スタメンはこちら。
【前半】
ハードな4-4-2に苦慮
今日も今日とて4-4-2が相手のアーセナル。4-4-2以外と当たったらどうなるんだ。
ワトフォードが6試合で稼いだ勝ち点は13。これはクラブ記録の好スタートらしい。直近2試合は勝っていないとはいえ、好調なスタートと言っていいだろう。
噛み合う陣形でスタートした両チーム。トレイラとジャカにもしっかりキャプーとドゥクレがついてくる。ワトフォードもビルドアップは似たような形だ。中盤1枚プラスCB2枚。ただし、アーセナルのボランチはそこまでは追っかけていなかった。とはいえ両チームとも試合を通じてのんびりとビルドアップする場面はあまり多くなかった。
アーセナルで気になったのは、今季ここまで見られていたビルドアップに微妙な変化が見えていたこと。割と我慢してつないでいたアーセナルだったが、この試合は割と蹴っ飛ばしていたし、CBもそこまで開かなかったし、前半は組み立ての局面においてはSBもそこまで高い位置を取ることは多くなかった。最終ラインでボールを持てる局面でも、裏へのロングボールで前線を走らせるケースがよく見られた。
理由をいくつか考えると
・トレイラが安定してて、中央から組み立てが問題なくできるから。
・前残りするディーニーをCB2人で捕まえたいから。
・単純に押し込まれているうえに、押し上げる時間を作れないだけ。
など?1つ目の理由は微妙。トレイラは安定しているが中央からはビルドアップで侵攻できなかったし。ボール持てるときも蹴り飛ばしてるし。
というわけで僕は2つ目か3つ目のどっちかかなと思ってます。
もし、ほかに思いついた人いれば、リプやコメントでご提案お待ちしております。
それでもアーセナルが前進できた局面はサイドバック経由が主。中央にいるボランチからサイドに展開する形で、サイドバックにおまかせ!という感じであった。それ以外の局面では縦に速い展開を選択することが多かった。なので収まらないし前進できない、でも変なロストはしなかったからピンチも少なかった!っていう前半。
対するワトフォードはサイドを攻略しつつ、最終的には2トップめがけてロングボールの形が主。こちらも前進はうまくいくものの、最後の最後のクロスの部分で精度が足りない!といった形で、決定機を作るまでにはいかなかった。
アーセナルが守備に回った時に気になった場面は左サイドの守備だ。28分の場面。左サイドのフォローに行ったのはトレイラ。大外に展開。ボールホルダーが前を向くと縦方向にはフリーの選手が一人。ホールディングが2人を見る形になる。ボールは縦に出てボール後方のワトフォードの選手がこの後フォローに。
2人がフリーで抜けた形。中央の選択肢はそれほど制限されていない。ベジェリンがエリア中央におり、逆サイドはフリーになっている。
この局面ではトレイラ、モンレアル、オーバメヤンが3対3を形成している。しかし最終的には2人をフリーにして抜け出させている。サイドハーフを含めたトライアングルの守備の連係が未整備であることを露呈したシーンである。
【後半】
途中交代選手が躍動した両チーム
ゴール期待値(ExpG)という指標がある。簡単に言えば、試合の展開から両チームにそれぞれどれだけの得点が割り出せるかを示す指標である。
レビューを書きはじめて1か月半。気づいたことは「大事なことや書きたいことはほとんど前半に発生している」ということ。自分が単純に後半に起きている現象をとらえきれていないだけかもしれないけども。
いつかは「前半に書くことがねぇ!」ってなる試合が出てくるかもしれない!って思ったけど、この試合がまさにそうだった。両チームのゴール期待値はともに0.5を下回っていて、ExpGに従えばスコアレスという結果は妥当。スコアレスでも見るべき部分がある試合もあるが、この試合では両チームともそこまで特別なことはしていなかった印象だ。アーセナルのExpGのほとんどはラカゼットが単騎プレスでチップシュートを仕留められなかったあのシーンによるものであった。
後半は前半に比べればとてもオープンな展開になった。すなわち、ゴール期待値が両チームとも上昇していく展開になる。
初めにExpGを稼いだのはワトフォード。ホレバスのフリーキックからの決定的な場面。ワトフォードが稼いだExpGをスコアに反映させなかったのは、負傷交代したチェフに代わって出てきたレノの好セーブである。
対するアーセナル。53分の場面では機能した左サイドの守備からのカウンター。ボール奪取したトレイラのパスもそれを受けたオーバメヤンのクロスも少しずつずれてしまい、最後のシュートの質が上がらなかった状況だ。
そんな中で脅威になったのは交代で入った選手たちだ。ワトフォードのサクセスはスピード感あふれるプレーでアーセナルの最終ラインを苦しめた。75分の決定機はぜひとも決めたかった場面。それにしてもディーニーはできる仕事の幅が広い。完璧なお膳立て言っていいスルーパスだった。
交代選手が躍動したのはアーセナルも同じだ。この日は局面に顔を出す機会が少なかったラムジーに代えて入ったイウォビはサイドを活性化、カウンターのスピードと精度をチームに与え、2得点の原動力になった。2点目の起点となる体を張ったディフェンスを見せたのは同じく途中交代で入ったウェルベック。カップ戦の好調をキープしている格好だろう。
ExpG的な考察
この試合の最終的なExpGはアーセナルが1.61、ワトフォードが2.83。つまり、ExpGでいえば勝者にふさわしかったのはワトフォード。実際に枠内シュートもワトフォードが上回っている。決定機の数も53分のディーニー、75分のサクセス、90分のドゥクレなどワトフォードには記憶に残る場面がいくつかあるのに対し、アーセナルは2点目の場面くらいしか思いつかない。
そしてExpGに関する数値が悪いのはこの試合に限ったことではない。
7節終了時点でのExpGに基づいた順位表によれば、アーセナルは実際は7試合で7ポイントしか稼げておらず、8ポイント分はExpGを覆して勝ち点を得ている。
今季のアーセナルはPA内に人数はかけるが、手数はかけないのが特徴。相手エリアに押し込んでからは、コンビネーションよりもスピードアップして一気に崩していく場面がヴェンゲル時代よりも増えた。崩しの局面の質ではあまりいい形を作れなくてもダイレクトにPA内にボールを入れていく形を志向しているイメージだろうか。
ExpGの数値が思わしくなくても連勝を重ねられているのは、多少アバウトでも、ラカゼットをはじめとしてオフェンス陣がエリア内での質の高さを見せられているからこそだろう。前節のエバートン戦でのラカゼットのゴール場面はExpGはわずか0.06だったという。
攻の主役がラカゼットなら、守の主役はGKだろう。チェフ、そして今日のレノもいくつかの決定的なセーブを見せて勝ち点獲得に貢献しているのはExpGからも明らかだ。
まとめ
紙一重の試合だった。前半から落ち着いた形の展開は少なく、後半もカウンターの応酬となった。ロングカウンターの質が高かったのはワトフォードだが、最後の仕上げで上回ったのがアーセナルだった。
リーグ戦5連勝はもちろん素晴らしいことだが、攻守において内容が伴い切らないのも事実。そんな中でここまで出番が限定的だったレノ、ホールディング、イウォビが存在感を見せているのは好材料だろう。特にイウォビは自分たちの時間を作り出すための交代カードとして貴重な戦力になるだろう。覚醒の期待が高まる今シーズン。必要なのは継続性だ。
試合結果
2018/9/29
プレミアリーグ 第7節
アーセナル2-0ワトフォード
エミレーツ・スタジアム
得点者 ARS:81′ OG, 83′ エジル
主審:アンソニー・テイラー