した状態で追加点の灯は消さないでおきたいところである。
しかし、得点を決めたのは11人のブレントフォード。セットプレーにニアで合わせたウィサがピックフォードにとってはノーチャンスのシュートを叩き込む。するとその直後にさらに得点を重ねる。右サイドから大外のヘンリーに合わせる形のブレントフォード十八番のファークロスから得点を決めてエバートンを突き放す。
何とかしたいエバートンだが、から回ってしまったロンドンが危険なタックルをお見舞いしてしまい一発退場。9人になるとさすがに数的不利が色濃くなったエバートン。退場で次節2人を失った状態でパレス戦での残留決定に再チャレンジすることとなった。
試合結果
2022.5.15
プレミアリーグ 第37節
エバートン 2-3 ブレントフォード
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:10‘ キャルバート=ルーウィン, 45+1’(PK) リシャルリソン
BRE:37‘ コールマン(OG), 62’ ウィサ, 64‘ ヘンリー
主審:マイケル・オリバー
⑨ニューカッスル【14位】×アーセナル【4位】
■全てを飲み込んだセント・ジェームズ・パーク
レビューはこちら。
先に試合をしたトッテナムが暫定で4位に浮上。アーセナルは勝たなければいけないプレッシャーを背負いながらセント・ジェームズ・パークに乗り込むことになった。
セント・ジェームズ・パークで待ち受けていたのはニューカッスルによる手荒な歓迎だった。高い位置からのプレスでボールをここまで積極的に奪い取りにくるニューカッスルはそこまで記憶にない。だが、WGが外のコースを切り、中盤がそれぞれのマーカーに張り付きながらのハイプレスはアーセナルには効果は十分だった。
こうしたプレッシャーに晒されてしまうと、アーセナルの保持は脆い。特にエルネニーは完全に圧力に負けて消えてしまう。左サイドからジャカがターンで持ち運ぶ場面もあったが、それも限定的。アーセナルは左サイドに進路が限定されていることがバレてしまったため、ギマランイスやシェアなどがある程度決めうちで高い位置からつぶすことが出来ていた。
ニューカッスルの保持に対するアーセナルのプレスは通常通りといっていいだろう。2トップに加えて、やや右のサカが高い位置を取りながらプレスを強めていく。サン=マクシマンに対しては冨安がタイトにマークをする。マークを受けたサン=マクシマンは前を向いての活躍は限定的だったが、自身にマークがついているという状況を利用するのがうまかった。
ニューカッスルはサイドに穴を空ける形で冨安の裏にウィルソンやジョエリントンを走らせることで縦に速く突破する形で敵陣に一気に侵入する。逆サイドは人数をかけたクロス攻勢。クロスをファーに狙うことでアーセナルのクリアの距離を出にくくし、その後のセカンドボール回収に向かいやすいように工夫がされていた。
ニューカッスルの攻撃にあえてケチをつけるならば無駄なファウルや避けられるオフサイドで攻撃がぶつ切りになってしまったこと。それでもアーセナルがかかえているプレス回避の問題からすればそれも大したことではないだろう。
後半も同じくニューカッスルペースが続く。いつまでも回避できないプレスに業を煮やしたアルテタはマルティネッリを投入するが、彼が先発に名前が連ねられるコンディションではないことを証明しただけだった。
そんな中で均衡を保っていた試合を動かしたのはやはりニューカッスル。狙いを付けたのはやはりサン=マクシマンが空けた裏のスペース。飛び出したジョエリントンをエルネニーは捕まえることが出来ずにアーセナルはオウンゴールを喫してしまう。
ここからは2点取らないといけないアーセナルの無限アタッカータイム。左の大外をマルティネッリ、右の大外をペペにしてエリア内にできるだけアタッカーを増やす。しかし、並んだ名前ほどの攻撃力を発揮することは出来ず。逆に手薄な守備陣に対して、ニューカッスルがとどめの一発を決めることになった。
90分間、アーセナルをプレスで圧倒し続けたニューカッスル。CL争いでプレッシャーのかかるアーセナルを文字通り飲み込み、ホーム最終節を勝利で飾った。
試合結果
2022.5.16
プレミアリーグ 第37節
ニューカッスル 2-0 アーセナル
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:55′ ホワイト(OG), 85′ ギマランイス
主審:ダレン・イングランド
⑩サウサンプトン【15位】×リバプール【2位】
■『フェラーリ』たちの意地
シティはウェストハム相手に1ポイント。最終節にプレッシャーをかけるためには3ポイントがマストで必要になるリバプールがボールを握りながら攻め方を探っていく。
メンバーは大幅に入れ替えたものの、攻め方としてはいつもと近い。左のIHが落ちてゲームメイクに入るという変形の仕方はチアゴが入った時と似通っている動きである。ジョッタ、フィルミーノ、南野の3トップは比較的ナローではあるが、ここ数試合のスタメン組も幅取よりも奥行きを優先する動きを見せている試合もある。そういう意味では平常運転の範疇かもしれない。南野やジョッタがワイドを取る意義が単に薄かっただけかもしれないが。
というわけで大外を担当するのはゴメスとツィミカスという両側のSBであった。ということで積極的にオーバーラップを図る彼らの裏側のスペースはカウンターにおけるサウサンプトンの狙い目になる。
カウンターからSBの裏で一発ジャブを放った開始直後のサウサンプトン。すると、2回目のカウンターから先制パンチがヒット。左サイドのレドモンドが相手を剥がしながらミドルを打ち込んでいく。
リードを奪ったあとのサウサンプトンはそれまで以上に相手を引き込みながら戦っていく。あえて引き込んでの手早く勝負でリバプールを迎え撃つ算段である。
だが、押し込む機会を得たリバプールはここから奮起。3トップはワイドの幅はとれなくてもエリア内で仕事ができる。ゴメスのクロスにエリア内に入り込んだジョタが落とすと、その落としを受けた南野がニアを打ち抜いて同点。自身が先発する試合としては今季一番大事な試合であろうここで結果を出すのだからさすがである。
同点で迎えた後半。サウサンプトンは5-4-1だけでなく場合によっては4-4-2も使い分ける格好でリバプールの攻撃を迎撃。先制点以降、ほぼノーチャンスだった前半の反省も踏まえ、攻撃的なスタンスのスイッチを入れる。
前線ではブロヤがファウル奪取。中盤が防波堤になりつつ、DFラインがさらされる機会を減らしながら勝ちに向かう。
しかし、この試合で上回ったのはリバプールの勝ちにかける執念。セットプレーから勝ち越し点を奪ったのはマティプ。サウサンプトンをこのゴールで逆転する。
最後まで相手を上回ろうと懸命の努力をしたサウサンプトンだったが、出番の少ないメンバーが奮起したリバプールが逆転勝利。クロップの言葉を借りれば『車庫で眠ったフェラーリ』たちの大活躍で、最終節を首位と1ポイント差で迎えることに成功した。
試合結果
2022.5.17
プレミアリーグ 第37節
サウサンプトン 1-2 リバプール
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:13′ レドモンド
LIV:27′ 南野, 67′ マティプ
主審:マーティン・アトキンソン