チーム情報
監督:オスカル・タバレス
FIFAランキング:9位
W杯2018⇒ベスト8
コパアメリカ2019⇒ベスト8
招集メンバー
GK
1 Fernando Muslera
23 Sergio Rochet
12 Martín Campaña
DF
2 José María Giménez
4 Ronald Araújo
19 Sebastián Coates
3 Diego Godín
22 Martín Cáceres
17 Matías Viña
11 Camilo Cándido
13 Giovanni González
MF
14 Lucas Torreira
15 Fede Valverde
6 Rodrigo Bentancur
8 Nahitan Nández
5 Matías Vecino
24 Fernando Gorriarán
7 Nicolás De La Cruz
10 Giorgian de Arrascaeta
FW
25 Facundo Torres
16 Brian Rodríguez
26 Brian Ocampo
18 Maxi Gómez
9 Luis Suárez
20 Jonathan Rodríguez
21 Edinson Cavani
各試合振り返り
GS第2節 アルゼンチン戦
■王様は王様らしく
2戦目からの登場になったウルグアイ。おなじみの4-4-2をこの試合でも採用。就任15年目のタバレス監督と、スアレスとカバーニの2トップは依然健在である。
ビルドアップにおいては2-3-5の変形をするウルグアイ。2CBに対してCHが段差上にポジションとりながら角度をつける。ウルグアイの前線は中央密集が基本線。スアレス、カバーニを中心に中央にわらわら人が集まる形はワールドカップと同じくウルグアイのトレードマークである。
一方のアルゼンチンは正反対のアプローチといっていいだろう。あまり強引に押し込むことはせず、ピッチを幅広く使いつつ、カウンターで仕留めることを狙う。前線は斜めの動きを数多く取り入れたオフザボール勝負。広いスペースを縦横無尽に動き回るアタッカーでかく乱する。
ボールの持ち運び役はメッシ。中盤に降りてきたメッシがボールを受けると、それに合わせて動き出した前線のアタッカーをメッシが使うという流れである。このアルゼンチン代表は自分が見てきた中では最もメッシがやりやすそうなアルゼンチン代表だなと感じた。周りの人がちゃんとメッシを王様に仕立て上げられるというか。派手さはないけど、堅実で泥のように走るアルゼンチンの方が大概めんどくさいのである。そんなアルゼンチンは王様であるメッシのショートコーナーから先制。アンカーのギド・ロドリゲスにとっては嬉しい代表初ゴールとなった。
アルゼンチンの強みをもう1つ挙げるとしたら守備の堅さである。押し込まれた状態での跳ね返しにあまりストレスを感じないチームのように見える。サイドアタッカーもきっちり自陣まで下がる。守備においてもめんどくさいことをサボらない。
後半はコレアでプレス強化、ディ・マリアで運び強化と控え選手を軸に部分的に交代で強化を図るアルゼンチン。たまにドリブル一辺倒で急ぎすぎていると感じたら、デ・パウルが落ち着かせる。最強ではないけど堅実である。
一方のウルグアイは定点攻撃はできていたが、いかんせんポジションチェンジが少なくやや攻撃が硬直気味だった。大外から相手を外した状態でクロスを入れられたのは70分手前の決定機くらい。以降は押し込む時間こそ増えるものの、決定的な得点機会を得ることもできなかった。
堅実なアルゼンチンが前半のリードを活かして逃げ切り。先行を許すとめんどくさいチームであることをよく知らしめた一戦だった。
試合結果
アルゼンチン 1-0 ウルグアイ
マネガリンチャ・スタジアム
【得点者】
ARG:13′ ロドリゲス
主審:ウィルトン・サンパイオ
GS第3節 チリ戦
■前半は表裏の使い方の設計の差
共にワールドカップ常連国である両チームの好カード。ウルグアイは4-4-2、チリはスリーセンターのイメージが個人的には強いのだが、それをやや外すようなフォーメーションで試合に臨む。
ウルグアイのスタメンは5-2-3という形だろうか。3バックで臨んだチリのWBをひとまず嚙合わせる形。中央でのサイドチェンジを制限し、同サイドに圧縮する。ウルグアイはCHを同サイドに押し寄せて同サイド攻略に挑む。だが、なかなか決め手となる一崩しが刺さらず苦戦する。
一方のチリもサイド攻略狙い。ターゲットとしたのはウルグアイの左サイド。先ほど、ウルグアイはチリのWBとかみ合わせるように布陣を組んだといったが、チリは3-4-1-2のような形で中央は2トップ。しかも、2トップは横移動が多いということでウルグアイは特定のマークマンをつけにくかった。人は余っているが、その分受け渡しの責任感も薄まったウルグアイ。それを利用したチリはバルガスとブレアトンの2トップで最終ラインを引き出す動きを見せる。
チリで特に効いていたのがバルガス。彼が引いて受けることがビニャが空けた最終ラインの穴をフリーランで走りこむという動きを誘発。チリはこのサイドから押し下げる。得点シーンではブレアトンの受けに合わせてバルガスが抜ける形。バルガスにとっては2トップの相棒がパスの出し手ということでやり切る!という心持ちになったのがよかったかもしれない。角度のないところからシュートを突き刺し、先制弾を奪う。
共にサイド攻撃を志したが、裏を使うことを前提に設計されている分、チリの方がウルグアイよりも精度が高かったように見える。後半のウルグアイはその精度の差を割り切ったように見えた。表のスペースからアーリー気味にクロスを上げることによって、高さのないチリの最終ラインに苦しい対応を迫り続ける。
前半は根性でなんとかしていたチリの中盤より前の選手も徐々にサイドまで出ていけなくなるように。豊富な運動量が目立っていたビダルとバルガスの2人が負傷交代したのは偶然ではないかもしれない。チリは5-3-2に変更し、中盤がサイドに出ていきやすいように手当したものの、押し込まれる展開はなかなか覆らない。両者の負傷交代と話は前後するが、押し込まれた状況からCKでウルグアイに同点ゴールを決められる。
ただ、ウルグアイも最後のところの精度が十分ではなかった上、プレス時に前に出ていくことでショートパスでのつなぎが上手いチリの前進を手助けしたように思う。終盤は共に攻めの機会はあったものの、こじ開けることはできず。試合は1-1の痛み分けで終わった。
試合結果
ウルグアイ 1-1 チリ
パンタナル・アリーナ
【得点者】
URU:66′ ビダル(OG)
CHI:26′ バルガス
主審:ラファエル・クラウス
GS第4節 ボリビア戦
■ワンサイドだが、先延ばしになった決定打
90分間を通じて試合を支配したのはウルグアイだった。この試合のウルグアイは非常に攻守に高いレベルにあったように思う。4-3-1-2ブロックで構えて、奪ったところから素早く縦にカウンターを発動する。
縦に速く流れなかった場合はボール保持でゆったりと攻める。ボール保持においては同サイドに2トップとトップ下を集結させて崩しを狙う。ライン間でのつなぎと裏抜けの使い分けが非常にうまい。ボリビアの4-4-2ブロックに対して、ウルグアイの4-3-1-2は段差をつけやすい形。そのおかげでライン間でフリーになりやすく前を向きやすいという状況が生まれやすい。
そこからの仕上げは裏に抜ける。裏に抜けた後のホルダーのサポートも十分。ホルダーと並行に並ぶように走り、サイドで裏を抜けた選手たちのラストパスを受けてフィニッシュに入りこむ。先制点の場面は結果的にオウンゴールにはなったものの、この日のウルグアイの目指す形が非常にわかりやすく再現されている。
ボリビアの保持も悪くはなかった。つなぎの意識が高く、簡単にボールを失わない矜持は感じた。サイドの攻撃においては人数をかけて奥行きを作り、裏抜けからラインを下げるシーンも作ることができていた。ただ、全体的にウルグアイの圧力に屈する場面が多い。そもそも保持の機会を作るのに苦しんだ。そして、裏に抜けた選手のサポートの厚さは不十分。抜けた選手が孤軍奮闘ということも珍しくはなかった。
後半はウルグアイの一方的な攻勢にボリビアが晒されることに。ホルダーにプレスがかからずに裏抜けし放題の状況が続く。あとは決定的な追加点を決めるだけなのだが、これがなかなか決まらない。GKのランペの活躍も光ったが、ここはウルグアイのフィニッシュの精度の悪さの方が目についた。2点目が入った78分のカバーニの得点は『やっとか!』というのが正直なところだろう。決着をつけるのに時間はかかったが、総じてウルグアイの完勝。ボリビアは1試合を残してグループステージ敗退が決まってしまった。
試合結果
ボリビア 0-2 ウルグアイ
パンタナル・アリーナ
【得点者】
URU:39′ キンテロス(OG) 78′ カバーニ
主審:アレクシス・エレーラ
GS第5節 パラグアイ
■流動性で得た優位
次ラウンドへの進出が決まっている両チームの一戦。比較的リラックスした形でこの試合を迎えることができたはずである。ウルグアイはスアレスを温存。カバーニと共に前線に入ったのはデ・ラ・クルスとデ・アラスカエタの2人。彼ら2人をシャドーとして4-3-3のフォーメーションでパラグアイの4-4-2に挑む。
アンカーのベシーノが降りる役割を果たす分、後方は数的優位を組みだすことができるウルグアイ。その分、パラグアイは中盤4枚でウルグアイのSBとIHの4枚をホールド。中盤を硬直させて、保持の展開を停滞させることを狙う。
これを打開したのがウルグアイの流動性の高い前線。ボールを引き出すスキルは天下一品のカバーニはもちろん、デ・ラ・クルスとデ・アラスカエタの2人もスペースに入り込んでくるランはとてもよくできていた。ウルグアイは最終ラインからの前線のスペースに向けたフィードで相手を押し下げると先制点につながるPKを得る。
その後も前線の3枚を中心にパラグアイの最終ラインに対して優位を取るウルグアイ。パラグアイは彼らの機動力を止めることができず、最終ラインを押し下げながら、ウルグアイが入り込めるスペースを作ってしまう。そのスペースにシャドーや後方の選手が入り込むことで好機を作り続ける。
一方のパラグアイは攻撃機会は少ないものの、カウンターを中心に反撃に出ようと試みる。特に頼みの綱になったのはアルミロン。中央で受けるとここから左右に散らす役割を担当。クラブよりもひょっとすると重要な役割をまかされている感のあるアルミロンであった。
しかし、そのアルミロンが腿裏の負傷で交代。決勝トーナメントを見据えても、パラグアイには非常に痛手となりそうだ。これにより、敵陣でのボールの収めどころを失ったパラグアイであった。
後半も引き続き試合のペースはウルグアイ。パラグアイとしても引き続き負傷者が出る可能性を踏まえると勇猛果敢に出ていくのはリスクに直結する。2点目は取れなかったが、手堅く勝利を決めたウルグアイ。ベスト8の舞台で今日の両シャドーにはもっと大暴れしてほしいところである。
試合結果
ウルグアイ 1-0 パラグアイ
エスタディオ・ニウトン・サントス
【得点者】
URU:21′(PK) カバーニ
主審:ラパエル・クラウス
Quarter-final コロンビア戦
■ウルグアイよりウルグアイ?
アルゼンチン、ブラジルの両雄へのチャレンジ権が欲しい両チーム。南米No.3を狙うウルグアイとコロンビアが準決勝進出を賭けて激突する。
様々なフォーメーションを試しているウルグアイがこの日取り組んだ形は4-3-1-2。スアレスとカバーニの素直な2トップで決戦に臨む。4-4-2型のコロンビアに対してアンカーからボールを入れて、1stプレスラインを突破。サイドに流れて受けるアンカーから片側を狙い撃ち。そのため、ウルグアイの選手たちは同サイドに集結。トップ下のデ・アラスカエタもボールサイドに流れる役割。前線の流動性の高さを活かして、奥行きを作り同サイドを攻め切るやり方を狙っていく。
しかし、ウルグアイは決め手不足。ソリッドな守備で自陣深くにブロックを敷くコロンビアに対して、同サイド打開の手法を見いだせずシュートまでたどり付くことができない。
一方のコロンビアはロングカウンター重視。狭いスペースで受けられるカルドナや大外でデュエルができるクアドラードが不在なため、やや縦に速い攻撃が多かった。撤退しながらSHが内に絞りつつ素早くFWにボールを預ける。ローラインからのこのボールのつなぎ方はどちらかと言えば往年のウルグアイと重なるスタイル。ウルグアイよりコロンビアの方がウルグアイっぽい戦いだった。
遅攻の際は左右に振りながらウルグアイの3センターをずらし、薄いサイドを作りながらクロスを上げる。しかし、ウルグアイのCBの水際で跳ね返す部分は健在。この部分はウルグアイの方がウルグアイである。
停滞気味だった前半に引き続き、後半も非常に堅い展開。決定機はほとんどなかった。コロンビアはトップ下に入ったムリエルがアンカー番に入ることで、ウルグアイのビルドアップのスピードを遅らせる。ウルグアイは前線の動きの鋭さはあるものの、ロングカウンターが刺さるほどの長い距離をやり切る馬力はやや落ちてしまった印象である。対するコロンビアも前半と同じく、相手を崩しきれないまま試合は終了する。
試合はPK戦に突入。GKの読みがさえていた両チームだが、キッカーのキックの威力が十分で方向が合ってても止められないシーンが多かった。だが、その中でもタイミングと強さがあってしまったウルグアイの2人がオスピナにばっちり止められて勝負あり。我慢比べとなった90分の末にPK戦を制したコロンビア。クアドラード不在の難局を乗り切り、見事準決勝進出を決めた。
試合結果
ウルグアイ 0-0(PK:2-4) コロンビア
エスタディオ・ニウトン・サントス
主審:ヘスス・ヒル・マンサーノ
大会総括
■流動性と柔軟性が武器の新生ウルグアイ
ウルグアイと言えば堅守速攻の4-4-2。堅く守り、縦に早くつけてカバーニとスアレスの2人に託すというのがイメージであった。しかしながら、4-4-2で臨んだのは開幕戦のアルゼンチン戦のみ。それ以外は多彩なフォーメーションで試合に臨んだウルグアイであった。
確かに初戦のフォーメーションはアルゼンチンという相手を差し引いてもあまり機能したとは言えなかった。ポジションチェンジが少なく、硬直気味。往年よりは自陣深い位置からのロングカウンターが出せないようで、押し込まれたアルゼンチンに堅く運ばれた印象だ。
その分、改良されたのはボール保持の意識。縦に早く進むことに特化できない分、中盤を中心に保持の部分で落ち着く頻度が高かった。3節のボリビア戦で徐々にリズムを掴めるようになると、チームのコンディションは段々と上がっていく。チリもそうだけど、南米は尻上がりのチームが多い。トーナメントだけは本気!みたいな。レギュレーションのせいかもしれないけど。
特にコンディションがよさそうだったのは前線。スアレス、カバーニのコンビはもちろんだが、デ・アラスカエタも動き出しが鋭く、敵陣に迫る大きな武器になっていた。サイドを固定し、そこから前線の動き出しで奥行きを作り、相手のラインを押し下げる。そして、それと並行にボールサイドとは異なるFWがエリア内に入り込んでいくイメージで攻撃を進めていく。
攻撃の部分ではウルグアイっぽさはやや失われたように見えたが、中央の堅さは健在。ムスレラ、ゴディン、ヒメネスのトライアングルは強固で簡単には崩されない。
決勝トーナメントでのコロンビア戦は堅めにからめとられてしまい、PK戦で散ってしまった。上り調子だっただけに少し残念な気持ち。次のワールドカップはタバレス政権の集大成となる。スアレス、カバーニが万全で迎えられる最後のW杯でもあるだろう。節目となる大会に向けてあと1年。どのように仕上げてくるだろうか。
頑張った選手⇒ジョルジアン・デ・アラスカエタ
ナンバー10らしく攻撃的な部分のアクセントとしての機能。カバーニ、スアレスに続く3本目の矢としてチームを牽引していた。