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「消化不良の交代策」~2023.10.30 カラバオカップ 4回戦 ウェストハム×アーセナル マッチレビュー

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カウンターを修正したウェストハムに対応できず

 両チームともリーグ戦での平時のメンバーからの変更は同程度といったところだろうか。ウェストハムはアントニオ、ウォード=プラウズ、ズマ、アレオラあたりがベンチにイン。アーセナルはサカ、マルティネッリ、ウーデゴール、サリバ、ライス、ラヤがスタメンから外れた。名前を並べてみると少しアーセナルの方が積極的にメンバーを入れ替えたかもしれない。

 試合はアーセナルの自陣からの3-2-5のビルドアップにウェストハムが4-4-2を組んで対抗するスタート。アーセナルはワイドに広がった左のCBのガブリエウからボールを持ち上がり、同サイドのSHのクドゥスを引っ張り出しつつ、ソーチェクの周辺にスペースを見つけていきたい立ち上がりだった。

 ジンチェンコ、トロサールというボールプレイヤーが揃っている左サイドはクドゥスが前への意識が強かったこともあり、比較的ブロックの間でボールを受けることができていた。しかしながら、ボックス内に迫るところまでのプロセスでアーセナルはミスが出る。特にハヴァーツの前半のプレーの完結できなさは悪い意味で目立っていた。

 ウェストハムとしてはボールを持てない状況ではあったが、特に問題はないだろう。ライス、冨安、サリバは不在で、被カウンターの耐性が怪しいこの日のアーセナルの陣形ならば、ウェストハムはロングカウンターにフォーカスしても問題はなさそう。パケタがガブリエウと入れ替わった場面はそれを証明しているし、セットプレーからオウンゴールでスコアを動かせたならば尚更だ。

 良くも悪くも試合の展開はそこまでスコアで変わらなかった。アーセナルは相変わらずライン間にパスは入れられる様子だったし、ボックス内に入るフェーズが決まればあとはという感じ。左ハーフスペースの奥をとりつつ、エンケティアのシュートで終わったシーンは前半のベストな崩しだった。こういうシーンを増やしたいところ。ウェストハムのカウンターもそこまで脅威にならない状態で押さえ込むことはできていたし、スコア以外は悪くはない。

 ただ、ビルドアップのところの硬直性は少し気にはなる。ウェストハムが中盤を噛み合わせるように守っていることもあるのだろうが、3-2の形をキープする傾向があり、その分中央への縦パスからCHがフリーになるケースが少なかったように思う。左サイドを迂回すればジョルジーニョもジンチェンコもボールを持てる感じはしたので問題はないかもしれないが、ウェストハムがハイプレスを起動した時の逃げ方のバタバタ感はちょっと気になる部分。この辺りはラヤ→ラムズデールに入れ替わった影響かもしれない。

 悪い意味で目についたのはハヴァーツのボールプレーの精度と後方のビルドアップのポジション入れ替えの少なさの2つ。良い意味で目についたのはトロサールのボールの追い込み方がスマートだったことがまず来るかなという前半の45分だった。

 後半の頭、ウェストハムはパケタを起点とするカウンターからボーウェンが決定機を迎える。直後のセットプレーでのソーチェクのヘディングに加えて、わずか1分でシュートは2本。前半は1つも打てなかったシュートを立て続けにウェストハムは放っていく。

 ウェストハムのカウンターが改善したのは確かだろう。前線の当てるポイントを囮に背後に走り選手を作ることでロングボールの的を分散。エメルソンが抜け出したカウンターなどはその好例だ。

 大きな展開からチャンスを作るウェストハムはロングボールを受けたクドゥスが追加点。トラップでジンチェンコを外して、カバーにきたガブリエウの股を抜く技ありのシュートでアーセナルを突き放す。

 この直後のライスと冨安を投入したアルテタの交代策は自分にはよくわからなかった。アーセナルの前半の良かったポイントは相手のFW-MF間のスペースからの細かいパス交換でアタッキングサードに侵入するところが安定していたところ。ジンチェンコとジョルジーニョを同時に下げることはその安定感を手放すことにつながる。

 もちろん、ライスと冨安の投入でウェストハムのカウンターへの耐性は上がることになるが、勝ちにフォーカスした場合に0-2でこの交代が必要なのかはちょっと自分には理解に苦しむ。プレータイムマネジメントを優先するのならば、冨安の交代相手はジンチェンコではなくホワイトの方がしっくり来る。

 案の定、この交代はあまりハマらなかった。手前でのパス交換が減ったアーセナルはライスがアバウトに前線へのパスを一発で通すことを狙うようになり、ウェストハムをきっちり押し下げるフェーズが安定しなくなってしまった。冨安も細かいパス交換は不慣れであり、ウェストハムを手前に引き出す部分での貢献ができない。強引なロングパスが通らないことでカウンターを受ける機会自体を抑制できないアーセナルは60分に更なる失点を喫する。

 ワイドにサカとマルティネッリを突っ込んだアーセナルは大外から押し下げるポイントを作ることはできていたが、アタッキングサードにおける精度不足は後半も改善が見られず。後方に冨安がいるのであれば、ライスは自分がエリア内に突っ込んで行っても良いと思うのだが、後方でジョルジーニョ役に徹していたのも勿体無い感じがする。

 終盤にウーデゴールが決めたシュートまでの流れは後半のアーセナルの数少ない良かったポイント。5バックにシフトしたウェストハムに一矢報いたことはリーグ戦でのモイーズのアーセナル相手の采配に影響をもたらしてもおかしくはない。

ひとこと

 コンペティションの優先度を考えればカラバオカップに負けることは仕方ない部分はあるのだが、いかんせんリーグ戦では感じなかった試合の盤面とプランのミスマッチをすごく感じたのは気がかり。今季ここまであんまり感じなかった類の気持ち悪さだった。国内カップ戦という盤面の修正だけではない大会という影響はあるのだろうが、プレータイムの観点だけでは飲み込めない消化不良感がある。

試合結果

2023.10.30
カラバオカップ 4回戦
ウェストハム 3-1 アーセナル
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:16‘ ホワイト(OG), 50′ クドゥス,60′ ボーウェン
ARS:90+5′ ウーデゴール
主審:サイモン・フーパー

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