Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第11節
2022.5.18
ヴィッセル神戸(17位/1勝4分7敗/勝ち点7/得点9/失点18)
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川崎フロンターレ(2位/8勝2分2敗/勝ち点26/得点19/失点12)
@ノエビアスタジアム神戸
戦績
近年の対戦成績
直近5年の対戦で神戸は2勝、川崎は7勝、引き分けは3つ。
神戸ホームでの戦績
直近10試合の対戦で神戸の3勝、川崎が3勝、引き分けは4つ。
Head-to-head
直近の試合で優位なのは川崎。神戸戦では5戦無敗を貫いている。打ち合いになりやすいのが特徴のカードで2018年からのリーグ戦は両チームとも得点を挙げる試合ばかり。
かつ、直近4試合は先行したチームが必ず追いつかれる形になるのも共通しており、うち3試合は先制したチームが勝ち点を落としている。唯一、先行したチームが勝利した2020年の9月の試合も勝利した川崎は先制後、一度ビハインドを経験してから逆転勝利をしているシーソーゲームになりがちな展開だ。
神戸のアウェイは苦手なイメージもあるが、直近5年はいずれも負けてはいない。このカード恒例となりつつある水曜開催(なんと5試合連続)においても過去のデータ的には川崎が優位である。
スカッド情報
【ヴィッセル神戸】
・前節、出場停止だった菊池流帆は復帰。
・扇原貴宏、橋本拳人は前節メンバー外。
【川崎フロンターレ】
・ジェジエウは長期の離脱中。
・大島僚太は右足の負傷、登里享平は右ふくらはぎの負傷で離脱。
・広州戦で途中交代したチャナティップはヒラメ筋の肉離れで離脱。
予想スタメン
Match facts
【ヴィッセル神戸】
前節、鳥栖に勝利してようやくロティーナ体制での初勝利を挙げた神戸。昨年比で勝ち点は1/3と大幅な出遅れは否めないがここからは巻き返したいところ。
鳥栖戦では久々の複数得点で攻撃陣が爆発したが、シュート数が多いわけではなく少ないチャンスを決めるスタイル。今後はチャンスの量も担保していきたい。
勝てば昨年11月以来のリーグ戦のホーム連勝となる。ロティーナはあまり得意ではない相手だが、川崎相手に連続ゴール中の武藤によって勝利を手繰り寄せたい。
【川崎フロンターレ】
三度目の正直にしてようやく今季初のリーグ戦3連勝を決めた川崎。この3試合はいずれもクリーンシートを記録しており、4試合になれば2021年8月以来の無失点記録となる。
ただ、今年は関西圏のチームには結果を出せていない。さらにはアウェイも苦手と苦しい要素もある。
アウェイが得意な知念にはここでの貢献は求めていきたいところ。神戸が得意な小林悠には待望のシーズン初ゴールが生まれることを期待もしたい。
予習
ACL
第8節 C大阪戦
第12節 G大阪戦
第13節 鳥栖戦
展望
■ロティーナ色の浸透はまだ途上
三浦監督からロティーナ監督へのスイッチを決めたのはACL直前。自分が川崎のレビューに少し余裕が出て来たこともあり、ロティーナへの監督交代で神戸が何に取り組むのかをチェックするために神戸のACLの試合も少し見てみることにした。というわけでいつもより見た試合は多めである。
結論から言えば現状の神戸はロティーナ色を打ち出す段階としてはまだ途上といった印象だ。ロティーナといえば攻守に盤面を制御することに長けており、できるだけリスクを排した戦い方で知られているが、現状ではそうしたところまではまだ遠い位置にいるといっていいだろう。
とはいえ、それぞれのポジションに求める役割ははっきりしている。保持においては2CBが開いたポジションを取りGKを挟む形をとる。CHのうち、右側の選手はアンカーのような振る舞いをし、GK-CBとひし形のような立ち位置になる。
左のCH(主に山口)はビルドアップのフォローから前線への飛び出しなど様々な役割をこなしている。どちらかといえばやや左サイド寄りだ。その分、トップ下は右サイドに寄ることが多い。特にMFタイプの井上が起用された時はこの色が強い。アタッカータイプの武藤が起用されれば縦への推進力がもたらされるし、イニエスタはフリーロールである。このポジションはタレントで色が変わる場所である。
WGは基本的には外に張っているが、右のWGに比べ汰木などの左のWGは比較的低い位置までボールを受けに来ることが多い。左のハーフスペースはWGの汰木、高い位置を取る山口、降りてポストを行う大迫の三択である。
こうして書くとゴリゴリのポゼッション型のチームのようだが、実態はそうではない。一番の難点はバックラインのプレス耐性の低さである。奪われるよりはマシとはいえ、寄せられたときにあまりにも早く蹴りすぎてしまい、やり直しがあまりにも少ない。GKを使ったビルドアップを行いたいのならば、もっと頑張っていい部分だろう。
バックラインで横のパス交換ができるない副作用を受けているのはアンカーである。動き回りながらフリーになるスキルが高い大崎は問題なくやれてはいるが、狭い場所でのターンがあまり得意ではない扇原は現状に苦戦中である。
本人の前を向くスキルに問題があるのは確かだろうけども、いくら何でもチームとしてアンカーを孤立させすぎのように見える。現代においてアンカーのようなマークがタイトなポジションは1人でターンして前を向く場所ではない。バックラインからのパスワークでその負荷を低減するアプローチを取得できれば、大崎であっても上積みが見込めるように思うのだが。ここらへんは最近の川崎のレビューでもよく書く話ではあるが。
そういうわけでやり直しが少ない現状の神戸にはより直線的な動きが求められる。初戦のC大阪戦はチーム全体で押し上げる意識はあったが、それ以降はワイドで人数をかける崩しがあまり見られないようになっていた。大崎がアンカーに配置される際は左右のサイドを使ってはいるものの、複数人を送り込んでのサイドの崩しが見られるシーンは少ない。2人でなんとかハイクロスまで!という出口に行きつくケースばかり。そのため、サイドを経由せず直線的な部分を託すことができる武藤の復帰はかなり大きい。
神戸と対戦するチームにとって怖いのは、偶発的にでも神戸が前に人数を送り込むことが出来てイニエスタが前向きでボールを持ってしまえば、なんでもできることである。ロティーナの保持においては違いを作り出す個が重要だが、その役割を完全に担っている。爆発的なスピードこそないものの、目の前の相手を確実に1枚剥がし、フリーの選手にボールを送ることができる。現状では彼のいるといないとでは神戸のフィニッシュの精度は大きな違いがある。
当然守備の強度は引き換えになる。鳥栖戦ではトップ下にイニエスタを置く4-4-2で動きを最小限に止めることで解決して見せたが、この試合は早い時間にリードを奪っていたことが大きなファクター。撤退が整備されていたのもトップがリトリートを選んだことで全体の布陣がコンパクトになったのが大きな要因である。
そういう意味では鳥栖戦で見せた非保持の整備は先制点に助けられている可能性がある。保持で蹴る傾向が強い分、非保持が整わない状況で攻撃を受ける機会はある。蹴りがちな保持の選択は非保持においても怪しい影響を与えている部分は否めない。ロティーナの最大の特徴であるリスクを排するためのプレーの浸透は現段階ではまだ途上と表現するのが適切だろう。
■ボールの捨て方も大事になる
この試合において、川崎が絶対取り組むべき部分はハイプレスである。神戸のバックラインにプレスをかけて、蹴らせて回収しカウンターを狙う形は行い、できれば早い時間に先制点を奪いたいところ。プレス隊は小林や知念など献身的な非保持が見込めるメンバーを使っても面白い。
神戸に追いかける展開を作ることが出来たとしたら、状況は川崎に有利になる。鳥栖戦のように2トップが飛び込まないままではにっちもさっちもいかないし、必ずトップから川崎のバックラインを捕まえに来るはず。そうしたきっかけがあれば、陣形をコンパクトに維持するための障害になる可能性はある。
逆に川崎がビハインドになれば、鳥栖戦のように神戸の陣形は川崎にボールを持たせて自陣の深い位置まで下がる形を取るかもしれない。失点してしまった場合は地道にサイドを崩していく必要があるだろう。福岡戦の得点シーンのように、縦方向と横方向のギャップを組み合わせる抜け出しを駆使しながら、何とか抜け出すスペースを作りたいところ。
クロスを上げる際はハイクロスよりも飛び込む場所を示すような鋭いボールをスペースに送る形を狙っていきたい。インサイドの強度でいえば、さすがに福岡には及ばない。攻勢を強めてこじ開けられる可能性は十分にあるだろう。
その一方で福岡よりも気を付けなければいけないのはカウンターである。下手なボールロストはもちろん、クロスをニアでひっくり返されたり、ミドルシュートをブロックされたりなどきっかけとなりそうな事象は多い。神戸はボールと共に人数を前に送ることは苦手だが、その状況を作ることが出来た時の破壊力はかなりのものである。
大迫、武藤、イニエスタとそうした状況において太刀打ちできない力を使える選手が神戸には多い。彼らは川崎にとっては爆弾のようなもの。ボールの捨て方にも注意を払った爆弾処理が川崎には求められることになる。