①トッテナム【4位】×ブライトン【11位】
■North London is BHA.
CL争いのチームは軒並み敗北している中での1人勝ちを決めたのが前節。アーセナル、マンチェスター・ユナイテッド、ウェストハムとライバルたちが続々と調子を落としているという状況でトッテナムにはここで一気に4位争いの主導権が巡ってきている状況に。
対するはそのアーセナルを前節止めたブライトン。7試合勝ちなしを止めた勢いのまま、同じくノースロンドンに本拠異を構えるトッテナムにチャレンジする。
ブライトンは前節のアーセナル戦では極端に左サイドに寄せながら右は浮かせるという左右をアンバランスに配置することで局所的な数的優位を作るポゼッションを行っていた。しかしながら、この試合ではそうした振る舞いは見られず。むしろ、WBを両サイドに張らせることで幅を積極的に使うアプローチに切り替えた印象。バックラインから大外への大きな展開を活かし、トッテナムにプレスの的を絞らせない。
ポイントとなったのはブライトンがトップにCFのキャラクターが濃い人を置かないことで、幅を取りながらもサイドの人数を確保したこと。PA内の迫力が下がったことは否めないが、まずはポゼッションで相手を押し込むことを念頭に置いていた。
押し込まれてポゼッションを続けられることに業を煮やしたのか、徐々にトッテナムは撤退型5-4-1からプレスに出てくるように。しかし、このプレスの強度はブライトンにとっては余裕をもってかわせるものだった。少なくとも、ボールを取り上げて握るということをブライトンはトッテナムに許さなかった。
それでもトッテナムにはカウンターがある。前節は支配されながらも4点を奪うことが出来ているチームである。長いボールからのワンチャンスを生かす力は十分。だが、この日のブライトンのバックラインは押し上げがうまくコンパクト。ケインやソンに前を向かせない。クルゼフスキにとってもぴったりくっついたら離れないククレジャとのマッチアップは相性的にも悪かったはずだ。
ブライトンのプレスに対して、バックラインからのポゼッションも前進に使うことができないトッテナム。CBは数的優位であるはずだが、プレスを受けるとあわあわしてしまい、危険な形でのショートカウンターを食らうことになった。
前半はブライトンペースだったが、後半はブライトンのバックラインがコンパクトさを保てなかったこともあり、徐々にアタッカーが自由を享受できるようになる。しかしながら、ビスマをはじめとする中盤の防波堤は強力。トッテナムは枠内シュートにすらたどり着くチャンスを得られない。
一方のブライトンは保持で後半の終盤に再び主導権を回復すると、サイドの3対3の局面から抜け出したトロサールが決定機をモノにして終了間際に先制。彼らしい深い切り返しから一気にフィニッシュまで持って行く形で前節に続いてトッテナムから決勝点をもぎ取った。
試合はそのまま終了。前節に続きノースロンドンを青く染めたブライトン。2週連続でCL争いに一穴開ける形で連勝を重ねることとなった。
試合結果
2022.4.16
プレミアリーグ 第33節
トッテナム 0-1 ブライトン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
BRI:90′ トロサール
主審:クレイグ・ポーソン
②マンチェスター・ユナイテッド【7位】×ノリッジ【20位】
■七難隠すハットトリック
前節は絶不調のエバートンに敗れてしまうという失態を犯したマンチェスター・ユナイテッド。ロナウドのスマホ叩き割り事件など、ピッチの内外で悪い流れが続いている。
エバートン相手に得点を取れなかったこととフレッジとマクトミネイが共に離脱してしまっていることを踏まえてか、この試合のユナイテッドは非常に攻撃的な構成で来た。底にポグバ、それをリンガードとブルーノ・フェルナンデスで挟む逆三角形の中盤がその象徴といえるだろう。
攻撃できないくらいなら、守備を多少犠牲にしても前向きで火力勝負に持ち込む。この試合のマンチェスター・ユナイテッドのスタンスはそうしたものだった。早い攻撃と大きな展開を駆使しながら人数をかけたアタックで迅速に敵陣に攻め込む。フォーメーションからの狙い通り、まずは厚みのある攻撃でチャンスを作る展開になる。
ただし、ノリッジとしてもユナイテッドのスタンスは悪いものではない。ユナイテッドの攻め方は自分たちの守備を犠牲にしてでも攻撃に打って出るという形。ショートパスからフリーの選手を作りアタッカーが裏抜けする形でゴールまで迫りたいノリッジのチームカラーと、中盤をコンパクトに維持できないユナイテッドのこの試合の布陣の相性はむしろいいといえるだろう。
それだけにノリッジは先に失点してしまったのは痛かった。左サイドのギアンヌリスとギブソンのミスをエランガにとがめられて、最後はロナウド。プレスを制したユナイテッドがあっさりと先手を奪う。
続く追加点も彼らの強みから。セットプレーからの空中戦の圧力もユナイテッドがノリッジ相手に優位だった部分である。立て続けに2点を奪ったユナイテッド。これで試合は決着かと思われた。
しかしながら、ユナイテッドはいくらリードを奪おうが、このメンバーでは試合を落ち着けながら進むことも、ブロックを組んで自陣の守備を安定させることもできない。間延びした中盤はノリッジにとってフリーダム。レース・メル、ダウエル、ラシツァは自由に前を向いてプレーすることが出来ていた。
そんなノリッジは前半のうちに追撃弾をゲット。サイドからの3on3の局面を制して抜け出すと、ファーに余ったダウエルが合わせてゴール。確かにノリッジからすると見事な崩しではあったが、CBが外に引っ張られた上に同サイドからの脱出を許し、中央にはカバー役が誰もおらず、そのくせファーではフリーの選手を余らせているというユナイテッドの守備の機能不全が目立つゴールだった。
こうした連携ミスは後半も散見。テレスとリンデロフのプッキの受け渡しミスからあっさりと左サイドを破られるとそのまま一気にフィニッシュまで。ノリッジは同点に追いつくことに成功する。確かにだらだら戻っているテレスも緩慢ではあるが、エースのプッキのマークを渡したつもりになっているリンデロフもCBとしては責任感が薄いプレー選択だったといわざるを得ない。
撃ち合い上等!のスローガン通り、きっちり失点も許してしまったユナイテッド。だが、この日2得点のロナウドが大仕事。FKから直接ゴールを沈め、ハットトリックを達成する。これでまたしばらくはキッカーは彼のままで推移しそうである。
終わってみればこれが決勝点。脇の甘さが目立つ撃ち合いの一戦を制したのは稀代のスコアラーが輝いたユナイテッド。ロナウドがユナイテッドの守備の難を隠す大活躍で勝利を強引に手繰り寄せた。
試合結果
2022.4.16
プレミアリーグ 第33節
マンチェスター・ユナイテッド 3-2 ノリッジ
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:7′ 32′ 76′ ロナウド
NOR:45+1′ ダウエル, 52′ プッキ
主審:アンディ・マドレー
③ワトフォード【19位】×ブレントフォード【13位】
■最終盤の決定力で明暗くっきり
残留がいよいよ怪しくなってきたワトフォード。対するは一時期は残留争いに巻き込まれかける連敗を喫したが、主力の復帰で再び上昇気流に乗った感のあるブレントフォードである。前者は負ければ3連敗、後者は勝てば3連勝という状況である。
ブレントフォードはここ数試合の振る舞いを見ると少しモデルチェンジした感がある。縦に速い攻撃も当然狙うが、バックラインからショートパスをつなぎながら落ち着いてボールを動かしつつ、前線にボールを付ける隙を伺う傾向が強い。これまでよりも落ち着いた保持のスタンスをとりがちである。
この試合でもブレントフォードはそのような振る舞いを見せていた。一方のワトフォードはプレッシングでブレントフォードのボール保持を阻害する。特に中盤のエリクセンとノアゴールには厳しくプレッシャーをかける。ちなみにエリクセンにプレスをかけていたのは、トッテナム時代のチームメイトだったシソコだった。
ワトフォードの保持に対しては、ブレントフォードはコンパクトなブロックで対抗する。ワトフォードはショートパスを使いながら打開策を図っていたものの、どこか目的がないポゼッションになっていた感は否めない。どこをどうやって広げて穴を空けるのかをチームで共有できずに攻めあぐねる時間が続く。
プレスには来ないのでアンカーのルーザが空く機会はあった。大きな展開からサイドにボールを付ける機会はあったものの、そこからのハイクロスへの対応ではブレントフォードは脅かせず。結局はサールに任せるやり方が一番効果があった。
そうした中でも前進する手段を見つけることに成功したのはブレントフォードの方だった。彼らが狙いを付けたのはWGにポストをさせること。体格差のあるワトフォードとのSBとはややミスマッチ気味で、ここでブレントフォードは綺麗にボールを収めることが出来ていた。
優勢といえるほどではないが、前進しながら得た押し込む機会を得点に結びつけることには成功。ロングスローをゴールにつなげて先手を奪う。
後半、プレスをさらに強化しつつ攻勢を強めたワトフォード。高い位置でボールを奪い、敵陣でプレーする時間を長くすることには成功していた。だが、決め手となる攻撃がなかなか刺さらない。
その決め手となる攻撃がようやく見つかったのが同点ゴールの場面であった。右サイドから上がったクロスは中央で軽く軌道を変えて逆サイドに渡る。ブレントフォードのバックラインがボールサイドにスライドしてお留守になった逆サイドで待ち構えていたデニスがこれを叩き込み同点につなげる。ようやく見つけた攻略法で見事に試合を引き戻して見せた。
65分くらいからワトフォードのプレスが弱まったことで再びボールをもてるブレントフォード。ただ、ワトフォードも得意のカウンターは死んでいなかったのでどちらのチームに点が入ってもおかしくない状況だった。
先に決定的な場面を迎えたのはワトフォード。キング、ルーザに次々とチャンスが転がり込んできたが、どちらも枠をとらえることができず。反対にワンチャンスを決めたのはブレントフォード。ワトフォードがチャンスを逃した直後のセットプレーからヤンソンが決めて、勝ち越しに成功する。
終盤のチャンス合戦をモノにしたのはブレントフォード。最後の最後で決定力がくっきり明暗を分けた試合となった。
試合結果
2022.4.16
プレミアリーグ 第33節
ワトフォード 1-2 ブレントフォード
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
WAT:55‘ デニス
BRE:15’ ノアゴール, 90+5‘ ヤンソン
主審:シモン・フーパー
④サウサンプトン【14位】×アーセナル【5位】
■刺さらなかった順足WGの速攻
レビューはこちら。
4位争いを演じながらも連敗中のアーセナルをこちらもリーグ戦で6試合勝ちがないサウサンプトンが迎え撃つ互いに調子のあがらないチーム同士の一戦だ。
スタメンの並びを変えてきたのはサウサンプトン。前節は4-4-2で好き放題やられたことやアーセナルが5レーン的な攻撃をしてくることを加味して、5-4-1でのメンバー構成でこの試合に臨む。しかも、WBからはリヴラメントを外してくるという念の入れよう。まずは守備からという狙いを明確にしたスタメンとなった。
一方のアーセナルは順足のWGを採用。サカとマルティネッリをいつもと逆に入れ替えた配置する。おそらく狙いは早い攻撃だろう。サウサンプトンの攻撃の狙いは裏。4-4-2であろうが、5-4-1であろうが越えるべきラインの数は同じだし、サウサンプトンのバックラインとのかけっこ勝負でいえば分があると踏んだのだろう。
そのためには抜け出した後に素早くシュートやラストパスまで移行できる順足のWGの方が得策。攻守のバランスを考えると普段は高い位置を取るジャカが低い位置でも攻撃が完結できるようにという工夫も入っていたかもしれない。
実際、アーセナルの狙いはある程度はうまくいっていた。マルティネッリ→サカの決定機などはまるっきり狙い通りの形だし、CFに入ったエンケティアもラカゼットよりは機動力を生かした攻撃が得意。斜めのランで最終ラインを引っ張りながらファウルを奪うなど、この日の前半のやり方にはマッチしていた。
サウサンプトンはなかなか自陣から出ることができず、カウンターも打つことが出来ず。苦しい戦いを強いられている状況だったが、セットプレーからワンチャンスをモノにする。ほとんど保持の時間がなかったサウサンプトンだったが、唯一狙っていたのは左サイドの奥をとることだった。先制点の場面ではセットプレーからの流れからこのスペースを決め打ちして蹴りだしていたのかもしれない。対応が遅れたアーセナルのバックラインをよそにベドナレクが先制点を奪う。
前半の途中から逆足WGに戻し、人数をかけたサイド攻撃に切り替えたアーセナルは後半も狙いを続行。サウサンプトンにカウンターの脅威がほとんどなかったことを考えても、SBを次々削ってアタッカーを入れるやり方は妥当といえそうである。
右サイドのサカを中心に敵陣を脅かす頻度は確実に増えたアーセナル。しかしながら、最後に立ちはだかったのはフォースター。守護神によって守られたゴールマウスを破ることが出来なかったアーセナル。撤退からの先制点で引きこもることを許されたサウサンプトンがトンネルの脱出に成功した。
試合結果
2022.4.16
プレミアリーグ 第33節
サウサンプトン 1-0 アーセナル
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:44‘ ベドナレク
主審:ピーター・バンクス
⑤ニューカッスル【15位】×レスター【9位】
■予想外のラストプレーで劇的な勝ち点3
開始1分もしないうちに自陣でのビルドアップのミスを受けて、アマーティが警告覚悟のチャンス潰しでイエローカードをもらったレスター。そして、ダカの背後への強襲を受けてドゥブラーフカとバーンが交錯したニューカッスル。どちらのチームにとってもいろんな意味で冷や汗をかく立ち上がりとなった。
両チームに共通していたのはビルドアップが不安定だったこと。互いの前線のバックラインへの強気のプレッシングに対して、やや不安定なプレーが出る。ニューカッスルは不十分なクリア、レスターはビルドアップのミスなどである。
よって互いにショートパスにこだわるのはあまり得策ではないと判断したのだろう。試合は消去法的に素早いカウンターとハイプレスの応酬に移る。
ニューカッスルはそもそもサン=マクシマンを筆頭に速い攻撃が得意な選手が揃っているし、レスターは先に挙げたようにダカがニューカッスルのバックライン相手にスピードで優位に立っている。互いに速い攻撃において目途が立つことも試合が早い展開になった要因である。
速い攻撃の応酬の中で先に結果に結びつけたのはレスター。速攻ではやや味方とのコース取りに息を合わせるのが難しそうだったルックマンだったが、セットプレーではバッチリ連携を拾う。バイタルからエリアに入り込むランで先制点となるミドルを決めて見せた。ドゥブラーフカからするとコースが甘かっただけにセービングしたいところだったか。
一方のニューカッスルは30分付近からペースを取り返し、敵陣に攻め込む頻度を上げる。するとセットプレーからギマランイスが根性で押し込んで同点。こちらもシュマイケルからするとボールをうまくプロテクトできなかったという観点で悔いが残るプレーだったかもしれない。
同点にされたレスターは落ち着いたショートパス主体の保持でペースを取り戻そうとするが、これはかえってニューカッスルのプレスを呼び込むだけで裏目に。落ち着いてペースを握ることは許されなかった。
だが、後半にようやくレスターは保持での落ちつけどころを見つける。狙い目にしたのはサン=マクシマンの裏のスペース。この裏に立つジャスティンにボールを受けてもらうことで、SBのターゲットを引っ張り出し、SB-CBのスペースに走り込む選手を作る。逆サイドも同じ仕組みで、開くルックマンに広げてもらったSB-CB間をデューズバリー=ホールで突っつくことで敵陣深くまで抉る仕組みを作る。
ニューカッスルはカウンターから反撃に出るも、サン=マクシマンのドリブルからのラストパスやシュートがどうも刺さらず攻撃が単発になってしまう。選手交代からマンマークプレスを行うことでも主導権の取返しを狙ったハウだったが、こちらも空振り。徐々に間延びした陣形を利用され、レスターにライン間への縦パスを許すようになる。
しかしながら、押し込んだ後のもう一味が足りないレスター。PA内での動き出しが乏しく、最後の最後の決め手になる動きがない。
試合はドローで終わるかと思われたラストプレー。勝利を引き寄せたのはニューカッスル。左サイドからウィロックが持ち上がってPA付近まで侵入。持ちすぎてひっかけてしまったかと思ったが、これがギマランイスの目の前に転がる幸運に助けてられて決勝ゴールにつながることに。我慢の後半をしのいだニューカッスルがラストワンプレーで勝ち点3をモノにした。
試合結果
2022.4.17
プレミアリーグ 第33節
ニューカッスル 2-1 レスター
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:30′ 90+5′ ギマランイス
LEI:19′ ルックマン
主審:ジャレット・ジレット
⑥ウェストハム【6位】×バーンリー【18位】
■互いに悔いが残る引き分け
先週のプレミアで最も大きなニュースといえば、ショーン・ダイチの解任だろう。多くのファンは仮に降格したとしてもダイチとバーンリーの旅は続くと思っていただろうが、終わりは突然やってきてしまった。バーンリーはどこに向かうのかはわからないが、ひとまずはユースコーチを引き上げて今節に臨むことになった。
対するはウェストハム。先週に引き続き、今週も4位争いのライバルの2チームが敗れた状態での対戦。土曜日にアーセナルとトッテナムが敗れ、ウェストハムには再びチャンスが転がってくることになった。
立ち上がりからうまくいっていたのはバーンリーの方だろう。縦パスをベグホルストに付けて、ここから前を向く選手を作り、前進する。サイドにおいてもオーバーラップの積極活用で大外からクロスを狙ってエリアに迫る。
ウェストハムのブロックは前節までの不調を明らかに引きずっていた。ライン間は空いてしまい、縦パスはやたら入れられてしまい、バーンリーの前進を阻害することが出来なかった。
ウェストハムは保持でもなかなか苦しんでいた。今季はやたらサイドに流れがちだったアントニオは中央から置いたままでの前進となった。これがまぁスピードに乗れない。機動力のある2列目のアタッカーにボールが渡れば、少しはスピード感は出てくる。
前で時間が稼げれば、クレスウェルが上がってクロスを打ち込むことができる。この日もクレスウェルは左サイドからの供給がキレキレ。いかに人数を揃えたPAに彼のクロスを打ち込めるかがポイントになっていた。
そんな中でウェストウッドが大怪我に見舞われてしまう。一刻も早い回復を祈りたいところである。直後のセットプレーからのベグホルストの先制ゴールは彼の回復を祈るためのセレブレーションがささげられた。
得点で流れを手にしたバーンリーはハイラインの裏をコルネがつく形で攻勢を強める。前半終了間際には飛び出したコルネがファビアンスキに倒されてPKを獲得。だが、これをコルネは決めることができない。
後半もどちらかといえばペースはバーンリー。コルネの抜け出しとベグホルストのポストという明確な前進の手段をベースに主導権を握る。
ただ、ウェストハムも徐々にエンジンがかかってきた様子。カウンターにも鋭さが出てきて、徐々にバーンリーのバックラインを脅かすことになる。
同点ゴールの起点になったのはアントニオ。相手を置き去りにするような圧倒的なパワーとスピードは依然として鳴りを潜めているが、得点につながるFKを得たことは最低限といった形だろうか。FKに合わせたソーチェクが同点となるゴールをゲットする。
終盤はウェストハムが押し込みバーンリーを追い込む展開に。しかし、立ちはだかったのはポープ。最後の砦になった守護神がゴールマウスを死守し、ウェストハムに勝ち点3を許さなかった。バーンリーは失敗したPKが、ウェストハムは終盤の猛攻が実らなかった悔いが残る引き分けになった。
試合結果
2022.4.17
プレミアリーグ 第33節
ウェストハム 1-1 バーンリー
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:74‘ ソーチェク
BUR:33’ ベグホルスト
主審:ポール・ティアニー
⑦アストンビラ【11位】×リバプール【2位】
■どこからでも飛んでくる攻撃で崩し切ってみせる
アンフィールドでトッテナム相手に勝ち点を落としてしまったリバプール。これで優勝の可能性はかなり少なくなってしまった。だが、可能性がある限りはチャレンジを続けるしかない。立ちはだかるのはクラブのレジェンドとかつての仲間がいるアストンビラである。
戦前の予想と反して先手を奪ったのはアストンビラ。左サイドのミングスから奥行きのあるフィードをつけて、相手の陣地深くまで侵入すると、その流れからのクロスを押し込んだのはドウグラス・ルイス。珍しくIH起用となったルイスの攻撃参加でいきなりリバプール相手に先制攻撃を仕掛ける。
しかし、リバプールもすぐさま反撃。セットプレーからの混戦を最後はマティプが押し込みすぐさま同点に追いつく。この場面ではミングスの処理ミスが痛かった。クリアをミスってしまい、リバプールに二次攻撃の可能性を残してしまったことで失点のきっかけになってしまった。
同点ゴールで早々に振り出しに戻った試合。ここからの展開はリバプールのペース。ナローな立ち位置をとる3トップは縦に鋭く走り込む動きを軸に速攻を牽引する。大外はSBが担当。アレクサンダー=アーノルドとツィミカスが両サイドの外に張る形で遅攻のアクセントになる。ツィミカスは悪くはなかったが、やはりロバートソンに比べるともう一声たりない感は否めない。
いつもよりもレーン分けがはっきりした立ち位置で、攻撃のスピードに緩急をかける形でビラのゴールに迫っていくリバプール。アストンビラも左サイドのディーニュ、マッギン、イングスのトライアングルから反撃を狙うが、リバプールの優勢は動かない。
時間が経つにつれてインサイドが空いてきたアストンビラ。リバプールは定点攻撃においても中央をこじ開けての侵入が増えてくる。ケイタやジョーンズなどIHも徐々に攻撃で存在感を増していく。
後半もペースはリバプールから動かない。幅をとってもよし、中央をこじ開けてもよし、速攻もよし、遅攻もよし。あらゆる展開において主導権を握る。アストンビラは2トップの連携からチャンスを作り出す場面もあったが、前半以上に窮地に追い込まれる形になる。
チアゴを投入し、さらに支配的な展開を作るリバプール。ようやく手にした決勝点はトランジッションから。3トップの華麗な連携で最後は外に流れたディアスからのクロスを入り込んだマネが技ありの合わせでゴール。ようやく追加点を奪う。
リバプールは温存していたサラーも投入し、さらに攻勢を強める。アストンビラは防戦一方。ゴールに迫られる場面だらけだが、致命的な3点目はなんとか体を張って防ぐ。しかし、ここから反撃までの余力はなし。リバプールが試合を控えるシティにプレッシャーをかける勝利を挙げた。
試合結果
2022.5.10
プレミアリーグ 第33節
アストンビラ 1-2 リバプール
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:3′ ルイス
LIV:6′ マティプ, 65′ マネ
主審:ジョナサン・モス
⑧リーズ【18位】×チェルシー【3位】
■呆れ顔のマーシュと復調のルカク
前節のアーセナル戦は敗戦に加えてエイリングを一発退場で失い、踏んだり蹴ったりな結果となったリーズ。強豪3連戦のトリとなるのは週末にFA杯の決勝を控えているチェルシーである。
ややメンバーを入れ替えてきたチェルシーに対して、もちろん目の前の試合に全力のリーズ。立ち上がりから強気のプレッシングでチェルシーの人を捕まえにいく。対するチェルシーもプレッシングには積極的。3トップだけでなく、CHも相手を捕まえにいきながらリーズのビルドアップにプレッシャーをかけていた。
どちらのチームのプレスにも共通しているのは、相手を同サイドに閉じ込めて脱出させないこと。逆に言えば、ボール保持側は閉じ込められているサイドから脱出できるかどうかがポイントになるということである。それができれば保持側は開けたスペースからチャンスが作れる。
プレス攻略においてより優れていたのはチェルシーだった。リーズはラフィーニャの奥行き頼みの一点突破になっているのに対し、チェルシーは安定したルカクのポストワークからマウントを経由して、大外のジェームズまで運ぶルートを確立する。
先制点もこのルートから。左サイドから中央を経由し、逆サイドで深さを作ったジェームズがマイナス方向に走り込んできたマウントのミドルを演出して見せた。流麗な崩しでチェルシーが早い時間帯に先手を奪う。
取り返したいリーズだが、前節と同じくまたしても熱さが間違った方向に。弁解の余地のないコバチッチへの危険なタックルをかましたジェームズが一発退場になってしまう。2試合連続の前半での主力の退場にはベンチのマーシュもただただ呆れることしかできない。
というわけでここからはさらにチェルシーペース。ルカクのパワーとスピードはただでさえリーズのバックラインを苦しめているというのに、左右のボール運びが安定し、チェルシーはリーズのPA陣内に迫れるようになったのだから溜まったものではない。
さらにリーズはハリソンが負傷交代。頼みのアタッカーをさらにもう1枚失うことで完全に手詰まりになる。
迎えた後半もペースは変わらない。一方的に攻め立てるチェルシーは前半に引き続き右サイドから。チャロバー、ジェームズ、マウントを軸に右サイドからエリアに侵食していく。対する左サイドはフィニッシャーに専念することでエリア内に侵入。右サイドから作った攻撃をプリシッチが仕上げた2点目のシーンでは一歩も動けなかったメリエの心が折れる音が聞こえてくるかのようだった。
状況はさらに悪くなる。最後の頼みの綱と言っていいラフィーニャが負傷で無念の交代。もはや気になるのはこの試合の勝敗よりもリーズには次節出場可能なアタッカーがどれだけいるのだろうか?という点である。
そして、最後はルカクが仕上げ。PA内でフェイントを重ねてシュートコースを作り出して撃ち抜いたところを見ると徐々に調子を上げているように見える。ゴールだけでなく90分のパフォーマンスでFA杯出場に向けて好アピールを見せたルカク。チームも3位固めに向けて視界良好の勝利となった。
試合結果
2022.5.11
プレミアリーグ 第33節
リーズ 0-3 チェルシー
エランド・ロード
【得点者】
CHE:4′ マウント, 55′ プリシッチ, 83′ ルカク
主審:アンソニー・テイラー
⑨ウォルバーハンプトン【8位】×マンチェスター・シティ【1位】
■鬼になったデ・ブライネ
この日のシティは立ち上がりから目の色が違ったように思う。CLというコンペティションから解き放たれたのが大きかったのか、それともグアルディオラのモチベーションのハンドリングが功を奏したのかはわからないが、たちあがりから容赦がなかった。
後半戦になるにつれて鳴りを潜めていたボールホルダーに対するサポートの少なさはこの日は見違えるよう。持てば裏に走るといったように、ホルダーに複数の選択肢を与えるために動き出す。
かといって急ぎすぎることもなく、ロドリを中心にウルブスの3センターのマークを外してサイドにボールを振りながら薄いところから攻略していくのも忘れない。勢い任せではなく、制御しながら崩す場所を模索している。
その中でも別格だったのはデ・ブライネ。ボールを持っていようと持ってなかろうとゴールに向かうシャープさは異次元。ボールを奪う、走り込む、自分で持ち込んでシュートを打つ。あらゆる動きがキレキレであっという間に3得点を奪って前半のうちにハットトリックを決めてしまった。
ウルブスもなんとかショートパスをつなぎながら対抗したいところではあるが、本気モードのシティにことごとく捕まってしまい、ボールを前進させることができない。一応、前を向くことさえできれば対抗できるマッチアップもないことはなかった。代表的なのは右の大外のシキーニョ。ジンチェンコとの1on1を制することができる右のWBに大きな展開でボールを届けることで繰り返しウルブスは陣地回復をすることが出来た。
実際に得点を決めたのも早い攻撃から。ヒメネスのキープを活かした速攻をデンドンケルが沈めて見せた。
しかし、この日は後半もシティがとまらない。最終ラインがスピードでちぎられてしまうのはウルブスも同じ。ウルブスはプレスでボールを奪えるわけではないので、攻撃の機会を確保できるわけではないし、抜け出す選手を作るまでに保持で何度も捕まってしまっているので、劣勢の状況は変わらない。
そして、極めつけがデ・ブライネの存在である。後半も得点を決めた彼はたった60分で今年のモリニューの最多得点者(ラウール・ヒメネスと並んで4得点)になってしまった。
フォーデンを軸にシキーニョやネトが攻撃でお留守になるサイドを集中的に狙って得点機会を作るシティ。最後の仕上げは押し込むだけとなったスターリングの5点目。得失点差争いにもつれる可能性があるリバプールに対して大量の貯金を作って見せた。
鬼になったデ・ブライネを止めることが出来なかったウルブス。この日のシティと当たってしまったのは少し気の毒だったかもしれない。
試合結果
2022.5.11
プレミアリーグ 第33節
ウォルバーハンプトン 1-5 マンチェスター・シティ
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:11‘ デンドンケル
Man City:7’ 16’ 24‘ 60‘ デ・ブライネ, 84’ スターリング
主審:マーティン・アトキンソン
⑩エバートン【16位】×クリスタル・パレス【13位】
■史上初のどんでん返しで決めた残留
勝てば残留が決まるホームゲーム。チェルシー相手にアップセットを起こしたあの日以上にグディソン・パークには緊張感の溢れる雰囲気が漂っていた。次節はアーセナルとのアウェイゲームということを考えれば、是が非でもこの日に残留を決めておきたいところである。
その雰囲気にほだされてか、立ち上がりから両軍はテンションの高い展開に。ハードなタックルに小競り合い、ちょっとしたことでひと悶着がある状況は紛れもなくエバトニアンが作り出した舞台装置による影響である。
比較的プレスが緩かったエバートンに対して、パレスが縦に長いボールを選択することが多かった。そのため、試合は立ち上がりからボールが行き来する展開になる。
キャルバート=ルーウィンに向けたやや単調な放り込みを繰り返すエバートンに比べると、ザハのポストを活用したパレスの前進は機能的だった。ポストに落としを付ける選手をセットで組み込み、前を向く選手からさらに奥にパスを狙う。この形でパレスは積極的に敵陣に進むことができていた。
ザハのポストに対しては対面のイウォビが苦しい上に、大外をミッチェルが回ってくるおまけつき。パレスは左サイドに活路を見出して、一気に攻略を狙っていく。
その勢いの中で先制点を得たパレス。セットプレーからマテタが合わせて先制。エバートンとしては直前のリシャルリソンのFKを活かせなかっただけに悔しい失点となった。
起点を見いだせたり、あるいは同数でもサイドを壊せそうなパレスの攻勢は止まらず。前半のうちに追加点をゲット。コールマンのパスミス起点の波状攻撃を最後はアイェウに押し込まれてしまった。GKのピックフォードも含めて、エバートンは軒並みPA内での対応がうまくいかなかったといえるだろう。
2点のビハインドを背負ったエバートンはリスクを賭して4バック移行。これによってザハのマッチアップ相手はイウォビからコールマンになった。
SBを積極的に上げて後半は一気に攻撃に出るエバートン。セットプレーから早々にキーンのゴールで1点をお返しする。パレスはセットプレーの拙さで流れを悪くする悪癖がまたしても顔をのぞかせた格好である。
4バックにしたことで当然カウンターの怖さはアップしたエバートンではあったが、もう勝つしかないのでそんなことは言っていられない。パレスがヒューズ→ミリボイェビッチというやや守備的なメッセージにつながる交代に踏み切ったこともあり、後半はエバートンがボールを持つ時間が増える。
そんな中で粘りを見せて同点ゴールを押し込んだのはリシャルリソン。うまさと泥臭さのハイブリットのようなゴールでグディソン・パークを煽る。
そしてその時はやってくる。グレイのFKに合わせたのはキャルバート=ルーウィン。1年間負傷に苦しんだエースが最後の最後で残留を決める一撃をお見舞いする。
エバートンにとって、0-2のビハインドからの逆転劇はプレミア史上初めてのこと。史上初のどんでん返しでクリスタル・パレスを返り討ちにしたエバートン。苦しんだシーズンだったが、1試合を残してホームのサポーターと残留の喜びを分かち合うことに成功した。
試合結果
2022.5.19
プレミアリーグ 第33節
エバートン 3-2 クリスタル・パレス
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:54‘ キーン, 75’ リシャルリソン, 85‘ キャルバート=ルーウィン
CRY:21’ マテタ, 36‘ アイェウ
主審:アンソニー・テイラー