とにかく点が取れないカーディフ。「ハーフタイムまではいまだリードしたことがない」という、すごく聞き覚えのあるフレーズをいまだ地でいっているのがこのチームである。リードしている時間はまだトータルで93分しかないぜ!っていうデータもあったけどマジなのか。俺の訳し間違いとかじゃないのか。ただ得点は2番目に少ない、失点は2番目に多く順位は19位ってことでめちゃめちゃ納得感のある順位になってしまっていることは事実。
到着するはずだった新戦力は未だ英国にたどり着かず。厳しい状況ではあるが、私は彼とその家族に奇跡がもたらされることを願う一人であることは記しておく。
チェルシーに快勝かと思いきや、ユナイテッドになす術なく完敗と波が激しいアーセナル。徐々に解決してきたと思ったけが人は、年明けを境に増加傾向が止まらず。スカッドは量の面で厳しい状況だ。リーグで4位を視野に入れつつELでも上位進出を狙うのはなかなかな難しさである。スカッドの耐久度が試される欧州カップの再開はもうすぐ。このカーディフ戦もマンチェスター勢に挟まれたコンディショニングが難しい試合だ。降格圏チームや昇格組にはホームでめっぽう強いという「それ当たり前じゃね?」というデータの後押しを受けて勝ち点3を狙いたいところだ。
スタメンはこちら。
【前半】
アプローチは違えど考え方は似ている
カーディフの配置はとりあえず現地の予想通り並べてみた。しかしながら典型的な4-5ブロックを敷くチームではなかった。アーセナルはエルネニーが最終ラインに落ちて3枚でビルドアップを進める。それに対してカーディフの前線のプレス隊はニアッセとリードの2枚だった。じゃあカーディフは非保持では4-4-2?って言われると多分それも違う。中盤はむしろマンマーク仕様が色濃く見える動き。
・ロールズとアーターでトレイラとゲンドゥージをとらえる。
・そしてエジルにはグンナルソンがとりつく。
・エルネニーが侵入してきたらリードがついていく。
っていうところまでは決まりで見えていた。図にするとこんな感じ。
これ以外の要素が絡んでくると対応に苦慮する部分も目立った。代表的なのは4分のモンレアルの持ち上がり。人に引っ張られて、陣地をあけてしまうマンマークの欠点が詰まったようなシーンになってしまった。2トップ脇から持ち上がるモンレアル。アーターは外に流れるゲンドゥージについていく動き。ロールズは持ち場を離れない。
このシーンではエジルへのコースを切りながら、降りてきたラカゼットをケアしていたグンナルソンがようやく食い止めに走る。ガラ空きになったエジルにボールを渡す。最終ラインを前にエジルは前を向いてボールを持つことができた。
後半の5分のムスタフィも持ち上がりも似たようなシーン。プレス隊を回避して試しに侵入してみたら、最終ラインの前まで行けちゃったぜ感。もっとたくさんやればよかったのに。というわけでイレギュラーを起こせば、割と崩せるのは間違いなかったけど、イレギュラーは起こせなかった。この持ち上がり、全然やらなかったし。やればいいのに。
噛み合わせを考える上でカーディフが意図的に空けていたのはユナイテッドと同じアーセナルの右サイドバック。4バック、3枚が中盤でマンマーク、2トップでプレスとなると、カーディフは片側のサイドバックしか抑えられない。最近のアーセナルを考えると右側をあけてしまうっていうのはきわめて合理的な判断といえる。というわけでリヒトシュタイナーの前にはスペースが広がっていた。中盤のうち、右を使う傾向が強いのはエジルなので「ここに流れてくればいいやんけ!」と思うかもしれないが、そこにはグンナルソンがついてくる。強いマンマーク志向!
というわけでリヒトシュタイナーはよほど高い位置に出てこない(出てきたらサイドバックが迎え撃つ)限りカーディフは放置。右サイドの数的優位は前節に続き意味がないアーセナル。
むしろ、かみ合わせの悪さを突かれたのはアーセナル。4-3-1-2気味のブロックなのだが、このフォーメーションだとサイドバックに蓋がしにくい。チェルシー戦ではインサイドハーフが気合全開でガンガン捕まえに行ってたが、この試合ではそこまで気合を入れている感じもなく。なんとなくアーセナルのサイドバックが捕まえに行ったスペースの裏を走られたり、普通にフリーの選手がクロスを上げたりしていた。コラシナツは普通にパターソンをフリーにしてたけど、もっと頑張れ。まぁそれでもコシエルニーやソクラティスが構えていればいいのだろうが、この試合のCBはモンレアルとムスタフィという即席コンビ。空中戦もだが、普通にチャレンジ&カバーの部分が怪しくて次節はちょっと心配。
とはいえ、プレスをうまくハメたとは言えないカーディフがボールを持って攻めあがれるシーンは限られており、危ういシーンは数回にとどまる。逆にアーセナルが危険を与えたシーンも少なかった。開始直後のラカゼットの決定機くらいか。あのシーンは中盤と最終ラインの2つの面を1つのパスで破壊したゲンドゥージが見事。両チームに得点は入らず、試合はスコアレスで折り返す。
【後半】
イウォビでギアチェンジ
スコアレスで終わった前半。カーディフはまたしても前半をリードで折り返すには至らなかった。わかるぜ、めっちゃ難しいよな。涙ふけよ。。
アーセナルはお得意のハーフタイム交代を実施。エルネニーを交代して2列目のイウォビを投入。ゲンドゥージが中盤から最終ラインに降りてエルネニーが前半行っていたタスクを任される。前の配置としてはイウォビが入った分、2トップ+トップ下から若干横幅に広がった感じ。エジルは中央を引き続き使う形で、右サイドにはオーバメヤンが流れるイメージだ。
最終ラインのプロテクト役がエルネニーからゲンドゥージになるのは若干不安を伴うが、イウォビが前線に入った分推進力がアップ。カーディフは前半に引き続き中盤より後ろ側はタイマン張っていこうぜ!っていう強い姿勢が見られていたのだが、このタイマンで一番優位性を出していたのがイウォビだった。かねてから高連携を見せていたコラシナツとの連携で見事PKをゲットする。得点シーン以外にも左サイドからの推進力は健在だったし、やっぱりお前ら左サイドなのか!
イウォビが2対2で殴り合いを制するなら、1人で複数やっつけてしまったのがラカゼットの2点目である。番長が最後にカーディフのDF陣をぼこぼこにするゴールを決めて試合は決着する。
しかしながら、推進力を出せるプレーを見せたのはイウォビや得点シーンのラカゼットを除けば、ゲンドゥージくらいなものであり、ほかのプレイヤーの停滞は目についた。
特に気になるのはエジル。前から守備しないプレースタイルがよくやり玉にあがるけど、エメリがハイプレスを発動する試合は対強豪に限るもの。どの試合でも積極的に前線からのプレスを敢行しているわけではない。今季はビックマッチで輝いているため、活躍が印象に残るラムジーだが、彼もよりゆったりとした試合での貢献度を考えると、エジルの創造性を生かしたいと考えても何ら不思議ではない。エジルが気になるのは単純なパスのスピードと精度の部分。そしてパスを出すまでのタッチ数の多さ。本来の彼が最も得意であるとされる部分である。これまでのエジルは(たとえそれがチームのパフォーマンスの助けになっていない場合でも)この部分の正確性で突出した存在であるといっても過言ではなかった。併せて気になるのは1on1で背中に相手を背負いながらのプレー。ターンにスペースと時間が以前よりかかるようになった気がする。背中というデリケートな部位の負傷が影響を与えている可能性もある。残りのシーズンで復調することを願いたい。
後半もアーセナル相手に殴り合いを挑んだカーディフ。中盤を交わしてシュートまではいけるシーンはあるものの、シュートが枠に行かず、決定機も限られたものに。シュートは19本と少なくはなかったものの、ゴール期待値は1に届かなかった。そんな中でもメンデス=ラングが一矢を報いたものの及ばす。2-1で試合は終了。アーセナルがリーグ戦連勝を飾ることになった。
まとめ
マンマークで中盤で殴り合いを挑んだカーディフ。なんでだよ!それじゃ勝てないだろ。。右サイドを捨てる作戦という部分ではアーセナル対策は見えたものの、それ以降は「あとは各々頑張るように!」という気合の号令をかけていたようにみえた。クラインやサラなど、ウォーノックとしては起用できる選手はもっと違ったんだ!といいたいかもしれないが、徐々に調子を取り戻しているバーンリーや、戦力で優位に立っているサウサンプトンやクリスタル・パレスと比べると残留に向けた決定打が少ないのが不安だ。
タイマンにお付き合いしたアーセナル。最終ラインの数的優位を生かして、モンレアルやムスタフィがガンガン上がっていけば速攻でぶっ壊れそうだった気がするんだが、降格圏ながら殴り合い上等でかかってきたカーディフ相手に「数的優位を生かす」とかは失礼とかそういうのはあったのだろうか。まぁ今回はユニットとラカゼットで殴り勝てたけど。殴り合いに勝ってこそ男だ。
課題としては積み残しは依然たくさん。プレス強度は試合ごとに調整している可能性もあるので、そこはいいとしても問題なのは放置されても生かせない右サイドだろう。アーセナルの左サイドは確かにストロングポイントだが、ELも4位争いも左サイド一本槍では厳しいものがある。前線とSBだけでなく中盤でいえばジャカやゲンドゥージも左サイドに流れる傾向がある。右サイド方面でユニットを活性化できる存在といえば、現スカッドではムヒタリアンとエジル。両選手の復活とスペインから上陸するであろうもう一人の戦力が後半戦のアーセナルの巻き返しのカギになりそうだ。
試合結果
プレミアリーグ 第24節
アーセナル 2-1 カーディフ
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS: 66′(PK) オーバメヤン, 83′ ラカゼット
CAR: 93′ メンデス=ラング
審判: マイク・ディーン