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「伝統あるコテージでたくさんのはじめて」~2018.10.7 プレミアリーグ 第8節 フラム×アーセナル レビュー

スタメンはこちら。

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目次

【前半】
たくさんの今季初めて

 今季初の2トップ!カーディフ戦は攻撃時は4-4-2じゃない?って思っていたけど、ヒートマップ見たら思ったよりオーバメヤンはサイドに流れていたようだし、エメリ本人が「2トップ初めてだ!」って言ってたみたいなのでとにかく初めてなんだろう。守備ではオーバメヤンはサイドケアしていたし。アーセナルの2トップが今季初なら、非保持4-4-2ではない相手と戦うのも今季初。そして、そのフルハムも今季初の3バック導入らしい。フルハムは今季ここまで失点がリーグワースト、CSなしなので守備の修正か、あるいかアーセナルの対策を打ってきたということだろう。

 立ち上がりは割と不思議な感じ。フルハムは3トップ+クリスティでアーセナルを前がかりに抑えにきた。トレイラ+ジャカにもアンギサとセリがマークに行くことで積極的な前プレを敢行。

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 ただ、1人1人のマークマンとの距離感が遠い上に連携がイマイチで、アーセナルとしては1stプレスの回避はそこまで苦労しなかった。具体的には最終ラインに降りてくるボランチの動きとイウォビのサポートでギャップを作っていた。アーセナルは個々人間の距離が遠いパスを使っていたのも、フルハムがプレスで捕まえきれなかった要因の一つかもしれない。最終ラインからのロングキックと併用してうまくプレスを回避していた。

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 では、プレスを回避したアーセナルがうまくいっていたかというと微妙。その先の段階でミスが頻発したからだ。ベジェリンのミスはちょっとヒヤッとした。ちゃんとやれ。前プレを敢行するが、そこまでいい形で奪えないフルハムと、プレスを回避できるけどミスで続かないアーセナル。どっちがうまくいってないようにも見えるが、後半を考えるときつかったのはフルハムということになるだろう。

 いつものアーセナルよりも縦に速い印象だったのはエジルがいないからか、それともフルハムのプレス網に穴があったからそこを突きたかったのか。縦には早いけどミスが多いため、フルハムがボール保持をする局面はそこまで少なくはなかった。後ろは3枚でアーセナルの2トップに対して数的優位を作る。前のシャドーは中に絞って、大外はWBに任せる形が多かったか。ロングボールはそこまで多くはない。ミトロビッチのところでもう少し押し上げを図りたかったところだが、そこまでうまくいかなかった。
アーセナルの2トップは前プレをはめる場面こそ多くなかったものの、プレスバックで大いに貢献。時には最終ライン付近まで戻っており、今季ここまでの2トップの組み合わせとしてはトップクラスに守備で機能していたように思う。そしてトランジッションが多い試合で絶大な貢献を果たしたのはルーカス・トレイラ。今までのアーセナルならば後手に回りやすい展開で、比較的優勢に試合を進められたのは、2トップに加えて彼の貢献によるところが大きい。4-4-2による改善というよりは、属人的なものだろう。

 2人のサイドハーフが広範囲にわたって貢献していたのも印象的だ。1点目のシーンでラカゼットの落としのセカンドボールを拾ったのはムヒタリアン。逆サイドのイウォビとともに、組み立てとチャンスメイク両面で貢献できていた。それにしてもラカゼットのゴールはエクセレント。反転で相手の逆を突く素晴らしいアイデアだった。

【前半】-(2)
達成できなかった「今季初」

 たくさんのはじめてがあると紹介したこの試合。フルハムのクリーンシートだけでなく、アーセナルのほうにも達成できなかった記録がある。今季のアーセナルはここまで一度もリードで前半を折り返していないらしい。この試合の展開はこの「はじめて」も達成できそうだったのだが、ハーフタイム直前で水泡に帰す。ロングボールでの前進はうまくいく一方で、徐々に最終ラインのパス回しはフルハムにつかまりだす。42分のホールディングのパスが通らなかったシーンは失点の前兆だった感もある。最終ラインの判断が怪しかったのは失点シーンも全く同じ。

 ホールディングからパスを受けたモンレアル。この時点ではセンターサークル付近のイウォビには縦パスが入りそうだし、ウェルベックやラカゼットに向けてロングボールをける余裕もありそうだ。まずかったのはこのノックオンの判断だろう。一番近いジャカへのパスコースが作りづらい方向な上に、縦方向には敵が蓋をしている。袋小路に飛び込むようなプレーだった。

 モンレアルがボールに追いついた時にはもうパスコースはない。ジャカがパスコースを作れなかったという見方も可能だが、モンレアルがパスコースを作りにくいプレー選択をしたのも確かだろう。

 ちなみにここからのカウンターは見事でアーセナルとしては打つ手なし。アンギサのボール奪取からビエット、シュールレまでがそれぞれの役割を正確に果たした格好だ。中でもアンギサのスイッチを入れるパスは素晴らしく、判断能力の向上があれば、高い技術でもう一段上のプレイヤーになれることを予感させたシーンだった。

【後半】
回ってきた前半のツケ

 徐々に前プレをはめて来ることで前半に同点に追いついたフルハムだったが、気になったのは2つ。無駄になったプレスもたくさんやった前線の体力と押し上げているバックラインのスピードの無さである。結論から述べれば、この2つの懸念はともに当たってしまうことになる。

 まず、スピードで後手を踏んでいると感じたのはオドイとイウォビのマッチアップ。得点の前のベジェリンのミドルの引き金になったのも、ここのマッチアップ起因。2点目のラカゼットのゴールはスピード不足というよりはシュートの質とタイミングをほめるべきだろうが、これ以降はよりフルハムのWBの位置が高くなったため、裏をつけるスペースは増えた形になる。

 61分のシーンのようにWBのサイド攻略からシュートに持ち込めるシーンは散見されたが、局面としては決定づくりの質に問題を抱えていたか。20本を超えるシュートでゴール期待値(xG)が2を超えないのは、少し単調なシュートを繰り返した部分もあるかもしれない。

 というわけで3点目から5点目は前がかりになったフルハムのバックラインを攻略。3点目のシーンとしてはアーセナルファンによる、アーセナルファンのための動画として、こちらの素晴らしいツイートを見ていただければと思います。

 エメリがどこまでスカウティングしていたかはわからないが、重心が前に行っているフルハムとしては、元気いっぱいのオーバメヤンとラムジーはかなりハードモード。アーセナルがこの日達成した最後の「はじめて」はこの2人がともにゴールとアシストを決めたこと。交代選手2名がゴールとアシストを決めることはプレミア史上初めてのことらしい。

今節もゴール期待値話

 快勝!っていう印象が強い試合だが、またしてもxGでは負けていますよと。

 2点目以降のゴールはほとんど0.1を切るようなxGであり、引き続きFWが難しい仕事をこなしていることを示唆している。ちなみにもう1つ、放ったシュートがどこに飛んだかによって導き出したxG(Post-shot xG)というのもあるらしい。

 これだとアーセナルが大幅にフルハムを上回っており、実際のスコアに近い数値となっている。こちらもアーセナルのフィニッシャーが、難しいシュート機会をいかに活かしているかを示している指標になっているのではないか。

まとめ

 フルハムは志向するスタイルは見えていたものの、もう少しボール保持の時間を長くするための方策が必要だろうか。プレスの練度とか。前線の技術はあっても、それを生かす時間は短く、ほかの部分にガソリンを使ってしまった印象だ。今日の3トップをはじめ、攻撃面でのタレントはそろっているためハマれば怖さはあるものの、解任→再構築となれば大幅なスタイル変更に時間を要する可能性も否定できない。補強にお金を使った分、残留は至上命題だろう。

 初めての偉業を達成したラムジーとオーバメヤンも素晴らしかったが、イウォビ、ムヒタリアン、ウェルベック、ラカゼットのユニットが、ここまでアーセナルが見せてきたスタイルと異なる形で機能していたことも述べておきたい。エジル不在時のソリューションとして、有用なものになる可能性が大いにあることを示したし、この日ベンチだったオーバメヤンもこのやり方には問題なく適応できそうだ。
ELとプレミアを通して、引き出しの多さを見せてきたエメリ。次に気になるのは各プランの熟成度だろう。その部分が試されるのはいつになるだろうか。

 この試合とは関係ない話を最後に。クレイブン・コテージは実に趣があるスタジアムだ。死ぬまでに試合を観戦してみたいスタジアムの1つである。外までは行ったことあるのだが、見学は許可がもらえなかった。次のロンドンの訪問はコテージでの試合が見れる日を選ぼうかな。その日まで、このスタジアムが古き良きイングランドの香りを漂わせるスタイルを維持し続けることを祈って、レビューを締めくくりたい。

試合結果
2018/10/7
プレミアリーグ 第8節
フルハム1-5アーセナル
クレイブン・コテージ
得点者
FUL:44’ シュールレ
ARS:29′ 49’ラカゼット, 67′ ラムジー, 79′ 91′ オーバメヤン
主審:ポール・ティアニー

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