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「EURO 2020 チーム別まとめ」~ドイツ代表編~

目次

チーム情報

監督:ヨアヒム・レーヴ
FIFAランキング:12位
EURO2016⇒ベスト4
W杯2018⇒GS敗退

招集メンバー

GK
12 ベルント・レノ(アーセナル)
1 マヌエル・ノイアー(バイエルン・ミュンヘン)
22 ケヴィン・トラップ(フランクフルト)

DF
4 マティアス・ギンター(ボルシア・メンヒェングラットバッハ)
20 ロビン・ゴセンス(アタランタ)
26 クリスティアン・ギュンター(フライブルク)
3 マルセル・ハルステンベルク(RBライプツィヒ)
5 マッツ・フンメルス(ボルシア・ドルトムント)
16 ルーカス・クロスターマン(RBライプツィヒ)
24 ロビン・コッホ(リーズ・ユナイテッド)
2 アントニオ・リュディガー(チェルシー)
15 ニクラス・ジューレ(バイエルン・ミュンヘン)

MF/FW
23 エムレ・ジャン(ボルシア・ドルトムント)
10 セルジュ・ニャブリ(バイエルン・ミュンヘン)
18 レオン・ゴレツカ(バイエルン・ミュンヘン)
21 イルカイ・ギュンドアン(マンチェスター・シティ)
7 カイ・ハヴェルツ(チェルシー)
13 ヨナス・ホフマン(ボルシア・メンヒェングラットバッハ)
6 ヨシュア・キミッヒ(バイエルン・ミュンヘン)
8 トニ・クロース(レアル・マドリー)
25 トーマス・ミュラー(バイエルン・ミュンヘン)
14 ジャマル・ムシアラ(バイエルン・ミュンヘン)
17 フロリアン・ノイハウス(ボルシア・メンヒェングラットバッハ)
19 リロイ・サネ(バイエルン・ミュンヘン)
9 ケヴィン・フォラント(モナコ)
11 ティモ・ヴェルナー(チェルシー)

各試合振り返り

GS第1節 フランス

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■虎子を得られなかったドイツ

 グループステージ第1節の目玉カード。圧倒的死のグループであるグループFで優勝候補の本命であるフランスが歴戦の猛者であるドイツと激突する。

 両チームは各国メディアの事前予想通りのスターティングメンバーを並べてきた。唯一異なるのはフランスの3トップの並び方。トップ下にグリーズマンを置く2トップ予想が目立ったが、実際の並びはフラットな3トップ。ドイツの3バックにかみ合わせる?と思ったのだが、右に開いたグリーズマンのマーク対象はリュディガーではなく、このサイドに降りてくるクロース。リュディガーは放置プレイである。

 誰かにボールを持たされて苦しめられるドイツというのは、どこかのワールドカップで見たことがある気はする。だが、メキシコほどフランスがめっちゃ組織立っていたかと言うとそういうわけでもない。例えば、中央の3センターの守備はやや開き気味。ミュラー、ハフェルツなど降りてくるドイツの前線をカンテ1人では潰しきれない場面も目立つ。

 したがって、ドイツも縦にパスを入れる機会さえあれば十分に前進することができた。強いて言えば縦パスの落としを受ける人と、そこから裏抜けする人までセットできれば上出来。だけど、ドイツもそこまでの完成度ではなかった。クラブでの役割を考えるとギュンドアンには1列前に入りたい。もちろん、被カウンターのリスクはあるけど。虎穴に入らずんば虎子を得ずがこの日のドイツのテーマだったように思う。リスクを取らないとフランスから点は取れない。

 フランスの攻撃はグリーズマンがフリーマン化。守備時の右サイドにこだわらず、逆サイドまで顔を出すこともしばしば。人を捕まえる傾向が強くなりがちだったドイツに浮遊するグリーズマンの存在はややこしかった。フランスの狙い目になっていたのはドイツの右サイドの裏。先制点の場面もその裏を突いたリュカの攻撃参加がトリガー。後半もラビオの決定機がこのサイドから生まれるなどフランスの攻めのターゲットにされていた。

 後半のドイツはその右サイドの保持を整備。WBのキミッヒがSHやIHのあたりに浮遊することでフランスの守備の基準を乱す。前半に指摘したカンテ周辺の過負荷をさらに増やすこと、そしてニャブリーの決定機のように前線に顔を出しながらレーンを入れ替えるなどチャンス創出に貢献。もちろん裏を狙われるリスクはあるけど、虎子を得るには仕方ない。

 だが、後方を支えるギンターの負傷から徐々にドイツのリスクが顕在化。後半はキミッヒの裏狙いに専念したフランスが逆に決定機を生み続ける展開になる。追加点こそ得られなかったものの、後半もフランスには多くの好機はあった。

 ドイツは後半の終盤に失速。間で受けられるハフェルツを下げてヴェルナー、サネというスピードスターコンピを投入したことが裏目になった。前線はミュラーと誰がリンクするかという部分がドイツの今後の伸びしろのように思う。結局大一番はフランスの勝利に。ドイツは2節、3節にプレッシャーがかかる苦しい状況を迎えることになった。

試合結果
フランス 1-0 ドイツ
フースバル・アレナ・ミュンヘン
【得点者】
FRA:20′ フンメルス(OG)
主審:デル・セーロ・グランデ

GS第2節 ポルトガル戦

画像2

■再現性+5レーンで柔軟性に欠けるポルトガルを大破

 フランスに敗れてしまい立場が危険になってしまったドイツ。あとがないこともあり、立ち上がりからドイツは圧倒的に攻め込んでいた。狙い目にしていたのは右サイド。序盤からドイツはぐいぐい。右サイドからひたすらGKとDFラインの裏にクロスを入れ込み続けていた。前線の選手はほぼほぼ割り切っていた。ライン間に入り込むよりも、ラインに張る選手が多く飛び出しに的を絞っていた感がある。

 ポルトガルはビルドアップにおいてもドイツのマンマーク気味のプレスを脱出することができず。反撃の機会すら得ることができなかった。それだけにドイツのCKの守備の隙をついた先制点はお見事。後ろにほぼ人を残さなかったドイツに対してポルトガルはカウンターで数的優位に。ベルナルドからジョタにパスを通した時点で決着。お手本のようなカウンターだった。

 ポルトガルは先制以降、トップ下のブルーノ・フェルナンデスをIHにおいて中盤を5枚にシフト。ドイツが立ち上がりから起点にしていたハーフスペースを閉じにかかる。しかしながら、このIHの守備の強度がポルトガルのアキレス腱に。同サイドで埋める程度はできるのだけど、ラインを上下動させられた際の動き直しや逆サイドに展開された時のスライドで脆さが出てしまう。

 右サイドのハーフスペースと大外の関係でフリーを作り、ライナー性のクロスを逆サイドに届けるというドイツの攻撃は再現性抜群。特に左サイドを駆けあがるゴセンスを監視する選手がいなかった。

5レーン志向+再現性の観点で言えば最強なドイツに対して、これだけハーフスペースと大外のケアができなければ前半のうちに逆転されるのは当然な気がする。3失点目、SHに起用されたレナト・サンチェスが大外を埋めに戻らなかったには驚いた。監督が指示しなかったのか、選手が無視したのかはわからないけども。

 今大会は3-2-5隆盛なのでポルトガルがこの試合で見せた弱点は万人に展開できそう。ポルトガルの場合はサイドに人数調整が上手い選手がいないのがしんどい。この試合で言えばギンターとかアスピリクエタとかリュカとかSBもCBもできますよ!みたいな選手がいない。最後はセメドが3バックの右やっていたのはその証左。かといって6バックまで頑張れるほどSHのタレントに汗をかかせるわけにもいないのがジレンマである。

 強みが全開に出たドイツだったが、フンメルスの交代以降はやや危うさもあり。フンメルス不在の最終ラインの連携とネガトラの脆弱性はこの試合でもはっきり見えた。4得点も2失点もレーブ・ドイツの強さと弱さが詰まっている総集編のような試合だった。

試合結果
ポルトガル 2-4 ドイツ
フースバル・アレナ・ミュンヘン
【得点者】
POR:15‘ ロナウド, 57’ ジョタ
GEN:35‘ ディアス(OG), 39’ ゲレーロ(OG), 60’ ゴセンス
主審:アンソニー・テイラー

GS第3節 ハンガリー戦

画像3

■スクランブルドイツに捉えられたグッドルーザー

 ドイツは引き分け以上でグループステージ突破が確定。死の組とされたグループFの突破まであと一歩である。この日のドイツも平常運転。3バックがベースだが、ギンターにSBの役割を与えることで右サイドを押し上げる。

 どちらかと言えば変更を施したのは勝たなければいけないハンガリーの方。これまでのハンガリーはWBが守備時に高い位置を取ることでラインを下げずに対応することが特徴だった。だが、この日は純粋な5バックで裏を簡単に取られないようにしながら最終ラインをコントロール。WBが出ていくときは、CBとWBの距離感を大事にしながらなるべく隙を出さないようにする。

 左右満遍なく攻めるドイツだが、決め手に欠ける状況が続く。そんな中で先制点を奪ったのはなんとハンガリー。エリアに向けたクロスで出し抜いたサライが貴重な先制点。ドイツはゴセンスがラインを下げた影響でクロッサーがフリーに。リュディガーが出ていくも間に合わなかった。

 得点後の雨もハンガリーにとっては恵みだろう。明らかにドイツの崩しがワンランク停滞した。ハンガリーのサポーターの席だけ雨が降られないで騒いでいる様子はまるで前半の象徴だった。

 雨が止んだ後半のドイツは右サイドに狙いを絞る。狭いスペースでの駆け引きができるハフェルツを軸に右サイドに奥行きを作ることでハンガリーをサイドから抉る。逆サイドでスタートしたサネも右に集結。ただしこちらは大外で相手を引き付けるフリ。本命は間でも裏でも受けられるハフェルツにいい形で渡すことだ。

 攻め立てるドイツはその勢いで同点に。右サイドからのクロスに飛び出したグラーチがはじけず。最後はハフェルツが押し込んだ。ここまで積極的な飛び出しでチームを救ってきたグラーチだったが、この試合では痛恨のミス。大きなミスとなった。

 だが直後にハンガリーが再度勝ち越し。意識が前に前に行ったドイツの右サイドをあっさりと裏を取られる。右サイドで最後に体を投げ出していたのがサネというのは結構ハードモードである。

 再び敗退の危機に晒されたドイツ。左右にさらにガンガン攻撃のタレントを投入し、サイドの偏重を解消し、再び左右両方から攻める。そんな中で結果を出したのが左サイド。左のWBというわけわからないポジションで投入されたムジアラがサイドからクロスを入れたのが決勝点に。最後に決めたのはほぼフェライニの役割で投入されたゴレツカだった。

 バランスぐっちゃぐちゃで残りの時間を過ごさなければいけないドイツ。ムジアラ、クロース、ミュラーのトライアングルで根性で左サイドで時間を鬼のように空費していた。ハンガリーも最後の最後まで食い下がったがここまで。ドイツ、フランスの両雄に勝ち点をもぎ取ったハンガリーの旅路はここで終わり。だが、グループステージを最も盛り上げたチームの1つであることは間違いないだろう。

試合結果
ドイツ 2-2 ハンガリー
フースバル・アレナ・ミュンヘン
【得点者】
GER:66′ ハフェルツ, 84′ ゴレツカ
HUN:11′ アダム・サライ, 68′ シェーファー
主審:セルゲイ・カラゼフ

Round 16 イングランド戦

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■活性化した左サイドが試合を決める

 ラウンド16で因縁の対戦がウェンブリーで実現。ウェンブリーでの対戦権獲得マッチとなった最終節のチェコ戦を制し、グループDの首位通過を決めたイングランドが薄氷を踏みながら死の組を突破したドイツを迎える一戦である。

 前の日の試合が非常に盛り上がったこと、ネームバリュー抜群なカードであること、そして両チームのスタメンから塩試合の予感は賢明なサッカーファンの皆様なら予想できていたことかと思うが、その予想に違わない塩試合となった。

 どちらのチームも3-4-3でのミラー的な噛み合わせ。保持においては外は使わずに縦に進む。というわけでライン間へのパス通し選手権と化していた。ドイツの狙いはミュラーに当てながらその後方から抜け出す形でイングランドの最終ラインを一気に破る形。もちろんその役割を課されたであろうヴェルナーに加えて、中盤から飛び出せるゴレツカの存在は厄介。仮にゴレツカの抜け出しに対するウォーカーのカバーが遅れていたら、ライスに出たカードの色は異なっていたかもしれない。

 対するイングランドはライン間に降りるスターリングが前を向けるかが全て。なぜかわからないけど、代表では味方に前を向かせる事業をケインが放棄してしまっているのでシャドーは自力で前を向くしかないのである。ただ、ドイツはイングランドと比べると前線の守備の姿勢が甘いので、それでもライン間にパスを入れることはできていた。

 基本的にはライン間のスターリングか、ミュラーを追い越すラインブレイクが刺さるかという勝負なので見やすいは見やすい。あと、試合内容とは全然関係ないけど、ハーフタイムに内藤さんが『この試合は面白い』って言っているツイートが噛みつかれまくってて笑いました。褒めているのに噛みつかれるという構図が面白い。

 後半も同じ展開が続く中で違いを作ったのはイングランド。グリーリッシュの登場で左サイドにタメができるようになったイングランド。75分にようやくこの試合初めてきれいに横断を成功し、これを得点に結びつける。左サイドから上げたクロスを決めたのはスペースに走りこんだスターリングだった。

 この失点を境にドイツはテンションがガタ落ち。特にネガトラは緩いとかじゃなくてもうやめてしまったといってしまっていいレベルだろう。それだけにスターリングのバックパスでのミュラーの独走アシストはドイツを蘇生しかねなかった余計なプレーである。

 保持の局面の3-2をずっと嵌められている問題を最後まで解決できず、ロストも目立つようになったドイツ。点を取る気になったイングランドに追加点が生まれるのは言うまでもない。2点ともにアシストしたのは左サイドからグリーリッシュとショウの左サイドは攻撃面での好連携が目立ち、これから先のラウンドでの再結成はあるかもしれない。

 最後まで策がちぐはぐで自らのスタイルと共に沈んでいったドイツを尻目に、実にドイツ戦41年ぶりの勝利を決めたイングランドがベスト8に進出を果たした。

試合結果
イングランド 2-0 ドイツ
ウェンブリー・スタジアム
【得点者】
ENG:75′ スターリング, 83′ ケイン
主審:ダニー・マッケリー

大会総括

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■チェルシーナイズは不完全燃焼

 死の組爆死三銃士のラスト1人。スペインがワールドカップを優勝したり、バイエルンにグアルディオラが行ったりした後から、なんとなく新しい物好きでポゼッション好きなイメージがあるドイツ。蓋を開けてみると今大会のドイツは欧州王者のチェルシー風味だった。大会前はどうだったんだろう。

 3バックがベースでそのうちの1人がSBロールをこなす。ドイツでいえばこれに当たるのはギンター。チェルシーでいえばアスピリクエタの役割である。そうして同サイドのWBを高い位置に押し出す。すなわち、キミッヒがジェームズの役割ということになる。

 サイドにおける数的優位の作り方は非常に機能的だった。再現性の鬼といえるドイツらしさが詰まっていたのは何と言ってもポルトガル戦だろう。先に挙げたメカニズムで敵陣まで押し込んでクロスを上げると、逆サイドからWBのゴセンスが飛びこむ。無論アロンソやチルウェルが飛び込むのが元ネタ。ここもチェルシーナイズされた部分である。

 唯一チェルシーっぽく仕上がらなかったのは前線である。こここそ元ネタのヴェルナーとハフェルツを入れてそのまま移植してしまえばいいのではと思うのだけど、あまりその部分は意識されなかったように見えた。具体的に言えばヴェルナーをあまり使う気がなかった。

その代わりに起用されたミュラーの使い方がイマイチみんなピンと来てなかったように見えた。周りとリンクしてナンボという選手なだけあって、決勝ラウンドに向けてここが伸びしろだという感じだったのだが、うまくいかなかった。そもそもギリギリのところで突破を決めたハンガリー戦も解決したのはゴレツカの筋肉だったので、ポルトガル戦を除けばこの大会のドイツの仕組みはあまり機能していなかったともいえる。

 個で見ても攻撃的なタレントの不発が目立つところが多い。サネはハフェルツの引き立て役にしかならず、フォラントはなぜか外からクロスを上げる役割を命じられ、ヴェルナーは抜擢されたイングランド戦で止め方を知っている守り方をしてくるストーンズに完敗を喫した。

 結局はうまくいかないなりに成り立たせるのがうまいイングランドに寝技に持ち込まれていいところなく敗北。栄光を手にし続けてきたレーブのドイツにしてはあまりにも寂しい幕切れといわざるを得ない。

頑張った選手⇒カイ・ハフェルツ
 広いスペースへの動き出しがレバークーゼンでチラ見した時の持ち味だったが、スモールスペースでのボールの扱いはシーズン後半からめきめきよくなっているように見える。プレミアでの来季が楽しみな選手。

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