■5バックなのに大外が狙い目?
第1節は敗れてしまった両チーム。ここに勝利した方がひとまず2強への挑戦権を得るという形だろうか。グループHのダークホース枠に名乗りを上げるための直接対決となる。
ホームゲームであり、地力に勝るということで積極的なメンバー選考をしたのはゼニト。上の図に細かいフォーメーションをどう記載したらいいのか難しいところなのだが、3バックでウェンデルが守備的な立ち位置をとるのは確か。試合前に映像に出てきた予想スタメンではクズヤエフがウェンデルと並んでCHの位置にいるが、前線に出ていくことが多い。ウェンデル以外の前の6枚は攻撃的なタレントを並べたといっていいだろう。
特徴的だったのはゼニトの左サイド。WBのサントスは比較的絞ることも多く、同サイドのWGであるクラウジーニョは外に流れることも多かった。また大外の手前の位置はマルメの5-3-2からするとケアしにくいポジション。ここをワイドCBのラキツキに任せることもあった。
先ほども述べた通り、攻撃的なタレントを並べていたゼニト。1人や2人がサイドに流れても人数的には問題ない。むしろゼニトが中に攻撃的なタレントを集結させることでマルメの守備ブロックは中央に圧縮。マルメは5バックにも関わらず大外が空くことが多かった。
従って、ゼニトからすると大外は狙い目になる。レーンの入れ替えが激しい分、左サイドの方からチャンスを作ることができる。。圧縮された5バックの外を回ったサントスがクロスを上げて先制点をゲットする。
大外をプロテクトできる相手を中に押し込んで外からタコ殴りするという形でマルメを壊したゼニト。現代のハイタワーの第一人者と言ってもいいジューバが中央にいることも含めてハンマーでぶん殴って壊している感が強かった。
先制点が入ったのは比較的早い時間だった。だが、そこから一方的なゼニトペースだったわけではない。むしろ、ここから2点目が入るまではマルメのペースだったと言ってもいいだろう。
マルメはボール保持で比較的しっかりと後方の数的優位を生かしながら時間を作っていた。ゼニトの前線は守備へのプレッシャーを強くかけるわけでもなく、マルメのバックスは時間を自動的に得ることができた。かつ、大外までのパスコースはがら空き。ゼニトはシャドーの守備のタスクが軽く、マルメは大外までボールを楽に渡すことができた。
ゼニトは攻撃的なタレントを揃えた分、中盤でのブロックを揃えて整えるのが苦手。マウコムやクズヤエフが中盤をスペースを埋めるので全体のバランスを見ると5-4-1気味に受ける形になるのだが、この形がなかなか整わない上にコンパクトさにかける。従って、マルメは中央を経由しながら逆サイドまで悠々と展開。中盤を経由した比較的短い時間でのサイドチェンジでゼニトを押し下げる。
加えてマルメの前線の機動力にも苦戦。大外でWBがWBをピン留めすると、その裏に走り込む動きをFWがこなすことでゼニトのバックラインにも揺さぶりをかける。甘い中盤の守備意識を活用したマルメが前半の途中からはペースを握っていく。
■セットプレーで屈すると流れは一気に
しかしながら、得点を取れないまま前半を終えてしまったマルメ。すると後半の頭にゼニトが追加点をゲット。セットプレーの流れからクズヤエフが押し込んだ。
マルメは1失点目の時もそうだが、クリアの距離が出ないのが致命的。一度押し込まれると跳ね返すまでにやたらと手数がかかってしまう。このクリアの甘さがマルメの失点に繋がってしまっている。
追加点を得たゼニトはここから勢いに乗る。中央を経由する前進手段として使われていたジューバに当てて追い越す動きを活用していたゼニト。2得点目の直後にジューバから裏に流れたクズヤエフが抜け出すと、アフメドジッチがハンドを犯してこれを止めたために一発退場。これで実質試合は決まったと言っていいだろう。
そこから先はゼニトペース。と言っても、ゼニトは3点目を狙いに行っており、あまり試合を制御しながら進める感じはなかったため、マルメにも前進の機会はあった。だが、4-4-1に変形した影響もありマルメは前進の際の武器だった大外→大外を失ってしまい、効率的に前に進むことができない。
そもそも前進してからの破壊力はゼニトの方が上である。その上に機会の部分の優位まで加わってしまうとなると、ゼニトの優位は動かない。ここから2点をさらに加えてマルメに完勝。チェルシーに勝ち点で並び2強への挑戦権を獲得した。
チームとしての綻びはなくはなかったが、破壊力で上回ったゼニトがマルメを文字通り粉砕した試合となった。
試合結果
2021.9.29
UEFAチャンピオンズリーグ
Group H 第2節
ゼニト 4-0 マルメ
ガスプロム・アレナ
【得点者】
JUV:9′ クラウジーニョ, 49′ クズヤエフ, 80′ ストルミン, 90+4′ ウェンデル
主審:タソス・シディロプロス