日本一遅い川崎の2023年の選手評。早速行ってみよう。
GK
1 チョン・ソンリョン
未達の課題に着手する必要がある
開幕戦では加入以来クリーンシートを続けるという謎の強さを見せ続けたソンリョン。しかしながら、今季の開幕戦では自らのミスからの失点で今季のJ1リーグの初めての失点を喫するなど、あっさりとこの記録を終了させてしまう。
このように序盤戦のソンリョンの流れは決して良くはなかった。山根のインサイドへの絞りをベースとした、縦に勇気をもって刺していくスタイルはソンリョンにはあまりフィットしなかった。単純な技術というよりも降りながら捕まってしまっている選手に刺してしまうという判断そのものが問題であり、この判断面から不用意なピンチを招いてはチームを危険にさらす頻度も少なくはなかった。
中盤戦以降はその反動か、プレッシャーのかかっていない場面でもロングキックで試合を組み立てることができない展開を引き起こすこともしばしば。どこまでが自身のアドリブ的な判断かはわからないが、後ろから試合を組み立てるという役割においては不十分であったことは確かだろう。
それでもセービングの安定感はさすが。特にACLや天皇杯決勝を中心とした後半戦では大一番でチームを救うセーブを見せて、決定的な仕事を果たして見せたのも確かである。GKの本分がゴールを守ることであるのならば、ここにこだわるのはそんなに悪いことではない気がする。
来季の川崎は今季以上に試合が増えることが確実視されている。ボールを持ちながら休む時間を作ることができるかどうかというのは死活問題になるだろう。今季ソンリョンがなしえなかった部分に手を付けることができるかどうか。チームで意識しても後ろから蹴っ飛ばしてしまうことが頻発したら何もできない。来季も引き続き重要な一面だ。
21 安藤駿介
来季は屋台骨としての役割を
あんちゃん!今年は出番がなかったぜ!登里がいなくなっちゃうから来季は屋台骨としての役割を頼むぜ!
22 早坂勇希
キャリア形成の点で残留は気がかり
今年も試合に出ないまま1年間が終わってしまった早坂。どうやら2024年もレンタルはなさそうなので状況は変わらなさそうである。というわけで成長していてもお目見えの機会がない。いいのか。キャリア的なアレは。
99 上福元直人
スタイルへは順応、勝たせるGKになりたい
丹野と入れ替わる形でベテランGK枠として入団。ショートパスをベースとしたビルドアップにトライするという点ではソンリョンに比べて新スタイルの適応には期待が持てるし、実際問題その通りの上積みを見せてくれたといえるだろう。CBがGKに安心してボールを預けて、組み立てをやり直す形は川崎にとっては目新しいものだった。
DF裏をカバーする機動力も魅力。リベロとしてDFの裏をケアし続けるスタイルもまたソンリョンにはないものである。
その結果、リーグのおよそ1/3にあたる12試合では先発出場。5~7月の川崎の守護神は上福元であった。これだけきっちりソンリョンから正GKの座をモノにしたのは、一時期の新井以来ではないだろうか。
しかしながら、一度手にした守護神の座はシーズン終盤にはソンリョンに返却されることになる。何といっても上下にぶれるセービングの精度が問題だろう。ハマればどんなシュートでも止めてくれるが、何もないところからあっさりと失点に繋がるミスをしてしまう。
保持でリスクを取るゆえのミスなら仕方ない気はするが、セーブやクロス対応のところでもミスが多く、ソンリョンに比べると防げた失点を防ぎ切れなかった感は否めない。流れに乗れそうなタイミングでミスが出てしまったのは痛恨。さらにはチームとして後方からつないでいく意識自体シーズンが進むにつれて薄れてきたので、そういう意味ではソンリョンに再び守護神の座が渡ったのは妥当だろう。
天皇杯優勝はうれしいものであることは間違いないのだが、ゴールマウスには立っていたのはソンリョン。かつて、新井が栄冠を手繰り寄せたカップ戦ファイナルの舞台に上福元は立つことができなかった。
優秀な第2GKとしては今季の出来でいいと思うのだけども、年齢を考えるとこれまでの選手に比べてソンリョンとはフラットな競争相手になってほしい存在。スタイルに順応していることを生かし、チームを勝たせるGKになることが2024年の目標となるだろう。
DF
2 登里享平
ベテランらしくまとめた終盤戦
序盤戦こそ出遅れてのスタートとなり、佐々木の好調も相まって今季は出番を減らしていくのかな?と思われていたが、終わってみれば公式戦では3000分のプレータイムを達成。キャリアの中でも3本の指に入るくらいには多くの時間をプレーしたシーズンとなった。
ただ、プレータイムに見合った上質なパフォーマンスを見せ続けていたかといわれると微妙なところ。CBの一手先でボールをひきとったり、逆サイドからのサイドチェンジの出口になったりなど、ポジショニングセンスを生かした組み立てへの貢献度はさすがではあったが、WGを追い越してサイド攻撃に厚みを加えるといったところに関してはやや迫力が減っていた。
非保持に回ってしまうと、さらにその衰えは顕著。対面のアタッカーに後手を踏んだり、逆サイドからのクロスで空中戦のターゲットにされることも非常に多く、川崎の対戦相手にとっては守備の狙いどころとして集中砲火を受けることもしばしばであった。
それでも何とかパフォーマンスをまとめるのがベテランらしい所以。後半戦はこうした非保持での穴は限定的なものになり、スピード豊かな対面のアタッカーに対しても後手を踏まずに左サイドを支え続けた。
特に11月以降はパフォーマンスの向上が顕著。9月には狙い撃ちされまくったジョホールのアリフ・アイマンを11月には等々力で完全制圧するなど、間合いを掴んだ相手に対するパフォーマンスはさすがであった。天皇杯ファイナルでもその経験は還元されたといっていいだろう。
その天皇杯決勝ではどう見ても来季いるっぽい顔をしていた(本人もこの段階ではそうお思っていたのだろうけども)のに、残念ながら今季でさらばである。自分の記事を楽しみにしている人ならばわかると思うのだが、常に自分は登里には多くの面で高い評価を与えていたので、多くの選手の退団の中でもひときわ寂しいものがある。実感がない。シーズンが始まれば嫌でも実感することになるのだろう。お元気で。
3 大南拓磨
開花を待ち続けた理由は
「どういう選手が川崎にほしいですか?」
質問箱でよく聞かれる質問である。川崎をアーセナルに置き換えても聞かれる。アーセナルではここで名前を挙げた選手が現実で入団したことがある。川崎に関して言えば具体名を挙げて「ほしい」といった選手が実際に加入するのはおそらく大南が初めてである。
上記の質問に答えたのはおそらく2022年くらい。いつ退団するかわからない山村の位置、そして山根のバックアッパーの併用のイメージで欲しい選手というイメージだった。
しかしながら、実際に大南に求められたのは谷口とジェジエウがいないDFラインの柱である。谷口のリプレイスを国内で埋めるのは不可能だと思っていたので、大南が置かれている状況はミッションインポッシブルといっていいだろう。
序盤戦は案の定、川崎サポからは多くの不満が見られていた。主に繋げないことに関して。個人的には全く問題にならないと感じていた。保持で支配力を見せられず、前に人数をかけることで攻撃の迫力を出すしかない川崎にとって、ジェジエウがいないDFに求められることはハイラインを支えられる広い守備範囲である。そして、この部分は後天的に伸ばすのが難しい要素でもある。保持と違って。
ということで自分の2023年のレビューはほぼ大南の重要さを訴え続けることに終始していたような気がする。もちろん、パトリッキを一発退場で倒してしまったシーンなど不用意さがあるところもあるが、キャンセルの習得や、奪った後のダイレクトな縦パスなど組み立ては配球の部分ではすでに改善の傾向がみられている。
怪我への耐性の強さも川崎のCBにはふさわしい。ジェジエウを差し置いて天皇杯ファイナルでスタメンを掴んだのは1年間のご褒美である。川崎を背負うCBとして来季はリーグでも有数のDFとして存在感を示したい。
4 ジェジエウ
来季待ち受ける2つの懸念
昨年同様に怪我に泣かされたシーズンだったといえるだろう。開幕戦こそフィットしたものの、その開幕戦で退場。そして次の試合で大怪我と災難続き。これにより2年連続でのまとまったシーズンでの離脱が確定してしまった。
2023年のプレータイムはおよそ500分。練習合流から本格復帰に時間がかかったことを踏まえると、フィットネスの回復に問題があったのか、あるいはセットバックがあったのかもしれない。
少し気になるのはすぐにフルコミットした2022年の復帰直後と異なり、2023年の長期離脱直後はきっちりとブランクを見せている点。とりわけ顕著なのは空中戦で競り負けが多い点。単に競り負けるというよりはポジションに入るのが遅れてしまうことで後手を踏む場面が目立ったので、単純に試合勘で済ませていい部分かもしれないが、負傷の影響で動きに制限がかかっているのだとしたら少し気になるところである。
スカッド面でも懸念はある。現状で来季最もプレータイムが見込める大南と立ち位置が少し被っていることである。右を主戦場としており左のCBとして計算できるかは未知数なところ、組み立てで計算しにくい存在であること。
基本的にはDFは守ってこそナンボだとは思うが、さすがにソンリョンと大南とジェジエウで組み立てを頑張ります!って言われて「あぁ、そうですか!がんばって!」と即答できるほど素直ではない。大南との補完性の低さを考えると、コンディションが戻らなければ定位置確保に時間がかかるシーズンとなっても不思議ではない。
5 佐々木旭
勝負できるポイントを伸ばしレギュラー争いを
ミスターフロンターレの背負っていた5番を与えられ、ファンの期待を一身に浴びる2023年シーズンとなった。
序盤戦はまさにその期待に応えたスタートだったといえるだろう。新システムの中で攻守に躍動し、2023年の急成長株として爪痕を残す予感がするシーズンとなった。
しかしながら、ベンチ外の試合が出てくるなど徐々にそうした空気はトーンダウン。初めのうちは「なぜ!?あんなに調子よさそうだったのに!!」という論調がメインストリームだったが、プレーしている様子を見ると納得感があるという鬼木采配あるあるに収束してしまったのは切ないところだった。
マルシーニョがいない中で左サイドの幅取り役として1on1を仕掛けさせまくるという使い方はさすがにチーム事情に引っ張られた不運なものではあったが、組み立てのところのポジショニングの悪さや、ドリブルでボールを持ちすぎてしまった結果、スペースを潰してしまうなど、ボールを前に運ぶフェーズで力不足を露呈してしまった。
その分非保持で踏ん張ることができればクローザーとして計算できる存在にも慣れたかもしれないが、パスミスを含めて出た試合ではほとんどが印象的なミスをしてしまっており、シーズンを通して好調といえなかった登里を上回ることはできなかった。度重なる怪我も不運だとは思うが、どちらかといえば好機を逃してしまった感が強い。
来季はまさに正念場になるだろう。左サイドには年下の三浦という全く異なる競争相手がやってきた。インサイドに入り込みながら縦にパスを差し込むといった部分は三浦とは異なった持ち味なはず。競争相手に勝てるポイントを見つけて、その部分を強化する方向でプレータイムを確保したい。山根のいなくなった右へのコンバートも含めて、とにかく1年を通じてレギュラー争いをすることが目標となるだろう。
7 車屋紳太郎
変わらない課題に別れを告げたい
環境を変えることは選手にとっては大きく成長するチャンスである。もちろん、チームを変えることもその手段の一つ。だが、自らが移籍をせずとも環境が変わる場合がある。主力選手がいなくなるなど、周りの選手の移籍があった場合である。
車屋にとって、2023年シーズンはまさしく移籍せずとも環境が変わった勝負の年である。頼れる先輩である谷口がカタールW杯出場を置き土産にいなくなり、自らがDFを引っ張らなくてはいけない立場になったのである。
だが、2023年の車屋のパフォーマンスはそこまで大きく変化はなかった。出た試合でのパフォーマンスには波があり、負傷でまとまった期間を離脱してしまった。負傷に関してはもちろん自分だけが悪い話ではないだろうが、DFのリーダーとして君臨できるほどの存在感を発揮できなかったのは確かである。出ていったわりに潰し切れないという修正点は今季も大きく改善は見られなかった。
脛骨の骨折は不運ではあるが、ハムストリングでの負傷に関しては若干癖になりつつあるのは気がかりなところ。左利きでボールを運ぶことができるCBはもちろん貴重ではあるが、丸山の加入や高井の台頭を踏まえると、プレータイムを確保できるかどうかはわからない。
将来性と現状でのプレーのバランスに関して言えば、現状のスカッドでは車屋と大南orジェジエウが組むCBコンビが来季の最適解ではないかと考えている。まずはそれを実現できるコンディションを整えることができるか。そのうえでパフォーマンスの違いを出せるかどうか?
今年の車屋のテーマは2023年の開幕時点と同じ。今季こそはこの課題そのものとおさらばすることが最も大きな目標となるだろう。
13 山根視来
失敗を転化できる鉄人
完全無欠の鉄人は今季もなんとかシーズン完走を遂げた。もっとも内容を紐解いてみれば、苦しいシーズンだったのは確かだろう。昨シーズンから苦しい部分は目立っていたが、今季はその比ではなかった。
もちろん、エクスキューズはある。W杯への出場で単純にオフが短かった。体力面だけでなく、W杯出場という大目標にフォーカスした次のシーズンというのはメンタル面でモチベーションを維持するのは大変なはず。そうした中で自らの役割に大きな変化がある新システムの構築が始まるとなれば、さすがの鉄人でも不具合をきたしてしまうというのは当然のように思える。
開幕前に「川崎が3-2-5を成功させることができるとすれば、それは山根がCHとSBの一人二役を担えた時」と述べた。しかしながら、実際のところ絞った時の山根はCHに注力し、右サイドは家長と脇坂の二人称での崩しになることがほとんど。山根が入ったトライアングル解体は負傷者が多く出た前線に追い打ちを食らわせることとなった感がある。
では、このトライは無駄だったのだろうか。いや、まったくもってそんなことはない。面白かったのはシーズン終盤に従来のSBで起用された山根が明らかにビルドアップへの関与がスムーズになっていること。単純なパスの精度というよりはボールを出した後の動き直しがセットになり、リターンパスを受けて次の展開を視野に入れられるようになったことが大きい。そして、これができることによって川崎は右サイドのパスの循環がだいぶ流れるようになった。大南も相当助かったはずである。
傍から見れば失敗と見られることも成功に転化してしまうのは山根のストイックさによるところだろう。天皇杯決勝のPK。山根のキックの番で、笛が鳴るや否や慌てて蹴って失敗した2021年の大分戦での失敗が頭の中にこびりついていた。直後に相手の間合いを完璧に外す山根を見て、自分の考えがいかに浅かったかを知った。もうその失敗は彼にとっては乗り越えた失敗だったのである。
4年間、川崎の右サイドバックをほぼ一人で支え続けた鉄人がいなくなるのだから、もちろん寂しい。でも、こういうキャリアを描いている選手のチャレンジはどうしても応援したくなる。願わくは、失敗を成功に転化できるストイックさを持ち合わせた彼のメンタルが1人でも多くの選手に届いていてほしいものである。
15 田邉秀斗
予定変更をアドバンテージに変えたい
田邉にとっては不運な1年だった。CBの相次ぐ負傷と出場停止により、育成型期限付き移籍(個人的にはこの仕組み自体が割とどうかと思うのだけども)で移籍していた千葉から急遽呼び戻すもあっという間に本人も負傷。長期離脱が明けたころには陣容が固まってしまい、なかなかポジション争いをする隙も与えられなかったというのが今年の田邉の1年である。
CBとほんのりLSBとして今季はプレーしていたが、正直なことを言えば主力を休養させるためという部分がメインとなってしまっている起用だった感がある。アウェイのC大阪戦では他のバックスと共にスタメン起用というチャンスを貰い、保持面ではそれなりに存在感を出したが、試合がオープンになるにつれてC大阪のカウンターに耐えられなくなってしまい、決壊してしまった。つなぐ意識自体は悪くないのだが、今の川崎のCBの負荷を考えると、ここで使うのは尚早かもしれない。
そういう意味では両SBは来季狙い目がありそうなポジション。攻め上がりに面白さも感じるタイプだし、左はストッパー役と目されるカラーの選手がいないため、非保持の強度で勝負できる可能性はある。右は川崎のキャリアではイメージがないが、高校時代はこちらがメインとユースヤクザに教わった。今後、陣容に変化がある可能性もあるが、現状では第一人者不在のポジションで一気にのし上がるケースも充分にあるだろう。
試合に出るという意味では物足りない2023シーズンだったかもしれないが、予定より早くに合流したことをプラスにしたいところ。陣容が大幅に入れ替わったバックラインの中で1年早く帰還したアドバンテージを出せれば、来季は面白い展開になるかもしれない。過密日程であることを踏まえれば、健康でさえいればチャンスは来ると思うので、まずは怪我無くフルシーズンを走り切りたい。
27 松長根悠仁
前向きさと空回りは隣り合わせ
3月の湘南戦でデビューを飾ると、そのミッドウィークのルヴァンカップでは初先発。週末の新潟戦でもプレーをするなど、DFラインに欠員が続出したことを差し引いても高卒ルーキーとしては順調なスタートを飾った。
しかしながら、それ以降はぱったりとプレーがストップ。翌週のC大阪戦を最後にベンチに入る機会すらなくなり、次のメンバー入りは7月の水戸戦まで待たなくてはいけなくなった。以降は12月に突破の決まった蔚山戦で先発するまでは再びベンチ外の生活だった。
バックラインが戻ってくればベンチに入るのが難しいのは確かだが、ルヴァンカップのグループステージですらベンチ入りができなかったというのはやはり本人のパフォーマンスのところにきっと原因があるのだろう。3月の時期には将来性を加味すればSBでのプレーはそれなりに及第点なのかなと思っていたのだが、7月と12月のパフォーマンスを見ればベンチに入れないのも個人的には合点がいってしまった。
思い切りのいいボール奪取やそこからの攻め上がり→クロスなど、基本的にいいプレーができているときは前向きの矢印をはっきり打ち出してそれがハマっている時である。逆にそれが空回りに繋がっている部分もある。蔚山戦で与えてしまったPKなどはこの空回りの典型。ゴールに向かうことすらできていない選手に対して、ファウルを取られかねない強度でぶつかることは前向きというよりは向こう見ずと表現するのが適切だろう。来季のSB争いの1人に計算するのは現段階では早いように思えた。
まだ若いのでプレータイムは重要。こうした押し引きはカテゴリーでの経験が重要に思うので、J3なのか!という気持ちはなくはないが、勝手知ったる指揮官の下でまずはプロとしてのプレー経験を積みたいところである。
29 高井幸大
充実のプレータイムの中で見えた課題
まずは率直に高卒ルーキーとしてこれだけのプレータイムを確保できたことが大きな収穫。後ろのポジションの方が若い選手にチャンスを与えるのは一般論として難しいと思うので、そのポジションで準レギュラークラスの稼働ができたことは大きかった。
特にボール保持においては低い位置でのパスワークを怖がらなかったり、持ち上がりながら相手を動かすことができたりなど、現代型のCBであることを証明している。
その一方で非保持のパフォーマンスに目を向けると課題の方が先行してしまうのは仕方ないところだろう。恵まれた体格ではあるが、空中戦に強いとは言えず、特にクロス対応においてはボールとマーカーの位置関係を把握しきれずに、相手にフリーでヘディングを許してしまうことが多かった。
ボックスの外の話で言えば、やはり経験値の少なさは感じるところがあった。具体的に言えばボールが次にどこに出てきそうかという雲行きを把握できていないのかな?と思うことが多い。例えば、前の人が外を切ったなら内側にあらかじめ強く当たりに行くとか、そういう先読みのところで後手を踏み、かつ遅れて出ていってしまうので傷口を広げてしまうことが非常に多かった。同じ試合や連続した試合で似たカテゴリーのミスをしてしまったのも痛かった。
シミッチとか大島とかはこういうボールの先行きの読みが抜群にうまいのだけど、この辺りはプレスに前のめりな川崎の中で機動力に欠ける中でどういった貢献ができるのかを考えた結果なのかなと思う。クロスの対応も含めてこういう部分はきっと経験なので、高井もやっていけばよくなるはずだと思う。
ただ、冒頭でも話したようにミスが失点に直結するという観点でCBは若い選手に先行投資でプレータイムを与えにくいポジションでもある。ある程度減点法で考えなければいけないのは確かなので、まずは雲行きを読んで、出ていくタイミングを早くする。間に合わなかったらひとまずディレイで裏を取られることを防ぐ徹底したい。
パリ五輪に関しては現状当落線上といえる立ち位置だろう。A代表と同じくプレータイム確保を大事にしている感があるので、丸山と車屋を差し置いて序盤から出番を得る2024年にしたい。
つづく!