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「混戦模様の序盤戦」〜勝手にプレミア定点観測21−22 part2〜

 ボトムハーフ編!前半はこちら!

目次

【11位】アーセナル

3勝1分3敗/勝ち点10

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■バックスがもたらす猶予期間での再構築に失敗すれば・・・・

 9月の時点では最下位という文字通りの地獄を味わったアーセナル。開幕戦では昇格組のブレントフォードに一蹴され、その後はチェルシーとマンチェスター・シティに格の違いを見せつけられての3連敗となった。

 そこからの3連勝をどう評価するかは非常に難しい。少なくともノースロンドンダービーは文句なしだった。今季のトッテナムがここまで対戦した相手の中では90分を最も一方的に支配されたといってもいいだろうし、中央密集型の4-3-3に対しての攻略のロールモデルを提示したといってもいいくらいだ。

 だが、その前のノリッジ戦やバーンリー戦は相手チームのコンディションがよくなかった割には、自分たちのやりたいことが実現できたとは言い難い。ビルドアップの際に後ろに重心が傾きすぎてしまい、前に残された数少ないアタッカー陣もノースロンドンダービーを除けばボールを引き出すための動きがほぼない。

    ノースロンドンダービーで相手の中盤破壊のキーマンだったジャカの離脱というエクスキューズはあるにしても直近のブライトン戦も物足りない出来。3連勝でひとまず解任ムードは落ち着いたように思えるが、このパフォーマンスが続くようならば、アルテタアーセナルお得意のビックマッチでの快勝後にテンションがしぼんでしまうお決まりの流れと判断されてもおかしくはない。

 光明なのは守備陣だ。対戦相手のレベルが違うとはいえ、中断後の4試合で1失点。ホワイト、ガブリエウ、冨安、ティアニーが揃ったバックラインは他のDF陣と明らかに一線を画す質。今季の課題であるラインを上げる守備に大きく貢献している。

    その後方にはレノと入れ替わってゴールマウスに入ったラムズデールが君臨。獲得に懐疑的だった多くのファンの声を黙らせて、ファンとアルテタの信頼を勝ち取った感がある。

 最終ラインがある程度耐えられるという状況はアルテタにとってありがたいはず。ジャカ不在の攻撃の再構築にかかる時間でも勝ち点を拾える確率が上がるからである。いわば猶予期間が与えられた格好だ。

   だが、アーセナルはおそらくこの夏世界で一番移籍金を費やしたクラブである。その上、週に一度のゲームで体力的にも精神的にも準備期間がある状況。この環境でチームの構築が進まないのであれば、さすがのクラブOBかつ新人監督のアルテタにも言い訳の余地がなくなってきているように思う。

 冬にはANCが控えており、ここで選手の層はグッと薄くなる見込み。我慢の冬までに欧州カップ戦を視野に入れるところまで上り詰めなければ、2年連続の欧州カップ戦出場権の獲得失敗とアルテタとアーセナルの2度目の別れが現実的なものになってしまうだろう。

Pick up player:ガブリエウ・マガリャンイス
 ハイライン守備のキーマンと思っていたのだが、今季ここまでのパフォーマンスはパーフェクト。出し手としてのミドルパスの精度やジャブとしての相手のプレス隊を動かすパスの使い分けも向上。2季目は通年を通したDFラインの柱として君臨したいところだ。
他の候補→冨安健洋、アーロン・ラムズデール

【12位】ウォルバーハンプトン

3勝0分4敗/勝ち点9

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■浮上の特効薬は数字を残せる新ストライカー

 元ベンフィカの指揮官であるブルーノ・ラージを新監督として招聘。再編のシーズンとなるかと思いきや、ラージが選んだのは継続路線。3-4-3の機軸を中心に据えて、モウチーニョとネベスが中央に座るというおなじみの形でこれまでのウルブス色が濃い座組となった。

 トリンコンの獲得やヒメネスの復活などキャスト部分で変化こそあったが、多くの人を割いて守り、保持はCHを軸に左右に振りつつ、時には直線的に!という形で割り切る姿は昨季からの継続。

   ストライカーの中でも開幕から調子が良かったのはトラオレ。昨季はややコンディションを落とし気味だったが、今季は当初から全開。わかっていても止められない!というドリブルで打開を連発。攻撃の手助けになった。

 だが、躍動してもゴールとアシストにつながらないのがトラオレの難しいところ。内容は悪くないながらも決め手に欠いた開幕3試合はいずれも1-0での敗戦で全敗に沈んでしまう。逆にその3試合を全て1-0で勝利したのがトッテナム。皮肉にも前指揮官のチームと対照的な成績になってしまう。

 しかし、中断期間明けの9月からは調子を徐々に上げてきたウルブス。積極的な保持を軸に勝利が徐々に出てくるように。4節のワトフォード戦に勝利し、未勝利組から早々に脱することに成功するとそこから3勝を挙げて一気に中位にジャンプアップする。

 起爆剤となったのは新加入のファン・ヒチャン。途中加入から結果を残し、徐々にプレータイムを伸ばしていくと、ニューカッスル戦では2得点で勝利の立役者に。トラオレの相手を振り回すようなランも破壊力があるが、ヒチャンのゴールに向かう裏抜けも相手にとっては非常に脅威になっている。

 裏を使えるヒチャンの登場によってヒメネスの降りる動きにも徐々に相手は対応しづらくなっている。長期離脱明けのエースのコンディションの向上と新加入選手の上積みというキャストの変化でチームを押し上げている。

 苦しんだスコアレス地獄に対する特効薬となりうる新ストライカーの力を借りて、トップハーフを睨める位置で序盤戦を終えていることが出来たウルブス。トップハーフをにらんだ巻き返しはここから始まる。

気になる選手:ファン・ヒチャン
 富安と同じく加入後即フィットした韓国代表のストライカー。ザルツブルク時代からCLでリバプール相手にも通用していたスピードを武器にウルブスの前線に新しい風を吹かせている。ネトの長期離脱で悲しみに暮れるウルブスファンのハートをつかみ、このまま前線の柱として定着したいところだが。
他の候補⇒アダマ・トラオレ, ラウール・ヒメネス

【13位】レスター

2勝2分3敗/勝ち点8

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■ロジャーズは個性の総和を調合できるか

 レスターファンのみならず多くのプレミアファンの心を揺さぶったFA杯の獲得、ティーレマンス、マディソンをはじめとする主力の慰留には成功し、ヴェスターゴーア、スマレ、ダカ、ルックマン、バートランドなど実力者と素材をミックスさせた補強まで行ったスカッド整備。

    その上、マンチェスター・シティを撃破し50年ぶりのコミュニティシールドを制覇となれば、ロジャーズ体制でのCL出場権という悲願に向けて上々の滑り出しに期待するファンは多かっただろう。しかし、そんな状況を裏切るように今季のレスターは低空飛行を続けている。

 一番残念なのは今のレスターのプレー内容を見ればこの順位は妥当ということである。攻守の歯車がかみ合わずちぐはぐな展開に終始し、アーセナル以上に下位相手にも危なっかしい内容で勝ち点を拾う試合が続いているのが心配である。

 影響が大きいのはプレシーズンで離脱してしまったフォファナの存在だろう。ソユンクは不調、ヴェスターゴーアは組み立てで非凡さを見せる一方で機動力に大きな難があり、ハイラインのアキレス腱になっている。バーンズ、ルックマンのドリブラーの重用は仕掛けの回数が多い分、ボールロストの頻度増加につながっており、被カウンターの機会につながってしまっている。そこのツケを払えるフォファナの不在は痛い。

 ティーレマンスやマディソンはコンディションが上がってこず、昨季後半にチームを救ったイヘアナチョはCBの不振と離脱により3バックが棚上げになった関係で2トップ採用が減少したため、プレータイムが大幅減。相変わらず超人的な働きを見せているヴァーディを除けば快調なパフォーマンスを見せている選手はいない。

 今は個人個人の特性を生かして割と自由度を高めている結果、チームに歪みが出来ている状況だと思っている。多くの主力流出を経験していたことも考えればロジャーズの真骨頂は苦しい時にほど発揮されるはず。攻守にちぐはぐなレスターをロジャーズがかみ合わせられるか。内容ありきでの再建で上位への殴り込みをかけるための勝負の秋になりそうだ。

Pick up player:ジェレミー・ヴァーディ
 チームが不調の時だろうと燦然と輝く姿はまさしくスーパースター。攻守がかみ合わない中で要所で輝きを発揮し、不調のチームを牽引している。現状のレスターの中でははっきり言って別格だ。

【14位】クリスタル・パレス

1勝4分2敗/勝ち点7

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■ロンドン連合軍がもたらした変化

 取り組んでいるサッカーの内容が昨シーズンから最も大きく変わっているチームはどこか?といわれれば、個人的にはクリスタル・パレスを推す。クラブのレジェンドであるホジソンが監督生活にピリオドを打ち、クラブが白羽の矢を立てたのは同じロンドンのチームのレジェンドであるパトリック・ヴィエラだった。

 これまでの監督実績から就任前はあまり好意的にとらえられていなかったヴィエラだが、内容面では改善が図られているといっていいだろう。低い位置からの保持で相手のプレスをいなしながら前進していく姿はこれまでのパレスには見られなかった部分だ。ザハに塩を振っただけのような今までの攻撃とは一味違う形で今季のチームは組まれている。

 大きな要因としては軒並み補強が当たっていることだろう。CBコンビのグエーイとアンデルセンは開幕からばっちりレギュラーをゲット。組み立てに加えて跳ね返しの部分でもクオリティは昨季より明らかに上。CBコンビがようやく本職で組めることにファンも中盤に戻ることができたクヤテも胸を投げおろしていることだろう。

 ただ、彼らにとって最も大きな補強は中盤だ。昨季WBAで年間を通して安定したプレーを見せたギャラガーは今季もローン修行である。攻撃においてはフリーランで前線からサイドまで幅広い範囲に顔を出し、守備においては対面の相手を離すことのないチェイシングで相手のビルドアップを寸断する。

   孤高のエースのザハからのすでにギャラガーはパスをたくさんもらっており、彼の相棒の1人となるための試験は通過した印象。あっという間にフィットしてチームの中心となった。費用対効果としては今夏ここまでで最も成功している補強といっても過言ではない。

 ちなみに、グエーイはチェルシー、アンデルセンはフラムからの完全移籍。指揮官はアーセナルのレジェンドと今年のクリスタルパレスはロンドン連合軍と化している。

 前線で期待がかかるのはエドゥアール。途中交代でデビューしたトッテナム戦でいきなりの2ゴールというご挨拶を見せてポテンシャルの高さを見せている。

 それでも結果がまだ内容に反映されていない印象。1つ、原因を上げるとすればセットプレーの精度が攻守ともに高くないところだろうか。競り合い、もしくはやや優勢の試合を引き分けに持ち込まれるケースはかなり多い。前線の決定力か、セットプレーに磨きがかかればトップハーフまで順位を上げても不思議ではない存在だ。

Pick up player:コナー・ギャラガー
 今季のチームの中心的な存在に早くも上り詰めた感。攻守の経由点として物足りなさが感じられたクリスタル・パレスの中盤を強みに変えた存在である。
他の候補→ヨアキム・アンデルセン

【15位】ワトフォード

2勝1分4敗/勝ち点7

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■まずは輪郭をはっきりさせたい

 プレーしている選手の層でいえば昇格組の中では厚い部類に入るといっていいだろう。アストンビラとの開幕戦で撃ち合いを制することが出来るようにポテンシャルは十分だ。特に両WGのサールとデニスを活かしたスピードが豊かなカウンターはプレミアでの通用するレベルといえる。

 問題はその展開にどうやって持って行くかである。開幕戦でチームがふわふわしていたアストンビラや無秩序なカウンターの撃ち合いに付き合ってくれるニューカッスルやノリッジとの成績は悪くはない。だけども、今のプレミアでそこまで自由にワトフォードに進んでやらせてあげるようなチームはあまりない。

 カウンター最強!というほど、カウンターに特化しているわけでもないし、かといってプレッシングやビルドアップ、ブロック守備に取り立てて目を見張るものがないというのがワトフォードの現状だろう。

   特に4-1-4-1の守備はライン間が非常に空きやすく、相手のビルドアップを阻害できていないことがしばしば。3センターはマンマークでの対人守備には長けてはいるけども、中盤にほかに降りてきた選手がいたりなどの『バグ』が入ればたちまち相手に前進を許してしまう。相手のバックスにプレスがかからないことも多く、自由にボールを運ばせることが出来ていない。

 とびぬけて成績が悪いわけではないのだけど、監督解任は腑に落ちる。試合の中での修正というソフト面での対応も少なく、試合ごとのチャレンジというハード面での試みもなかなか見えてこない。戦闘力は低くないけど、どこか個人のポテンシャルに委ねたサッカーになってしまっている感じだ。

 再建屋として名高いラニエリを後任に起用したのは納得。まずは個性豊かなプレミアの中でワトフォードがどういうチームなのか?という輪郭を作るところから始める必要がある。経験豊富な指揮官の元でひと癖あるチームをくれれば、一変する可能性は十分に秘めているチームだ。

Pick up player:イスマイラ・サール
 スピードの切れ味はチーム内では別格。さすがマンチェスター・ユナイテッドに目を付けられた男である。

【16位】リーズ

1勝3分3敗/勝ち点6

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■工夫は見えるだけに噛み合えば

 そこまで内容が悪化した印象ではないのだけど、昨シーズンに比べると結果は一回りこじんまりしている。正面からぶつかってくる相手に対してはめっぽう強いマンチェスター・ユナイテッドに負けるのは仕方ないと割り切ってもいい。だが、そこから先の試合においても苦戦は続き、9月は未勝利のままあれよあれよという間に日程を消化してしまった感がある。

 序盤戦は4-4-2との対戦が多かったこともあり、昨季から対4-4-2専用機ともいうべき3-3-3-1をシーズン序盤から解禁。だが、昨シーズンほどこのプランには絶大な勢いを感じなかった。個人のコンディションがイマイチなせいか、アバウトさがぬぐいきれない戦いの中でエバートンやバーンリーというフィジカルに長けた相手に勝ちきることが出来なかった。

 そうなるとチームは波に乗れず、元の4-1-4-1に戻しても勝ち星がつかないという状況に。もっとも言い訳の余地はある。リバプール戦でのストライクの退場は想定外の物だったろうし、昨シーズンフル稼働だったバンフォードはすでに数試合を欠場している。固定メンバーで動きたいビエルサからしたら思ったようなメンバーを組めなかった要素はあるだろう。

 実際やっている試みは興味深い部分が多い。昨年は2人のCBを担当するバンフォードのプレス時の負荷がやたら高かったが、今季はIHからロドリゴがヘルプにくるタイミングが早くなった印象。バンフォードの負荷を低減するとともに、より高い位置からのプレスにトライしている。

 SBの役割も微妙に変わっている。エイリングがCBに入ることが増え、アリオスキは退団。昨季のSBがいなくなる中で抜擢されたのは新加入のフィルポとマルチロールのダラス。共にMF色が強い2人の起用でよりレーン移動が柔軟に。得意な大きな展開が出た先の近い距離での崩しのバリエーションは増えた印象だ。2年目のラフィーニャも鋭さを増す一方で、ビッグクラブからの噂も納得の一言。

 10月に入ったワトフォード戦でようやく上げた初勝利は内容も含めた完勝。頼れるエースのバンフォードが帰ってくれば、反撃態勢は徐々に整ってきそうな予感だが。

Pick up player:ルーク・エイリング
 迷ったが、ポジションを変えてもチームに変わらぬ貢献を見せるいぶし銀のエイリングを選出。CBが定まらない中で異なるポジションからチームを支えている。
他の候補→ラフィーニャ、スチュアート・ダラス、ジュニオール・フィルポ

【17位】サウサンプトン

0勝4分3敗/勝ち点4

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■溢れるチャンスメーカーを生かしたいが

 ここからは地獄の未勝利ゾーンである。感覚的には17位にいるサウサンプトンが最もこの地獄を抜けだしやすいように思える。

    イングス、ヴェスターゴーアという主軸を抜かれ、2列目からは南野のレンタルバックとS.アームストロングの出遅れ。だいぶ不利なチームの状況からすると、ハーゼンヒュットルは頑張っているように思う。

 イングスとS.アームストロングが不在となったこともあり、昨季の崩しの代表的なレパートリーであるSHとCFが接近しての崩しを棚上げ。CFは高い位置に待機し得点に専念。CHが最終ラインに加わりSH、SBの外回りで崩すという役割分担は悪くはなかったように思う。

 ただ、イングスと同じようなエリア内の働きを新加入のA.アームストロングに頼むのは少し厳しかったか。開幕戦こそゴールを挙げたものの、ボックス内での脅威は割引。相方のアダムスも器用だけども怖さが先にくるタイプではないので相手からすると対峙した時の破壊力は下がっている。

 加えて、難があるのがセットプレー。もちろん、ウォード=プラウズの精度の高いプレースキックは健在なのだが、問題は合わせるほう。わかっていても止められなかったヴェスターゴーアの高さと強さが失われたせいでウォード=プラウズが合わせる的がない。

 さらに守る方でもセットプレーは心もとない。マンチェスター・ユナイテッド戦ではゾーン守備の悪い部分が露呈し、エリア内で先にボールが触られまくり。昨季は強みであったセットプレーは一転弱点になっている。

 光明を見出すとすれば好調な両SBだろう。チェルシーから獲得したリヴラメントは香車型SBとして大外を任せてガンガン攻めあがることが出来るし、それに伴い逆サイドにスライドしたウォーカー=ピータースはこちらのサイドでも問題なく機能。柔と剛のタイプの異なる2人の若いSBは他のチームにはない大きな武器となっている。

 内容的には初勝利はそこまで遠くないはず。ただ、点取り役の不在はチームに重くのしかかってきそう。溢れるチャンスメーカーのボールをネットに突き刺すフィニッシャーをチームは心待ちにしている状況だ。

Pick up player:ティノ・リヴラメント
 どうやら2023年の夏に有効になるチェルシーへの買戻し条項があるらしい。代表もチェルシーもRSBは厳しい道のりではあるが、他のSBにはない持ち味を持っているのも確か。今後に期待したくなる選手だ。
他の候補→カイル・ウォーカー=ピータース

【18位】バーンリー

0勝3分4敗/勝ち点3

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『いつも通り』で足りるのか?

 バーンリーは昨季と同じく非常にスローなスタートを切った。4-4-2からのロングボール、間延びした展開が得意でどこか牧歌的なスタイルというのは昨シーズンと同じではある。オリンピックで日本国民の認知度も少しは上がったであろうウッドにめがけて、今日もロングボールを放っている。

 ただ、チームは昨シーズンと少し違う部分もある。1つはベン・ミー。昨シーズンは出遅れたベン・ミーの復帰によってチームはなんとか以前のしぶとさを取り戻した印象がある。しかし、今季はすでにベン・ミーがいる状態で勝ちきれない試合が増えている。

 特に目立っているのが後半の失点だ。リードしているところから逃した勝ち点はすでに10。断トツのリーグトップだ。今季はバーンリーはそこまで点が取れていないわけではない。7試合で無得点は3試合、うち2試合はアーセナルとリバプールなのだから彼らにしては得点はそこそこ取れている方とみるべきだろう。終盤で間延びしたところを一刺しやられて逃げ切れないという展開が多く、従来の先制させるとめんどくさい相手というイメージとは乖離した結果になっている。

 DFラインだけの責任ではないだろうが、ターフ・ムーアでの勝負弱さも際立っている。ホームでのリーグ戦の最後の勝利はなんと1月27日のアストンビラ戦。オフを挟んでいるとはいえ、本拠地で8カ月以上勝利がない状態である。どの相手にもタフだったホームで勝ち点をやすやすと献上していては厳しいだろう。

 もう1つ、昨シーズンと異なるのは残留争いのレベルである。強さが感じられなかった3チームを置いていけばいいだけだった昨季とは異なり、今季はノリッジを除けばまだどこが降格争いに巻き込まれるかが見えてきにくい。例年よりも高いレベルの残留争いになるのだとしたら『いつも通り』のバーンリーには逆転の起爆剤となる一手が乏しい。

 光明となりそうなのはリヨンから加入したコルネ。チャンスメーカーとしてのサイドの突破力はこれまでのバーンリーにはなかったもの。昨季と異なる残留争いの中で『いつも通り』を脱却するためには負傷中の新戦力に大きな期待がかかってくるはずだ。

Pick up player:マクスウェル・コルネ
 レスター戦では得点の活躍も負傷。シティキラーとして名高いフランスからの新戦力は今季のバーンリーの浮沈のカギを握っている。

【19位】ニューカッスル

0勝3分4敗/勝ち点3

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■未来のために手段は問わない残留のノルマ

 昨季はなぜかボール保持に色気を見せた時期もあったが、今季はもうそんなことはお構いなし。猪突猛進のカウンターモード全開のスタイルで心中することに決めたようである。

 それを成立させているのは当然大エースのサン=マクシマンである。見た目の派手さにぴったり合った無鉄砲なドリブルは健在どころか昨シーズンよりも破壊力を増している印象。ドリブルだけでなくフィニッシュ、ラストパスの精度も上がり割と無敵状態になりつつある。球離れも彼自身の昨季に比べればよくなっている。

 課題になるのは彼が関与しない得点があまりにも少ないこと。ハイテンポでの攻撃についてこれるのはアルミロンとウィルソンくらいのもの。昨季チームを救いまくったウィロックは今季はまだそこまでの存在感を発揮できていない。

 サン=マクシマンに依存する攻撃の改善が望ましいところであるが、正直なところ今の段階でブルースにそれを期待しているニューカッスルのファンはほぼいないだろう。サウジアラビア資本の流入という大きな変化が起こり、憎きマイク・アシュリーとの袂を分かつことになった今は、とにかく残留してくれればなんでもよしというのが本音ではないだろうか。

 恐らく監督も代わるはずだ。申し訳ないがスティーブ・ブルースが率いるスター軍団というのは2021年には想像しづらい絵面である。しかし、どんなに金があったとしても2部に落ちてしまっては意味がない。ということで冬から積極的に動きまくるはずである。

 現有戦力に求められるのは冬の戦力追加にたどり着く前にゲームオーバーになってしまわないこと。そのための最短ルートはおそらく、カウンターからのサン=マクシマンだろう。輝かしい未来のために今は泥臭く残留に向けた勝ち点を得ることが求められる状況。

取り巻く環境は様変わりする。あとはいつどのように現場にメスが入るか。今後のニューカッスルを占うのは今季これまでの戦いぶりではなく、この先の戦略だろう。

Pick up player:アラン・サン=マクシマン
 ほかにいねーんだから仕方ないだろ

【20位】ノリッジ

0勝1分6敗/勝ち点1

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■攻守のバランスが見出せず現状は厳しい

 プッキ、ラシツァ、キャントウェルの3トップの機動力はどうやら通用しそう。でもそこまでどうやって届けようか?という悩みに苦しめられて持ち味の攻撃が機能不全に追い込まれてしまっているのが今のノリッジである。

 3トップはキャラクターは異なるが、いずれも抜けだしたりフリーになってナンボの選手。しいていえばキャントウェルが1枚剥がせるタイプだが、基本的には抜け出しから直線的にゴールを陥れるという非常に限定的なパターンでしか通用しないのが現状である。

 加えて、守備陣はFW陣が得意な状況を粘り強く待てるほど強度が高くない。ボールを持たれて押し込まれてしまえば普通に失点してしまう強度。ラインコントロールも、PA内での跳ね返しの部分でもプレミアでは見劣りするレベルである。

 そんな状況になってしまったため、開幕当初の4-3-3から9月には5-3-2にシフト。キャントウェルだけでなく、開幕前の青写真ではおそらくアンカーとして司令塔に据えるはずだったギルモアをベンチに追いやり、守備に大きく舵を切る。

 しかしながら、そうなってなお最終ラインの強度はプレミアでは怪しい。さらには攻撃の駒を落とした分、ちゃんとジリ貧になるという非常に困った状況に。

 中断前のバーンリー戦は上昇気流に乗るための逆天王山だったが、むしろ両チーム揃って手詰まり感を露呈して、閉塞感が漂う雰囲気に拍車をかけてしまった。正直、現状では光がない。序盤戦だが残留は相当厳しい道のりになるだろう。人を揃えても守りきれないことはよくわかったので、どうせなら攻撃的なタレントを揃えてもいいのでは?と思うけど、それが残留の特効薬になるとは思えない。

 2年ぶりのプレミア挑戦は想像以上に厳しいものになったノリッジ。ファルケにここから策はあるのだろうか。

Pick up player:ビリー・ギルモア
 スコットランド代表でも、ノリッジでも後ろに重いチームをなんとかしてくれ!って丸投げされている感があるのは哀愁を感じる。ってか、ボトムハーフはチェルシー産のタレントに頼りすぎ。

おわり!

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