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「テンポを支配する」~2018.12.11 CL グループステージ 第6節 リバプール×ナポリ レビュー

 スタメンはこちら。

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【自力突破の条件】
リバプール:1-0での勝利、もしくは2点差以上の勝利。
ナポリ:1-0以外の1点差での敗戦、もしくは引き分け以上。

 今季のCLを代表する死のグループになったグループC。他会場で戦うパリ・サンジェルマンと含め三つ巴のノックアウトラウンド進出争いは、最終節までもつれることとなった。直接対決となったこの会場は、他会場でパリが勝利する確率の高さを考えると、リバプールもナポリも自力突破を決めておきたいところ。まさに天下分け目の一線になった。

目次

【前半】
ずっと俺のテンポ

 ナポリをやっと見れる!印象としてはとてもアンチェロッティらしいチームだなと感じた。私的アンチェロッティらしいチームとは、就任直後は前任者のチームを踏襲し、変化はマイナーな範囲にとどめているチーム。すなわち、このナポリでいえばサッリの刻印がまだ色濃く残っているということ。基本的な立ち位置は4-4-2に見えたが、中盤のタスク割りは比較的チェルシーに似ていたと思う。ボール保持時の展開を一手に担う1枚(ハムシク)と、ボールを受けるスペースをより意識する2枚(ルイス、アラン)の組み合わせ。カジェホンはよりアタッカー色が強く、特にタスク的には前の2枚と近い役割が求められてそう。ボール非保持の際に、人へのプレッシャーが弱く、ゾーンを見る意識が強いという特徴も共通していた。

 ナポリのプレスで面白かったのは、アンカーのヘンダーソンを比較的放置していたこと。2トップ役のインシーニェとメルテンスが近くにいたらまぁ見に行くかな!程度の意識だったように思う。ナポリのセントラルハーフはヘンダーソンを放置して、インサイドハーフのケアをしていた。というわけでリバプールの方はヘンダーソンのところで時間とスペースができる仕組みになっていた。じゃぁヘンダーソンのところからバシバシ局面を打開できてたかというと微妙なところ。ビルドアップの出口として、ボールの預けどころにはなっていたものの、そこから展開を進められるようなパスはあまり多くなかった。サイドチェンジが通せてもギリギリだったり、バウンドが悪かったりする場面もちらほら。ヘンダーソンのプレーが特別悪いというわけではないのだが、そこがボトルネックになるシーンが散見されたのは事実。フリーになる機会が多かったことも考えれば、さらなる精度の向上は求められるはずだろう。

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 それでもリバプールが試合を優勢に進められたのはサイドアタックが機能していたから。前提としては両SBのパス精度の高さがある。ボールの前進のさせ方は左右対称ではなく、左はミルナーとマネが異なるレーンに並び、ロバートソンからのパスコースを作る。ダメなら横のヘンダーソンか後ろに戻してやりなおし。ナポリはロバートソンへのチェックよりも、4-4ブロックの維持を優先していたので、結構ロバートソンは余裕をもってボールが持てることが多かった。右サイドはよりダイレクトにサラーの裏抜けがメイン。ルイとクリバリの間が結構空くので、マティプとアーノルドはシンプルに裏へのパスを狙っていた。バシバシ止めていたクリバリはさすが。ちなみにルイはナポリの中でかなり自由にポジショニングを許されていたのか、それとも自由にただ動いていただけなのかはわからないが、アナーキーな動きだった。ここから突破の光が見えていれば、ナポリは手を焼いたかもしれない。

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 サイドからボールを進められる以外にリバプールが優位に立てたのはプレス強度の部分。この試合は両チームにとって求める最終スコアがアンバランスな試合。リバプール的にはドローはNGだが、ナポリ的にはドローはOK。リバプールはガンガン!ナポリは慎重に。が定跡通りなのかもしれないが、この試合では昨シーズンよろしくリバプールがアップテンポのまま試合を進め、ナポリはそれにおつきあいさせられたような印象を受けた。ナポリの前線のキャラクターだけ見れば、縦に速い展開で素早く攻撃完結は悪くないとは思うのだが、走り合いとプレー強度の点ではリバプールに一日の長があったように思う。ナポリはボールを収められて、時間を作れるタイプが不在で、縦に素早くいかざるを得なかったかもしれない。ボールを早く前に送ると、早く返ってくるっていうし。リバプールがペースを握るというか、試合のテンポごと握ったような前半だった。というわけでなかなか相手のテンポから抜け出せないナポリ。アーセナルファンとしては、オスピナが痛みながら時間を稼ぐっていう、とても懐かしい光景で流れを断ち切っていたのは微笑ましかった。

 リバプールにとって喉から手が出るほど欲しかった先制点は右サイドから。サラーはクリバリに苦戦していたが、このシーンはルイを突破してスピードに乗った状態でクリバリと対峙することでデュエルを制した。オスピナの動きも見ながら、冷静に股抜きまで決める姿はまさしくエースにふさわしいフィニッシュだった。

 ナポリとしては前進のきっかけがつかめず。45分を通してリバプールのテンポにずっと付き合わされていたイメージ。まさしくリバプールが試合をコントロールしたといった前半といっていいだろう。

【後半】
それでも俺のテンポ

 メンバーの交代はなかったものの、システムを若干修正したナポリ。狙いはプレス回避のためのビルドアップ改善だろう。ハムシクを最終ラインからボールを引き出せる位置に寄せる。そしてアランと前半より内寄りに絞ったファビアン・ルイスの2人でヘンダーソンの両脇を狙おうという算段だ。前半は割とフリーダムに動いていたマリオ・ルイは、たまに流れてくるトップの選手と共に大外のレーンを占有した。

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 理屈の上では素晴らしい修正なのだが、思ったよりペースを握れなかったのは、インテンシティでリバプールが上回っていたから。ミルナーとワイナルドゥムとヘンダーソンのトライアングルは常軌を逸しているのかこいつらというくらい走り回って、空いている選手を捕まえに行く。ちなみにハムシクを捕まえに行く役割はワイナルドゥムが担当することが多かった。ナポリがパスワークでリバプールのプレスのスピードを上回れるシーンはそう多くなかった。もたもたしていると、前線からマネがプレスバックに来るし、ヘンダーソンは中盤の門番として君臨。仮にそこを越えても、最終ラインには「うまい、速い、移籍金が高い」の三拍子がそろったファン・ダイクが立ちはだかる。めんどくさいこと極まりない。リバプールの守備の弱点とされがちなアーノルドとのアイソレーションを任されたルイもあまり効果的な働きは見せられず。しかも、ナポリとしてはボールを中盤でひっかけると、即カウンターが飛んでくる状況。ナポリは前半よりもやや前がかりなので、リバプールはスペースを使ったカウンターができていた。完全にリバプールのテンポなのだが、追加点が入らなかったのはそのリバプールのテンポに唯一個で対抗できていたクリバリのおかげだろう。ルイを振り回しまくるサラーが、クリバリ相手に手を焼いているのはとても興味深かった。

 ナポリ目線でいえば、展開では押し込まれているものの1点を取れば形勢は変わる。スピード系小兵アタッカーを並べるだけでは、陣形を押し上げられないと判断したナポリ。より基準点的な働きが可能なミリクを投入することで流れを変えようと試みる。この交代でナポリはエリア内のクロス攻撃を解禁。ミリク前に投入されたジエリンスキとミリク後に投入されたグラム、そしてインシーニェを中心に左サイドに流れてからのクロスを使うようになる。徐々にエリア内のシーンが増えるナポリ。最後の最後で迎えた千載一遇のチャンスをミリクが決められなかったのは痛恨。よかったな、ロブレン。

まとめ

 すんでのところで決勝トーナメント進出を逃してしまったナポリ。強豪対決ローテに挟まれていた前回と違うリバプールのインテンシティの高さに面食らったかもしれない。チャンスらしいチャンスはおそらく最後のミリクの決定機くらいだった。とにかく試行回数が少なくて、前線のメンバーについてはそもそも悪いパフォーマンスだったのか自体が評価がしがたい。リバプールには完敗だったが、ELでは優勝候補の一角なはず。ハムシクを止めながら、前線のアタッカーと対峙するのは並みのチームならば容易ではない。アーセナル的には当たりたくないので、どこかが倒して欲しいです。

 得点は1点だったが、圧巻のパフォーマンスだったリバプール。個人のパフォーマンスもさることながら、ユニットとしての機能性の高さが印象的だった。マネ、サラー、フィルミーノの前線トリオはもちろんだが、特に目を引いたのは強烈なプレスの原動力になった中盤のトリオ。そして、起点になることが多かった左サイドのトリオ(マネ、ミルナー、ロバートソン)。配球の質の高さで違いを見せたロバートソンもさることながら、ピッチのどこにでもいたミルナーは圧巻である。なんだこいつは。ノックアウトラウンドではまずはファン・ダイクが累積警告によるサスペンションという難局だが、念願のビックイヤーに向けて、まずは第一関門の死の組を突破したことはチームにポジティブな雰囲気をもたらすはずだ。

試合結果
CL グループステージ 第6節
リバプール 1-0 ナポリ
アンフィールド・ロード
【得点者】
34′ サラー
主審:クレマン・トゥルパン

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