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「燃料は与えないように」~2022.5.1 プレミアリーグ 第35節 ウェストハム×アーセナル プレビュー

目次

Fixture

プレミアリーグ 第35節
2022.5.1
ウェストハム(7位/15勝7分12敗/勝ち点52/得点52 失点44)
×
アーセナル(4位/19勝3分11敗/勝ち点60/得点52 失点40)
@ロンドン・スタジアム

戦績

過去の対戦成績

 過去5年の対戦でウェストハムの1勝、アーセナルの8勝、引き分けが2つ。

ウェストハムホームでの対戦成績

 過去10戦でウェストハムの1勝、アーセナルの6勝、引き分けが3つ。

Head-to-head from BBC sport

・ウェストハムはプレミアでクラブレコードの33敗をアーセナルに喫している。
・ウェストハムは直近27試合のリーグのアーセナル戦で2勝していない(D5,L20)
・アーセナルは直近13試合のアウェイのウェストハム戦で1敗のみ。2019年の1月の1-0。

スカッド情報

【Westham】

・クレイグ・ドーソンはチェルシー戦の退場で1試合の出場停止。
・イサ・ディオプ、アンジェロ・オグボンナはそれぞれ足首と膝の怪我で欠場。

【Arsenal】

・ユナイテッド戦で負傷交代したブカヨ・サカの出場には楽観的。
・トーマス・パーティ、キーラン・ティアニーはシーズン絶望の見込み。
・冨安健洋はフィット。しかし、先発できるフィットネスかどうかは不明とのこと。

Match facts from BBC sport

【Westham】

・直近7試合のプレミアで4敗(W2,D1)。それ以前の14試合と同じ負け数。
・ホームのリーグ戦は6戦負けなしで、2016年4月に終わった15試合連続の負けなし記録以来の好成績。
・2021年5月のエバートン戦以来、18試合連続ホームゲームは得点を挙げている。
・直近3試合のEL直後のプレミアの試合ではいずれも勝ち点を落としている(D1,L2)
・デイビッド・モイーズは直近22回のアーセナルとのプレミアの対戦で1勝のみ(D7,L14)。

【Arsenal】

・プレミアで19勝を達成し、昨季トータルの勝利数を超えた。
・23歳以下の得点が37点でリーグハイ。
・5月のプレミアは50勝を挙げており、プレミアのクラブで最多。
・5月は月別の勝率でも最高。59%(50/85)。
・直近8試合のアウェイゲームで6勝。それ以外の2試合は負けている。

予想スタメン

展望

■なだらかなパフォーマンス低下の要因は?

 躍進した翌年のシーズンは難しくなりやすいというのはプレミアリーグのジンクスではあるが、今季のウェストハムはそんなジンクスなど意に介さないように今年も欧州カップ戦争いを繰り広げてきた。

 しかしながら、シーズン終盤になるにつれて、パフォーマンスはなだらかに低下。ここにきて苦しい試合が続き、リーグからのCL出場権の獲得は難しい状況になっている。

 原因の1つは固定メンバー制の弊害だろう。ELとの二足の草鞋は年内においては機能したと言ってもいいが、2022年になってからはやや息切れ感が否めない。シンプルな蓄積疲労によるパフォーマンスの低下は見逃せないところだろう。モイーズのメンバー固定の方針を維持しながらシーズンを戦い切るのは無理がある。

 加えて、苦しんでいるのは最終ラインに離脱者が多いこと。ズマは何とかフランクフルト戦には戻ってくることができたが、オグボンナとディオプには復帰の目処が立っていない。加えて、ドーソンは前節のチェルシー戦の一発退場で1試合の出場停止。アーセナル戦にはCBがそもそも2枚揃わないことが濃厚だ。

 前回のアーセナルの対戦においてもポイントになったのはクレスウェルが不在となった左サイド。ここでサカが優位を作り出したことが大きなポイントとなった。

 代役として入ったメンバーのパフォーマンスが極端に悪いわけではないが、レギュラー格に一歩及ばないのも事実。その質の差がボディーブローのように聞いている印象だ。

 DFラインの人員以外にも気になる部分はある。守備において前線から最終ラインまでコンパクトにまとめることができているのが強い時のウェストハム。だが、現状ではウェストハムの陣形は縦に間延びしてしまうことがとても多い。

 以前も発作的にやたらと陣形が間延びしている日があったが、そういう時がむしろイレギュラー。ベースとなるのは堅い守備だった。今はその2つの顔が出てくる頻度がまるっきり入れ替わってしまっているかのような印象を受ける。前のプレスに後ろがついていけずに、ライン間の選手をチェックできないシーンが非常に多い。

 フランクフルト戦では前線からのプレスの不具合として2つの大きな穴が見られている。どちらもポイントは低い位置まで下がる左SHのフォルナルスと高い位置に残って守備を行うボーウェンのアシンメトリーな配置が生み出す歪みだ。

 1つ目は低い位置をとるフォルナルスのサイドで起こっている不具合。低い位置までのリトリートを優先するあまり、バックラインにプレッシャーがかからずに簡単に持ち運びを許してしまい、ここからアタッキングサードにダイレクトに放り込まれてしまうというのが1つである。

 2つ目は高い位置をとるボーウェンの裏をCHのソーチェクがカバーしようと外に立つあまり、縦へのパスがやたらと通ってしまうこと。出ていった歪みのカバーから、結果的に中央を破られてしまうという本末転倒な展開である。

 実際に同じプレーがアーセナル戦で再現するとは限らないが、まずは後方からボールを動かすことで相手の前線を動かすことをアーセナルとしては狙いたいところである。

 ウェストハムは攻撃においても難点がある。バックラインからのビルドアップが詰まると、トップ下のランシーニがフリーマンとしてボールを受けにくるのが彼らの通例である。確かにランシーニの動きによって前進できる場面もなくはないが、ゴール前に人数をかけるのは難しくなっている。

 加えて、さらに状況を難しくしているのがアントニオが左サイドに流れてチャンスメイクをすることが極端に増えたことである。アントニオは元々はマルチロールの選手であり、サイドでのプレーの質が低いわけではない。ゴールを奪うことと同じくらい、ゴールをお膳立てすることもうまい。よって、サイドからのアシスト役が不適という訳ではない。

 だけども、相手に最もゴールの脅威を与えられる選手がゴール前から離れてしまっては助かると思うのが普通だろう。ランシーニがビルドアップに、アントニオがチャンスメイクに奔走するせいでエリア内に走り込めるのはボーウェンと後方から走り込むソーチェクくらいのものになっている。PA内の彼らには迫力不足の感が否めない。

 このように攻守のメカニズムの不良とコンディションの低下がウェストハムのパフォーマンスのブレーキになっていると考えられる。

■中央ルートを開拓できるか

 アーセナルが狙うべきはまずはCFのポストプレーである。ざっくりとこれは前節のマンチェスター・ユナイテッド戦のプレビューでの狙いと近い。だが、縦パスを受けたCFにとっては求められることは微妙に違う。

 マン・ユナイテッドの守備の問題はポストする選手に対して、ついて行ってしまうことで最終ラインに穴を開けてしまい、その穴を埋める動きがないというものだった。

 対して、ウェストハムの難点はそもそもついていかずに相手に反転を許してしまうということである。よって、CFはライン間でボールを受けたら前を向けるかを試してほしいところ。ここでプレッシャーがないのならば、アーセナルにとってはチャンス。とりあえず前を向く動きはしておきたいところである。

 ここ2試合での勝利はサイドにおいてサカが優位を取れた事が大きい。逆に言えば、サカの優位を取れなければアーセナルは再び手詰まりになる可能性も否めない。それだけにCFへの縦パスから中央のルートを効果的に使えるかどうかは大事になる。受け手のCFだけでなく、CHとして継続起用が見込まれるエルネニーにはこの部分も要求したいところ。フランクフルト戦の失点は2点ともライン間で縦パスを受けたプレイヤーを前に向かせたところからだ。

 一方でここ数試合で見られている低い位置でボールを引っ掛けてしまう悪癖には細心の注意を払う必要がある。ウェストハムの今のチグハグさはボールと共に人を前に送れないことで効果的な前進ができないこと。自らボールを引っ掛けてしまえば、そうした部分が問題にならない前進の機会をウェストハムに与えてしまうことになる。

 まずは低い位置からミスを出して相手を手助けしないこと。そして、中央のルートが開拓できるかどうかがこの試合のアーセナルの攻撃のキーとなる。

 守備においては前回対戦のようにアタッカー陣に前を向かせない対応が最良と言っていいだろう。その上でケアしなくてはいけないのは、左サイドに流れるアントニオへの対応をどうするかを明確にしておくべきである。冨安が先発復帰するのならば、大きな試練にはなるが、アーセナルにとっては頼もしい存在になる。あとは攻め上がってくるソーチェクに対しての対応にも警戒が必要。こちらはエルネニーは得意分野だろうか。いずれにしてもこの2つにはどのように対応するかをクリアにしておきたい。

 フランクフルト戦の後半ではランシーニと入れ替わるように1列前に出て行ってボールを運ぶライスがアクセントになっていた。過密日程でのパフォーマンス低下とは無縁な彼が高い位置をとることを狙っている以上、どこまでランシーニを追い回すかは難しい部分になる。

 ウェストハムにとって残りの日程のプライオリティがELにあるのは明らかだろう。どこまで主力を投入してくるかも読めない部分ではある。しかしながら、パスミスからの先制点など無駄に相手にエネルギーを与えてしまっては、当然勝ちに執念を燃やしてくるだろう。

 下手に燃料を与えずに早い段階で相手の視線をフランクフルトとのリターンマッチに向けること。難しい上位対決ではあるが、向こうが二足の草鞋である以上はこの試合は明らかに勝たなければいけない試合である。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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