Fixture
プレミアリーグ 第30節
2021.4.3
アーセナル(9位/12勝6分11敗/勝ち点42/得点40 失点32)
×
リバプール(7位/13勝7分9敗/勝ち点46/得点48 失点36)
@エミレーツ・スタジアム
戦績
近年の対戦成績
2016年以降の対戦でアーセナルの3勝、リバプールの7勝、引き分けが3つ。
アーセナルホームでの対戦成績
直近10戦でアーセナルの4勝、リバプールの2勝、引き分けが4つ。
Head-to-head from BBC sport
・リバプールはアーセナルホームでのプレミアの試合において直近20試合で2勝のみ(D9,L9)。2011年8月の2-0と2016年8月の4-3。
・両軍合わせて166得点でプレミアでもっともゴールが決まるカード。
・直近のエミレーツでのリーグ戦はアーセナルが勝利。2015年以来のホームでのリバプール戦連勝を狙う。
スカッド情報
【Arsenal】
・ブカヨ・サカとエミール・スミス=ロウは当日判断。
・ふくらはぎの負傷だったウィリアンは復帰の見込み。
【Liverpool】
・ロベルト・フィルミーノは膝の負傷から復帰予定。
・ジョーダン・ヘンダーソン、ジョー・ゴメス、ジョエル・マティプ、ヴィルヒル・ファン=ダイクは長期離脱中。
Match facts from BBC sport
【Arsenal】
・直近8試合のプレミアのホームゲームで1敗だけ(W4,D3)
・開幕直後のウェストハム&シェフィールド・ユナイテッド戦以来のホーム連勝を狙う。
・プレミアの無得点は10試合。05-06に記録した1シーズンの最多記録まであと1つ。
・アレクサンドル・ラカゼットは直近3試合の先発したプレミアのリバプール戦でいずれも得点をしている。
・ピエール=エメリク・オーバメヤンはリバプール相手に5戦で得点なし。枠内シュートはわずか1本。
【Liverpool】
・プレミアでのアウェイゲームは直近6戦で5勝。唯一敗れたのはレスターとの一戦。
・プレミアでの直近5勝はいずれもアウェイで挙げたもの。アウェイでの勝利が6つ続いた1955年以来の記録。
・ロンドンでの試合は5戦4勝1分。5勝すれば89-90以来。
・直近100試合の先制したプレミアの試合で敗れたのは1つだけ。しかし、そのうちの1つは昨季のアーセナル戦での2-1の敗戦。
・サディオ・マネはアーセナル相手に7得点。これより多く得点を挙げている相手はクリスタルパレスだけ。
・ジェームズ・ミルナーが交代出場すればプレミアで159回目の交代出場。ピーター・クラウチを超えた新記録達成となる。
予想スタメン
展望
■リバプールの不振の原因は
1年前に『来年のこの時期にはアーセナルとリバプールの勝ち点差は4しかない』といわれたとしたら、アーセナルファンは天にも昇る気持ちだったに違いない。なにせ昨年同時期における両チームの勝ち点差は42。独走するリバプールにアーセナルだけでなく他のチームも全くついていけなかった。もしかすると優勝も射程圏内で終盤戦を迎えているかもしれないと期待に胸を膨らませて2021年の4月を待ちわびることだろう。
しかし、現実ではアーセナルの勝ち点は昨年同時期と比べてわずか2ポイントの上積み。20-21シーズンのアーセナルの優勝は数字的にも不可能になったところである。そう、その分リバプールが昨年比で大きく勝ち点を落としているということである。
ではリバプールが苦しんでいる原因はどこか。リバプールファンにはかなわないかもしれないが、プレミアリーグ全部見るマンとしてやってきている自分なりに彼らの不振の原因を探りたいと思う。
真っ先に挙げられそうなのはファン・ダイクの長期離脱である。第4節のマージ―サイドダービーでの接触で大けがをして以降復帰のメドはたっていない。そしてそれを皮切りにゴメス、マティプと続々とCBが離脱してしまったのはクロップにとって大きな誤算だったのは間違いない。
そんな中で何とかなったのはやはりアリソンの存在が大きいだろう。確かにシティ戦やレスター戦あたりでは数試合ミスが続く流れはあったものの、基本的にはハイパフォーマンスを継続しているといっていいだろう。
冬にやってきたカバクのフィットも徐々に進んでいる。本職不在のさなか離脱したりしなかったりしながら最終ラインを支え続けていたファビーニョやヘンダーソンも含めて、CBはメンバーの割にはよくやっているといっていいだろう。
■結局歪みの根源は
むしろ、ファビーニョやヘンダーソンがいなくなってしまったことで副次的に影響が出たのは中盤の人員構成の部分。彼らが中盤にいないことで攻守の強度はどうしても落ちてしまう。
ワイナルドゥムをアンカーに起用しなくてはいけなかったのはその最たる例だろう。広い行動範囲もダイナミックな攻撃参加もアンカーのポジションから発揮するのは難しい。
そしてチアゴのキャラクター。前へのプレッシングはバイエルン時代も難なくこなしていたが、背走させられたりブロック守備の時間が長くなると怪しさが出てくる。攻撃のテンポの部分におけるフィットが指摘されがちだが、むしろチームとしての支配力が落ちたことにより非保持におけるいい面が出てきにくくなったことが個人的には問題のように思える。
オックスレイド=チェンバレンもシャキリも守備面における難はある。一時期攻守に猛威を振るっていたカーティス・ジョーンズは序列が下がってしまった。ミルナーは悪くないが、ケイタは怪我がちでフィットが進まず。ファビーニョとヘンダーソンが中盤にいないことでどうしても歪みが出ている感は否めない。
中盤の守備において気になる点は間延びだ。特にシティ戦以降はこの傾向が顕著。ライプツィヒ戦などファビーニョがアンカー、ワイナルドゥムがインサイドハーフに入った試合などはいくばくかは耐久性は上がるが、中盤の歪みの不安定さが完全に解消されているわけではない。
ただ、ファビーニョの中盤帰還においてそれ以上に気になるのは攻撃の部分。昨季のリバプールのいい時はSB、IH、WGがポジションを入れ替えながら旋回することで非保持側が戸惑ってしまう状況が頻発した。
だが、今季は大外はSBでWGが内側に絞ることが多く、内外のレーンの入れ替えが少ない。なのでWGが横に動く頻度が下がってしまう。特にマネはもう少し幅広く動ける役割の方があっていそう。結局前線の動きはジョタやサラーなどオフザボールの動き出しの鋭さに頼りがちになる。
厄介なのはこの動き出ししかり、大外からのSBのクロスしかり全く持ってダメではないということ。FWの動き出しもSBのクロス精度もポテンシャルを考えればトップクラスでそういった割り切り方が間違いかといわれると必ずしもそうでもない。例えばライプツィヒとのCLはホーム、アウェイに関わらずFWの動き出しからのカウンターで試合を決定づけた。ただ、アレクサンダー=アーノルドのアシスト数がかなり落ちているところを見ると、高さのないリバプールのボックスに大外からピンポイントで合わせる難しさは感じられる。
こういう状況でなおサイドに旋回の頻度が少ないのはIHの行動範囲の狭さに拠るところが大きいのかな?と思っていた。だが、行動範囲は申し分のないワイナルドゥムが中盤に入っても目立った改善の跡はまだ見られない。
ここからは仮説なのだが、おそらく旋回や攻撃時の位置移動が少なめなのは、バックスへの負荷を下げるためではないだろうか。攻撃時のある程度の自由度が許されるのはファン・ダイクをはじめとするバックスへの非常に高い信頼度があるからである。彼らが跳ね返すからガンガン攻めることができる。
カバクは悪くないが、まだプレミアにやってきて3カ月もたっていないCBにすべてを託すのはさすがに無理がある。シティもディアスがいなくなったらどうなる?という部分もあるし、結局ファン・ダイクの離脱はあらゆるところに歪みをもたらしているように見える。
■ロンドンダービーを教訓にできるか
さて、ここからはアーセナルが勝つにはどうしたらいいか。当然SBの裏は狙う必要はあり。長いボールを蹴りだしてよーいドン!も悪くはないはずである。
ただ、先ほども述べたようにリバプールのIHのプレスにおける判断が悪く間延びする頻度は割と高い。ウーデゴールやラカゼットなど背負える選手が増えたアーセナルはファビーニョをつり出すことが出来れば中央に起点を作ることが出来る。やはり彼がいると中盤の強度はワンランクあがる。まずはファビーニョをどうコントロールしながら中央に起点を作れるかどうかは試合の展開を左右しそうだ。
アーセナルは安全志向でサイドから攻めていくやり方も当然活用していきたいが、ゴールへの最短ルートである中央での攻略でどこまで行けるか。ここで目途が立てばウェストハム戦のように好機を量産できる可能性もなくはない。
リバプールの攻撃においてはまずはSBのクロスへの対応。特にファーサイドへの対応は警戒が必要。精度は高いので、ファーへのマークを外してしまえば当然失点の危機はある。後は中盤のスライドも同様。スライドしつつも脱出を許し、バイタルが空いてしまえばミドルの格好の餌食になる。
要はこちらもウェストハム戦の教訓。こちらは繰り返してはいけないよ!案件だけど。
フィルミーノが復帰をするならバイタルへの警戒度はなおさら引き上げる必要がある。逆に奥行きを使わせなければカウンターのスイッチの入れどころになる。
年間を通して負傷者に苦しんだリバプール。珍しく負傷者には祟られなかったシーズンにも関わらず、順位が上がってこないアーセナルの意地を見たいところだが。