MENU
カテゴリー

「Catch up FIFA World Cup Qatar 2022 Asia qualifiers」~Group B Match week 6~ 2021.11.16

第5節のハイライトはこちらから。

目次

①オマーン×日本

画像1

■後半のペースアップに貢献した左サイドコンビ

 日本の保持の狙いはベトナム戦と大きく変わらなかったように思う。中央を固めてくる相手に対して、サイドの関係性を作りながら壊していく形がメイン。左のIHは低い位置を取りながら長友を押し上げたり、内に入ってくる南野の邪魔をしないバランサー的な役割をこなす一方で、右のIHが前線やサイドの高い位置でボールに絡みながらよりゴールに近い位置でプレーするという左右非対称な役目も同じである。

    異なっていたのは人選である。守田の出場停止の煽りを受けて左のIHには田中碧、右のIHには柴崎が入った。この4-3-3の中で最も難しいかじ取りになるのは左のIHではないかなと思う。得意なプレーや使いたいエリアが決まっている長友や南野を基準に動き方を考えないといけないし、かといって2人でいってこい!ができるほどサイドアタックが強力なわけではない。

 オマーンのシステムだけを見れば、日本のWG,SB,IHでオマーンのIH,SBに対して数的優位を取れるのだけども、オマーンはアンカーのアルサーディがボールサイドにスライドするため数は均衡。オマーンはアンカーの遠藤にトップ下のアルヤハヤエイがついているため、日本は素早いサイドチェンジが出来ない。なので、アンカーは常にボールサイドで計算に入れてOK!というオマーンの守備である。 

 したがって日本が取り組まなくてはいけないのは3対3のユニットでサイドを壊すことだった。低い位置に降りる田中碧にはどこから進むかという舵取りまで任されている。

    左サイドは前節のベトナム戦に比べれば長友が大外で仕事が出来たこともあり、惜しいクロスもあったのだが、中盤にいわゆる川崎成分を注入した効果をチーム全体に広げるまではいっていない印象である。ここはベトナム戦と同じ。田中碧が頑張っていた分、やや上乗せかな?くらいのものである。

 右サイドは伊東純也への1つ飛ばしのパスでまずズレを作る。DAZNの冨安と田中碧が話していたベン・ホワイトのようにCBの吉田は山根を飛ばして一つ奥に付けられると可能性は広がる。後方の山根は後ろから押しかける形で走りこんでフォローもできるし、柴崎は高い位置に留まることで普段よりはずいぶんとタスクワーカー寄りの仕事をこなしていた印象である。

 止まってタメが作れるタイプがいないのが難点だが、そこは大迫が時たま流れていくことでカバー。ズレを作ってサイドを壊すというテーマでいえば、この右サイドの方がうまくいっていた。とはいえ、シュートまで行ける場面は稀。最終ラインにきついプレッシャーがなかった分、サイドを迂回しながら押し込めはしたが、チャンスメイクまでは物足りない!というのが日本の動きだった。

 オマーンの保持に対する日本のプレスはあまりハマっていなかった。4-3-3での守備だとアンカーへのプレスがかからない上に、サイドにおいてもSBをつり出してIHやFWを裏に抜けさせて日本のサイドの裏からの侵入を成功させることもしばしば。

 オマーンはなんでこういうことを中国戦でもやらなかったのか不思議で仕方がない。アバウトで雑なクロスを繰り返しては跳ね返されるというおおよそ日本戦の彼ららしくないプレーを数日前には見せていたので、日本戦だけつなぎでやたららしさを見せたがるのかがちょっとわからない。身体能力に長けてはいるけど、規律の部分で怪しさのある中国の守備にも十分通用する保持だったはず。

 ましてや日本と異なり、中国には絶対的な最終ラインの要がいない。PA内で吉田や冨安相手に後手を踏んでばかりだったこの日とは異なる結果になってもおかしくはなかったはずである。

 日本の最終ラインはベトナム戦よりも安定していた。状態を不安視していた長友、吉田も及第点の出来、速い攻撃は比較的スマートに止めることが出来ていた。そのため、オマーンの攻撃もまたなかなか前に進むことが出来ず。

    アンカーシステムに対して日本のプレスがハマらないのはもはやおなじみだが、前回対戦時よりもオマーンはアタッキングサードにおけるオフザボールの質と量は少し割引かなという印象。日本と同じようにオマーンもまた攻め手がなく苦しんでいた。

 後半、日本は三笘を投入し、4-3-3から4-2-3-1にシステム変更。システム変更のほかにも個々のポジションを微調整したのが特徴で、例えば前半高い位置を取った長友は大外を三笘に譲り、攻め上がりを自重。三笘との関係性がより深い田中碧をサイドに流しながらサポート役として付けることで、ドリブラーだがソリスト専門ではない三笘の手助けをしていた。

   もともと左に流れながらのプレーが多かった南野も含めて、左サイドには人数をかけるようになった日本。三笘投入の効果は絶大。1人ないしは2人をかわすという前半の日本にはなかったプレーで、オマーンの右サイドを切り裂く。その分、右サイドはかける人数が少なく、伊東の裏抜け頼みの側面が強くなっていた。

 田中がサイドに流れる分、負荷がかかったのは中央でのネガトラの局面。前半よりも中盤が高い位置を取ることが多かったので、日本は被カウンター対応を何とかしなければいけなかった。ここで光ったのが中央でバランスを取った遠藤と長友に代わって入った中山。オマーンのアタッカー陣に前を向かせる前に摘み取ることで、日本は波状攻撃に移行することが可能に。

 三笘が伊東にアシストを決めた貴重な先制点も中山の高い位置でのインターセプトから。三笘のボールの引き取り方もさることながら、中山のお膳立ても見事。後半に入った2つの武器がエースの伊東の元にシュートチャンスをつなぎ先制点をゲットした。

 オマーンはボールを運べはするものの、PA内に迫るための武器が見いだせずに悪戦苦闘。プレスは剥がせるけどチャンスは作れないという状況を試合最後まで解決することが出来なかった。

 試合は日本が逃げ切りに成功。交代で入った新しい武器とエースの融合で2位浮上。ようやく予選突破に向けて明るい兆しが見えてきた。

試合結果
2021.11.16
カタールW杯アジア最終予選 第6節
オマーン 0-1 日本
スルタン・カブース・スポーツ・コンプレックス
【得点者】
JAP:81′ 伊東純也
主審:コ・ヒョンジン

②中国×オーストラリア

画像2

■高さオンリーの解決策で納得のドロー

 割と保持に対する意識が強かった今予選これまでのオーストラリア。しかし、この試合はデュークを狙いとしたロングボールを増やしており、比較的ダイレクトな展開を織り交ぜての前進となった。

 それでも保持の時間が多いのはオーストラリアの方。2CBをサポートするように、動き回るフルスティッチとジェッコの2人を軸としたビルドアップで組み立てを行う。しかしながら、前進した後の武器が乏しかったのがこの日のオーストラリア。中国はSHが撤退してラインを下げることをサボらなかったので、オーストラリアが積極的にSBをオーバーラップさせたとしても、同数で攻める形は変わらず。左のSBのベビッチが攻め上がる機会は多かったが、抜き切ってのクロスは比較的少なかった。

 オーストラリアはなかなかこの状況を動かすことができない。対面にマークがいてもあげられるハイクロスを中心にPAに迫るが、中国はCBが跳ね返し続ける。特にブラウニングの存在が大きく、中国はオーストラリアのクロスを粘り強く凌ぎ続けていた。そのため、デュークがサイドに流れながらのミスマッチ狙いなど工夫を施す。

 中国は跳ね返し続けていたが、38分に決壊。スローインからのリスタートへの対応がやや甘くなり、中央での対応の難易度が上がってしまった。クロスをデュークが叩き込んで先制する。

 頼みのブラウニングが負傷し、ビハインドも背負ってしまった中国は後半は保持に打って出る。中国のポゼッションはそこまで特徴的なものではなかったけども、オーストラリアは前節のサウジアラビア戦に引き続き、ボールをプレスで奪い返すことができない。高い位置まで進むことができた中国はそこからロストをしたとしてもプレスを発動してボールを奪取。自分達のターンを引き寄せる。

 しかし、中国は時間が経つにつれて徐々に中盤の横スライドが甘くなることでオーストラリアの中盤に時間を与えるようになる。だが、ここを活かせないのがこの試合のオーストラリア。日本戦ではキックの多彩さを見せたフルスティッチのサイドチェンジがオーストラリアがギャップを作るための手段の一つだったが、この日はキックが不発。違いを作り出すことができない。

 すると70分。試合が動く。何気ないFKの競り合いからジェッコがハンドを犯し中国にPK。これをウー・レイが沈めて同点に追いつく。めっちゃ点取るな。

 ともに勝利が欲しい両チームだが、攻守の入れ替わりが激しくなる終盤でトランジッションで優位に立ったのは中国の方。ゴールこそ許さなかったオーストラリアだが、高さしか手段がなかったこの試合のオーストラリアの攻め手は乏しいもの。結果だけでなく、内容を見てもドローでも致し方なしといった様子だった。

試合結果
2021.11.16
カタールW杯アジア最終予選 第6節
中国 1-1 オーストラリア
シャールシャ・スタジアム
【得点者】
CHI:70′(PK) ウー・レイ
AUS:38′ デューク
主審:アドハム・マハドメ

③ベトナム×サウジアラビア

画像3

■5-3ブロックを成り立たせる前提

 最終予選、ここまで全敗のベトナム。今節は無敗で首位をひた走るサウジアラビアとのハードなチャレンジとなる。

 立ち上がりからベトナムにとっては厳しい戦いになることを予感させられる戦いだった。サウジアラビアの2CHと2CBの3-1と2-2の配置を駆使するビルドアップに対して、うまく前からプレスがかからずに苦戦する。

 ベトナムの非保持における弱点は3センターの守備の練度である。3センターは通常、IHがホルダーとマッチアップする際に、アンカーが斜め後方にカバーに入りながら守るのが普通。

 しかしながら、ベトナムはこのカバーリングがフラットになることが多い。そうなるとボール保持側は簡単にボールを縦に入れることができる。5-3ブロックは本来、中央にボールを入れさせない代わりにボールを外に追いやりながら、大外を壊すチャレンジを保持側に強いることができるというメリットがあるのだが、このベトナムのように中央を閉じる!という大前提が成立していない場合は話が別である。

 前節の対戦相手である日本はこの弱点をろくにつくことができず、ライン間にパスを入れることをしなかったが、サウジアラビアは積極的にこの縦パスを入れてくる。ライン間で簡単に前を向かれてしまっては非保持側は裏を取られるリスクが出てきてしまう。そうなると5枚という最終ラインの枚数はラインが乱れるだけの因子が多いだけ!ということになってしまう。

 というわけでこのライン間には最終ラインが慌てて飛び出す格好になるベトナム。サウジアラビアがその飛び出してきた最終ラインの選手をかわして先制点に結びつける。ベトナムとしては中盤の守備で穴が空いてしまい、その穴を埋めようと飛び出してくる最終ラインの守備にさらに穴を開けてしまうという連鎖。サウジアラビアはこのベトナムの穴の連鎖をしたたかにつくことができたということである。

 前半は専制守備からのカウンターでチャンスを伺っていたベトナム。この形でも十分にチャンスは作ることができる。だが、後半になるとベトナムは徐々に保持から押し込むように。3バックからWBにボールを繋ぎ、サイドから抉るような形でサウジアラビアを攻め立てる。

 サウジアラビアはこれに対して強気なやり方に。前半以上に保持における前方へのオフザボールの量を増やして、積極的に2点目を狙いにいく。得点のチャンスは増えるが、失点のピンチも増えるこの方策。ベトナムは前半から引き続きカウンターからも十分にサウジアラビアの脅威になった。

 だが、ゴール前になると精度、強度が共に足りず枠内シュートにいけないベトナム。サウジアラビアは日本と同じように後半のベトナムに慌てる場面もあったが、逃げ切りに成功。前半は日本と異なる保持のクオリティを見せつけ、後半は日本と同じように苦しんだサウジアラビアが無敗をキープして首位を堅持。終盤戦に向けたアドバンテージを得て11月シリーズを終えた。

試合結果
2021.11.16
カタールW杯アジア最終予選 第6節
ベトナム 0-1 サウジアラビア
ミー・ディン・スタジアム
【得点者】
KSA:31′ アル・シェフリ
主審:ハンナ・ハッタブ

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次