GKとDF編はこっち。
MF
6 ジョアン・シミッチ
安定感は随一もスタイルの割を食った年
序盤戦は遠野や大島といった他の選手が優先されていた感があるが、遠野が定位置を掴めず、大島が怪我で離脱した春先からはレギュラーに君臨。橘田や脇坂といった選手たちも開幕直後は出遅れた感があったため、特に前半戦は苦しいチームを支えていた。
そういう意味では通年で一番パフォーマンスに波がなかった選手といえるかもしれない。高さという調子に左右されない要素が強みなのも大きいし、どんなピッチや天気にも関わらずフィードの質が落ちにくいという技術的な特性に関しても外的要因に左右されにくいところはあるのだろう。後半の京都戦では珍しく明確に悪い日だったが、今季はそうした日は例年よりも少なかったかもしれない。
正確無比な左足からの中距離レンジのパスは幅を使った攻撃との相性が抜群。速く鋭いサイドを変えるパスによって、狭いスペースの攻略に凝り固まった流れが一気にほぐれるみたいなこともあった。
橘田に比べると狭い半径でのターンは得意ではないが、相手がどこから追いかけてきているかを認知しながらプレーすることはうまいので、前を向かないまま叩くなどの応用でボールを逃がすのはとてもうまくなった。後方からのビルドアップがスマートにはいかなかった川崎だが、そんな状況でも明らかにつかまる試合は減ったように思える。
ただ、結局のところ今季の川崎は中盤の強度と守備範囲に全振りするサッカーにたどり着いてしまったので、そういう意味ではスタイル的な割を食ったともいえる。狩りどころを定めて後方からボールをハントする形は前方のパスコースが定まってこそ見えてくる強みである。今季の川崎はそこで勝負することができなかったので、機動力のあるセットが優先されて、その部分で序列が落ちたように思える。縦に速いパスの出し先であるマルシーニョの不在が長引いたシーズンだったのも痛かった。
中盤の高さという要素がなくなること、そして速く鋭く美しいフィードの軌道が見られなくなることは寂しい限り。ほぼ構想外の状況からメンバーに返り咲くために準備を続けたこと、中盤が苦しくなると涼しい顔でチームを救ってくれたことは思い出深い。そういう意味ではFC東京への移籍報道の後の方が個人的には印象的だったりする。新天地(きな臭くて心配だが)での活躍を祈りたい。
8 橘田健人
主将初年度は前半戦に試練
ミスター・ストイックをカタールに見送り、新シーズンをキャプテンとして迎えた橘田。開幕戦はゴールこそ決めたが、審判への抗議に気をとられてあっさりと2失点目につながるリスタートを許すという大チョンボからスタート。思えば、あれがシーズンを通して最も大きなしくじりだったかもしれない。
4月に入るとシミッチと入れ替わるようにベンチを温める試合が続く。リーグ戦での空白期間があったとはいえ、橘田がベンチだった時期はおよそ3ヵ月である。結構長い。このころの橘田はボールハントのところで入れ替わられるシーンが非常に多く、出ていったりダブルチームに入ったりした結果、あっさりと逃がしてしまい、さらにピンチを広げてしまうシーンばかりが目立っていた。
それでもシーズン後半からはそうした悪癖は修正。ボールハントに間に合うようになったことでまずはリズムを取り戻し、ボックスへの侵入意識やミドルシュートの頻度が上がったことで確固たるストライカーがいないチームをスコアリングの部分で助けたりした。終わり良ければ総て良しというのはサッカーにおける通説であり、後半戦が良ければOKなんや感もあるが、実質いいコンディションでプレーできたのは半分くらいかなというのが今季の橘田の所感である。
得点のところの意識が高まっているところは大きなポイントではある。その一方でゲームをコントロールするとなった時の存在感はまだない印象。試合のテンポを制御するというよりはバチバチにやりあう展開で勝つことで何とかしてきた感じなので、アンカーとして腰を据えて行うのであれば、テンポを落としたゲームメイクでも存在感を見せたいところだ。
実際のところ、彼のリーダーとしての働きはどうだったのかはチームの中の人に聞いてみないとわからないが、チームがうまくいっていないとキャプテンのせいにしたがる層はいるので大変なシーズンだったろうなと思う。ちなみに言葉で引っ張るタイプではないというのは1年間でよく伝わってきた。それだけに天皇杯直後のインタビューは心に来るものがあった。今年もキャプテンやるのかどうかはシンプルに気になる。
10 大島僚太
「ボールの機動力」を取り戻せるか
今年も怪我に泣かされたシーズンとなってしまった。今季のリーグ戦でのプレータイムは686分、そして先発は8試合。ここ3年間でどちらも最も多い数字であるというのが逆に大島の近年のキャリアを象徴しているだろう。
今季の序盤戦はスタメンでプレーしていたが、気になったのはボール保持の面での明らかな機能性の低下である。そもそも大島のプレーの良さというのは正確無比なボールタッチとそこから素早く繰り出される刺すようなパスである。驚く速さでドリブルをするといった選手として機動力はないが、ボールを速く正確に刺すことで狭いスペースを狭いまま攻略したり、強気のプレスに出てくる相手をひっくり返してしたりできるのが持ち味である。そういう意味ではボールに機動力を与えられることが大島の強みといってもいいかもしれない。
ボールの機動力を実現させるためには少ないタッチ数とパスのスピードの速さが必要なのだが、この両面で大島の近年の出来には不満が残る。パスのスピードが明らかに落ちているため、パスの出し先で相手につかまることが非常に増えたし、ボールを出す前のタッチが多くなっているため、彼自身がボールをうまく逃がせないことが増えた。無論、一般的に少ないタッチ数が正義というわけではなく、大島の強みから逆算してその部分は重要度が高いという話である。
こうした部分が難しくなっているのはやはり度重なる怪我による筋力の低下なのかなと思う。本人も認めるように高い位置まで頻繁に出ていけるような体の状態ではないし、低い位置でも狭いスペースでプレーするのが難しくなってしまうと、プレスにも飲み込まれてしまう。本人もそれがわかっているのか、不要に低い位置でのプレーが増えてしまった印象だ。
それでも非保持においては攻め上がりを控えながら要所を抑える守備で輝きを見せる部分もあった。特に2CHからハーフスペースを抑える動きはうまく、この点ではシミッチと大島は非常に高いレベルにあるように思う。
復活のためにはやはり保持面でのバリューを取り戻すことは必須だろう。起用することで明らかにチームとしての可動域は狭まることを踏まえれば、怪我が治っても2023年のパフォーマンスレベルだとレギュラーとしてプレーするのは明らかに難しい。稼働時間も重要な要素だが、個人的には短い時間でも高い質でプレーできるジョーカーとして計算できる存在になることが先のように思える。
14 脇坂泰斗
自分に厳しくを体現する存在になってほしい
今季の川崎のMVPを選べと言われたらまぁ彼以外は挙げようがないかなというパフォーマンスを見せた1年だった。序盤少しコンディションの悪さと新戦術への適応の危うさは見せていたが、橘田よりもさっさと適応すると、春先からは中盤を牽引する存在となった。
攻撃において一番輝きを見せたのはやはりターンだろう。ハイプレスに来た相手、もしくはボールロスト後に即時奪回を狙ってきた相手に対しては、密集地帯で逆を突いて安全地帯にボールを逃がすことでカウンターの起点となっていた。
こうしたプレーは失敗するとリスクが大きく、序盤戦などはまさしくそうしたプレーで評価を下げてしまったように思えていたのだが、中盤戦以降はほぼノーミスというか川崎の大きな強みとして機能していたのが印象的。ターンで外した次のパスをきっちりさせる率も高く、カウンターを加速させて終点の設計図を描くという点では他の選手の追随を許さなかったといっていいだろう。
得点者としても今季は開花。キャリアハイの得点数を稼ぎ出したシーズンとなった。難しいミドルシュートはもちろんのこと、終盤戦はPKキッカーとしても躍動し、ダミアンのハットトリックを取り上げる冷酷さを見せながら、得点を重ねていった。
もちろん、守備における強度面はさすが。プレスだけでなく危ういと思った場面の戻りに関しても上々でPA内を死守するシーンも少なくない。
そういう部分がきっちりしているからこそ、チームでの重要度が上がったシーズンといえるのだろう。田中や守田がいた時代であれば中盤の交代枠としては真っ先に!という感じなのだろうが、彼らがいなくなったこともあり、中盤でのプレータイムはかなり長め。14番がピッチに立ち続ける時間は年々増えており、それに伴うピッチ内外の責任感は増している印象である。
8位のチームからのベストイレブンというのはシンプルにすごいと思うのだが、きっと本人は満足いくシーズンじゃなかっただろうなと思う。山根の項でも述べたが、そういう自分に厳しくできそうな選手がどれだけいるかは今後川崎が強くなるための重要な要素になると思う。脇坂にはそうした背中で語る役割を担う立ち位置としてチームを牽引してほしいところだ。
16 瀬古樹
順調な2年目に積み残した課題
いかにも川崎の2シーズン目というフィットの仕方で後半戦はレギュラーに定着。1年目に比べれば着実に進歩したシーズンといってもいいだろう。
シーズン終盤戦は縦にボールを刺す意識が向上。攻撃を前に進める機会が増えて相手にとって少しずつ怖い選手になりつつあった。
ボックス内への侵入の意識の高さから得点を引き出すこともしばしば。アウェイのジョホール戦では前線に駆け上がったことでマルシーニョのゴールを生み出した影の立役者である。
また、プレースキッカーとしての重要な立ち位置を確立。直接FKからのゴールも生み出すなど、やや枯渇気味なキッカーとしても存在感を示すことができたシーズンだった。
その一方で現状では課題も多い選手。一番気になるのはやはり出ていった時に入れ替わられて侵入を許してしまうすれ違いの多さ。前半戦に比べればとてもよくなったとは思うのだが、中盤でのボールの刈り取りが強みに直結するチームなので、現状の水準では満足はできない。
低い位置での危険なロストの多さも看過できない。アウェイの柏戦や天皇杯の決勝など中央へのパスをあっさりロストしてピンチを誘発してしまうことは後半戦も少なくはなかった。
こちらは本人のせいというよりは外的な要因の部分だが、ボールを離すタイミングが橘田や脇坂に比べると遅く、そのせいかハードタックルを受ける危機が多かった。もちろん、タメてボールを持った方がいい時もあるのだけども、少し離すテンポが遅れたなというときもたまにあったりはするように思える。
中盤のレギュラーとして安定感は出てきたが、もう誰にもこのポジションを渡さないぞ!!という凄みが出てきたかといわれるとまた別の話。川崎の中盤でレギュラーを張るのであれば、総じてもう一回り大きな選手になってほしいというのは正直なところ。声を張り上げられるという点でも貴重な存在なのは間違いなく、2024年はピッチの内外での存在感をさらに上げる1年にしたい。
18 チャナティップ
対戦相手として提示したベストな起用方法
夏に別れを告げてしまったんだぜ枠その1。度重なる負傷と出場時のパフォーマンスの波の大きさではやはり信頼を勝ちとるのは難しく、川崎にとっては東南アジアのマーケット拡大及び東急グループの事業への貢献以上のものをもたらすことはできなかった1年半だったといえるだろう。まぁ、それも重要である。チャナティップの5億があったら!と嘆く人もいるかもしれないが、その5億はチャナティップじゃなかったら出てこなかったのではと自分は勘ぐっている派である。
まぁ、そうしたピッチの外の話をベースにするのは性に合わないので、ピッチの中の話に戻そう。基本的には武器としては懐の深いターンからのドリブルでの加速、そして縦方向に鋭く刺すようなスルーパスまでをセットで行うイメージだろうか。
モデルとしては脇坂に近いのだろうが、チャナティップの場合は相手との駆け引きが少なく、自分のプレーをきっちりやり切ろうとする傾向があるので、間合いを読まれると簡単に相手につかまってしまう。そのため、初手のターンの成功率が一か八かになってしまっている印象。低い位置に降りてきて捕まる頻度は高く、そうなってしまうと相手のカウンターの温床になる。
この部分が川崎では最後までチューニングができなかった。逆にライン間でフリーにすれば十分に輝くことができるというのはパトゥムに移籍してからの川崎戦で証明した部分。そりゃ、あれだけチャナティップをフリーにすれば好き勝手輝けるだろうなと思いながら両チームのだるんだるんに間延びした守備を見ていたのを覚えている。川崎、抑え方わかってないんかい。ちゃんとやれ。
とはいえ、素敵な形で別れられた感じはするのでその部分はよかったなと思う。これからもタイで川崎のいい評判だけを広めながら広報活動してくれよな!!
24 名願斗哉
まずは長所を押し出すところから
ちょっとだけ出た枠その1。マルシーニョ以外のWGいないやんけ問題の解決を期待された高卒ルーキーだが、さすがにJ1の壁は高かった。シーズン終盤の蔚山戦のリスタート阻害さぼって怒られた問題がフォーカスされがちかもしれないが、そもそもどういうところが強みでどういうプレーが得意なのかがわからないまま、プレーセレクションに問題を抱えて沈んでいってしまったというのが正直な感想である。
仙台で活躍できるかはわからないが、ひとまずプレータイムが必要だと思うので、いったん外で元気やっていきましょうというのは悪くない気がする。持ち味を思い出す年にしましょう。
26 永長鷹虎
2025年はメンバーに食い込みたいが
ちょっとだけ出た枠その2。リーグ戦では名古屋戦で先発デビューを果たしたが、家長1トップシステムという奇々怪々なフォーメーションとセットとなっており、よくわからなかったというのが正直なところ。2枚のマークを軽くするという作業を誰も助けてくれず、なかなかハードそうであった。
水戸に行ってからはジョーカーとしてはそれなり!という感じなのだろうか。来季は群馬という北関東行脚がスタートした感があるが、2025年に戦力化できるように経験とプレータイムを積んで武者修行をしてきてほしい。
28 大関友翔
ACLでわずかに見せた才能の片鱗
ちょっとだけ出た枠その3。蔚山戦ではちょっとだけ顔見せをしてくれてようやく柔らかいボールタッチを拝むことができた。が、マジでそれ以上の情報はない。福島で頑張っておいで。
30 瀬川祐輔
ゲームチェンジャーでありマルチタスカ―
獲得時には適正ポジション的な意味で「4-3-3のどこで使うのだろう?」と思われた瀬川。そのクエスションの答えをシーズン終了後という神の視点から述べるのであれば「どこでも使われた」ということになるだろう。それくらい、瀬川は八面六臂の活躍を見せた。
最も重要だったのは交代から流れを変えることができるゲームチェンジャーの役割を果たすことができたこと。途中出場からの5得点はドウグラス・ヴィエイラ、パトリックに次いで日本人では最多の得点数である。
メインとなるポジションは基本的にはSHだろうが、CFや時にはSBをこなすことも。今季最も幅広いポジションでプレーした選手の1人だといっていいだろう。レギュラーではなかったが、1年目から多くの貢献を果たしたことに疑いの余地はない。
主戦場だったSHとしては運動量が豊富であり、前線からのプレスと後方まで下がってブロックを埋めるリトリートを両立することができるのが差別化できる要素になる。特にアウェイのC大阪戦で5-3-2のWBから一人二役を完遂したのは圧巻であった。まさしくあれは瀬川のためのシステムだ。
大外からの仕掛けも、裏抜けも、はたまた前線でのキープもこなすことができて、ボックス内でのフィニッシュの精度も充分。基本的には文句のつけどころが少ない選手である。こういう選手が1人いると非常に助かる。苦手な局面も少なく、どの局面でもまんべんなく適応して戦うことができる数少ない選手だ。
平均的にあらゆる能力が高いが、どこかのポジションでチームの第一人者になるスキルがあるかといわれてしまうと、正直難しいところ。レギュラー争いの障壁があるのだとすればおそらくこの部分だろう。どこでもできる分、どこのポジションで勝負するのが最適か?というところは少しぼやけている感じがある。個人的にはロングボールを競り合う形をWGのままやるのが一番いいかなと思う。ほかの選手と被らなそうだし。
CFからの落としを拾う形でもいい。味方とリンクする能力はピカイチなので、レギュラー組とのホットライン構築もプレータイム増加の近道だろう。
31 山村和也
一番いてほしい時にいてくれた
毎年恒例MF登録のせいで紹介がここになるという罠も今年でおしまいである。前半戦というか夏までは出場機会が少なく明らかに苦しいシーズンだった。
だが、パフォーマンスを見れば個人的には出番が少ないことへの納得感があった。もともと不足していたアジリティの部分は目をつぶるとしても、特にセットプレー以外の部分のデュエルがやや低調だったのは気になるところ。フィフティーで競り合うことさえできればきっちり跳ね返すことができるのがこれまでの山村だったが、今季はこの部分でも後手を踏むことが多く、ロングボールの跳ね返しも心もとないパフォーマンスが続いていた。
それでもセットプレーでの得点力はさすが。カップ戦のみの得点となったが、勝利に導くゴールを2つ挙げている。
バックスからの配球の部分も唯一無二といっていいだろう。フィードはシミッチのような鋭さではなく、よくそこまで見えているなという視野の広さとセットで勝負しているもの。気まぐれではあるが、後方から運ぶアクションもしばしばある。ただし気まぐれ。それでもビルドアップという点では一番適任なCBだろう。
シーズン終盤戦は車屋の離脱によりレギュラーに定着。アジリティ勝負に関しては一発目の間合いを掴みきれず、あわや大事故になりかけるシーンもなくはなかったが、スピードで上回ってくる相手にも冷静に対応できるようになってくるあたりはさすがのベテランの貫禄といえるだろう。
後半戦は大崩れも少なく、任された範疇をきっちりと守り切るという仕事人ぶりでポジションを守り切った。DFラインの離脱者がとまらない1年の中で、もっともいてほしい時期にいてくれたことは非常に頼もしかった。
移籍先がマリノスでも騒がれないのは彼の人柄をよく表している。新天地でも寡黙に自分のやるべきことにフォーカスする職人であってほしい。マリサポ!マジで中盤はできるかわかんないからな!
41 家長昭博
週1フォーカスなら依然として頼りになる
2023年の川崎を一言で表せば、シーズン序盤は調子が上がらず、シーズン後半は週に1試合という形にフォーカスすればある程度強度を保つことができる!という年だった。このパフォーマンスは家長個人のパフォーマンスによるところが大きい。
毎試合きっちりと守備には戻ることはできないので、その部分の担保をボール保持でできるかどうかが家長のパフォーマンスの争点になる。その点で言えば今年の水準は昨年よりも少し下がったものという印象が強かった。
ボールをキープするところ、そこから上げるクロスの質など、局面のプレーで首をかしげたくなることは増加。序盤戦はオーバーラップのサポート役となる山根を絞らせ続けたというエクスキューズもあったが、絞るのをやめてサイドで3人の関係性を作ってもなおなかなか機能しなかったのは切ないところであった。
それでも終盤戦の存在感はさすが。前線でボールをきっちり収めて陣形を前に押し上げる陣地回復力は明らかに別格であり、この部分はACLのGS突破に大きく貢献したといえるだろう。また、リーグ戦において外国籍選手がいなかった時期などは1人では相手を背負えない小林や宮代の相棒を務める形で中央に入り、ロングボールのターゲットになっていたのは頼もしいところであった。
後半戦のビッグマッチではコンディションをきっちりフォーカスしているのか、戻っていく守備もバリバリこなすのが家長。その週のプライオリティがはっきりしていれば強度も充分で、ある程度高い次元のプレーでまとめることができる。
PKキッカーの譲渡、早い時間での交代の増加など依存度は段階的に減らしているが、特に近年の川崎はシミッチ、知念、山村といったゲームクローズに向いているカードをどんどん減らしており、家長はその部分で依然大きな役割を担える存在である。プレータイムは短くなっても、川崎の黄金時代を知る生き字引として水準を引き上げていってほしい。
49 小塚和季
相手次第で揺れ動くパフォーマンス
夏に別れを告げてしまったんだぜ枠その2。相手と余裕をもって対峙することができれば、あっという間においていくことができる一方で、強度面でついていけない試合はからっきしダメ。まさしく、川崎でのラストゲームとなった浦和戦は後者での典型例。交代して1プレー目から明らかに浮足立っており、間合いもわからないままあっさりと退場していった。この時はまさかラストゲームになると思っていなかったのだけども。相手の力量次第でパフォーマンスが変わるムラっ気のある選手である。
対面の選手を引き付けながら空いたスペースを作り出すスキルは川崎の中盤でも随一。また、狭くても懐の深さでボールをキープすることができるのは頼もしい。ただ、やはり即時奪回を含めた強度面は甘く、この部分で明らかに他の候補者に対して後手を踏んでいる。
永長の項で述べた家長1トップを採用した名古屋戦では中央で2トップの縦関係を組むという天才たちの競演を実現。見てみたかったので満足度は高かった。見てみたかった以上のものはなかったし、普通に負けたけども。
退場しちゃったけどオファー来たんで行ってきます!という間合いはいかにも小塚という感じ。韓国でもまだまだがんばってね。