Fixture
明治安田 J1リーグ 第28節
2024.8.24
浦和レッズ(10位/9勝8分9敗/勝ち点35/得点40/失点35)
×
川崎フロンターレ(13位/8勝10分9敗/勝ち点34/得点42/失点38)
@
戦績
近年の対戦成績
直近5年間の対戦で浦和の3勝、川崎の6勝、引き分けが7つ。
ホームでの戦績
直近10戦で浦和の3勝、川崎の4勝、引き分けが3つ。
Head-to-head
- 直近4回の対戦はいずれのチームも得点も失点もしておりクリーンシートがない。
- アウェイチームの勝利は直近10試合なく、最後の勝利は2021年に川崎が埼スタで0-5で勝利した試合。
- 川崎は直近3回の埼スタ遠征で勝利がない(D1,L2)
- 同カードの最多得点者は興梠慎三と小林悠の10得点。
- 興梠慎三にとっては最後の川崎戦となる。
スカッド情報
- 大久保智明は前節捻挫により途中交代。
- 西川周作が出場停止から復帰。
- 前田直輝はフルトレーニングに合流。
- ジェジエウは肉離れにより一時帰国。
- 瀬古樹は移籍手続きによりチームを離脱。
- 高井幸大は累積警告により出場停止。
- チョン・ソンリョンはコンディション不良で前節欠場。
予想スタメン
Match facts
- リーグ戦直近5試合で勝利がない(D3,L2)。
- 直近3試合のリーグ戦の勝利はいずれもクリーンシート。
- ホームのリーグ戦は連敗中。リーグ戦3連敗になれば2020年10月以来、およそ4年ぶり。
- 渡邊凌磨はここまでリーグ戦の98.6%に出場しており、チームでもっともプレータイムが長い選手。
- サミュエル・グスタフソンが先発した直近5試合のリーグ戦は負けなし(W2,D3)。
- 最後の敗戦は等々力での川崎戦。
- グスタフソンが得点を決めた試合はどちらも浦和は4得点を挙げている。
- 負ければ5月以来今季4回目のリーグ戦連敗。
- 勝てばFC東京に続き、今季2回目のシーズンダブルを達成。
- 直近22試合の公式戦で退場者を出していない。
- 昨季の埼スタでは小塚和季が退場している。
- 8月のリーグ戦は直近7試合で2勝(D1,L4)
- エリソンが今季ゴールを決めた公式戦5試合で勝利したのは2試合のみ。
- ホームで得点を決めた3試合が全敗、アウェイで得点を決めた2試合が全勝。
- マルシーニョが今季ゴールを決めたリーグ戦は6試合すべてで勝利がない(D4,L2)。
予習
第24節 札幌戦
第26節 鳥栖戦
第27節 鹿島戦
展望
もう一度道を示したいタイミング
リーグ戦の8戦無敗、今季初の3連勝を隣町のライバルに止められた川崎。今節は再起を賭けた一戦になる。舞台となるのは埼玉スタジアム。当然対峙するのは浦和レッズだ。
浦和も今季はかなり苦戦の跡が見えるシーズンになっている。3試合前に開催される予定っだ柏戦が中止になり、1試合消化が少ないことを差し引いても二桁順位にいるというのはいささか寂しさがある。
もっとも、そうなった要因がないわけではない。新監督&大幅な戦力入れ替えで春はプランの浸透と戦力のスクリーニングが優先。負傷者の状態ともにらみ合いが続いた。ようやく序列が整ってきたかと思ったら、今度は夏にベテランと主力が大幅退団。ソルバッケン、ショルツ、岩尾、酒井、伊藤など多くの選手が浦和を去っていった。
浦和を常に見ているわけではないからどういった曲線を描いているかは何とも言えないが、少し前に見た試合に比べるとやや模索感が出てきたように見えた、多くの浦和ファンの人にレビュー記事を読んでもらった気がするが、磐田戦は抜群の出来だった。
保持でボールを逃がし、外につけて時間を整え、オーバーラップを生かした同サイドの攻略と手薄になった逆サイドへの横断を駆使しながら戦うことができていた。大きな役割を果たしていたのはソルバッケンである。サイドでボールを預けてリポジションの時間を作ると、味方のオフザボールを促して局面を前進させる動きはお見事。保持において最も頼りになる動きといっても過言ではない。
今の浦和は後方からの持ち運びは安定している。CBはショルツがいなくてもボールを持つのは落ち着いている。CHのグスタフソンはクロースのように細かく降りる場所を調整しながら相手のプレスの狙いを絞りにくくする。CBの間に落ちるだけでなく、CBの横に流れることで対面の相手のマークをあいまいにする。
シーズン前半はここからサイドの3人目の突撃のような役割もやっていたグスタフソンだが、直近の試合ではそうした動きは控えめに見えた。後方支援に徹しているのは気候面を含めたコンディションなのか、それともタクティカルなものなのか、あるいは単なる自分の気のせいなのかはわからない。
グスタフソンが君臨する中盤とは異なり、ソルバッケンが去った前線にはボールを預けて時間を整えるタイプの選手は少ない。どちらかといえば、関根や松尾などスピード系のアタッカーが多く、引き込んでブロックで受けてカウンターに出て行くことを得意としている一方で、幅を取りつつ味方の攻め上がりを促すのにうってつけの人材はあまり出てきていない印象。ワイドで言えば中島はタメを作れる枠かもしれないけども、キャラクターが尖っているせいか起用はワンポイントにとどまっている。ポストプレーが計算できるサンタナがスターターに帰ってくればもう少し話は違うかもしれない。いずれにしても、前線にタメができないことでここ数試合の浦和のゆったりとした攻撃に厚みが出ていないのは間違いない。
前の連携でタメが効かず、うまく厚みを出せないということが浦和にとって目をつぶれることなのか、あるいは歯を食いしばっても我慢しなければいけないことなのかはわからない。ひとまず、直近の前線の攻勢はスペースがある状態のカウンターの方が効きそう。その前提に立つのならばじっくりと構えて攻め込むという手段もあるというのは確かである。
その際には相手にボールを渡したときのブロックの強度が重要になる。浦和の今の守備ブロックは強みと弱みがはっきりしているように思える。縦横がコンパクトな4-4-2で構えるのが直近の浦和の守備。インサイドがコンパクトなため、強引に内側にパスを入れてくるチームや単調なクロスに終始するチームにとっては悪くない一方、サイドからの下手な形で下げられるとめっぽう弱い。
顕著だったのが札幌戦。浦和の2トップは札幌のバックスにプレスに行けず、外への展開を簡単に許す。縦横が狭いので、外へのチェックが遅れるという流れでガンガン押し下げられまくっていた。ほかの2試合ではさすがに札幌戦ほど顕著ではなかったが、トップのプレス開始位置が決まらない→早めにチェックをかけられないという流れ自体はあった。サイドから変に動かされてクロスを入れられてしまうと、ボックス内での守備耐性は当然脆くなる。その点を抑えられるかがブロック守備で構える形をベースにする収支が合うかどうかと密接にリンクしてくるだろう。
ただ、浦和にとって最も大事なのはどこを基準に進んでいくかである。より、保持ベースで進んでいくのであれば、もう少し前線の組み合わせは模索する必要があるし、今出ている前線をベースにするのであれば、違う方向性もまたあるのかなと思う。戦力が入れ替わったこのタイミングでもう一度進むべき道を示さなければいけない状態になっているのが今の浦和なのかなと感じる。
CB問題は相棒だけではない
浦和相手に考えなければいけないことはやはり保持での主導権を握れるかどうかだろう。ここ3試合の浦和の前線の組み合わせは守備でスイッチを入れてくるタイプではない。小泉のようなプレスがうまい選手をこの試合に向けて抜擢すれば話は変わってくるかもしれないが、そうでなければここ数試合水準の川崎のボールの動かし方であれば、クリーンに1stプレスを越えられる可能性は高い。
が、この試合では高井が出場停止。ジェジエウは未だ治療中のため、残っているバックスの利き足を踏まえると、ここまで左のユニットでいいフィーリングを続けていた佐々木を右のCBに回さなければいけない公算が強い。
大南の退団により、佐々木の右はどこかで試す必要があったと考えれば、いい機会ととらえることもできるけども、最もうまくいっているポジションの1つだったので、個人的にはあまり動かしたくなかったなという感想が先立つ。相棒がコンディションに不安を感じさせるパフォーマンスから抜け出せない車屋なのか、負傷以降姿を見せていない丸山なのか、ぶっつけのアイダルなのかはわからないが、右の佐々木の出来には個人的には注目している。
仮に前進がうまくいったとしても、ここから入れるクロスにはもう少し工夫がほしい。SBと家長が入れるクロスはそこそこいいフィーリングなのでどちらかといえば、工夫がほしいのは受け手のコンビネーションの方。
インサイドに入ってくる意識が高まっているここ数試合のマルシーニョはとてもいいのだけども、マルシーニョ自体に高さはないので、ファーに入ってもSBに競り勝てるかは微妙なところ。なので、山田とのレーンを入れ替えながらフリーでヘッドを決めるパターンは欲しい。
試合終盤に投入される小林にしてもそう。横浜FM戦の終盤のようにワイドに投入されてストライカーが2人以上という体制になるのであれば、1人がファーに逃げて折り返すとか、そうした役割分担が欲しい。もちろん先のマルシーニョのようにレーンを交換してフリーになるアクションをしてもいい。
横浜FM戦ではファーのボールに揃って飛び込むなどもったいないシーンがあった。どちらもゴールが欲しいのはわかるけども、誰がゴールを決めたかがゴール自体が生まれることよりも重要になることはないのがサッカーでもある。2人ストライカーがいる状況ならば、その状況を生かして得点につなげてほしい。
痛みを伴う守備の手当てをどうとらえるか
最後にこの試合だけではなく、今後の川崎の展望も軽く。浦和と同じように川崎のここ数試合から中期的な展望を抽出すると、保持ベースでスローリーに制御するスタイルはある程度大島を軸に据える形で解決策は見えた。その一方で受けに回った際に大島の可動域が問題になることは横浜FM戦の失点で分かったし、終盤に競っている時のギアアップへの以降もそこまでうまくいっていない。さぁ、どうしようというのが今の川崎ではないだろうか。浦和と同じく川崎もまたどこに向かうのかが問われる時期なのだと思う。
大島周辺の不具合の詳細に関しては前節のレビューを見るのが一番早い。簡単に言えば、大島を起用することが相棒のCHが大島サイドまでのケアに奔走する仕組みになっており、CBがバイタルのケアまで出て行かなければいけない場面が増えた結果、間に合わずにバイタルを自由に使われるシーンが増えるということである。
少なくとも、今の11人を並べている限りは横浜FM戦で見られた守備での脆さは改善するのは難しい。改善策としてはCHを大島から入れ替える、サイドの守備にCHが出て行かなくて済むようWGにハードワークできる選手を入れるというのがパッと思いつく。
新加入の河原を橘田と並べるというのは確かに前節の失点を受けての対症療法としては有効だろう。しかしながら、大島を軸に保持はうまく回っているのも確か。家長にしても高さのない川崎のアタッカー陣においては大島とともにタメが効く存在として、ブロック崩しに欠かせない役割であるし、裏抜け一発があるマルシーニョにしても同じである。遠野や瀬川をサイドで使えば中盤のスライド量は減らして大島はプロテクトできるだろうが、当然できないことも出てくるだろう。
よって、守備の手当てをするには痛みが伴う。かつ、FC東京のようにトップハーフでも弱みを隠すことができた実績がある。そういう意味ではそもそも手当てをしなければいけないほどどのチームにとっても明らかにまずいものなのかもわからない。今あるバランスを切り崩して修繕に取り組まなければいけないほど、切迫しているものなのかはこれから明らかになっていくと思う。
しかしながら、大島のこれまでの遍歴を見れば、残りシーズンを週2ペースでフル稼働というのは無理があるだろう。どちらにしても大島不在でのプランは組む必要は高い。おそらくはよりテンポを上げて、中盤の強度を生かすような形を模索することになるだろう。
無論、そのための河原である。4-3-3にしてよりハイプレスに行くのか、あるいはローブロックで強固さを高めつつファストブレイク重視にするのか、そこに大島はいるのかなどいくつか気になるポイントがあるが、いずれにしても河原のもたらす仕事量の多さが川崎により多くの選択肢を与えてくれるのは間違いない。ここから何が生まれるかが楽しみである。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)