主力投入で徐々に整う元日決戦
代表史上初の元日決戦。日本代表は初スタメンの選手も多く、テスト色が強いメンバーの中に常連組の伊東と田中が入るメンバー構成。毎熊はもはやキャリアがある方に分類できるくらいにはキャップが少ないメンバーが集められている試合となった。
元日がタイにとってどんなものかはわからないが、彼らの景気良く捕まえに来てくれるスタイルはある意味お正月らしいと言えるだろう。高い位置からのプレスでタイは高い位置からの阻害を狙う。
日本は縦に速いスタンスでこれに応戦。縦にボールをつけて失敗したらすぐに即時奪回に移行。伊藤が細谷と並ぶ4-4-2の形をベースに後方もスライドから相手をマンツー気味に捕まえていく。
立ち上がりからのこの日本のスタンスは森保ジャパンで当たり前になっている縦に速いスタンスについて来れるの?というテストのように見えた。細谷、伊藤あたりはこうしたスタイルには馴染みはありそうな感じ。ファストブレイクから2人での完結を狙うが、なかなかフィニッシュのところで精度が出てこない。リトリート時のタイは5-3-2気味になるケースもあるが、人基準で捕まえにいくスタンスは変わらないため、この布陣が乱れることもしばしば。
開始からしばらくは高い位置でボールを奪ってのチャンスメイクをダイレクトかつ直線的に行うのが日本のミッション。そうした特性ゆえに個人技での崩しに依存する形が色濃くなっている。二人称以上の関係性をスムーズに作れていたのは伊東と毎熊の右サイドの縦関係くらいだろう。
タイはバックラインの背後を突く形から積極的に反撃を狙う。日本は回避直後に迎えたピンチのように大きく背後を取られる怪しさもちらほら。それに加えて30分過ぎから佐野や藤井といった前方にプレスにスライドする部隊の強度が少し怪しくなってきた。
伊東と毎熊が目立っている右サイドに比べて、少し存在感のない左サイド。後方から田中などの中盤がサポートすることで少しずつポゼッション色を強めていく。しかしながら奥抜と森下はなかなか思うような連携を見せることができず、左サイドの停滞感は改善したとは言い切れない。そうした中でも左サポートに行くことで活性化を図る伊東純也は流石である。
後半、日本は堂安と中村を2列目に投入。この交代は日本の攻撃を活性化。特に左サイドに入った中村は逆サイドとの接続および同サイドの森下のオーバーラップの誘発など日本の攻撃を勢い付かせる。
外からインサイドの相手のラインを下げるとトップ下の堂安はスペースを享受する。自由をもらった堂安から右サイドの伊東に展開し、後方からオーバーラップした田中が先制点を決める。
この得点のように伊東を右サイドで司令塔的に使う形が60分付近における攻撃の主流になっていく。中村はクロスに飛び込めるという意味でも攻撃の幅を広げることができている。交代で入った南野もスムーズに伊東のパスに対してボールを引き出すフリーランを行うことができた。
日本の追加点は左サイドから。大外の三浦を囮に中村がインサイドで粘り続け佐野のオーバーラップから最後は再び中村が仕留める。3点目はセットプレー。オウンゴールからさらに日本は突き放す。
最後の攻撃のカンフル剤となったのはSBの菅原。右サイドの奥行きを作るフリーランと鋭いグラウンダーのクロスでタイのPA内に穴を開ける。この形を生かしたのがデビューとなる途中交代を果たした直後の川村。嬉しい代表初ゴールの後の左サイドからのクロスに対しても飛び込むことができたのはこの代表における大きなアピールになったように思う。
ゴールラッシュのトリを飾ったのは南野。1on1を外したリベンジとして終了間際に密集からの素早いタッチでシュートに持ち込み5点目をゲットした。
後半の5得点でワンサイドゲームに持ち込んだ日本。前半の停滞感を打ち破り、アジアカップに向けて勢いをつける勝利を手にした。
ひとこと
主力が入るたびに整う感覚になっていくのはお見事。フルタイムで整え続けた伊東純也は別格だった。
試合結果
2024.1.1
国際親善試合
日本 5-0 タイ
国立競技場
【得点者】
JPN:51′ 田中碧, 72′ 中村敬斗, 74′ OG, 82′ 川村拓夢, 90+1′ 南野拓実
主審:キム・ウソン