イランのプレスに対するリアクションが敗退の決定打に
共に中2日で迎える準々決勝。ベスト4に挑む日本の対戦相手はワールドカップにも出場したイランである。
立ち上がりから多かったのは日本のポゼッションの局面。基本的には4-2型のビルドでキャラクターの違いか守田が明確に久保よりも後ろにポジションを取る立ち上がりとなった。
イランは4-4-2で対抗。中盤をケアすることをメインで日本のCBにはほとんどプレッシャーをかけていなかった。日本の前進を担っていたのは左サイド。まずは守田と伊藤の位置交換からじれはできるかのチェックをスタート。イランは捕まえられなかったり、6番のエブラヒミなどが遅れて出ていったりするなどでやや後手に回っている様子だった。
日本は守田、伊藤の移動に加えて久保や堂安が4人目として加わることで左サイドを軸に流動性を高めて攻めていく。前田がハーフレーンで固定気味なのも興味深い。移動役はあくまで守田と伊藤に託し、前田は裏を狙って早く攻める役割と即時奪回に全振りしていた印象である。
右サイドの攻め手は逆にシンプル。大外に立つ久保もしくは堂安を毎熊が追い越すというテンプレートが基本。毎熊が追い越すレーンでややアクセントをつけていくイメージだった。
メインとなるのは左サイド。もともと決まっていたのか、流れの中からそうしたのかはわからないが、いずれにしても左サイドから勝負をしていくという日本の判断は妥当だろう。エブラヒミ周りのスペース管理が怪しいイランに対して、日本は積極的に4人目を使いながら攻略を仕掛けていく。
そして、この左サイドの仕掛けから日本は先制。左サイドのゲスト枠で顔を出した上田のポストから、守田が高い位置に侵入してドリブルで突入して先制点をゲット。少し高い位置でのプレーエリアでのGSでのチャレンジと元来の彼の盤面を読んでミスマッチを作り出す能力が詰まったゴールといえるだろう。
イランはダイレクトプレーが主体。前線へのロングボールである程度前進したら、左右からは迷わずロングスロー。完全に割り切りながら攻めていく。アズムンがシンプルに冨安に勝てる場面があるのも大きかったし、左に流れるゴドスが収められるのがイランにとっては効いていた。
ここから狙っていくのはファーへのクロス。ゴドスがボールが収まってしまうと、アズムンがクロスのターゲットとして構えることができるので日本としては厄介な状態になる。ファーサイドのクロスに対しては前田の戻りも効いており、伊藤や守田とは少し文脈の違う役割をこなしていたといえるだろう。
後半、イランはトランジッションを強めてハイプレスで日本に襲い掛かっていく。ボールを奪ったら素早く縦につけていく。日本は前半よりも明らかにプレッシャーがある状態でのビルドアップを行う必要があった。
日本はこのイランのプレスに対してどのように回避するのかのイメージが統一出来ていなかったように思う。具体的にはCBがつなぎたがっていたけども、周りが蹴ってしまうように見えた。冨安からすればこれくらいのプレッシャーであれば全然つなげる局面という感覚なのかもしれない。
縦に進むスピード感の中で選手間のギャップは迎撃の時のCBのポジショニングの危うさにつながる。アズムンのオフサイドにしても、モヘビのゴールにしてもカウンターを受ける際の後方の人員の少なさと予防的マーキングが行われていないのが気になるところ。モヘビのゴールは遅れて出ていった冨安の矢印の根元を狙う、素晴らしいランニングだった。
イランのプレスに対する対応は失点以降も変わらず。捕まっている選手が無理に前を無効としてはロストして同数のカウンターを受けるという構図が続く。日本のボールの失い方はイランのカウンターを勢いづける形のものばかりだった。失点シーンのスライディングなど板倉の局面対応が悪いのは確かだが、その部分を執拗に攻撃しやすくなっている保持の完結の中途半端さが悪い流れの根源である。
三笘を投入してとにかく陣地回復を図ろうとする日本だが、効果はかなり限定的。イランの圧力をもろに受ける展開が続いてしまうことに。それでも低い位置では延々と幅を取り続ける冨安がつないでプレスをいなすことの啓蒙活動を行っていたが、ロングキックで逃げてしまう場面もしばしばという形であった。
イランは最終的にファーサイドの毎熊にとにかく競りかけるという形が結実。競り勝ったところからの落としの処理で両CBがかぶってしまい、板倉がPKを献上してしまった。
このジャハンバクシュのPKが決勝点となりイランが勝利。日本はベスト8で大会から姿を消すこととなった。
ひとこと
後半のイランのプレスに対する日本のリアクションがすべてだったと思う。冨安からすればつなげるんだろうなという感じだし、その基準を採用するのが上の判断であるならば、三笘と心中して強引な仕掛けから早くボールが返ってくる状態はなかなかに切なかった。前半は盤面を整えていた守田は後半に影も形もなかったのも切ない。結局のところ、このアジアカップ以降にこの水準のプレスを受ける機会はあまりないはずなので、そういう相手へのリベンジの図りにくさという部分においても日本にとっては手痛い敗戦になったように思う。
試合結果
2024.2.3
アジアカップ2023
準々決勝
イラン 2-1 日本
エデュケーション・シティ・スタジアム
【得点者】
IRN:55′ モヘビ, 90+6′(PK) ジャハンバクシュ
JPN:28′ 守田英正
主審:マー・ニン