このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。
天皇杯 準決勝
2021.12.12
川崎フロンターレ
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大分トリニータ
@等々力陸上競技場
戦績
近年の対戦成績
過去10試合の対戦で川崎の7勝、大分の2勝、引き分けは1つ。
川崎ホームでの戦績
直近10試合で川崎の8勝、引き分けは2つ。
Head-to-head
<Head-to-head>
・直近9試合の公式戦での対戦で大分が川崎に勝利したのは一度だけ(D1,L7)
・川崎のホームゲームで大分が最後に勝利したのは2001年の8月。以降の13試合は川崎が無敗(W9,D4)
・天皇杯での対戦は過去に2回。いずれも川崎が勝利を挙げている。
・過去の4回のカップ戦での対戦において、大分は川崎相手に得点を挙げたことがない。
直近の対戦成績は川崎が優勢。大分の勝利は直近6試合がいずれもホームゲームであり、川崎の本拠地に乗り込んでの勝利は20年ほどさかのぼる必要がある。大分が決勝進出を果たすには20年ぶりの快挙が必要になる。
そして大分は天皇杯過去2回、ナビスコカップ過去2回の計4回の対戦において勝利どころか得点を挙げられていない。川崎はこの間10得点を挙げている。
川崎にとっては準々決勝で90分1レグ制のトーナメントで勝利したことのなかった鹿島に当たった後、カップ戦で全勝している大分と準決勝で当たるというスケジュールになっている。
スカッド情報
【川崎フロンターレ】
・ジェジエウは負傷の治療のため帰国。
・車屋紳太郎は横浜FM戦にて負傷交代。
【大分トリニータ】
・増山朝陽、呉屋大翔、野嶽惇也はカップタイドルールにより出場不可。
予想スタメン
Match facts
【川崎フロンターレ】
<川崎のMatch facts>
・直近の5試合で2勝のみ。
・2021年に等々力で行われた公式戦22試合で無敗(W17,D5)
・12月の公式戦は直近12試合負けなし。
・その年にリーグダブルを達成したチームとの天皇杯の対戦は4連勝中
・ここまでの天皇杯の得点者は6名で複数得点がない
・レアンドロ・ダミアンは直近のリーグ戦8試合で9得点を決めている。
優勝後の試合を多く含んでいるという注釈はつくものの、直近のリーグ戦5試合で2勝。大阪勢以外には勝てていないという戦績は今季の中では大人しい。不気味なことをいうと敗れた浦和とのルヴァンカップの直前5試合も2勝2分1敗という今回と全く同じ成績である。
ただし、ホームの等々力の舞台には絶対の自信を持っている川崎。この試合に勝てば2021年の等々力での公式戦を無敗で終えることが出来る。
12月の公式戦にはめっぽう強く、最後に敗れたのは2013年。今回と同じ天皇杯という舞台で今回と同じ九州勢(鳥栖)とジンクス的に不気味な要素は少し多い。ただし、同年にリーグダブルを達成している相手(2021年の大分にもダブル)との天皇杯での対戦は4連勝中。今年も清水、鹿島とすでに2勝を挙げている。
天皇杯でのスコアラーは6人(脇坂、橘田、家長、ダミアン、旗手、小林)が1得点ずつとバラけているが、今得点の面で期待がかかるのは得点王に輝いたダミアン。単独受賞とはならなかったが、最後8試合で9得点の追い上げはあっぱれ。なかでも直近4試合は6得点とさらにギアを上げている。MVP&得点王の勢いをそのままに川崎に2年連続の天皇杯のタイトルをもたらしたいところだ。
【大分トリニータ】
<大分のMatch facts>
・直近の公式戦9試合で負けは2つのみ(W5,D2)。
・アウェイでのリーグ戦2勝はリーグ最少タイ。
・クラブ史上初の天皇杯準決勝進出。
・直近の7得点のうち、6得点は前半に挙げたもの。
・町田也真人はチームリーダーの8得点。
・片野坂監督にとって大分での通算250試合目の指揮
2節を残して降格が決まってしまった大分。だが、シーズン終盤の成績はかなり好調。今季の過半数である5勝を残り11試合で挙げており、懸命に追い上げての残留を目指すことが出来ていた。直近のリーグ戦では3試合負けなしと天皇杯を晴れ舞台にすべく虎視眈々と準備を進めている。
アウェイでの不調は対川崎に限ったことではないという懸念はあるが、クラブ史上初の天皇杯ファイナルの舞台に向けて下馬評を覆す準備は万端。川崎ファンから見ても昨年敗れた相手である大分は不気味な存在である。
トップスコアラーは8得点の町田。昨季までのJ1での2年間では1ゴールだったが、今季は8ゴールと2桁まであと一歩というところまで迫ることができた。250試合という片野坂監督の節目の試合。104勝というクラブ史上最多の公式戦勝利数を記録した偉大な指揮官にとってはこれが最後のコンペティション。降格の悲しみも別れを惜しむ時間も今は棚上げし、あの手この手を使って新国立の切符を川崎から掠め取ることを狙っているはずだ。
展望
■理にかなった前進ができれば強い
降格が決まってからの大分はむしろ調子を上げているといっていいだろう。結果もさることながら、内容も比較的充実しているのが特徴。特にボール保持における崩しのところは見事な成果を上げている。
キーになるのは昨シーズンまで川崎にいた下田北斗。CHの一角を務める彼がこのチームのボール運びの中心となる。3CB+2CHという形から変形するのが大分のビルドアップの特徴だが、下田が流れる方向から前進を狙う意図が見える。下田が後ろに入ることにより、同サイドのCBやWBが押し上がる構造に。
ワイドのCBも攻撃に参加するくらい同サイドの攻略に人をかけるのが大分のビルドアップの流儀。下田だけでなく、GKの高木もCBと同じラインに位置するポジションを取り、後方の選手の押し上げに貢献することも多い。キーマンはどちらにしても元川崎である。
人を押し上げる手段はそれでOK。ボールを前に送る手段としては3トップの裏抜けを使う形。もしくは大外にいる選手を浮いた選手を活用する。そこから裏抜けを探る形。
いずれにしても、一度サイドから裏にボールを出して相手のラインを下げることが先決で、そこから改めて相手の守備陣を崩しにかかる。下田が舵取り役として重宝されるのは、長いレンジのパスを駆使してピッチを広く活用できる資質があるからである。
サイドでの崩しは大外、ハーフスペース、裏に抜ける選手、できれば後方のサポートとサイドに多くの人を集めて同サイドから抜け出す状況を作り、ファーのクロスで仕留める形が得意。
柏戦の3点目とかは理想的な状況で、同サイドで相手の守備を揺さぶり切った後、逆サイドのWBにクロスを合わせて増山が仕留める形である。
守備においては5-4-1の撤退ベースにCHが相手の中盤にプレスをかけることもしばしば。ローラインを基調に隙あらば攻撃を見据えたラインを上げる形を模索する。守備で少しでもラインを上げたのは攻撃における陣地回復の手段に乏しいから。
ローラインでこもってしまった時にロングカウンターという一手が繰り出せる爆発的なスピードアタッカーは大分にはいない。そのため、少しでも相手陣に近い位置で攻撃を始めたいという意識はあるだろう。その意識から逆算されてのプレッシングである。
■攻守に求められる割り切り
川崎からするとGKを絡めてのボール運びができる相手は率直にいって苦手である。直近で言えばC大阪戦は結果で言えば大勝だけども、ジンヒョンからのフィードにだけはどうしても手を焼いてしまったとか。彼の得意技である素早く大外の選手にボールを届けるというスキルは大分の高木もできるはずである。
マルシーニョ、家長という両WGはこうしたボールへの対応が長けている選手ではなく、後方のSBやIHにこうした対応の負荷はかかることになる。おそらくだが、プレスをかけきれないタイミングも出てきてしまうように思う。
川崎の非保持のポイントはどこで割り切るかだと思う。当然意識として前からはプレスにいくと思う。ベタ引きで大分のビルドアップのミス待ちをするというのは今季の川崎のスタンスからいっても考えにくいだろう。
ただ、前から行くにしてもどこまで追うかというのは難しい。大分はスピード豊かなアタックというよりは1つ1つ相手の動きに対して正解を出し続けて論理的に前進する傾向が強い。前へのアタックを続けるということは相手に対して後方のスペースに正解を与えてしまうということでもあるので、リスクが雪だるま式に積み上がっていく。もちろん取り切れればOKなのだけども。
なので、どこかで奪いきれないという判断に至ったならば、撤退するという考え方も当然ありである。その時に大事なことは前から行く意識を完全に失わないこと。相手がマイナスのパスを出したならば、ラインをすかさず上げることが大事。そして、押し込まれた際に気をつけたいのはファーサイドへのクロスのケア。特に身長の部分でミスマッチができやすい登里のサイドは要警戒である。この部分で手当ができない車屋がいないとなれば、大分は積極的にこのファーへのクロスを狙ってくるはずだ。
川崎の保持に対してはおそらく大分は直近の対戦よりも高い位置から奪いにくるはずだ。チームのスタイルとは少し違う形かもしれないが、川崎から勝ち点を奪えるチームがいずれも前からプレスに行っていることは片野坂監督なら見逃さないはず。イメージとしては昨年の大分アウェイでの一戦のようになると予想する。
川崎は時間がない中でのビルドアップに難がある。長い目で見れば前から来る相手をいなすスキルを当然身につけて欲しいところではあるが、基本的にはダミアンのポスト、マルシーニョの裏抜け、家長のタメを使いながら安全に前進を試みて欲しいところである。
特にWBが前への意識が比較的強い大分に対しては家長を使った前進は効きそう。家長がWBを釣り出した裏を山根や脇坂が狙う形でボールを引き取る。そうして、同サイドのCBを引き出しながらエリア内にクロスを送り込むパターンが欲しい。
片野坂監督はおそらく奇襲を目論んでいるはず。試合が長引けばカップタイドで層が薄い大分が川崎相手に優位を取れる確率はかなり下がってしまう。ならばなるべく早めにスコアの上でも優位は取りたいはず。その前に出てくる意識を逆手に取りながら3トップを軸に前進する。奇襲を逆手に取ったシナリオで決勝進出を決めたいところだ。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)