ジョタの投入で味変したリバプールがエミレーツを制圧
FA杯の3回戦、最後の時間帯を飾るのはアーセナルとリバプールの一戦である。立ち上がりに鋭さを見せたのはアーセナル。オールコートマンツー気味のハイプレスからリバプールの中盤への縦パスをカットしながらカウンターを発動。縦パスを受ける選手にシャープにアプローチに行けるあたり、この日の立ち上がりの中盤の強度はアーセナルが上回っていたと言えるだろう。
右サイドからのアーセナルの手数をかけた攻撃は大外からDFの背後と横のスペースを両方睨むことができており、この辺りのフィーリングは良好。ハヴァーツや左サイドの面々がややがちゃっとして試合を決められないのが残念なアーセナルの前半だった。
リバプールはバックラインの位置移動を徐々に見せるように。アレクサンダー=アーノルドのインサイドへの移動がその主流。右サイドでレーンを交換してマンツーを外せればということだろう。確かに狙い通り、20分付近においてはアーセナルのプレスは止んだが、リバプールの前進はややぎこちなさがある。右のハーフスペースの裏を出口としたヌニェスが完全に抜け切らなくてはチャンスを作るのは難しい形。前半の終盤にオーバーラップからこのサイドを強襲したアレクサンダー=アーノルドがクロスバーに当たったシーンはアンフィールドのデジャブだった。
保持においてはアーセナルはジョルジーニョとライスのダブルボランチを採用。キヴィオルは大外専用かと思いきやそういうわけではない感じ。インサイドレーンでプレーすることは多かったが、ネルソンと並行の位置まで上がる事が多かったので、ビルドアップを免除してインサイドでのプレーは要求するというのがこの日のキヴィオルへ課されたタスクだったということだろう。3-2-5は維持して割り振りを変えただけという印象である。後方からのロングフィードに対して、前線が活発に裏抜けをするシーンも多く、この辺りは直近の試合の反省点が生かされている印象だ。
30分が過ぎるとアーセナルのプレスは再び加熱。しかしながら、序盤の猛攻を凌いだアリソンはこの時間帯は余裕を持って崩しに対応。PA内のサカの精細をかいたタッチもリバプールにとっては助けになった。アリソンはアーセナルのシュートを難なくキャッチして防ぎ続け、前半をスコアレスで折り返す。
後半もアップテンポなスタイルを志向するアーセナル。繋ぐよりもラムズデールがロングキックを蹴る機会が多かった分、前半よりも展開はフラットになったと言えるだろう。60分の左サイドのつなぎのような流麗なパスワークも見られてはいたが、押し込んでシュートまで持っていくのが常にアーセナルというわけではなく、試合はボールが両軍の間を行ったり来たりしていた。
リバプールは前線の並びを変えつつ、右のディアスと左のヌニェスで縦に切り込んでいくが、これはアーセナルの両CBが阻害。直線的な流れが悪い方向に向かってしまった感がある。
その流れを変えたのがジョタ。ディアスのシュートをラムズデールがファインセーブで逃れたシーンのように、長いボールの引き出し方が秀逸。中央にも起点を用意したリバプールに対して、アーセナルは徐々に長いボールを収められる機会が増えていく。
アーセナルもマルティネッリを軸に左サイドから反撃に出るが、コナテのカバーと途中から入ったブラッドリーのクローザーとしての任務が上回ることに。マルティネッリとしてはぶち抜くことができた数回で決め手に辿り着きたかったところだろう。
両チームのゴール前の展開が続く中で先手を取ったのはリバプール。アレクサンダー=アーノルドのFKをキヴィオルがクリアしきれずにオウンゴール。これでリバプールが前に出る。
エンケティアの投入による4-1-4-1シフト、トロサールとスミス・ロウの追加による3バックへの変更など、前線にメンバーを投入したアーセナル。だが、フラム戦と同じくパワープレーの効果を見せることはできず。試合は終了間際におまけのカウンターをディアスが仕留めたリバプールの勝利で幕を閉じた。
ひとこと
今のアーセナルの出来でリバプールを始終抑え込むのは無理なので、優位に立てている時間にシュートを決め切るしか勝ち筋はないのだろうなと思う。
試合結果
2024.1.7
FA Cup 3回戦
アーセナル 0-2 リバプール
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
LIV:80′ キヴィオル(OG), 90+5′ ディアス
主審:ジョン・ブルックス