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「Catch up FIFA World Cup Qatar 2022 Asia qualifiers」~Group B Match week 3~ 2021.10.7

第2節のハイライトはこちらから。

目次

①サウジアラビア×日本

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■均衡から動く戦況への対応が勝敗を分ける

 アウェイのサウジアラビアという今大会の最大の難所を迎える日本。本来ならばグループ突破の最大のライバルとのアウェイなので、引き分けOKくらいの気楽な気持ちで臨みたいところ。だが、ホームでのオマーン戦の敗戦がその気楽な気持ちを許してくれていないという状況。むしろ引き分けが悪くない結果なのはアウェイでオマーンをきっちり叩いているサウジアラビアの方だったかもしれない。

 試合の流れとしてはいつも通り感が強かったのはサウジアラビア、サウジへの対策色が濃かったのが日本という構図だった。日本で目を引いたのは中盤のマンマークである。サウジアラビアも日本もトップ下を置く正三角形型が基本フォーメーションだったが、柴崎がそれを崩して前から人を捕まえに行ったのが印象的だった。

 恐らく、中盤で引っ掛けてからのショートカウンターが狙いだったのだろう。ボールを取り切るというところの役割でいえば柴崎は物足りないかもしれないが、奪った後に刺すパスを入れるという部分では守田よりも実績がある。隣に奪い取る部分では信頼を置ける遠藤がいるというのも大きかったかもしれない。

 おそらく田中碧は信頼のところが足りていない。森保ジャパンにおいては信頼感は大事にしているファクター。埼スタUAEでの大島のようなことをサウジの地で主人公を田中碧に変えた形で繰り返すわけにはいかないということだろう。ビルドアップにおいても柴崎のサリーを主に据えた形を採用していたので自陣からの攻撃+ショートカウンターで最も任せられるのは柴崎という判断をしたんだろうと思う。

 日本のサウジ対策はそれなりに機能していたと思う。日本は前線から中盤までの立ち上がりの守備はサウジアラビアの時間を奪っていたし、サウジアラビアはプレスをかけられたときのボールコントロールには怪しさがあった。これだけトランジッションの機会があれば、ポジトラにおけるカウンターパスを刺す機会を柴崎は十分に得られる。

 その上に、日本が深い位置からボールを持つときにサウジはなぜか日本の中盤にプレスに行くことに興味がなさそうだったので、深い位置からでもプレッシャーが少ない状態でボールを持つことが出来た。

 その上で誤算だったのは2つ。1つはトランジッション時の縦方向のパスが刺さり切らなかったこと。伊東の出場停止、かつ堂安と久保の欠場という中での浅野の先発はこのトランジッション重視スタイルの採用で正当化されている感があったのだが、有効打となるパスは多くなかった。

 収まらなかった大迫も同様。この試合に限った話ではないけど、今までだったら収まるものが収まらなくなっている。鎌田のパスから抜け出した場面は一番の決定機だったが決めきることはできなかった。といってもこの場面はDFにコントロールのタイミングと方向を制限された状況であり、見た目よりもシュートをきめる難易度は高かったシーンだと思うけど。

 前線の中で起用方法が一番ぼやけていたのは南野。攻撃の核ではないという状況の中で守備のカバーに走り回るでもなく、攻撃でとりあえず走りまくるでもない状況で何を託したのかはわかりにくかった。チームとしての狙いであるボール奪取→素早い縦パスまでは機会を得ることはできていたが、前線のコンディションと役割が微妙でそこから先には進めなかったのが前半の日本の攻撃だ。

 もう1つはサウジのサイド攻撃に対してやや後手に回っていたこと。特に2-3-5型に変形した時に左の大外のSBであるアッ=シャハラーニーは余りやすく、クロス飛込に備えて中央に枚数を揃えるサウジに対して日本は大外が手薄になっていた。浅野を前に残したいのかわからないけど、アッ=シャハラーニーについてきっちり戻るように命じられている感は薄く、彼がフリーで大外でボールを待ち受ける機会は多かった。

 そんなこんなでやばいクロスを放り込まれる機会が増える日本。しかし、ここは吉田と富安を中心にブロック。さすがにここの質はアジアでは別格。前節までの相手と比べてのCB陣の質にサウジも苦しむ。オマーン戦のサウジは中央の即興パス交換で崩している感が強かったが、この試合ではフレアに頼った崩しは吉田と富安にひっかけられ続ける。特に富安は広い守備範囲で中盤の水漏れまでカバーしていた。

 押し込めるもセットプレーからしかチャンスが作れなかったサウジ、多角的なサイド攻撃から中盤でのパスミスを誘発はできるがその先がついてこなかった日本と共に仕上げがうまくいかない状態で前半を終える。

 迎えた後半、狙いが見えてきたのはサウジの方。中盤でのプレスを強化し、徐々に日本との中盤のデュエルを増やすように。特に柴崎は狙われていた感が強い。やはり失点シーンのパスミスの話になってしまうが、この場面以前に前を向いてのプレーをいくつかとがめられたのがバックパスミスの背景としてあったはず。ミスが続くなら、後ろに・・・という消極的な選択をサウジは逃さなかった。

 日本としては前半はうまくいっていたので難しいかじ取りになったかもしれない。失点の手前の時点でミスが増えた時点でプラスにもマイナスにも振れが大きい柴崎はあきらめておけば!というのは理解できるので、交代の準備自体はわかる。けど、ビハインドの中で攻撃の舵取り役を託した人間を懲罰交代のような形でぶっこ抜くのは正直びっくりした。次のスタメン、どうするんだろう。

 日本は柴崎を下げた後にも攻撃のメカニズムは特によくなることもなく、前線にとりあえず当てて古橋やオナイウが縦に抜けて頑張る!という感じ。攻撃の指揮者がぶっこ抜かれたのだから当たり前っちゃ当たり前。その結果、むしろ交代した選手のパフォーマンスに負荷がかかる形に。それだけにオナイウがボールがやたら足についてないのは目についてしまった。

 ビルドアップのサウジアラビアを強襲し、ショートカウンターという日本の狙いは悪くなかったが、保持で落ち着かせて未知数なサウジの非保持を脅したり、中盤のプレスがきつくなってからのプラン移行はもう少し視野に入れてもよかったはず。

 500さんが『自分たちで考えるサッカー』とこの代表を称していたけども、中盤のボールの取りどころを徐々に定めてきたサウジに対して、考えた結果戦況に対応しきれなかった日本の差が出た試合だろう。ミス1つといえばそれまでだが、日本が命運を託したキーマンを翻弄しての決勝点。均衡したプランからの移行のところがこの日の両チームの結果を分けた。

試合結果
2021.10.7
カタールW杯アジア最終予選 第3節
サウジアラビア 1-0 日本
キング・アブドゥッラー・スポーツシティ
【得点者】
KSA:71′ アル=ブライカーン
主審:アドハム・マハドメ

②オーストラリア×オマーン

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■サイドに圧をかけてねじ伏せる

 9月シリーズを2連勝。見事なスタートダッシュを決めたオーストラリア。オマーンを叩いて勝ち点を落とした日本にプレッシャーをかけていきたいところ。

 おなじみになってきたオマーンの中央封鎖の4-3-1-2に対して、オーストラリアはCHが低い位置まで降りることで仕掛けていく。CHが降りる動きを見せることで、オマーンのIHはオーストラリアのSBについていくのか、あるいはCHについていくのかの判断をする必要が出てくる。

 オマーンのIHが降りていくオーストラリアのCHについていった場合、オマーンの守備の陣形はIHとSBの距離が開くことに。従って、オーストラリアのCHにオマーンのIHが食いついた時がオーストラリアの攻める絶好機。SBとWGがオマーンのSBに襲いかかる形でクロスを上げられるとオーストラリアにはチャンスが出るようになる。

 ただ、オマーンにも十分にチャンスはあった。オーストラリアの4-4-2ブロックは全体の陣形がコンパクトに維持できておらず。機動力が優れているとはいえないオーストラリアの中盤が広いエリアを任されることによって、オマーンに振り回されることがしばしば見られた。

 オマーンは守備面でも途中からIHがプレスを自重することで修正。オーストラリアに対してコンパクトな守備を敷くことができるようになってきた。メイビルによって奪われた先制点も28分にアル・アラウィの得点で取り返してオマーンが流れを引き戻す。

 しかし、並びで考えると4-3-1-2のオマーンはスライドが間に合わなくなった際にサイドの守備がどうしても孤立してしまいやすい。オーストラリアはその隙をついて得点を重ねていく。サイドでのロストからのクロスで後半早々に勝ち越し点を得ると、試合終了間際にもホルダーを追い越す形でのオーバーラップでクロスを上げてミッチェル・デュークが追加点。

 隙を見せながらも最後はオマーンを仕留めたオーストラリア。グループBのライバルたちにプレッシャーをかける勝ち点3を獲得し、日本とのアウェイゲームに乗り込む。

試合結果
2021.10.7
カタールW杯アジア最終予選 第3節
オーストラリア 3-1 オマーン
ハリーファ国際スタジアム
【得点者】
AUS:9′ メイビル, 49′ ボイル, 89′ デューク
OMA:28′ アル・アラウィ
主審:ナワフ・シュクララ

③中国×ベトナム

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■ラインの駆け引きを制したウー・レイが勝利の立役者

 予想通り、9月は苦しんだグループBにおいては格下の両チーム。上位勢に少しでも近づけるようにまずはきっちりここで勝利を掴んでおきたいところである。

 主導権を握ったのは中国。攻撃時は3-2-5に変形。18番のチャンを中心にエウケソンとウー・レイがシャドーで待ち受ける形を作る。ベトナムの守備は5-4-1で後ろに重く構える形で迎え撃っていたのだが、ライン間のスペースの管理がややルーズ。ラインのスペースが空いてしまったり、後ろから捕まえにいってファウルを犯したりなど中国に対して中央を封鎖することができていなかった。

 中国の武器はもう一つ。左サイドの縦関係。17番のリュー・ビンビンと3番のワン・シンチャオのコンビでクロスを上げるところまで持っていき、PAに迫っていく。ただし、中国は精度がイマイチ。長いボールやクロスの精度が欠けており、最後のところでベトナムのゴールを脅かすことができていなかった。

 一方のベトナムも攻撃においては苦戦。グエン・フォンが高い位置を取ることで5バックから攻撃的な形にシフトし、高い位置からの攻撃を狙ってはみたもののやや硬直気味。9月に見せたような細かいパスを素早く繋ぐ小気味いい攻撃は完全に形を潜めてしまう。単純なアスリート的な身体能力は中国の方が上だけに、攻撃が一度止まってしまうとベトナムは一気に苦しくなる。この日のベトナムはテクニックの部分でもやや難があり。トラップが流れてしまう場面が目立ってしまっていた。

 中国有利で進んだ展開は後半にスコアが動く。ベトナムが高い位置からプレスに行ったところを中国がロングボールで一気にひっくり返す。最終ラインの駆け引きでも中国は優位に立っていたのだが、ようやくロングボールからウーレイの抜け出しで先制。日本相手には起点になれなかったFW陣がロングボールを収めることでようやく中国は得点を手にする。

 2得点目もラインの駆け引きから。ベトナムの守備陣は中国のアタッカー陣の上下動に対応することができていなかった。こうなると中国は一気に優位に。とりあえず撤退し、ベトナムの攻撃のミスを待ち続けるだけでいい。自陣に引く中国に対してベトナムは苦しむ。

 だが、80分にベトナムは反撃ののろし。ミスが多く、PAまで迫るところまでいけなかった試合だったが、そこまでいければ得点ができることを証明して見せた。さらに終了間際にベトナムは追いつく。攻撃の核であるグエン・クアン・ハイの技ありのアシストで90分に同点弾を決める。

 しかし、試合の流れは最終盤に再度中国の元に。チームを救ったのは再びウー・レイ。ベトナムの守備陣との駆け引きを制し終了間際に勝ち越し。中国に劇的な予選初勝利をもたらした。

試合結果
2021.10.7
カタールW杯アジア最終予選 第3節
中国 3-2 ベトナム
シャルージャ・スタジアム
【得点者】
CHI:53′ チャン・ユニン, 75′ 90+5′ ウー・レイ
VIE:80′ ホー・タン・タイ, 90′ グエン・ティエン・リン
主審:モハメド・アブドゥラ

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