今一つ波に乗れないユナイテッド。勝ち点は3位集団のロンドン勢ともやや離されてしまった。波に乗れない原因の1つは負傷者の多さ。この日もDFラインは負傷からの復帰組が混ざる厳しい構成。さらには、WBを務めるダロトはこの試合がリーグ戦初めての先発である。いきなりの大一番で力を発揮できるだろうか。
鬼門という言葉だけでは生ぬるいくらいだ。アーセナルファンを初めて10年強だが、オールド・トラフォードは私がアーセナルを応援してからリーグ戦で勝利を収めたのを見たことがないスタジアム。そんなスタジアムあったのかよ。まだまだ自分もひよっこだな。。最後のリーグ戦勝利は2006年のこと。勝ち点を落とさない上位勢を考えても、難所で12年ぶりの勝利の凱歌をあげたいところだ。
もう1つの懸念はジャカの出場停止。リーグ戦でベンチから外れたのは2017年2月のハル・シティ戦以来のこと。今季ここまでチームを支える心臓の離脱はアーセナルにどのような影響を与えるだろうか。
スタメンはこちら。
【前半】
噛み合わせというよりは・・・
Transfermarketによるとユナイテッドの3バックは前節からの試み。ただし前節のサウサンプトン戦から継続でスタメンなのはデヘア、エレーラ、マティッチ(前節はCB)、ラッシュフォードの4人のみ。特に最終ラインは全員入れ替え。というわけで新しい試みと考えてよさそうだ。
アーセナルがボール保持をしている場合、ユナイテッドは2トップで最終ラインにプレス。リンガードとエレーラでアーセナルのCH2枚にプレッシャーをかける場面が多かった。アーセナルはトッテナム戦同様、幅を使いたいのだが、プレーテンポが遅くユナイテッドのプレスを完全に外すところまでには至らず。蓄積疲労だとか、オールド・トラフォードの芝でボールが減速したりとかいくつか要因はありそうだ。積極的なプレスで主導権を握りに行ったユナイテッドだったが、10分過ぎには徐々にそのプレスラインは低い位置にシフト。最終ラインの枚数増加はCBのチャレンジ的なアプローチを許容するための人海戦術のように見えた。プレスラインを下げたユナイテッドに対してアーセナルは幅を使った対応を見せる。主に活路を見出したのはユナイテッドのCHの脇。主にアーセナルの左サイドの脇のスペースだ。
この部分に選手が入っていく。リンガードはとてもよく走っていたが、中盤へのプレスバックは行わないこともしばしば。5-2-3のブロックの2の脇からアーセナルが前進していく形。ダロトが前に出て潰すのもありだが、ここはあまり積極的に前には出てこなかった。ダロトの前のスペースをラムジー、イウォビ、ゲンドゥージらが積極的に使って、ここから前に進むことによって、アーセナルが徐々にペースをつかみ始める。
そんな中で先制点をつかんだのはアーセナル。得点はセットプレーからのもの。バウンドがあり、そこまで簡単なセーブではないかもしれないが、デヘアの実力を考えると本人は悔しいに違いない。
先制点を境にプレスの強度を緩めたのはアーセナル。前節のハイプレスに比べれば、そもそも序盤からプレスの強度は高くなかったけど、ノースロンドンダービーから中2日の迎えたことを踏まえれば仕方ない部分もあるだろう。アーセナルは全体のラインを下げ、5-4-1でブロック形成。ユナイテッドのWBに対しては、ボールを受ける場所によってSHが対処するかWBが対処するかが異なっており、ややゾーン的な要素も取り入れられていたと思う。ユナイテッドは後方3枚のCBがいる影響で、相手陣に押し込んでいるときは後方からの押し上げも許容していた。トッテナム戦のアーセナルと似たような感じ。特にバイリーは高めからチェックに行ってカウンターを防いだりして目立っていた。ただ、最終局面(ゾーン3)ではユナイテッドの攻撃にはあまりアイデアが感じられず、ボールは進められてもそこから先の打開方法を見いだせないように見えた。というわけで困った時にはセットプレー。レノも虚を突かれたであろう、ロホのFKは見事だった。防がれたこぼれ球をマルシャル。短いステップであそこまで蹴れるロホはすごい。タックル下手だけど。
ここから試合は徐々に様相が変わってくる。ユナイテッドが得点を決めた前半30分からの15分で4人にイエローカード。実際にカードは出なかったが、ラッシュフォードとトレイラの2人にも前半でカードが出てもおかしくなかっただろう。長期離脱になりそうなホールディングについては1日でも早い復帰を心から願いたい。
試合はブツブツ切れることが多くなり、両チームともプレーにテンポは出ないまま、ピッチ上にファウルを受けた選手が次々と転がるというあまり見ていて楽しくない残り15分になってしまったのは残念だ。
試合は1-1のタイスコアで後半に折り返す。
【後半】
互いに限られたリソースで
ミッドウィーク開催の影響もあり、激しい切り替えの応酬というよりは局面局面を抑えた攻防が多かった前半だったが、後半もその流れは変わらない。マルシャル、ラッシュフォードを軸に裏を取る動きで前進することが多かったユナイテッドに対して、アーセナルは引いてスペースを消すことで対応していたが、後半はよりそれを強めた印象。MFーDF間を圧縮することでリンガードのプレーエリアの抑制も試みていた。
アーセナルは前半有効だった左からの侵攻がやや停滞。このエリアに後方からパスを供給できたホールディングが退いたことも影響があっただろう。ソクラティスは左側への供給を苦手としているためか、LCBがタッチラインに開くこと自体が減ったように思えた。polestarさんのブログにもあるように、データでも明らかだ。
ユナイテッドも悩ましい展開は続く。アーセナルが嫌がっていたのは裏に抜けるFWの動きだが、この動きを主に担当していたマルシャルは負傷交代。さらに前線と中盤のリンクマンとして機能していたリンガードも途中で下がる。表情を見る限り少しガス欠かな。結構苦しそうだったし。もともとそういう顔かもしれないけども。この2人が下がってからは前進に苦しんでいた。明確なルカクというターゲットと前線に上がれてパワープレーが可能なフェライニで空中戦メインに最終的にはシフト。
対するアーセナルで後半のチャンスメイクとして貢献していたのはゲンドゥージ。ジャカの不在で大きな展開による攻略は使えなかったものの、彼の人を引き寄せるドリブルが相手の攻略に役立っていたのも事実。オーバメヤンとムヒタリアンが逃した決定機もゲンドゥージが起点となった崩しになっており、ユナイテッドは髪の毛も引っ張るほど、手を焼いていたといえるだろう。ただ試行回数はそこまで増やせず。後半はそこまでシュート数も伸びなかった。
後半は互いにミスから1点を追加し、結局試合は2-2のままで終了した。
まとめ
負傷者が多数いるとはいえ、やりくりがうまくいっていない印象を受けるユナイテッド。特にマルシャルがいなくなった後はロングボール以外は前進の手段がなかったように見えた。アーセナル相手ならそれでいいじゃん!ってことなのかもしれないけども。だとしたら最終局面でクロスを上げられるヤングがいなかったのは手痛かったかなと。
あとはバイリー。今季あまり出場機会がここまでなかったということで何で使わないんだろう?って思ったけど、なんとなく納得。前や人に強い分、周りのリスク管理が必要で、それを支えられるCBが今のユナイテッドにはいないのかな?と思った。ちょっとダビド・ルイスっぽいなって思った。鎖が欲しい。今回は枚数でカバーした形だけど。
いずれにせよ、ホームでトップ4争いのライバルと勝ち点を縮められなかったのは痛恨だ。
負傷者で交代カードを2つ使わなざるを得なかった上に、日程的に1日不利だったことを踏まえれば上出来といえるアーセナル。ただ、上位5チームは今季はあまり勝ち点を落とさないので、この1ポイントはどう見るか。厳しいことを言えば、こういう展開になった試合でミスからの失点が出てしまうと3ポイントは難しいかなと。体力的にもチャンス回数はなかなか増やせなかったので。気になるのは今後のエメリのマネジメント。ジャカの出場停止は乗り切ったものの、ホールディングの長期離脱は痛い。コラシナツのWBは攻撃面でかなり貢献度が高いものの、CBの枚数が足りないというジレンマに陥ることになった。次の難局をどう乗り切るだろうか。
試合結果
プレミアリーグ 第15節
マンチェスター・ユナイテッド 2-2 アーセナル
オールド・トラフォード
【得点者】
MAN Utd: 30′ マルシャル, 69′ リンガード
ARS:26′ ムスタフィ, 68′ ロホ(OG)
【主審】アンドレ・マリナー