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「Catch up EURO 2020」~Semi-finals~ 2021.7.6-7

準々決勝はこっち。

目次

①イタリア×スペイン

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対策を跳ね返した先のドンナルンマで決勝進出

 レビューはこちら。

 より確固たるスタイルで今大会を勝ち上がってきたスペインだったが、この試合ではガッツリイタリア対策を行っていた。最も特徴的だったのはここまで重用してきたモラタを外し、CFにダニ・オルモを起用したことである。

 これによって今までのボール保持でゆったりした展開ではなく、高い位置からの即時奪回と縦に早い攻撃が主体に。オールコートマンツー気味の守備は、キエッリーニとドンナルンマという捨て所を作る。彼らにもたせつつ、他の箇所を塞ぐことでイタリアに停滞感を持たせるのが狙いだった。

 さすがだったのは時間が経つと共にイタリアは慣れ始めたこと。キエッリーニは徐々にボールを持ち運ぶトライをし始めるように。もちろん不得手ではあるタイプの動きだろうが、やってみるのは大事である。これによって同サイドの縦方向にズレができやすくなる。広いスペースでインシーニェが受けることが出来ればカウンターは十分発動することが出来る。

 イタリアはスペインの対策に対して細かい修正を入れるのがうまかった。左サイドの脱出のスキームを作るためにキエッリーニが持ち運びをし始めたのも1つ、降りてスイッチを入れるパスを出せるダニ・オルモにボヌッチが厳しくついていくようになったりなど。大枠の中でも細かい調整で、徐々にスペインペースだった試合をイーブンに持ってくる。

 後半のイタリアはインモービレが躍動。カウンターの運び屋であるインシーニェの先の手順にいるインモービレが機能することで、後半のイタリアは徐々にカウンターの精度を上げていく。そして先制点を得たのはキエーザ。中央で起点を靴ったインモービレのその先を担当していたキエーザが仕上げを行い、先制点を得る。

 すぐさまスペインはモラタを投入。ダニ・オルモとの縦関係を使いDFラインを押し下げる。同点ゴールはこの2人のコンビネーションから。オルモのタメに抜け出したモラタが同点ゴールを決める。

 守備的な交代で早めに攻撃的な選手を下げてしまったイタリアはここから苦しくなった。だが、スペインも延長戦では交代選手がアクセントになり切れずもう一押しが効かない展開に。結局PKまでもつれた試合はドンナルンマがウナイ・シモンに力の差を見せつけるセービングで勝利。

 終盤までしびれる大会のベストバウトを制し、まずはイタリアは決勝トーナメント進出を決めた。

試合結果
イタリア 1-1(PK:4-2) スペイン
ウェンブリー・スタジアム
【得点者】
ITA:60′ キエーザ
ESP:80′ モラタ
主審:フェリックス・ブリヒ

②イングランド×デンマーク

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■兵糧攻めで120分勝負を制する

 スペインとイタリアという内容も結果も濃密なカードに比べれば、準決勝のもう1つのカードは非常にさっぱりしたカードになった。互いに相手のDF-MF間に突撃して、どこまで前を向けるか?という部分でのシンプルなデュエルの応酬という展開である。

 イングランドの攻撃陣に対してデンマークは非常に警戒を強めていた。サカ、ケイン、スターリングの3人にはデンマークは最終ライン5人でチェックをかける。特にライン間で受ける意識が高いスターリングが前を向こうとすると2人でなるべく囲うように対応。場面によっては1人しかチェックをかけられないシーンもあったけど、その場面での対面のラーセンの対応を見れば確かに1人では危ういなと妙に納得する。

    スターリングは正対し加速されると止められないが、特に正対するためにイングランドの周りの選手が工夫を施すこともないので、デンマークが2人で囲う状況を作ること自体は難しくはなかった。数の論理での対抗のため、イングランドはSBのオーバーラップなど後方から枚数を確保すればチャンスが出来そうなもの。だが、イングランドは前線に起点を作ることが出来ず、後方から援軍が上がってくる時間を確保することが出来ない。

 せいぜい対応策はCHのフィリップスを高い位置に置くことでロスト時の即時奪回を狙っていくくらいである。セカンドボールに備えた人を送り込むというのは確かに対策にはなっているが、逆にこれをデンマークに利用されるパターンもあった。

    デンマークの攻撃も狙いはライン間で受けること。ただ、イングランドよりはより呼吸をしながらライン間でうけることが出来る。なぜならフィリップスが前がかりになって開けた穴が発生することがあるから。この穴を突けるデンマークの方がむしろライン間で時間を得ることが出来る頻度は多かったように思う。

 ジリジリした展開の中で先制したのはデンマーク。ライン間で受けたドルべリへのファウルをきっかけにFKを2連続で得る。すると、これを売り出し中のダムズゴーが直接叩き込む。横方向のコースでいえば少し甘かったかもしれないが、縦方向の軌道が非常にハード。ピックフォードにとっては難しい状況になってしまった感がある。ライン間で受けるしなやかさを見せたドルべリで得た好機をダムスゴーが生かしたデンマークが前に出る。

 しかし、イングランドもわずかな連携の糸から同点に。右サイドに流れることが多かったケインを降りて受けると、ほぼノータイムでサカの走り込みに合わせたスルーパスを披露。後ろに目でもついてのかってくらいの精度。

    サカの走り込みのスピードを考えると、ワンテンポでもケインの出すタイミングが遅れればオフサイドのシーン。即時に裏に出すというケインの判断とそれを信じて裏に加速したサカの連携が点でピタッとあった瞬間だった。この裏抜けでオウンゴールを誘発し、同点に追いつく。

 ここからのイングランドはサウスゲートの底意地の悪さの詰め合わせである。彼の優先事項はとにかく負けないことである。したがって、初手はしっかりと相手を押し込むことを始める。これにより、デンマークのカウンターは深い位置からスタートすることに。デンマークには数本のパスを正確につなぐ精度も、1人の選手が一気に相手陣までボールを運ぶこともできない。したがって、まずは相手のゴールへの道筋を絶つことを最優先とするイングランドだった。

 延長に入る段階でサウスゲートが切った交代カードはサカ⇒グリーリッシュのわずかに1枚だけ。5枚の交代カードが手元に残している。同点後のイングランドは兵糧攻めといった様相だった。まずはライス⇒ヘンダーソンという夢のかけらもない交代でボール回収を強化する。さらには同時にフォーデンを投入し、押し込まれても得点が取れる状況を整備する。

   スターリングが獲得した『ソフト』なPKをケインが沈めた後はより現実的な路線に舵を切るイングランド。なんとトリッピアーと代わったのは先程交代で入ったグリーリッシュ。中継ぎという概念をサウスゲートはサッカーで実践して見せた。

    これで1点取ってから一気に守りを固める体制に舵を切ることに。5バックの前にフィリップスとヘンダーソンを置くなんて、こじ開けられないだろうそんなの。しかもまだ交代カードを2つ残していていざとなれば攻撃的に転換できるのはちょっともう意味がよくわからない。

 とはいえ、それが出来る選手層も武器。そして、PK判定は怪しくとも延長戦の段階で仕掛けて突破が出来るスターリングの力は本物。最前線で体を張り続けたケインと、最後尾で無限にボールを跳ね返し続けたマグワイアも素晴らしいパフォーマンスだった。120分のパフォーマンスで言えばイングランドが次のラウンドに進むのは妥当だろう。

 大人げなかろうとダイブと揶揄されようと勝利したのはイングランド。外野の雑音など我関せずとチームと盛り上がるサポーターを見ると、これはこれで強さだと強く感じさせられる。

試合結果
イングランド 2-1(EX) デンマーク
ウェンブリー・スタジアム
【得点者】
ENG:39’ ケアー(OG), 104‘(PK) ケイン
DEN:30‘ ダムスゴー
主審:ダニー・マッケリー

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