チーム情報
監督:ホセ・ペセイロ
FIFAランキング:30位
W杯2018⇒予選敗退
コパアメリカ2019⇒ベスト8
招集メンバー
GK
1 Wuilker Fariñez
12 Joel Graterol
- Yhonathan Yustiz
22 Luis Romero
- Giancarlo Schiavone
DF
- Mikel Villanueva
2 Nahuel Ferraresi
14 Luis Del Pino Mago
- Diego Osio
8 Francisco La Mantia
28 Adrián Martínez
4 José Manuel Velázquez
27 Yohan Cumana
- Roberto Rosales
21 Alexander González
- Eduardo Fereira
20 Ronald Hernández
MF
5 Júnior Moreno
13 José Andrés Martínez
- Cristhian Rivas
- Christian Larotonda
24 Bernaldo Manzano
6 Yangel Herrera
23 Cristhian Cásseres Jr.
- Leonardo Flores
26 Edson Castillo.
- Abraham Bahachille
- Rómulo Otero
FW
10 Yeferson Soteldo
25 Richard Celis
- Richard Figueroa
- Jefferson Savarino
15 Jhon Murillo
- Robinson Flores
- Josef Martínez
- Jan Hurtado
19 Jhonder Cádiz
9 Fernando Aristeguieta
11 Sergio Córdova
- Daniel Pérez
各試合振り返り
GS第1節 ブラジル戦
■快勝のブラジルで気になったのは…
もともと開催予定だったアルゼンチンが感染拡大を防げずに開催を辞退。直前まで開催地が決まらずてんやわんやという、コパアメリカ史上、最もコパアメリカ的な開幕を迎えることになった。急遽代替開催地となったブラジルにこの大会の開催国としてどれだけの思い入れがあるかは不明。だけども、とりあえず開催国であるブラジルがベネズエラとの開幕戦に挑むことになった。
試合は立ち上がりからくっきりしていた。ブラジルがベネズエラのブロック崩しに挑み続けるモノトーンな前半となった。ブラジルの基本フォーメーションは4-2-3-1。攻撃の際はフレッジとカゼミーロが中盤でコンビを組み、2列目が左からネイマール、パケタ、リシャルリソンという並びになっている。守備の時はネイマールがトップのジェズスと共に前残り。左サイドの守備にはフレッジが持ち前の範囲の広さでカバー。その分、中央はパケタが低い位置を取り、中央の強度低下を防いでいる。
ブラジルの攻撃時の主体となったのは左サイド。ネイマールが同サイドにいてもお構いなしで高い位置を取るロディが、ベネズエラの5-4-1のバックラインに張る。ベネズエラはCHがCFのプレスを支援する二の矢となっていたため、SHは内で絞り気味。大外は手薄な状態でブラジルに立ち向かう必要があった。
この左サイドからの攻撃は自由自在。外からクロスで打ち抜いても良し、抉ってラインを下げてベネズエラのDF-MFのライン間のスペースを作るも良し、そして左右に振るも良しである。大外からのクロスをマルキーニョスが叩きこんであっさり先制すると、ブラジルはその後も力の差を見せ続けた。
特にネイマールはクラブシーンでの好調を継続。大外での攻略だけでなくライン間や逆サイドへの横断も含めて存在感は絶大。ベネズエラはブラジルの左サイドを端に発する歪みに対応することができなかった。後半はややポゼッションで跳ね返しを狙うも、カウンターで返り討ちに合う分収支はマイナスか。
好調だったブラジルだったが唯一懸念だったのはリシャルリソン。動き出しの周りとの合わなさ、アタッキングサードでの精度、そしてなによりプレーをミスした後の悲壮感はエバートンで苦しんだ今季の姿にダブる部分があった。来季こそ一皮むけて、グッドプレイヤーからワールドクラスにスケールアップを目指したいはず。コパアメリカがきっかけになればいいのだが。
試合結果
ブラジル 3-0 ベネズエラ
マネガリンチャ・スタジアム
【得点者】
BRA:23′ マルキーニョス, 64′(PK) ネイマール, 89′ ガブリエル・バルボサ
主審:エステバン・オストジッチ
GS第2節 コロンビア戦
■溶かされかけた守備網を塞ぐ最後の砦
コロナウイルスに対して比較的平穏なお付き合いをしているEUROだが、コパアメリカはコロナウイルスにかなり振り回されている感が否めない。というか開催国まで変えるハメになっているのだから当たり前なのだけど。
そんなコパアメリカ出場国の中でもっとも被害を受けているのはベネズエラ代表。開幕直前に10人以上の選手が離脱してしまい、急遽自国から補充メンバーを呼び寄せるという羽目になった。そのせいかそもそも戦力差がえぐい初戦のブラジルには歯が立たなかった。
2戦目のコロンビアも戦力的に差がある相手。ベネズエラは5-4-1で撤退守備を敷く。コロンビアはこのベネズエラのブロックを攻略するというミッションに挑む。コロンビアの大枠は前節と同じ。基本のフォーメーションの4-4-2から左サイドのカルドナが内に絞り、3バック変形という欧州チックな変形で5バック崩しに挑む。
5バックを崩すには溶かすイメージを持てるかが大事!ということを自分はよくレビューで述べる。受け売りだけど。この日のコロンビアは溶かすために必要なことはやっていたと思う。ベネズエラの2列目をコロンビアの最終ラインで引き離す。大外を取って相手の横幅を広げる。そしてサイドに優位を作る。難しそうならば逆サイドに展開。この流れの中で本命のライン間にボールを入れられる際には楔を入れる。この選択は適切でやれることはやっていたように思う。
ただ、エリア内のクロスに対してはそこまでコロンビアが優位をとれなかったこと、そしてベネズエラのGKのファリニェスのセービングが素晴らしかったことなどでなかなか崩すことができない。コロンビアは前節同様、プレーブックに沿ったセットプレーでネットを揺らすが、これはオフサイド。終始相手を支配するがなかなかゴールが遠い。
一方のベネズエラも右サイドのゴンサレスとマルティネスの縦関係という竹やりで挑むも、これはゴールには迫れないのも無理はない威力。終盤は小競り合いに終始した両チーム。ディアスの踏みつけでの退場はややタイミングが合ってしまった感があり不運だったが、無駄にテンションが上がってしまったことは崩すためにプレーをつながなくてはいけないコロンビアにとってはありがたくなかったはずだ。
結局、何とか無失点でしのぐことができたベネズエラ。ゴールは遠いが、なんとかコロンビア相手に勝ち点を取ることができた。
試合結果
コロンビア 0-0 ベネズエラ
エスタディオ・オリンピコ・ペドロ・ルドビコ
主審:エベル・アクイーノ
GS第3節 エクアドル戦
■負ったリスクにかみ合う攻守
コロナウイルスにより大量の離脱者が出る苦しい戦いながらも、前節は5-4-1でコロンビア相手になんとか引き分けたベネズエラ。エクアドルというコロンビアよりはやや与しやすい格の相手でもベネズエラの基本線は撤退型の5-4-1でスペースを消すこと。そして時折、機を見て右サイドからゴンサレスとホセ・マルティネスの攻め上がりを見せることでわずかな反撃の糸口を手繰り寄せるやり方である。
当然、エクアドルもコロンビアと同様にこの5-4-1の攻略をしていくことになる。CHのメンデスが落ちることで最終ラインは十分に人数を確保。そして、前線は2トップ+SHに左サイドバックのストゥピニャンが加わり5トップ化する。逆サイドのSBであるアンヘロ・プレシアードはストゥピニャンに比べればバランスをとる役割である。
ただ、相手の5バックにダメージを与えるという点ではコロンビアの方がスキルが上。同サイド攻略もライン間攻略もサイドチェンジもあらゆる局面でスキルがなかなか追いついてこない。それだけにセットプレーで得た先制点は非常に大きかったことだろう。
ビハインドを背負ったベネズエラは後半頭から一転、高い位置からのプレスに打って出る。当然、失点のリスクは高まる。だが、それでも自陣深い位置からの右サイドからのロングカウンターだけではあまりに得点のチャンスが薄いという判断だろう。よりオープンにし、失点のリスクと引き換えに得点のチャンスを得るという判断だ。
同点のシーンはそれが実った形。CHのカスティーロが出ていけるような状況はローラインブロックからのロングカウンターからは決して生まれなかったゴールといえるだろう。
だが、エクアドルもベネズエラのリスクにうまくつけこむ。交代で入ったプラタの独走で再度勝ち越し、ベネズエラを突き放す。
しかし、最後の最後まで死んでいなかったベネズエラ。エルナンデスの同点ゴールはまさしく魂の一撃。最終盤に訪れたエクアドルの決定機も、前節に引き続き絶好調の守護神ファリニェスがセーブ。取ったリスクに対して攻守がかみ合ったベネズエラ。コロンビアに続き、エクアドルからも勝ち点を奪い取って見せた。
試合結果
ベネズエラ 2-2 エクアドル
エスタディオ・ニウトン・サントス
【得点者】
VEN:50′ カスティージョ, 90+1′ エルナンデス
ECU:39′ プレシアード, 70′ プラタ
主審:ロベルト・トバル
GS第5節 ペルー戦
■初陣の選手で臨む賭けは
大会直前で選手8人がコロナウイルス陽性反応。慌てて自国から15人の選手を新たに呼び寄せるなど完全にバタバタだったベネズエラ。グループステージでは明らかに弱者の戦いを強いられたものの、驚異的な粘りでコロンビアなど格上から勝ち点を奪ってきた。しかし、粘り切ることはできても勝ち切ることができないベネズエラ。攻撃に打って出ても、なかなか得点を得ることができないことが課題となって立ちはだかっている。
対するペルーも他会場の結果次第ではまだ敗退の可能性がある状況。内容的には悪くないサッカーが続いているが、少なくとも引き分け以上で突破を決めたいところである。
ベネズエラはこの試合に向けて大幅にメンバーを入れ替えてきた。パパっとtransfermarktを見てみると、今回スタメン入りした選手たちは大会前にの代表戦には出場していた選手たちばかり。おそらくなのだけど、コロナの影響で隔離していた選手たちを戻したということなのだろう。
ベネズエラは保持をしながらペルーのプレスの合間をかいくぐりながら前進を試みる。しかしながら、なかなか相手のゴール前にはたどり着ける状況にはない。これまでは右サイドのゴンサレスとマルティネスを軸に推進してきたが、彼らはこの日はベンチ。攻め手がハッキリしない分どこから進むかがぼやけた印象を受けた。それだけに17分に右サイドから進んで得たコルドバの決定機は決めたかったところ。あとは押し込むだけだったのに。
時間が経つとともに主導権はペルーに。ベネズエラは高い位置から止めに行くものの、保持の部分で力があるペルーはプレスをいなしながらスイスイ進む。これまでのベネズエラは撤退型の5-4-1を主体としてきたが、さすがにそれだけでは勝利は遠いと感じたのだろう。だが、結局高い位置からは止められず、ずるずるとラインを下げてしまうことが多かった。
その結果、ライン間の適正な距離を保てないベネズエラ。ペルーは同サイドを打ち破りながらラインを押し下げる動きを増やしていく。押し込む時間が増えたペルーは後半にセットプレーから先制する。
困り果てたのはベネズエラ。保持における武器も定まらない。かつ、高い位置で相手を止めることもできない。大会初戦となる選手たちを入れ替えて投入したベネズエラの賭けは事態を好転させることはなし。グループステージを盛り上げたが、残念ながらここで敗退となってしまった。
試合結果
ベネズエラ 0-1 ペルー
マネガリンチャ・スタジアム
【得点者】
PER:47′ カリージョ
主審:パトリシオ・ロースタウ
大会総括
■5バックと竹やりで望んだ緊急事態
コロナウイルスでも強行した感のある今回のコパアメリカの最大の被害者。代表前に11人のチーム関係者がコロナウイルス感染。急遽、自国から14人の追加召集選手を呼び寄せて急造チームを作成した。
コンディション作りもままならない中、初戦にブラジルとぶち当たったのは完全に不運としか言いようがない。力量差も含めて、ここの完敗は目をつぶって問題ないだろう。
それ以降の試合では存在感を見せたといっていい。5-4-1の撤退での割り切った守備とマルティネスとゴンサレスの右サイドからの突撃という竹やりクラスの破壊力の武器しかなかった。だが、とにかく撤退守備は気合が入っていたのは確かである。
コロンビア相手には5バックが前後に振り回されながらエリアに迫られるシーンをやたらつくられてはいたが、最後の最後で跳ね返す。特に目立った活躍したのは、GKのファリニェス。攻守連発でコロンビアをシャットアウト。格上からの勝ち点1獲得に大きく貢献した。
続く、エクアドル戦ではブロック守備を打ち破られてしまったが、今度は割り切ったハイプレスで高い位置からのボール奪取に方向転換。5-4-1からの竹やりではビハインドの展開にはあまりにふさわしくないと判断したのだろう。小国ながらもこうした柔軟性を持てるのがベネズエラの魅力。そして実際にハイラインを活かした同点ゴールを決めるのだからアッパレ。再度勝ち越しされるも、終盤に再びヘッドで同点に追いつき2戦連続の勝ち点1を得る。
ただ、どうしても勝ち切ることができず。突破のかかった最終節のペルー戦では先制点を奪われた後は盛り返すことができず。コロナウイルスから回復した主力たちを先発復帰させた一戦だったが、むしろここまでの勢いを失速させてしまった感が否めなかった。しかし、トラブルがありながらも相手に食いついていくスタイルは大変見ごたえがあった。次回はぜひ万全の準備でのビックトーナメント参戦を見たいところだ。
頑張った選手⇒ウイルケル・ファリニェス
23歳の守護神。個人的にはGS最大の発見。圧倒的なセーブ力で、劣勢に立たされるチームを鼓舞し続けた。昨季レンタルしていたランスではほぼ出場機会がなかったようだが、ぜひリーグ戦でも見てみたい逸材だった。