ニューカッスル【10位】×ウォルバーハンプトン【11位】
あらゆる局面で上回っての完勝
前節はアーセナルにリベンジを許してしまったニューカッスル。完敗の内容からの立て直すための今節はホームにウォルバーハンプトンを迎えての一戦となる。
ボールを持つスタートになったのはニューカッスル。しかしながら、バックラインに時間は与えつつもアンカーを消しながらスペースを潰してくるウルブス相手になかなかクリティカルな前進をすることができない。奪ったら縦に速くというウルブスの方向性もインサイドに差し込むことをためらいたくなる理由の一つになるだろう。
前節は保持時にかなりポジションレスな動きを繰り返していたウルブス。途中交代からCHとしてきっちり振る舞うことでややポジションチェンジが少なくなったドイルは今節先発スタート。1列前でフリーダムに暴れまわったレミナも中盤でおとなしく振る舞っている。
ということでポジションを変える動きは前節よりもかなり控えめ。アイト=ヌーリがインサイドにドライブしながら、中央にパスを差し込む動きを見せたくらいだろう。だが、この動きはウルブスにとって裏目に。中央にひっかけたパスからカウンターを食らうと、最後はイサクがゴールを仕留めてニューカッスルが先制。ウルブスの保持変形の残り香が失点の引き金になってしまう。
このゴール以降、少しずつ試合のテンポがアップ。プレッシングの応酬が徐々にみられるようになる。存在感を発揮したのはゴードン。ニューカッスルの左サイドから縦に速い動きを牽引し、速攻の鋭さを増していた。
優勢のニューカッスルは流れに乗るように追加点をゲット。ウルブスのプレスをいなすようなシェア→ウィロックの縦パスから生まれたチャンスのこぼれをゴードンが押し込みリードをさらに広げる。こぼしてしまったのはジョゼ・サのミスといっていいだろう。
以降もハイプレスを継続したニューカッスル。前半の時間が経過するごとにペースもスコアもニューカッスルに傾いた内容となった。
迎えた後半もニューカッスルはバックラインのゆったりとした保持からスタート。ビルドアップでウルブスを引き付けるとゴードンを出口として勝負を仕掛けていく。
ウルブスは反撃を狙っていきたいところだが、ポゼッション、そしてプレッシング、ブロック守備などあらゆる局面の精度が少しずつニューカッスルの方が上。追いかけるうえで肝心な攻撃の精度もインサイドとアウトサイドを使い分けるバランスを欠いていたように見えた。
ボールの奪いどころも見当たらず、カウンターからもいい形を作れないウルブス。押し込むフェーズを単発で作ることができても何もできずに苦戦。最後はリヴラメントになんとも脱力する独走ゴールを仕留められてしまい、試合は完全に決着する。
前後半ともに試合を支配する完勝を決めたニューカッスル。前節の大敗を払拭する勝利を飾った。
ひとこと
ネトのようなとがっている選手がいない後半に反撃の糸口を見つけるのがハードモードになるのは致し方ない。
試合結果
2024.3.2
プレミアリーグ 第27節
ニューカッスル 3-0 ウォルバーハンプトン
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:14‘ イサク, 33’ ゴードン, 90+2‘ リヴラメント
主審:ティム・ロビンソン
トッテナム【5位】×クリスタル・パレス【13位】
ミスから転がる後半に
立ち上がりからボールを持ったのはトッテナム。5-4-1で構えるパレスに対して、サイドにボールをつけながら攻勢を仕掛けていく。
グラスナーの真価が問われるパレスはひとまずはローブロックを採用。我慢からスタートする。ただし、ウォードとリチャーズという両サイドのCBは潰しに出ていくことを許可されている様子。彼らが前に出ていくことでトッテナムのサイドのパスワークはだいぶ阻害されていた感がある。
ボールを奪うとカウンターを発動。マテタを軸としたロングカウンターも悪くはないが、機動力があるわけではないので、手数をかけたパターンも。WBからWBを横断するような形でフリーの選手を作るなど少しテイストを変えた形も織り交ぜていた。
トッテナムはサイドの定点攻撃においてはパスはつながるが、展開が前に進んでいない状況。時間が進むにつれて手前でカットされることも少しずつ増えるように。こうなると攻撃は停滞。ワイドのCBの背後を取る形、もしくは抜け切るロングカウンターからであればチャンスは作れそうだが、前者の攻略パターンは時間と共に減少、後者はヴェルナーがジョンストンにあっさりと止められてしまい、得点にはならなかった。
試合はトッテナムの保持、パレスの非保持のモノトーンな展開。スコアレスでハーフタイムを迎える。
後半もモノトーンな展開は同じ。パレスの非保持の集中力の高さはなかなかで、リトリートの中にも迎撃を潜ませる守備で後半をトッテナムに対抗する。ポケットの封鎖は見事でワイドのCBが延々とつぶし続ける。トッテナムもファーへのクロスや勇気のあるグラウンダーの差し込みなど、少し前半とテイストを変えて勝負する。
後半に勝負を分けたのはミスだった。まずはトッテナム。エゼのドリブルは確かに脅威だが、十分な対応可能枚数がいる中でベンタンクールのファウルは軽率なものだった。そして、壁の作り方もよくわからず、エゼにぽっかり空いたところからあっさりと弾丸FKを決められる。
これで一層撤退守備に磨きがかかるパレス。PA内を封鎖し着実に時間を進めていく。だが、こちらにもミス。アンデルセンがキープしたボールを足を滑らせてロスト。ジョンソンに対して、レルマも簡単にすれ違ってしまうと、最後はファーのヴェルナーが合わせて同点に。
このミスが響いたのか、これ以降はパレスの左サイドは動揺が見られることに。これに乗じてトッテナムは右サイドからクロスをあげきり決勝点をゲット。ロメロがヘディングで競り勝ちリードを奪う。仕上げはソン。カウンターから抜け出して1on1を制し、快勝に花を添える。
ミスで転がった後半を制したトッテナム。ホームでパレスを下し、次節再び連勝チャレンジに挑む。
ひとこと
パレス、途中までほぼ撤退守備完ぺきだったのに1つのミスで流れが変わってしまった。
試合結果
2024.3.2
プレミアリーグ 第27節
トッテナム 3-1 クリスタル・パレス
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:77′ ヴェルナー, 80′ ロメロ, 88′ ソン
CRY:59′ エゼ
主審:ジョン・ブルックス
ノッティンガム・フォレスト【17位】×リバプール【1位】
ラストワンプレーの粘りで難所克服
緊張感が溢れる3強のマッチレースの様相を呈してきた優勝争い。今節の一番手はリバプール。あまり得意ではないシティ・グラウンドでのアウェイゲームに臨む。
基本的にはボールを持つのはリバプール。フォレストはミドルゾーンに構えての4-4-2のカウンターをベースとする構えだった。リバプールのアンカーに起用されたのはゴメス。MFのプレータイムの管理の一環のコンバートではあるだろうが、当然本職の面々ほどの足元は望めないので、通常よりも安全な方向性でのプレーとなったのは仕方のない部分だろう。
ゴメスはサリーでCBをサイドに押し出しつつ、ワイドに開いたCBがフォレストの2トップの横に立つ形から前進を狙うリバプールのビルドアップだった。3-2-5のように変形するリバプールは大外からは安全にボールを運ぶことができる。だが、シンプルクロスではインサイドにコンパクトなフォレストを崩すことはできず。ここからどうしていこうかという思案をしながらの前半となった。
一方のフォレストの保持においてはリバプールのプレスの重さが目立った。フォレストのパスワークに対して、追いかける姿勢は見せてはいたが、メンバーの入れ替えと蓄積疲労により思うようにボールを刈り取ることができず。中盤のスライドが間に合わなくなったところをオリギにあっさりとシュートまで持っていかれたシーンが、両チーム通じてこの試合はじめてのチャンスシーンだった。
さらにトランジッションにおいてはエランガという裏抜け兵器もいる。外循環ばかりで何ともならん!とインサイドにボールを差し込んでロストすればエランガで殴り返されてしまうこともしばしば。ケレハーのセーブがなければ、前半の内にリードを去れていてもおかしくない展開だった。
後半はフォレストがボールを持つという意外なスタート。リバプールがボールを奪い返して前半と同じ盤面になるのには少し時間がかかった立ち上がりとなった。右サイドのエリオット、ブラッドリーの定点攻撃からボックス内にクロスを放り込んでいく。
60分になると遠藤とヌニェスが登場。これにより、大幅な配置変更が行われユニットは解体された感がある。これ以降はオープン合戦の様相。ややリバプールの方がチャンスは多かったが、フォレストもアウォニイの投入や左サイドからのカウンターが刺さるなど、十分に殴り返すことができるクオリティだった。
互いにチャンスの応酬となった際は後半ATに決着。カウンターを発動しようと思ったフォレストのドリブルを遠藤とマック=アリスターでひっかけることに成功すると、放たれたクロスを押し込んだのはヌニェスだった。
終了間際の劇的な一撃でネットを揺らしたリバプール。我慢比べのマッチレースで取りこぼさず。苦手なシティ・グラウンドを克服して見せた。
ひとこと
1ポイントでも悪くなかったフォレストからすれば最後のプレーは蹴りだした方が安全だったのは間違いないが、3ポイントが見える後半だったのも確かなので、技術的なミスは反省しても、判断そのものを否定できるかは怪しいなと思う。
試合結果
2024.3.2
プレミアリーグ 第27節
ノッティンガム・フォレスト 0-1 リバプール
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
LIV:90+9′ ヌニェス
主審:ポール・ティアニー
ブレントフォード【16位】×チェルシー【11位】
前半はチェルシー、後半はブレントフォードが勢いに乗る
トニーの復帰以降も思ったようにV字回復とはいかないブレントフォード。特に響いているのは失点の多さ。ピノックに加えて、前節ベン・ミーが離脱してしまったことで、バックラインの人で不足にはさらに拍車がかかっている。対するは先週カップ戦タイトルを逃してしまい、難しい1週間を過ごしたであろうチェルシーだ。
まずはロングキックをベースとして試合はスタート。試合が落ち着くとボールを持ったのはアウェイのチェルシー。ブレントフォードの3-5-2を鎮圧し、バックラインからボールを動かしていく。左落ちするエンソなど外循環の方策からの前進を狙っていく。
ミドルブロックで何とか踏ん張りたいブレントフォードはWBが高い位置から奪いに行くなど積極的なアクションを見せる。だが、こうした部分は逆にチェルシーに利用された印象。高い位置を取るWBの背後にジャクソンが抜け出したり、プレスで間延びしたライン間に入り込むパルマーに縦パスのレシーバーになられたりと怪しい動きは満載であった。
しかしながらジャクソンがなかなかアタッキングサードでもたついてしまい、攻撃を仕上げることができないチェルシー。抜けた後のコントロールが乱れたり、ファーにてフリーで待つチルウェルのことを認識できていなかったりなど、いくつかのプレーでチャンスをフイにしてしまう。
チェルシーの先制点はジャクソンのフィーリングが合ったタイミングでようやく。右サイドのクロスにばっちり合わせたジャクソンが35分に先制ゴールを手にする。ブレントフォードからすると、クロスのレシーバーは1枚だったのでここまでフリーにしてしまうのは頭が痛いところだろう。
しかしながら、後半はブレントフォードが反撃。ややアバウト感を残す感じで入ったチェルシーに対して、カウンターを中心に攻勢に出ていく。同点ゴールを決めたのは50分。インサイドに入っていくローアスリウがゴールを仕留めて試合は振り出しに。前節のルイス-ポッターもそうなのだが、最近のブレントフォードのWBはインサイドに入っていきながら得点に絡む動きが多い。
さらに70分手前にはウィサがアクロバティックなゴールをゲット。今節はもちろん、今季でも指折りのスーパーゴールで一気にチェルシーを逆転する。
バックスのバタバタ感から逆転を許してしまったチェルシーだが、何とかそのバックスがカタをつけて試合をフラットに。ディザジのヘディングで再び同点となる。
シーソーゲーム感があった試合は引き分けで終了。互いに勝ち点1を分け合う結果となった。
ひとこと
チェルシー、前半まではよかっただけに勝ち切っておきたいゲームだった。
試合結果
2024.3.2
プレミアリーグ 第27節
ブレントフォード 2-2 チェルシー
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:50‘ ローアスリウ, 69’ ウィサ
CHE:35‘ ジャクソン, 83’ ディザジ
主審:ジャレット・ジレット
エバートン【15位】×ウェストハム【8位】
愚直なエバートンとしたたかなウェストハム
FFP絡みの処分の軽減が発表されて、急に4ポイントを積み増しに成功したエバートン。降格圏に対してはひとまずの余裕がある勝ち点差となっている。今節はパケタの復帰で未勝利を食い止めることに成功したウェストハムである。
ホームのエバートンはいつも通りの立ち上がり。ガンガン前に出ていく形でロングボールをひたすらに放り込んでいく。ベトだけでなくハリソンもターゲットにしながら前線に起点を作っていくトライを敢行する。
プレッシングも積極的に取り組んでいるエバートン。サイドの封鎖を早めに仕掛けてなるべく高い位置でボールを奪いに行く。このエバートンをひっくり返そうとしていたのがウェストハムの左サイド。ボールを収めるパケタはファウルを奪って時間を作れるし、ポジトラで一気に高い位置に攻めあがるエメルソンはエバートンのプレスをひっくり返すことができる。ウェストハムはこの2人が君臨する左サイドとシンプルに爆速のクドゥスの右サイドを使いながらエバートンのプレスをいなしていく。
ただ、エバートン側の前進のルート探しもそれなりに機能はしていた印象。マクニールのライン間侵入とターコウスキの持ち運びからベトの決定機を創出するなど、少しエバートンっぽくない戦い方も見せていた。
互いに強度を意識しつつ、得点の可能性を探っていた中でエバートンはPKを獲得。ズマのハンドで前半の終盤にリードのチャンスを迎える。しかし、このPKはベトがストップされてしまう。
後半はエバートンがマクニールのミドルからスタート。前半の終盤に訪れたチャンスを取り返そうと、開始早々からチャンスを作っていく。すると、空いた大外ルートからの前進に成功したガーナーからのスピーディなクロスを今度こそベトが沈めて先制ゴールを決める。
これで畳みかけていきたいエバートンは一気にハイプレスからのキック&ラッシュで攻撃を仕掛ける。だが、そこに立ちはだかったのはアレオラ。スーパーセーブの連発でエバートンにこれ以上のゴールを許さない。
そうこうしているウェストハムはセットプレーから同点。ズマのシュートは完全にノーチャンスの美しい軌道でネットに吸い込まれていく。ウェストハムはフィリップスを投入して3センターに移行。少ない枚数でのカウンターにフォーカスする形にシフトする。
よって受ける局面は増えることになったウェストハム。それでもこの日くらいアレオラが神がかっていれば問題ないのだろう。すると、押し込むフェーズに出ていったところでウェストハムが勝ち越し。ソーチェクのスーパーボレーからリードを奪う。
さらにはセットプレーのカウンターから終了間際に追加点もゲット。アルバレスを中心とした少人数のカウンターを完結して3点目をゲットする。
試合はアウェイのウェストハムが勝利。これでパケタ復帰後に即座に連勝を重ねた。
ひとこと
この日のウェストハムはしたたかだった。
試合結果
2024.3.2
プレミアリーグ 第27節
エバートン 1-3 ウェストハム
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:56′ ベト
WHU:62′ ズマ, 90+1′ ソーチェク, 90+5′ ゲドソン・アルバレス
主審:クレイグ・ポーソン
フラム【12位】×ブライトン【7位】
内容もスコアも明暗くっきりの90分
三笘の今季絶望が明かされたブライトン。ジョアン・ペドロ、マーチといった前線の主力が続々と離脱し、非常に苦しいやりくりとなっている。ここからELも始まってしまうなど、鉄火場のような終盤戦になりそうである。
ボールを持つ立ち上がりになったのはブライトン。ファン・ヘッケを中盤に置く形でいつもの4-2-3-1をキープ。ビルドアップは2-2もしくはバックラインにフェルトマンが加わる3-2で相手のプレスの誘引を行っていく。
しかしながら、プレスを引き出して前進するという点ではブライトンよりもフラムの方がこの試合では明らかに上だった。IHがマークを外すように動き回ることで人へのチェイシングの意識が高いブライトンの守備陣を動かすことができていた。
そこにうまく入り込んできたのはイウォビ。運びに長けている彼の侵入からフラムはアタッキングサードに安心してボールを敵陣にキャリーすることができていた。
この辺りはブライトンの中盤の意識の乖離も気になる部分だった。バレバが前に前に行こうとする中でファン・ヘッケはなかなかラインを上げられずに躊躇。CBからはどんなに持ち場を離れても相手を追い回すタイプなのに、1つ列を上げてしまうとその積極性が完全に消えてしまうのだから面白い。
とはいえ、チームとしてはこのギャップはまずい。インサイドに絞るキャラクターが多いフラムの2列目はバレバとファン・ヘッケのコンビとは相性は抜群だった。
そしてフラムは先制。もう1つの前進手段であるムニスからフラムはゴールを奪いきる。彼の収めから攻めあがったウィルソンがあっという間にゴールを生み出していく。
ブライトンは逆に中央に集結する2列目がフラムの縦横のコンパクトな陣形との相性が最悪だったように思える。幅を獲れる選手がいないことをプラスに転じさせたフラムとマイナスになったブライトンで明暗が分かれる展開となった。
そして、フラムは前半の内に追加点。間延びしたブライトンの中盤を横断する形となった攻撃は右のウィルソンで完結。クロスをムニスが合わせてリードを広げる。ダンク相手に簡単に前に入り込むあたり、ムニスの調子の良さがうかがえる。
後半も流れは同じ。フラムがブライトンの中盤の間延びを利用しつつ横断、そして時々ムニスへの放り込み。この2つを駆使して主導権を握っていく。
ブライトンはそもそもコンパクトな守備に対してアタッキングサードへの侵入の手段がない。終盤にようやく少しフラムの守備にほころびが出たが、迎えた決定機をファーガソンがフイにしてしまう。この辺りはムニスと逆でなかなか苦しんでいるコンディションであることがよくわかる。
グロス、ブオナノッテが交代で入ってからは押し込むようになるブライトン。右サイドを軸にクロスからチャンスを作っていく。だが、レノやCB陣の安定感光るパフォーマンスを前にボックスで仕事をすることができず。
逆にカウンターからアダマ・トラオレが3ゴール目を決めて試合は完全決着。内容も個々人のコンディションもくっきりと明暗が分かれた一戦となった。
ひとこと
おそらく休養させたグロスやブオナノッテを使えばもう少し楽になるとは思うが、この試合のブライトンの出来は苦しかった。
試合結果
2024.3.2
プレミアリーグ 第27節
フラム 3-0 ブライトン
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:21′ ウィルソン, 32′ ムニス, 90+1′ トラオレ
主審:サイモン・フーパー
ルートン・タウン【18位】×アストンビラ【4位】
采配ズバリのエメリのガッツポーズ
ミッドウィークにはFA杯でシティに敗れたルートン。その試合でデビューした橋岡はプレミアでは初めてのベンチ入りを果たした。
立ち上がりからルートンはらしい形を全開。ハイプレスからアストンビラのバックラインにプレッシャーをかけていく。トーレスがベンチに置かれているアストンビラは少し面食らったかのようなスタートとなった。
しかし、そうした状況に悲鳴を上げたのはルートン。やや強行出場気味の報道があったベルがわずか6分で交代。前半にベンチに下がることはなかったが、同じくDFラインのメンジも痛めるなどなかなか苦しい状況が続く。
さらにはアストンビラはセットプレーから先制。ニアに入り込んだワトキンスが仕留めてあっさりとリードを奪う。
厳しい状況に追い込まれたルートン。頼みの綱のハイプレスも30分手前には簡単に剥がされてしまい、全く効かなくなってしまう。レイオフの関係性から完全にルートンのハイプレスをばらしたビラの関係性構築は非常に見事。特にティーレマンスはとても生き生き。ビラはここからの裏抜けでチャンスを量産する。
そして、裏一発でビラは追加点。ワトキンスがあっさりとDFラインを破り1on1を制してネットを揺らす。
プレスは捕まらずDFラインはけが人が続出という窮地に立たされたルートン。頼みの綱のセットプレーから前半終盤にチャンスを迎えるが、これも仕留めることができなかった。
それでも後半の頭からカボレを軸に左サイドからチャンスを迎えるルートン。押し込みながらクロスをあげるところまでは持っていくことができていた。そうした最中にもビラは自陣からのロングカウンターでルートンのゴールを脅かしていたのだけども。
53分には橋岡がプレミアデビュー。左のCBに入り、同ポジションのダウティーを1列前におしあげる配置とした。
これで右サイドからはカボレとオグベネがコンボで襲い掛かってくる形を整備。押し込んでクロスの状況を作っていく。すると、セットプレーから追撃に成功。混戦からタヒス・チョンがネットを揺らす。ここから一気にペースをつかんだルートン。ハイテンポなトランジッションゲームでアストンビラを追い込んでいく。
そして、再びセットプレーから同点。FKからのダウティーの美しい軌道のキックにモリスが合わせて追いつく。毛にルワース・ロードはこのゴールで完全に着火する。
以降もセットプレーから攻め続けるルートン。しかし、4枚交代でビラが流れを引き寄せる。主役になった右のディアビからのクロスに飛び込んだのはこちらも交代のディーニュ。見事な大外→大外でビラが勝ち越しに成功する。
ファウルをもらえるチョンが負傷で下がってしまったこともあり、その後のルートンはやや苦戦。逃げ切りに成功したエメリは珍しく終了と同時にガッツポーズ。ビラにとっては大きな勝ち点3獲得となった。
ひとこと
タフな展開からルートンはよく追いついたと思うが、エメリの交代策が上を行った。
試合結果
2024.3.2
プレミアリーグ 第27節
ルートン・タウン 2-3 アストンビラ
ケニルワース・ロード
【得点者】
LUT:66′ チョン, 72′ モリス
AVL:24′ 38′ ワトキンス, 89′ ディーニュ
主審:マイケル・オリバー
バーンリー【19位】×ボーンマス【14位】
先に当たりを引いたボーンマス
ここまでの勝ち点は13。残留するには残りの10試合ちょっとで少なくともこれまでに稼いだ勝ち点の1.5倍くらいは確保したいところだろう。となると、バーンリーに残された道は引き分けではなく勝利ということになってくる。
バーンリーの入りはとてもよかった。高い位置からのボール奪取とサイドからの打開の両立がされており、立ち上がりからボーンマス陣内に攻め入りながら勝負を仕掛けていく。特に活性化していたのは左サイド。こちらのサイドにボールを収めつつ3枚ほどでクロスまでもっていくことでボーンマスのゴールに迫っていく。
ボーンマスもこのバーンリーの早い展開に影響をされたかのようにキック&ラッシュでスタート。しかしながら、CFは少しボールが収まらない感。この辺りはコンディションがギリギリという報道があったソランケの状態も絡んでくる部分かもしれない。
とはいえ、ボーンマスもサイドアタッカーにボールが渡れば十分に攻撃ができる状態に。どちらのチームが先にあたりを引くか?というオープンな勝負になっていく。
先にあたりを引いたのはボーンマスのクライファート。後方同数を受け入れたバーンリーに対して、対面をうまく剥がしてシュートまで持ち込んだ。バーンリーからすると、後方同数を受け入れておきながら、この場面のオシェイのような安易なスライディングをされてしまってはたまらないということだろう。
失点後はバーンリーが猛攻を仕掛けていく。立ち上がりからフィーリングが良かった左に加えて右サイドはSB色の強い2人がレーンを変えながら襲い掛かっていく形。左右から無限にクロスを入れて一方的にボーンマス相手に攻め込む前半の残り時間となった。
後半も前半と流れは陸続き。サイドでの崩しを仕掛けていくバーンリーとカウンターをベースにサイドアタッカーで殴り返すボーンマスという構造は同じであった。より決定機が色濃かったのはボーンマス。速攻において遅れて入ってくるスコットやタヴァニアから得点に迫る形を生み出うs。
基本的には後半は前半よりもバーンリーの脅威は控えめだった。むしろ、ボーンマスの心配は2列目のプレス隊が繰り返した無謀なタックルだろう。間合いが図れているかが怪しく、いくつかはカードの色が変わってもおかしくないような類のものであった。
しかしながら、なんとか踏ん張ると70分以降はボールを相手に持たせつつ、カウンターから試合を支配。何度もチャンスがあったセメンヨが3回目で同じ形をようやく仕留めて試合を決める。
またしても苦しい戦いになってしまったバーンリー。優位な時間帯の内容をスコアに反映することができず、今節も「13」で足踏みとなった。
ひとこと
殴り合いになってしまうとボーンマスが優勢なのは仕方ない感。前半の失点後からハーフタイムまでに追いつければ。
試合結果
2024.3.3
プレミアリーグ 第27節
バーンリー 0-2 ボーンマス
ターフ・ムーア
【得点者】
BOU:13′ クライファート, 88′ セメンヨ
主審:デビッド・クート
マンチェスター・シティ【2位】×マンチェスター・ユナイテッド【6位】
奇襲を力でねじ伏せ、今夜も青いマンチェスター
グバルディオルがベンチに復帰し、残るシニアチームの負傷者はグリーリッシュただ一人。昨年同様、きっちり終盤に向けて戦力を整っている感があるシティは三冠に向けてラストスパートの準備中だ。対するユナイテッドは今季の中でも有数の苦しいスカッドのやりくりを強いられているタイミング。ベンチを見渡しても経験のあるシニアメンバーは少なく、特に前線とバックラインはほとんど選択肢がない状況だった。
そんな追い込まれているユナイテッドは4-2-3-1を採用。ブルーノ・フェルナンデスの1トップにトップ下をマクトミネイという形でシティに挑む。シティは立ち上がりから容赦なし。敵陣に早々にボールを運ぶと、ロストからの即時奪回を繰り返してユナイテッドの守備陣を強襲。早速いつ得点が入ってもおかしくはないという状況を作る。
ユナイテッドの守備は4-2-3-1をベースにハーフスペースをボールサイドのCHが埋める変形を見せる。2トップはバックスへのプレスを諦めて、中盤に立つロドリとストーンズの管理をすることを狙いたいところ。しかしながら、カゼミーロとメイヌーは大外のフォローとポケットのケアに専念しているため、中盤中央のロドリとストーンズの管理には関与することができない。
その結果、ユナイテッドの中盤の中央は空洞化。ロドリとストーンズは前を向いて自由に配球することができていた。加速のポイントは右のハーフスペースに常駐するデ・ブライネ、もしくは左の大外レーンのドク。ドクのドリブルとデ・ブライネの対角クロスに対して、跳ね返したセカンドボールをロドリが延々と拾うという形で波状攻撃を繰り返す。
ただ、ユナイテッドはそうした隙間をかいくぐるように先制点をゲット。ブルーノがディアス相手に見事にロングボールを収め、なんとか時間を作ると、後方からサポートにやってきたラッシュフォードがスーパーゴール。オナナのキックを起点にユナイテッドがわずかなチャンスからゴールを奪う。
しかしながら、シティはひたすら押し込むことで殴ることを継続。ユナイテッドはボールを自陣で動かしてカウンターから追加点を狙ったり、スーパーな対応が続くオナナからのトランジッションで一瞬のスキを突いたりなど反撃。ただ、そのカウンターを止められてしまうと今度はシティから高速でカウンターが飛んでくるというジレンマも。この分野におけるデ・ブライネの精度と破壊力の両輪はさすがである。
それでもハーランドがフィニッシャーとしての役割を果たすことができなかったことでシティは無得点。一方的に押し込まれるユナイテッドが運を味方につけてハーフタイムをリードで折り返す。
迎えた後半もシティが一方的に押し込む展開。ただし、ユナイテッドのブロックの精度は上がった感がある。CHの最終ライン落ちとそれに伴う中盤のスペースをWGが埋めるという連携は向上。中盤がスカスカだった前半に比べればきっちりブロックを組むことができた印象である。サイドからの折り返しにもミドルシュートにもだいぶ対応が間に合ってきた。
だが、その状況を打開したのはフォーデン。空いたミドルゾーンからの豪快なミドルでついにゴールを打ち破る。これは好調のオナナもノーチャンスだろう。
ユナイテッドは手数をかけたパスワークから裏取りの機会を狙う。だが、ガルナチョはタイミングがいまいちつかめず、ラッシュフォードはウォーカーの厳しい対応を前になかなか抜け出し切ることができない。少なかったカウンターの可能性は後半にさらに下がってしまったように感じる。
押し込み続けるシティにおいてまたも解決策になったのはフォーデン。左サイドに顔を出すことでハーフスペースを埋めていたカゼミーロをおびき出すと、パス交換からそのカゼミーロが空けたスペースに侵入し、自らフィニッシュ。逆転ゴールを叩き込む。
振り返ってみればこのゴールで試合は終戦だったといえるだろう。歩くようにパス交換で時間を作るシティ相手にユナイテッドはもうボールを取り返す力は残っていなかったし、後から出てくる選手にはこの試合に入ってアクセントになるだけのクオリティはなかった。
最後はアムラバトを突っついたことでシティのショートカウンターが成立。この試合では決定機を外すシーンが目に付いたハーランドも気分よくパーティーに参加することとなった。
先制点こそ奪ったユナイテッドだったが、終わってみればシティに完全に上回られる完敗。ダービーという舞台装置をもってしても、シティに手をかけることができなかった。
ひとこと
ダービーらしからぬ試合後の和やかな雰囲気はどちらのチームの方が強かったかを全員悟っているかのような感じで少し切なかった。
試合結果
2024.3.3
プレミアリーグ 第27節
マンチェスター・シティ 3-1 マンチェスター・ユナイテッド
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:56′ 80′ フォーデン, 90+1′ ハーランド
Man Utd:8′ ラッシュフォード
主審:アンディ・マドレー
シェフィールド・ユナイテッド【20位】×アーセナル【3位】
マッチレースはまだまだ続く
レビューはこちら。
今節も優勝争いマッチレースは続行。先に試合を終えたリバプールとマンチェスター・シティ。次節直接対決を控える2チームに対して、背中をぴったりと取る形でついていきたいところである。
勝って当たり前という最下位相手の試合はどことなく特別なプレッシャーがかかる。しかしながら、アーセナルはわずか4分でその不安を一蹴。あっという間の先制点で電光石火のゴールを決めてみせた。
この先制点の場面のようにアーセナルの攻撃はとにかくサイドに枚数をかける。オーバーロードというのは大袈裟かしれないが、CFやIHはボールサイド側に動きながら攻撃に参加。ズレを作ったのは重なったライスとマルティネッリ。この2人から抜け出し→折り返しからウーデゴールが仕留めてあっさりと先制ゴール。
それ以降も両サイドを止めることができないブレイズ。サカには縦に並ぶ形のダブルチームはついてはいたが、後方で構えるハーマーに対してマーカーのトラスティが方向を規定できずに苦戦。これにより2人を差し向けている意味はなくなり、サカは右サイドを縦に抉る形をやりたい放題だった。
2点目は右サイドをえぐる形で奪われたブレイズはプレスに出ていく形で反撃。しかし、こちらは追い込みたいサイドからの脱出をサカとウーデゴールに決められてしまい、あっという間に点差は3点となった。
ブレイズは17分に交代で5バックに移行。サカへのマークも安定し、それまでよりは相手をつかまえられるようになった。それでもチャンスは単発。明確にチャンスといえそうなのは惜しくもオフサイドとなったハーマーの抜け出しくらいだろう。
勢いに乗るアーセナルは前半の内にさらに2点を追加。これでハーフタイムまでに5点差をつけることに成功し、試合を前半で決める。
後半、右サイドからサカが退いたことで流動性がアップ。大外レーンをシェアする形で抜け出しを狙うし、後方の司令塔のジョルジーニョは放っておけば勝手にフリーになるので特別な打つ手をする必要もなし。大外のレーン交換をフリーのジョルジーニョが動かすことができれば、それだけでサイドから決定機を生むのは難しくはない。
アーセナルは早々に6点目を奪うと離脱組のリハビリを開始。ジェズス、トーマスにプレータイムを与えてとっとと店じまいである。
3強マッチレースはまだまだ継続。アーセナルも勝ち点を落とさずに上位追走に成功だ。
ひとこと
ミッションコンプリート。大差での勝利と離脱組の調整に時間をさけたのは大きかった。
試合結果
2024.3.4
プレミアリーグ 第27節
シェフィールド・ユナイテッド 0-6 アーセナル
ブラモール・レーン
【得点者】
ARS:5‘ ウーデゴール, 13’ ボーグル(OG), 15‘ マルティネッリ, 25’ ハヴァーツ, 39‘ ライス, 58’ ホワイト
主審:サム・バロット