Fixture
明治安田 J1リーグ 第24節
2024.7.20
柏レイソル(13位/7勝8分8敗/勝ち点29/得点28/失点33)
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川崎フロンターレ(14位/5勝10分8敗/勝ち点25/得点32/失点33)
@三協フロンテア柏スタジアム
戦績
近年の対戦成績
直近10回の対戦で川崎の5勝、引き分けが5つ。
ホームでの戦績
直近10戦で柏の3勝、川崎の3勝、引き分けが4つ。
Head-to-head
- PK戦を引き分けとカウントすると、直近3回の対戦は引き分け。
- 柏がリーグ戦で最後に川崎に勝利したのは2016年の等々力での2-5。
- ディエゴ・オリベイラのハットトリック。以降13試合で勝ちがない(D5,L8)
- 日立台での直近3試合はいずれもドロー。
- 最後に柏がホームのリーグ戦で川崎に勝ったのは2015年。以降7戦で勝利がない(D4,L3)。
スカッド情報
- 細谷真大、関根大輝(この試合では累積警告による出場停止)は代表活動によりチームを離脱中。
- 犬飼智也は右太ももの肉離れにより離脱中。
- 丸山祐市は欠場が続く。
- 三浦颯太は全体練習に合流。
- ジェジエウは肉離れの治療により一時帰国。
- 高井幸大は代表活動によりチームを離脱中。
予想スタメン
Match facts
- 敗れればおよそ1ヶ月ぶりのリーグ戦連敗。
- 直近6試合のホームでのリーグ戦では引き分けがない。
- ビハインドから得た勝ち点は15。湘南と並び最も多い。
- マテウス・サヴィオは木下康介に今季のリーグ戦で3回のアシストを決めている。
- 木下康介は途中交代から6得点を決めており、リーグ最多。
- 90分換算で木下(0.69)よりハイペースで得点を決めている700分以上プレーしている選手はレオ・セアラ(0.75)ただ一人。
- 細谷真大が出場していない直近3試合のリーグ戦では勝利がない。
- 公式戦では7試合勝利がなく、5試合連続引き分け中。
- アウェイでのリーグ戦は開幕戦以降勝利がない(D5,L5)。
- 直近5試合のリーグ戦のうち、4試合で先制点を得ている。
- しかしながら、リードから落とした勝ち点は25でリーグ最多。
- 小林悠は直近15試合のリーグ戦の出場で1得点しか決めていない。
- マルシーニョは直近5試合のリーグ戦で4得点を挙げている。
予習
第21節 鳥栖戦
第22節 FC東京戦
第23節 名古屋戦
展望
細谷の穴ができると考えられる箇所は?
リードを守りきれずに勝ち点を落とす試合が続いている川崎。今節の相手はリーグで最もビハインドから勝ち点を拾っている柏。今の川崎にとっては一番戦いたくない相手と言ってもいいかもしれない。
柏にとっても今節は正念場のスタート。細谷、関根という2枚の看板を相手の夏シリーズの開幕となる一戦だからである。
柏に関してはちょうどらいかーさんが記事を書いている。自分もこれを読んだし、この記事でも重なる部分はあるのでリンクは貼っておく。
さて、柏のフォーメーションは基本的には4-4-2。直近3試合の中では名古屋戦の一部分だけは3バックを採用したが、4-4-2からフォーメーションを変更して相手を迎え撃つことは極端に少ないチームと言っていいだろう。
上の記事の中では「全方位型のチーム」と称されているように、柏にはこれといったチームカラーはついていない。その中で攻撃に関して特徴を挙げるとすれば自陣からの保持と、ミドルゾーンからのカウンターがメインのストリームになるだろう。
4-4-2の2トップからの勢いがいいプレスから相手のコースを限定し、そこからボールを奪い取ると一気にゴールを奪い取る。FC東京戦では野澤のフィードに制限をかけて、パスをカットした流れから一気にゴールに持ち込んでいく。中盤でフィードをカットしたのは前回対戦では負傷欠場していた高嶺である。
自陣からの攻撃でメインの変形となるのは左サイドのユニット。インサイドに絞るサヴィオを縦パスのレシーバーとして、空い大外のレーンをジエゴが駆け上がっていく形が一番オーソドックスと言えるだろう。ただし、逆サイドの関根も攻める意欲が強く、SBが左右偏重で片上げするわけではないことは頭に入れておきたい。
前進の場面でボールを受けるサヴィオが代表例なのだが、柏の前進はバックスからの縦パスを背中を向いて受けながらなんとかしてもらうケースが多い。後方からのズレを作ることにこだわるのではなく、前線の受けるスキルに委ねるというカラーが比較的強い。
そういう意味でもう1つ大きな武器になっているのは細谷の縦横無尽に受ける動きである。裏抜けも含めた動き出しで相手のマークを揺さぶりながらアクションを仕掛けることができる。ダイレクトな前線中央への抜け出しだけでなく、サイドに抜け出してのスペースメイクなど今季は崩しに関与するための動きが増えた印象である。
この細谷の動きのように前線はサイドに流れて裏を取るアクションで奥行きを担保する。山田、小屋松はこのフリーランをきっちりこなすことでレギュラーの座を確保している。
カウンターでは細谷、サヴィオ、山田、小屋松の4枚が縦に鋭い攻撃で一気に攻撃を完結させる。遅攻ではそれぞれのサイドユニットに組み込まれるイメージだが、速攻ではこの4枚が前線の大きなユニットでレーンにこだわらずに攻撃を完結させる動きを見せている。
もう1つ、攻撃において触れておきたいのはジョーカーと言える交代選手の存在である。柏がビハインドから勝ち点を得ることができているのは攻撃をギアアップできる前線の選手の存在が大きい。
前回の対戦では先発で力を発揮した木下はジョーカーとして抜群の存在感を発揮。左右に流れて背負ってボールを受けて陣地回復の役割を担いつつ、ボックス内では空中戦の強さを発揮してスコアラーとしても働くことができる。
もう1人名前を挙げておきたいのは島村。狭いところをこじ開けることができるドリブラーとして違いを作り出す。鳥栖戦では逆転の機運を作り出す大きな後押しで次々と得点に繋がるチャンスメイクをこなしてみせた。
守備においては4-4-2での高い強度の守備が武器。バックラインは相手を捕まえた時のデュエルが強く、名古屋の前線にボールを収めることを許さなかった。ボールにリーチした時の強度という点では十分なものを備えているといっていい。
対人に自信がある分、守備の基準は人。マンツー気味に相手についていくケースが多い。その影響からか相手の後方の列から流れてくる選手や逆サイドから出張してくる選手をフリーにしてしまう傾向がある。FW-MF-DFの各層の連動には少し甘さがある。
そこを補っていたのが細谷の献身性。彼のプレスバックで追い越したはずの中盤を再度捕まえるというアクションは非常に多く見られる。FWとしてかなり長いプレータイムながら、こうした強度の高いタスクを担うことができるのが細谷の強みである。こうした動きがあれば、柏のFW-MF間に生じるギャップは埋めることができる。
逆に言えば、この試合では夏場のコンディションの中でそうした細谷のタスクを誰かがこなさなければ、柏の守備は間延びする可能性があるということでもある。おそらくは垣田、木下、小屋松を中心にこの役割をシェアするのだと思うが、細谷不在で間延びを防ぐことができるのかは柏の守備の大きなポイントになるだろう。
食いつかせて背後を徹底する前進に
川崎にとって最悪のシナリオは柏の前プレに屈してしまうこと。2トップが方向づけして追い込む形のプレスは得意。自陣からの強引なパスが柏のショートカウンターの呼び水になってしまうのが想定されるワーストケースと言えるだろう。
例えば大南からのSBへのハメパスが狙われてしまうと厳しいものがある。CBの判断ももちろん重要だが、SBも低い位置でイタズラにボールを受けないこと。等々力での対戦では瀬川がやたらと低い位置でボールを受けたがっており、これがサイドのビルドアップに完全に蓋をしていた。
直近では瀬川をSB起用する際は前に家長を置くことをセットとして、瀬川がビルドアップに関与しないプランをとっている。ただ、同じポジションにファン・ウェルメスケルケンを置くならば、家長を右の前に置く縛りからは解放される。相手のSHの手前で受けてもインサイドにつけたり、あるいはドリブルで進路を取ることができるなど選択肢は広がる。
後ろからの繋ぎに関してはGKやCBの方が不安要素があるのに、なぜこんなに右のSBの話をしているかというと、柏の守備で最も間延びが見られやすいのがサヴィオとジエゴの左サイドの縦のラインだから。川崎のSBには自分のカラーに合わせつつ、サヴィオの背後で受けることを意識してほしい。瀬川は低い位置で関与しないことで、ファン・ウェルメスケルケンは低い位置で受けて高い位置に動き直すことでサヴィオの背後でポイントを作りたい。
少し話は逸れるが、右サイドは高い位置での崩しにも大きな課題がある。誰も止まることができず、その場でなんとかしようと足掻いてサイドからクロスを上げるだけに終始している場面が非常に多い。下がった家長の序列を納得させるようなパフォーマンスをそろそろ見たい。
SBの話に戻ろう。高井がいなくなり、ジェジエウが離脱したことで最終ラインの構成は風雲急を告げている。佐々木、大南のCBのコンビは確定的。SBは橘田、瀬川、ファン・ウェルメスケルケンから2枚という感じになるのかなという感じ。前節までの流れを汲むのであれば、橘田とファン・ウェルメスケルケンのセットだろうが、家長を先発で起用するなら瀬川の古巣戦での先発というのも面白い。また、本人の意気込み通り、三浦がこの試合からスカッドに絡むのであれば、三浦とファン・ウェルメスケルケンのセットがスターターとしては妥当なように思える。
自陣から時間を作るという意味ではCHの役割も重要である。柏の2トップの守備はCBにプレスにかけていく意識が高い。かつ、柏はすでに指摘した通り、守備におけるそれぞれの列の連動が甘い。ふだんであれば細谷がプレスバックをして埋めるはずのCHはこの試合では浮く可能性が高い。川崎にとってはチャンスである。だからこそ、まずは2トップを食いつかせる、そして中盤を食いつかせる、そして相手のバックスを晒すというふうに段階を踏んだ攻略を行っていきたいところ。
前節のC大阪戦での前半はチャンスを作るという意味では悪くなかったが、やや強引な縦パスから瀬古と大島は前後分断を引き起こしていた感がある。もう少し、段階的なズレを使いながらの前進で柏のバックスに負荷をかけつつ、押し込みながら一方的に攻める状況を作りたい。
大島と橘田をCHに並べるのはサイズ的に無理があることを踏まえると、やはり先発は瀬古と誰かになるのだろう。瀬古は日立台で無理なロングパスをカットされたところからの失点をすでに経験している。アバウトな縦への進撃はしっぺ返しを喰らうことになることはすでに学んでいるはずである。
瀬古に限ったことではないがC大阪戦のように一発で攻撃の完結を狙うのではなく、相手を一つずつ動かすことを意識したい。相棒に身体的な制約がある大島が入るのならば、尚更瀬古が高い位置と繋がるタスクを担えるかは重要になるだろう。
逃げきれない展開が続く終盤戦の話をするのであれば、本当の最終盤は結局自陣での守備を固めて跳ね返す時間は必ず出てくる。なので、プレスからラインを下げるフェーズへの移行はきっちりと行うこと。C大阪戦はここが不明瞭だった。広島戦くらいメリハリをつけて背後を守る意識を共有したい。
保持で時間を作るという概念は最終盤よりも優位に運べている時間帯にこそ必要。最後に無理が効かなくなるので、それまでの時間帯で好き放題オープンに前に出ていっては簡単なロストを繰り返しているからである。90分を考えた時に保持で時間を作り、終盤に体力を残しておきたい。最終盤には少ない人数で攻撃に打って出る馬力のある選手は少なくとも1人は欲しい。エリソンや山田のどちらかはこの役割をフレッシュな状態で担って欲しいところだ。
新潟、湘南戦で見られた方向性はその後の磐田戦で一気にバラバラになった感がある。勝利はもちろんだが、保持で相手を動かしながら少しずつ穴を開けるという方向性に手応えを持つ内容で中断期間を迎えたいところだ。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)