チーム情報
監督:ロブ・ペイジ(代行監督)
FIFAランキング:17位
EURO2016⇒ベスト4
W杯2018⇒予選敗退
招集メンバー
GK
1 ウェイン・ヘネシー(クリスタル・パレス/イングランド)
12 ダニー・ウォード(レスター・シティ/イングランド)
21 アダム・デイヴィス(ストーク・シティ/イングランド)
DF
24 ベン・ガバンゴ(スウォンジー/イングランド)
14 コナー・ロバーツ(スウォンジー/イングランド)
2 クリス・グンター(チャールトン/イングランド)
22 クリス・メファム(ボーンマス/イングランド)
17 リース・ノリントン=デイビス(シェフィールド・ユナイテッド/イングランド)
3 ネコ・ウィリアムズ(リヴァプール/イングランド)
6 ジョー・ロドン(トッテナム/イングランド)
4 ベン・デイヴィス(トッテナム/イングランド)
5 トム・ロックヤー(ルートン・タウン/イングランド)
ジェームズ・ローレンス(ザンクト・パウリ/ドイツ)
MF
25 ルビン・コルウィル(カーディフ)
18 ジョナサン・ウィリアムズ(カーディフ)
15 イーサン・アンパドゥ(チェルシー/イングランド)
26 マシュー・スミス(マンチェスター・シティ/イングランド)
19 デイビッド・ブルックス(ボーンマス/イングランド)
16 ジョー・モレル(ルートン・タウン/イングランド)
23 ディラン・レビット(マンチェスター・ユナイテッド/イングランド)
8 ハリー・ウィルソン(リヴァプール/イングランド)
7 ジョー・アレン(ストーク・シティ/イングランド)
10 アーロン・ラムジー(ユヴェントス/イタリア)
FW
13 キーファー・ムーア(カーディフ)
11 ギャレス・ベイル(トッテナム/イングランド)
20 ダニエル・ジェームズ(マンチェスター・ユナイテッド/イングランド)
9 タイラー・ロバーツ(リーズ・ユナイテッド/イングランド)
各試合振り返り
GS第1節 スイス戦
■優勢に進めるも脆いところに付け込まれるスイス
日ごろから代表シーンのサッカーを見ることがない。というわけで第1節は名鑑とのにらめっこになる。スイスはショートパスを軸に進んでいくチームで、プレスに晒されてもロングパスに逃げることは少ないということである。一方のウェールズはコンパクトな守備ブロックでボールを絡め取り、ベイルにボールを預けて頼んだぜ!がお決まりのパターンのようである。
そういった名鑑に乗っている両チームの事前情報通りの試合になったように思う。立ち上がりからボールを持つのはスイス。3バックを軸とした数的優位でのビルドアップ+シャキリをフリーマンにした仕上げで押し込む。
一方のウェールズは割り切ってスイスにボールを持たせていた。プレミアファンがあのベイルまで自陣深い位置まで撤退をしているのを見れば、彼らの狙いは一目瞭然といったところだろう。ただし、ベイルが深い位置まで下がっている状況では、すぐにボールをベイルに託すことはできない。したがって、1トップのムーアにボールを当てることで陣地回復を図った。
イタリア相手に撤退したトルコと異なり、ウェールズはトップがサイドに誘導する。さらにはSBが高い位置に出てくることでスイスを食い止めるなど押し込まれないための工夫を施していた。撤退守備の完成度は同じくボールを持たせたトルコよりも上といっていいだろう。
保持ではスイスも工夫を見せていた。特にキレていたのはゾマーとアカンジの縦パス。特にアカンジの縦へのパスを前線が受けて反転し、そのまま推進していくことでチャンスメイク。特に脅威になっていたのはエンボロ。彼の加速力を軸にスイスは徐々に前進できる機会を得られるように。スイスの先制点はセットプレーから。ロバーツにとってはエンボロとのエグいミスマッチになってしまっていた。
しかし、スイスもクロスの対応に難あり。ウェールズにとっては押し込めればチャンスがある様相であった。同点に追いついたのはスイスと同じくセットプレーから非常に練られた形から最後はムーアが仕留める。全体的に優勢の時間が多かったのはスイスだったが、少ないチャンスからウェールズに上手く絡めとられてしまった。
試合結果
ウェールズ 1-1 スイス
バクー・オリンピック・スタジアム
【得点者】
WAL:74′ ムーア
SWE:49′ エンボロ
主審:クレマン・トゥルパン
GS第2節 トルコ戦
■『ぱなし』のツケ
イタリアに後塵を拝し、まずは2位浮上を狙う両チームの対戦。前節イタリアと対戦したトルコは、イタリアには明け渡していた大外のレーンをこの日は止めにかかる。イタリア戦よりは相手と組み合って渡り合う意識が強く出ているように見えた。
一方でウェールズはスイス戦と似たアプローチ。同サイドに相手を閉じ込めて食い止めるように試みる。したがって、トルコは大きな展開でウェールズの誘導から脱出を狙う。イタリア相手にはボール保持の時間そのものを作れなかったトルコだが、ウェールズならば保持の時間は作ることができる。左サイドから逆に振る大きな展開で大外のチェリクを使い、ウェールズを左右に揺さぶる。
しかし、右サイドのチェリクが決定的な動きができないこと、そして中央でのタメができないことからトルコの攻撃は停滞する。どちらかと言えば攻撃に鋭さがあったのは、カウンター主体のウェールズの方。特にベイルとラムジーのコンビは強力。受け手として優秀なラムジーと、タメが作れる上に自らがロングカウンターの旗手となれるベイルの2人がウェールズの核である。
この日、より効いていたのはラムジー。間受けに裏抜けにトルコのバックラインを翻弄。特に裏に抜ける動きはそのまま決定的なチャンスにつながっている。が、なかなかそのチャンスを決められないじれったい展開に。ようやく手にしたのは42分。3回目くらいの決定機をようやく沈め、ウェールズが前に出る。
巻き返しに出なくてはいけないトルコ。空中戦では優位に立ってはいるものの、どうしても決め手に欠く状況が続く。停滞した展開になったトルコはユルマズのポストを活用しながら中央に起点を作る方向にシフトチェンジ。ウェールズは時間が経つにつれ、ラムジーの戻りが遅くなってしまっており、中央にスペースはできるように。
ただ、トルコは攻守にきめ細かさがやや欠けていた。中央でのポストを使うにも動き直しが少なく、連携が完結しない。守備においてもラインの制御や守備のフォローが見られない。ベイルが失敗したPKのシーンも安易な飛びこみが引き金になっている。
押し込む状況は続くトルコだが、だんだんと攻めっぱなしの状況に。終盤は逆にウェールズのロングカウンターからの決定機が徐々にできてくるように。ラストプレーでロバーツの追加点が生まれたシーンでも、ベイルへのトルコのマークがあまりにも甘すぎる。攻勢に出るも攻守に集中力を欠いたトルコをウェールズが手堅く仕留めた一戦となった。
試合結果
トルコ 0-2 ウェールズ
バクー・オリンピック・スタジアム
【得点者】
WAL:42′ ラムジー, 90+5′ ロバーツ
主審:アルトゥール・ディアス
GS第3節 イタリア戦
■底を見せなかったイタリア、無失点でGS通過
すでに突破を決めているイタリアが第3節に迎えたのはグループステージ通過をまだ決めることが出来ていないウェールズ。片や半ば消化試合、片や運命の決戦となったアンバランスな一戦だった。
保持の主導権を握ったのはイタリア。3試合連続先発となったドンナルンマ、ボヌッチとジョルジーニョを除き大幅にメンバーを入れ替えたこともあり、まずは確かめるようにボールを保持をする。対するウェールズは5-4-1気味。WGが降りることは許容。トップのプレスラインは撤退するというやや慎重な入りとなった。
ウェールズは突破がかかっているのに!と思うかもしれないが、彼らが2位から落ちるにはライバルのスイスの多くの得点での勝利とウェールズの多くの失点での敗北が揃うことが必要。まずは大量失点をつぶすために撤退するという選択も悪くはないだろう。ただ、それにしてもラインは下げすぎ。ウェールズは1つ処理をミスれば即イタリアの得点になる位置まで撤退。これはこれでリスクだと思う。
イタリアはウェールズのWBの前のスペースから前進すると、そこからアーリー気味に逆サイドにクロスを刺す。左から作ることに重点を置いていたことは、逆サイドのIHであるペッシーナが出張にやってくることからもうかがうことが出来る。押し込み続けるイタリアは39分にセットプレーから先制。ヴェラッティのクロスをペッシーナが押し込み先手を取った。
後半のウェールズはプレスを基軸としたラインアップを試みる。イタリアをこれに対して、プレス回避能力の高さを見せて対抗。ジョルジーニョの交わし方とキエーザのボールの引き出し方が特に際立った。ウェールズのプレスを回避するとイタリアは中央をするする進みながら追加点を狙う。
プレスをかわされたウェールズにとってさらなる誤算だったのが52分のアンパドゥの退場。ベルナルデスキをがっちり踏みつけており、ウェールズは苦境に立たされることになる。10人でも全く反撃の機会を得られなかったわけではないウェールズだったが、少なくとも積極的なプレスは店じまい。
イタリアが終盤にトーンダウンしたことと、おそらく逐一確認していたであろう他会場の結果的に無理することはない!と判断したこともあり、試合はそのまま終了。誤算が重なりつつも辛くも2位でしのいだウェールズとGSでは底を見せなかったイタリア。表情は対照的ながらもそろって突破を決めた。
試合結果
イタリア 1-0 ウェールズ
スタディオ・オリンピコ
【得点者】
ITA:39′ ペッシーナ
主審:オビデウ・ハツェガン
Round 16 デンマーク戦
■手打ちの早さで主導権を渡さず
序盤から互いに攻め手が見つからない展開の中で、どちらかと言えば優勢に試合を進めていたのはウェールズ。5-4-1に構えるデンマークに対して、同サイドの攻略として大外とハーフスペースの出し入れで勝負。特に狙いをつけていたのは右サイド。中盤とDFラインの間が開いたところにベイルが入り込んで放ったミドルがもっとも惜しいシーンだった。
デンマークはこのベイルを軸とした横移動への対応にやや手を焼いていた。ややリズムをつかめないデンマークは早々にシステム変更。クリステンセンをアンカーに置き、ベイルとのペアリングでもっとも脅威になるラムジーを封じる。そうなるとベイルは孤立。相手を多少動かせてもチャンスメイカーとして彼を活かすことができなかったウェールズだった。
一方のデンマークはウェールズよりも横幅を使った攻撃が軸。デンマークが布陣変更した4-3-3は、ウェールズの守備と噛み合ってしまう。というわけで保持側のデンマークは工夫を施さなくてはいけなかった。その中で違いを見せたのはダムスゴー。固まっている中盤への降りる動きから攻撃を一気に加速。中盤とDFラインのつなぎ目に上手く付け入った形でデンマークに先制点をもたらす。ベイルの仕掛けに対する連動したオフザボールが機能しなかったウェールズとは対照的なスムーズな加速となった。
ビハインドで迎えた後半、ウェールズはベイルとジェームズの位置を入れ替える。攻撃参加に積極的なメーレに対して戻れるジェームズを配置することで手当てをする。加えて、ラムジーが低い位置まで降りてくることでクリステンセンとの駆け引きをはじめようとする。
が、その矢先のデンマークの追加点である。ネコ・ウィリアムスの痛恨のクリアミスがドルベリの目の前に転がってしまい、ウェールズをさらに突き放す。ボールを引き出す動きと持ち運びができるブライスワイトの良さが垣間見えた2点目でもあった。
この2点目でウェールズは硬直したように見えた。ラムジーとウィルソンを並べることでクリステンセン周りにフリーの選手を作ろうという意志は見えた。だが、デンマークは2点目をきっかけに5-3-2かつトップにも中盤の守備参加やサイドチェンジ阻害を課すベタ引きでロングカウンターに注力するスタイルに。このデンマークに対してウェールズは突き動かすことができなかった。
ここからはデンマークのいいところ博覧会。今大会で絶好調の香車系WBの1人であるメーレが3点目を奪うと、フィニッシュだけが決まらなかったブライスワイトがさらに追加点。ウィルソンの退場や、ベイルの抗議など終盤は心身ともにボロボロだった感のあるウェールズ。対照的に状況への手打ちの早さが際立ったデンマークがベスト8一番乗りを決めた。
試合結果
ウェールズ 0-4 デンマーク
ヨハン・クライフ・アレナ
【得点者】
DEN:27′ 48′ ドルベリ, 88′ メーレ, 90+4′ ブライスワイト
主審:ダニエル・シーベルト
大会総括
■手堅さで勝ち抜き、不測の事態で散る
前回大会はベスト4と躍進したウェールズだが、今回はベスト16どまりだった。基本的な部分は以前のEUROでチラ見した時とは大幅には変わらない。後ろはスペースを埋めながら受けて、攻撃の時はカウンターに打って出て反撃するというのがざっくりとしたサイクルである。
同じスペースを埋めるというやり方で比較しても、同グループのトルコが大外を空けて受けたのに対して、ウェールズはきっちりサイドのスペースも埋めるという部分に違いがある。あのベイルがサイドの低い位置まで降りて、守備に参加するということを考えれば、ウェールズの面々がいかにこのやり方にコミットしているかということが分かってもらえるかもしれない。両サイドハーフは自陣深くまでの守備が義務付けられている。突破がかかったイタリア戦ではさらに慎重な5-4-1を採用することもあったくらいである。
攻撃においてはそのベイルが主役。相棒のラムジーと共にスピードを生かしたカウンターは自陣深い位置が起点となっても相手陣に届けることが出来る爆発力がある。トップのムーアも陣地回復の役割が優先。ベイルやラムジーに落とし、少ない手数でボールまで向かうことがチームとしての方針となっている。
さすがにイタリアには通用しなかったが、GSのライバルだったスイスには終盤に一瞬のスキを突き、同点とするチャンスを逃さず。トルコには90分のゲームメイクで完勝で、終盤まで主導権を握りながら試合を優勢に進めることが出来た。
難点を上げるとすれば、攻撃の手段が限られていることだろう。堅いブロックと爆発力が保証されたカウンターが揃えば、グループステージの突破は堅いだろうが、トーナメントで上に進むにはもう1つ武器が欲しかった。ベイル、ラムジーのホットラインでも苦しんだ遅攻の部分でなにか光る部分があればもう1,2試合勝ちあがることもできただろう。
そして残念だったのは不測の事態に陥ってしまったこと。退場者である。GSのイタリア戦だけならば笑い話で済んだが、ノックアウトラウンドでは取り返しのつかない事態になるのは想像に難くないだろう。ジェームズの退場以降、ウェールズはデンマークにいいところを見せつけられるだけの展開になってしまった。たまたまかもしれないが、4試合中2試合に退場者が出ればこの形式では勝ちあがるのが難しくなるのは当然だろう。
多くの時間はウェールズは地味ながらもソリッドな組織で多くのチームを苦しめたとは思うが、2回の『たまたま』を引き起こしてしまえば、勝ちあがるのがここまでとなっても不思議ではないだろう。
頑張った人⇒ロブ・ペイジ
サッカー選手としては最高、人間としては最低の呼び声高いギグス監督が捕まってしまったので、代行監督として登場。本当にお疲れ様でした。