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①ペルー×パラグアイ
■因果と運の第1試合
決勝トーナメントの第一ラウンドは伏兵同士の一戦。保持の巧さを見せたペルーと、手堅さで挑んだパラグアイの対決である。
序盤は試合は全く落ち着かなかった。立ち上がりから6分でファウルは8回。この数字だけでピッチ上のバタバタ感が伝わってくるようである。試合はどちらのものともいえなかった。どちらかと言えば、これに困ったのはペルーだろう。グループステージの4-2-3-1から変更した4-1-4-1の形は彼らの得意な保持にやや傾倒したフォーメーションだろう。彼らは保持の時間を長くして、試合の展開を落ち着かせたかったはずだ。
それが叶わなくておいしかったパラグアイが先制。セットプレーから高さのミスマッチを利用して叩きこむ。落ち着かない展開の中で試合の主導権もなんとか握っていたといっていいだろう。特に刺さったのはカルドソ・ルセーナとビジャサンティのCHコンビの防波堤。ここがボール回収の起点となり、ショートカウンターの発動元となる。保持の部分でもサンチェスが中盤に下がり、安定化を図るパラグアイだった。
一方のペルーもパラグアイの中盤の防波堤さえ越えればチャンスは引き寄せられていた。頻度こそ少ないものの、サイドから突破したカリージョからラパドゥーラの得点で追いつく。ペルーの真骨頂だったのは2点目。縦に間を揺さぶりながら、間受けで楔を引き出しパスをつないだビューティフルゴール。彼らの良さが詰まった逆転弾となった。
いいスタートを切ったものの、逆転まで許してしまったパラグアイ。前半終了間際にはきわどい判定でゴメスがレッドカードを受けるなど、やや恵まれない形で前半を終える。
後半は割り切ったパラグアイがショートパスとロングパスを織り交ぜながらガンガン前進。振り切った形でぺルーに圧力をかけていく。すると、前半と同じくセットプレーから同点。パラグアイ、これくらいできるなら11人の時からやればよかったのにな。
数的優位を得たペルーは2トップに切り替えて前線の枚数を増やす。しかし、これが逆効果。間受けのパスのつなぎの連続が見られなくなり、持ち味であるショートパスでの崩しが見られなくなってしまう。サッカーって難しいね。
パラグアイの猛攻も落ち着き、互角の展開になった後半で得点を得たのはペルー。リフレクションというやや幸運な形で勝ち越し点をゲットする。これで10人相手に逃げ切れると思いきや、85分にカリージョが退場してペルーも10人に。割り切って2トップにして放り込みを始めるパラグアイに主導権が移る。
同点ゴールとなるロングボールを落として粘ったサムディオの投入は効いた。サムディオの落としを受けたサイドは直前にカリージョが退場しているサイド。こういう因果はあるあるである。
10人同士の3-3という死闘で迎えたPK戦。互いに決まらないヒリヒリする展開が続く中で勝利したのはペルー。展開が二転三転する難しい試合を制し、ベスト8に進出した。
試合結果
ペルー 3-3(PK:4-3) パラグアイ
エスタディオ・オリンピコ・ペドロ・ルドビコ
【得点者】
PER:21′ ゴメス(OG),40′ ラパドゥーラ,80‘ ジョトゥン
PAR:11′ ゴメス, 54’ アロンソ, 90‘ アバロス
主審:エステバン・オストジッチ
②ブラジル×チリ
■10人でなお高い壁
絶対王者ブラジルに挑戦するのはA組4位のチリ。グループステージではそこまで仕上がってる感じではなかったが、ノックアウトラウンドではさすがに上積みがあったように思えた。5-3-2のコンパクトなブロックを敷くことでブラジルを迎え撃つチリ。ローラインで待ち受けることでブラジルを跳ね返す場面もあれば、高い位置からプレスに出ていくことも。どちらにしても陣形の間延びは防がれており、コンパクトな状況でブラジルのポゼッションを苦しめていた。
ブラジルはネイマールがラインを落ちながら運ぶことで攻撃を前に進めてチャンスメイクをここまでしてきた。しかしながらこの試合ではチリのコンパクトな守備に対して、ネイマールが降りて受けるスペースがない。したがって、ブラジルの前進は超絶スーパーなつなぎが通らないと難しかった。例えばゲームメイカー型FWのフィルミーノの縦パスとか、サイドでの崩しとか。いずれもハードなパスを通すことでチリのプレスのつなぎ目を何とか破っていった形でゴールに迫るのである。
チリの攻撃は速攻では2トップが主体。ライン間で前を向くサンチェスからラインの後ろ側を取るラストパスが出てくるか、より体を張ることができるバルガスが入れ替わるようにして裏を狙うかである。
ゆっくりと迫る場合はWBを使ったサイドチェンジが主体。特に狙っていたのは相手のSBが裏を開けて飛び出してくること。特にブラジルの左のSBであるロディのところを狙い撃ち。食いつかせて裏を取ることで前進はできていた。だが、決定機にかけるブラジル。最後の防波堤である強力なCBコンビを越える術がない。
ジリジリした展開を解決して見せたのは後半早々の出来事。交代選手の貢献により均衡が破れた。勝利の立役者はルーカス・パケタ。チリのDFにヒビを入れることはできていた前半だったが、後半はパケタとネイマールのコンビでチリを中央からこじ開ける。
後半早々に得点をえたブラジルに予期しないトラブルがあったのはこの直後。ジェズスの一発退場で10人に。チリに押し込まれる展開になりながら、何とかしのぎ切る。チリは高さのあるプレアトンを入れたことで多少引いているブラジルを脅かすことはできてはいたが、好機は数えるほどだった。より目立ったのはブラジルの堅牢さ。そして数的不利な状況によるネイマールのボールをキープする力である。多分、チリからしたらめっちゃめんどくさいだろう。キープからのファウルを量産し、チリが一方的に攻撃する状況を作らせない。
4-4ブロックの堅さとネイマールが作り出した時間のおかげで10人のまま逃げ切ったブラジル。チリはグループステージとか異なる完成度まで仕上げてきたように思えたが、相手の壁は高かった。
試合結果
ブラジル 1-0 チリ
エスタディオ・ニウトン・サントス
【得点者】
BRA:46′ パケタ
主審:パトリシオ・ロースタウ
③ウルグアイ×コロンビア
■ウルグアイよりウルグアイ?
アルゼンチン、ブラジルの両雄へのチャレンジ権が欲しい両チーム。南米No.3を狙うウルグアイとコロンビアが準決勝進出を賭けて激突する。
様々なフォーメーションを試しているウルグアイがこの日取り組んだ形は4-3-1-2。スアレスとカバーニの素直な2トップで決戦に臨む。4-4-2型のコロンビアに対してアンカーからボールを入れて、1stプレスラインを突破。サイドに流れて受けるアンカーから片側を狙い撃ち。そのため、ウルグアイの選手たちは同サイドに集結。トップ下のデ・アラスカエタもボールサイドに流れる役割。前線の流動性の高さを活かして、奥行きを作り同サイドを攻め切るやり方を狙っていく。
しかし、ウルグアイは決め手不足。ソリッドな守備で自陣深くにブロックを敷くコロンビアに対して、同サイド打開の手法を見いだせずシュートまでたどり付くことができない。
一方のコロンビアはロングカウンター重視。狭いスペースで受けられるカルドナや大外でデュエルができるクアドラードが不在なため、やや縦に速い攻撃が多かった。撤退しながらSHが内に絞りつつ素早くFWにボールを預ける。ローラインからのこのボールのつなぎ方はどちらかと言えば往年のウルグアイと重なるスタイル。ウルグアイよりコロンビアの方がウルグアイっぽい戦いだった。
遅攻の際は左右に振りながらウルグアイの3センターをずらし、薄いサイドを作りながらクロスを上げる。しかし、ウルグアイのCBの水際で跳ね返す部分は健在。この部分はウルグアイの方がウルグアイである。
停滞気味だった前半に引き続き、後半も非常に堅い展開。決定機はほとんどなかった。コロンビアはトップ下に入ったムリエルがアンカー番に入ることで、ウルグアイのビルドアップのスピードを遅らせる。ウルグアイは前線の動きの鋭さはあるものの、ロングカウンターが刺さるほどの長い距離をやり切る馬力はやや落ちてしまった印象である。対するコロンビアも前半と同じく、相手を崩しきれないまま試合は終了する。
試合はPK戦に突入。GKの読みがさえていた両チームだが、キッカーのキックの威力が十分で方向が合ってても止められないシーンが多かった。だが、その中でもタイミングと強さがあってしまったウルグアイの2人がオスピナにばっちり止められて勝負あり。我慢比べとなった90分の末にPK戦を制したコロンビア。クアドラード不在の難局を乗り切り、見事準決勝進出を決めた。
試合結果
ウルグアイ 0-0(PK:2-4) コロンビア
エスタディオ・ニウトン・サントス
主審:ヘスス・ヒル・マンサーノ
④アルゼンチン×エクアドル
■大駒2枚が決め手
受けに回ったエクアドルの序盤戦を見れば失点は時間の問題のように思えた。深めの位置に構えるアルゼンチンは平常営業。ラウタロ・マルティネスを中心に裏を取る前線の動きと、メッシを中心とするライン間の動きのコンボでエクアドルを押し下げる。
前残りしたメッシに対して、エクアドルのプレゼントパスもあった。これはメッシが珍しくポストというお目こぼし。首の皮1枚でエクアドルは助かる。
すると20分くらいを境に徐々に流れが変わり始める。エクアドルは高い位置からのチェイスを開始。前線は押し上げながら組み合う形をとる。すると展開は徐々にイーブンに。エクアドルがマンマーク主体の動きからボールを途中で引っかけると、大外のプレシアード、エストゥピニャンの両SBが駆け上がりクロスを上げる。同時開催しているEUROでは香車型のSBやWBがブイブイ言わせているけど、彼らもその系譜に連なるSB。特にエストゥピニャンのクロスはエクアドルの攻撃の大きな柱となるパターンである。
これに合わせるエネル・バレンシアも優秀。エリア内に1人しかいないのに動き出しは完璧でクロスが合う場面が多かった。しかし、動きながらな分、精度が高いものが求められる。合わせるところでいっぱいのボールに厚くヘディングが当たらず、決定機が決まらない状況が数回あった。
すると、前半に試合を動かしたのはアルゼンチン。強気のハイラインを敷いたエクアドルに対して、ラウタロ・マルティネスが体を張り、メッシに落とす。スルーパスでGKの飛び出しを誘発すると、最後はデ・パウルが押し込み先制。苦しい展開の中でアルゼンチンが前に出る。
後半も人と人がバチバチぶつかり合う展開が続く。この試合は非常にファウルが多く、特に後半は試合が止まりがち。どちらも攻撃の機会はあったが、どちらの攻撃もぶつ切りな状態がダラっと続く展開になった。
この試合を決めたのはアルゼンチンの大駒2人。途中交代のディ・マリアは2点目のショートカウンターとなるボール奪取の起点と、3点目のキッカケとなるFKを誘発。大エースのメッシがこれを1ゴール、1アシストと得点に変えて試合は終了。ファウルで進まない試合を2人のスターが打開。一気に決着をつけたアルゼンチンが順当にベスト4に進んだ。
試合結果
アルゼンチン 3-0 エクアドル
エスタディオ・オリンピコ・ペドロ・ルドビコ
【得点者】
ARG:40′ デ・パウル, 84′ ラウタロ・マルティネス, 90+3′ メッシ
主審:ウィルトン・サンパイオ
準決勝以降はこっち!
おしまいじゃ!