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「Catch up Premier League」~Match week 38~ 2024.5.19

目次

リバプール【3位】×ウォルバーハンプトン【13位】

歴史の一ページは穏やかに

 シティとアーセナルの優勝争いがプレミアリーグに新しい歴史の一ページを刻んでいる最終節。アンフィールドではまた異なる歴史の一ページが彩られる日である。

 万雷の「You`ll never walk alone」がクロップに贈られたところから始まった立ち上がり。ウルブスの5-4-1に対して、リバプールがボールを一方的に持つスタートとなった。アンカーの遠藤のパートナーは降りてくるマック=アリスター、絞るアレクサンダー=アーノルドなど多様。ポジションを変えながら後方の陣形を変えていく。

 インサイドではディアス、ガクポ、エリオットがレシーバーに。先に挙げた3人とともにインサイドとのパス交換から中央をこじ開けにいく。

 サイドの攻撃は非常にシンプル。右サイドはサラーの仕掛けから、左サイドはトライアングルから押し下げての速いクロスの折り返しからチャンスを作っていく。左サイドでロバートソンが抜け出して折り返すまでのメカニズムはなかなかにスムーズになってきたように思う。

 ウルブスはボールを持つと、ショートパスから相手を動かしていく。ロングカウンターをたまに織り交ぜつつ、インサイドではボールをキープしながらポイントを作り、近い距離でのパス交換を行っていく。体を張るベルガルドやクーニャ、狭いスペースに切り込むようにドリブルを行っていくアイト=ヌーリなどはかなりショートパスから勝負をしたそうだった。

 しかし、攻め方を探るウルブスに暗雲。セメドが一発退場により数的不利に陥る。これを機と見たリバプールは敵陣に一気に侵攻。ウルブスの3-4-2に対して、左右に動かしながら押し下げつつクロスからマック=アリスターが先制点をゲット。クロスに入ってきた10番に対して、ブエノのアプローチは遅れてしまう。

 さらにはセットプレーから追加点。クアンザーがゴールを叩き込み、試合はリバプールがセーフティリードをキープしてハーフタイムを迎える。

 後半、リバプールの保持がベースでスタート。ウルブスは10人になっても保持時に繋ぎたい意思は変わらず、個人個人のポストから時間を作り出そうとする試みをする。

 しかしながら、リバプールはこのウルブスのパス回しを捕まえるとそこから一気にカウンター。後半の早い時間にディアスが決定機を迎えるが、シュートをネットに揺らすことができない。

 ただ、後半はそうした更なるゴールよりもクロップとの最後の時間を楽しむ方が先決。交代のたびにクロップとハグを交わすリバプールの選手たちをウルブスの選手たちが邪魔をすることはなかった。後半ATにサラーには更なるゴールの可能性があったが、コントロールが乱れてしまったのがご愛嬌。恩師に最後にゴールをプレゼントすることはできなかった。

 長らくアンフィールドを熱く激らせた名監督の最後は非常に穏やか。アンフィールドの観客から与えられた愛をクロップはしっかりと受け止めたことだろう。

ひとこと

 この90分を噛み締めるように過ごしていたリバプールの選手たちの姿が印象的だった。

試合結果

2024.5.19
プレミアリーグ 第38節
リバプール 2-0 ウォルバーハンプトン
アンフィールド
【得点者】
LIV:34′ マック=アリスター, 40′ クアンサー
主審:クリス・カバナフ

シェフィールド・ユナイテッド【20位】×トッテナム【5位】

「いつもの」ブレイズを蹂躙したトッテナムが5位を確保

 終盤はだいぶ負けが込んでしまい、CL出場権を手にすることができなかったトッテナム。負ければ6位転落の可能性もあるため、ここはきっちりと降格が決まっているブレイズを叩きたいところである。

 いつも通り、元気な入りを見せたのはブレイズ。高い位置からプレスをかけて、トッテナムのミスを誘発しようとする。お望み通りのミスをドラグシンがしたおかげで決定機が転がってきたが、これはブレアトンが外してしまい、ゴールを掴むことができない。

 もっとも、正面からぶつかってもらうことは特にトッテナムにとっては悪いことではない。こちらもマンツー気味に前から相手を捕まえにいく意識は上々。オープンな展開は望むところであった。

 そうした状況の中で先制点を決めたのはトッテナム。左サイドのファン・デ・フェンのボール奪取から一気に縦に進むと、ここからクルゼフスキが決めて先制点をゲット。うまく行っても、あっさりとへし折られてしまうのは今にも今季のブレイズといった感じである。

 一度劣勢に追い込まれると一気に苦しくなってしまうのがブレイズ。ピンポイントで通ったフォデリンガムのフィードを除けば、なかなか前線にボールを届けることができない。基本的にはアバウトなボールを裏のブレアトンまで向かわせて、トッテナムの守備陣のミスが出るのを待つ展開が続く。

 先制点以降は一方的にボールを持つことになったトッテナム。時折見せる保持での不安定さは気がかりではあるが、それ以外はペースを握ったままハーフタイムを迎えることとなった。

 後半も保持ベースで試合を運ぶトッテナム。GKのヴィカーリオをビルドアップに組み込み、左右にボールを動かしながら広く広く相手の攻め手を作っていく。

 サイド攻略を順調に進めていくトッテナム。フォデリンガムのファインセーブなどブレイズも抵抗を見せたが、最後はシュートラッシュをポロが仕留めて勝ち越しゴールを生み出すことに成功する。

 さらには左サイドの侵入からチャンスを作るトッテナムはクルゼフスキがこの日2つ目のゴールを決める。これで試合は完全に決着することとなる。

 最後まで初手以上の攻め手が見つからないという課題は抜けなかったブレイズ。トッテナムも最後の1-2ヶ月は非常に苦しい戦いになったが、まずはこういうサッカーをやりたいんだよという提示はできた1年間になったのではないだろうか。方向性の提示は重要である。

ひとこと

 トッテナムはこれで5位が確定。来季の欧州カップ戦に向けてスカッドの厚みを強化できるかは重要なポイントになるだろう。。

試合結果

2024.5.19
プレミアリーグ 第38節
シェフィールド・ユナイテッド 0-3 トッテナム
ブラモール・レーン
【得点者】
TOT:14‘ 65′ クルゼフスキ, 59′ ポロ
主審:アンディ・マドレー

ルートン・タウン【18位】×フラム【14位】

ケニルワース・ロードにしばしのお別れ

 残留がほぼ断たれてしまったルートン。迎えた最終節はわずかな可能性に賭けるというピリピリしたムードというよりは運命が決まってしまっていた両チームの牧歌的な一戦という空気だった。

 運命が決まったとしてもルートンの装いはいつも通り。バックラインに対して強気なプレスで出ていくスタートとなった。フラムはパリーニャ、イウォビがラインを下げてボールを受けて左右に散らすことでルートンのハイプレスを鎮静化。プレスに動じずに落ち着いているのはさすがである。

 プレスで主導権を握ることができなかったルートンだが、保持で勝負ができるのがこの日の強み。中盤ではロコンガが散らせるし、サイドからは大外からのダウティーのクロス。そして、インサイドにはアデバヨをはじめとして迫力は十分。ロコンガからの大きな展開にダウティーが合わせて橋岡が決定機を掴むなど、押し込む相手に対してガンガン攻め込むことができる点は負傷者で首が回らなかったこれまでのチームと比べるとクオリティは高まっている。

 イウォビが出てきたところからズラすポゼッションなども披露しており、保持時のバリエーションは豊富。20分を境に徐々に主導権を握っていく。

 押し込まれる頻度が増えたフラムは徐々に一発で背後を狙う形を作っていく。この形からフラムは先制。ウィルソン→トラオレのパスからフラムが先制点を決める。橋岡はトラオレに対する寄せが苦しくなってしまった。

 このゴールを皮切りに両チームとも終盤にかけてゴールラッシュ。ロングボール一発から粘ったオグベネがPKを獲得し、モリスが仕留めてルートンが追いつくが、またしてもウィルソンからのチャンスメイクでヒメネスがゴールを決めてフラムがリードでハーフタイムを迎えることとなった。

 後半の頭、セットプレーからフラムがゴールをゲット。またしても橋岡がラインを下げるタイミングが速くなってしまい、ヒメネス相手にオフサイドを取ることができなかった。

 一方のルートンもダウティーが直接FKを決めてダイレクトにゴールを決める。ニアのロビンソンがクリアできなかったのが痛恨だったか。

 この2つのゴール以降は互いにゴール前にひたすらボールを送り込みながらチャンスを作り合う展開。そうした中で輝くのがこの日のウィルソン。遅れて入ったところからミドルシュートを決めて試合の大勢を決める。

 ルートンはGKを交代。シェアを投入して残りの15分を過ごす。ケアニーのミドルや背後のケアなど存在感を見せることにも成功。メモリアルな交代に見事に華を添えた。

 最終節も勝利を掴めなかったルートンだが、ケニルワース・ロードのファンは1年間のプレミアでの旅路を十分に楽しんだ様子。また彼らの姿がプレミアで見れる日を心待ちにしたい。

ひとこと

 ルートン、本当に負傷者がいなければなという終盤戦だった。

試合結果

2024.5.19
プレミアリーグ 第38節
ルートン・タウン 2-4 フラム
ケニルワース・ロード
【得点者】
LUT:45+1(PK) モリス, 55′ ダウティー
FUL:43′ トラオレ, 45+3′ 49′ ヒメネス, 69′ ウィルソン
主審:マット・ドナヒュー

ブライトン【10位】×マンチェスター・ユナイテッド【8位】

ホイルンドが起爆剤となりユナイテッドが最終節を制する

 デ・ゼルビのラストゲームとなるブライトン。最終節にホームに迎えるのはFAカップファイナルを控えており、これがまだシーズン最終ゲームではないマンチェスター・ユナイテッドである。

 どちらも立ち上がりから自陣からのビルドアップを行っていく両チーム。GKを絡めてのパスワークから相手を引きつけつつ前進を狙っていく。プレッシングという意味でより強気に出たのはブライトン。特に中盤よりも前の選手の降りるアクションに対しては積極的にプレスを仕掛けていく。

 それでも降りるアクションからショートパスへのこだわりを捨てないユナイテッド。自陣まで下がるガルナチョやサリーするアムラバトがすんなりフリーになれたのはいつもほどブライトンのマンツーが徹底していなかった証拠だろう。しかしながら、なかなか敵陣に攻め込むための決定的な手段が見つからないユナイテッド。繋ぐことが目的化してしまうというのは今季のチームの傾向でもある。

 一方のブライトンはバックスに枚数をかけてのビルドアップ。4バック+2CHの6枚を軸に自陣でのパス交換を行っていく。時折このビルドアップ隊から外れるのは左のSBであるバルコ。大外に立つバルコがユナイテッドの横方向にコンパクトな4-4-2を外から押し下げる存在。ブライトンは外循環から押し下げていく。

 ブライトンが優れていたのはインサイドに差し込むアクションを怠らなかったこと。間でスマートに受けるララーナと強引にキープするウェルベックによって起点を作ると、この落としを受けて推進力を得ることができていたのはジョアン・ペドロ。中央からの縦パスで一気に進むスタイルは従来のブライトンらしい形である。

 後半もブライトンがグロスを指揮官としてユナイテッドを内外の緩急をつけながら攻略するスタート。大外のモダーの折り返しを使った決定機はユナイテッドがゴールライン上でなんとかクリアして事なきを得る。

 ややダイナミック寄りな攻撃が続いていたユナイテッド。その方向性をより強めることになったのはブルーノに代わって登場したホイルンド。ポストや左右に流れるアクションから2列目のシュートチャンスをより多く創出。少ない手数でという展開にあったタスクもホイルンドは注文通りにこなして見せた。

 そして、そのホイルンドを活用したところからユナイテッドが先制。ホイルンドの影から出てきたダロトが一発で抜け出してついに試合を動かす。

 殊勲のホイルンドはその後もカウンターから自ら追加点を挙げて試合を決める。難しいシーズンとなったユナイテッドだったが、ホイルンドからのギアアップに成功し、シーズン最終節は敵地で完勝を遂げた。

ひとこと

 ララーナの交代シーンはかなりグッとくるものがあった。

試合結果

2024.5.19
プレミアリーグ 第38節
ブライトン 0-2 マンチェスター・ユナイテッド
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
Man Utd:73′ ダロト, 88′ ホイルンド
主審:クレイグ・ポーソン

マンチェスター・シティ【1位】×ウェストハム【9位】

プレッシャーは2分で解放、前人未到の4連覇達成

 鬼門となっていたトッテナムホームの試合を攻略し、ついに名実ともにテーブルの上に座ったシティ。タイトルレースの運転席は彼らのもの。エミレーツでの結果がどうなろうと、シティが勝てばアーセナルにはなす術がない。

 ウェストハムは集団感染症の噂が出回ったが、蓋を開けてみれば欠場者は扁桃炎となったボーウェンのみ。5-4-1のブロックを敷くというシティ対策をきっちり講じてエティハドに乗り込む。

 ということで一方的にシティがウェストハムのブロックを攻略するスタートに。そして、わずか2分足らずでそのアプローチは成功。ライン間でパスを受けてウォード=プラウズを外したフォーデンが素晴らしいミドルで先制点を奪い取る。

 以降も試合はシティが完全に支配。バックスの確実なキャリーから相手を押し上げつつ、ライン間を覗きながら大外からはドクが仕掛けてクロスを上げていく。

 何より素晴らしかったのはウェストハムのカウンターをほぼ完璧に封じたこと。前方の残るアントニオには前を向かせることすら許さず、ほとんど一方的に押し込んでいく。

 そんなウェストハムのキーになったのは両WBのオーバーラップ。まずはエメルソンがインサイドに入り込むなど、変わった形での抜け出しのアクションを見せる。だが、本命は彼らがオーバーラップで外からのクロスをあげること。そのための時間作りはクドゥスがアクロバティックなキープで担うことに。

 しかしながら、行けると思った矢先に追加点を決めるのがシティ。プレスに欲をかきすぎたコーファンの背後からボックス内にスピーディーに侵入すると、サイドからの折り返しを再びフォーデンが仕留めてリードを広げる。決定機を外して流れに乗れなかったハーランド以外はシティの面々が気持ちよく過ごせた前半だったと言えるだろう。

 それでも前半の終盤には根性を見せたウェストハム。押し込む時間を増やして作っていくと、CKからクドゥスがアクロバティックなゴールを決めて1点差に追いつく。

 ウェストハムは後半にプレス強度をアップ。シティはこのプレスを丁寧に外していくとポゼッションから押し込んでいく。

 そして、右サイドからの押し下げからジリジリと中央で列を上げたロドリが追加点をゲット。これで試合自体のテンションも沈静化する。

 ウェストハムは4バックへのシフトやイングスの投入を見せるなど、最後まで積極的に攻めていく姿勢は見せていた。終盤にはソーチェクがネットを揺らすがこれは火を見るより明らかなハンド。VARの廃止が論じられている時期にこのハンドを原判定で下せないのはなかなかにパンチが効いている。

 結局、シティは逃げ切りに成功。優勝のプレッシャーを2分で跳ね除けて前人未到の4連覇を達成した。

ひとこと

 シティ、終盤戦は圧巻の強さであった。

試合結果

2024.5.19
プレミアリーグ 第38節
マンチェスター・シティ 3-1 ウェストハム
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:2′ 18′ フォーデン, 59′ ロドリ
WHU:42′ クドゥス
主審:ジョン・ブルックス

アーセナル【2位】×エバートン【15位】

チェイサーとして十分な役割を果たしたシーズン

 レビューはこちら。

 悲願の優勝のためには勝利してマンチェスターからの吉報をまたなければいけないアーセナル。最終節には抜群の相性を誇っているが、ガッチリとしたリトリートで自陣のブロックを組むことで失点を急激に減らしているエバートンが相手。面倒くさい相手が優勝を前に立ちはだかっている。

 立ち上がりからしばらくするとボールを持つのはアーセナル。エバートンはドゥクレがライスをマークすることで前線はキャルバート=ルーウィンが一人でプレス。バックスにボールを持たれるのは許容する構えだった。

 サカがいなくても軸になるのは右サイド。ボールを集めつつハーフスペースの裏抜けからチャンスを作っていく。右サイドからの攻撃はこのハーフスペースの裏抜けに加えて、ファーサイドへのクロスもしくは中盤から逆サイドへの展開。

 しかしながら、エバートンは押し込まれることに関してはプレミアで最も慣れているチームの1つといっていいだろう。アーセナルにはポゼッションを受け渡しながらボックス内でシュートとクロスの跳ね返しに特化。悪くはないアーセナルの攻撃に対抗し続ける。

 対するエバートンはカウンターで反撃。キャルバート=ルーウィンへのロングボールが当然軸になるのだけども、左サイドからキャリーするマクニールが地味に効いていた。こちらのサイドで後手をふむトーマスに対して、エバートンは推進力を生かしたカウンターを披露。そのマクニールのボール奪取からエバートンは先制。ゲイェのFKが幸運な跳ね返りでそのままゴールネットに吸い込まれる。

 しかしながら、アーセナルは再三繰り返していた右サイドからの攻め手が成就。ウーデゴールの抉る動きからの折り返しを冨安が仕留めてハーフタイム前に同点に追いつく。

 後半も基本的にはアーセナルの保持が中心。エバートンが高い位置から出てきて奪ったら素早く盾にという展開を繰り返していたため、試合は前半よりもややオープンな展開を迎えることになった。

 右サイド大外のマルティネッリを軸に攻めていくが、ラストパスが刺さらないという前半の展開を踏襲するアーセナル。もう一押しが欲しい展開でアルテタが打った一手はスミス・ロウとティンバーの投入。特にティンバーの投入は2-3-5という今季やりたかったかもしれない設計図への移行を促すもの。オフザボールの動きはやや減ったアーセナルにとって、構造的によりサイドのフォローを増やしたかったというのが狙いだろう。

 なかなかこじ開けられないアーセナル。焦ったい展開ながら終盤にハイプレスから勝ち越しゴールをゲット。オナナの苦しいバックパスからヤングがパスミスを犯してカウンターを発動。ウーデゴールの虚をついたプレーがラストパスとして成立し、最後はハヴァーツが叩き込んだ。

 マンチェスターからのいい知らせは届かなかったアーセナル。だが、最終節も勝利を手にし、最後までシティの追っ手として十分な功績を果たしたシーンだったと言えるだろう。

ひとこと

 エバートンはキャルバート=ルーウィン→シェルミティのスイッチでカウンターの出力が下がってしまったのが痛かった。

試合結果

2024.5.19
プレミアリーグ 第38節
アーセナル 2-1 エバートン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:43′ 冨安健洋, 89′ ハヴァーツ
EVE:40′ ゲイェ
主審:マイケル・オリバー

ブレントフォード【16位】×ニューカッスル【7位】

乱調のブレントフォードを畳み掛けて7位確保

 FAカップの結果次第でまだまだ流動的な欧州カップ出場権。ニューカッスルとしてはなんとか一つでも上の順位で終えてシーズンを終えたいところだろう。

 立ち上がりにペースを握ったのはブレントフォード。守備では高い位置からのプレスでニューカッスルのバックラインに圧力をかけていく。攻撃に出た時は右サイドのムベウモのラインブレイクからチャンスメイク。ネットを揺らすシーンもあったが、オフサイド判定でゴールを奪うことができなかったが上々の立ち上がりを披露する。

 対するニューカッスルは前線の踏ん張りからカウンターで応戦。左右に動きながらボールを収めるイサクからチャンスを作っていく。右に流れて正対したピノックとの1on1を制してジョエリントンの決定機を作ったシーンは見事だった。

 アバウトなロングボールは跳ね返されてはいたが、きっちりとイサクを狙えば押し込むことができるニューカッスル。撤退するブレントフォードのブロックに対して、外側からのギマランイスのクロスからバーンズにピンポイントでアシストを供給。これでリードを奪う。

 この先制ゴールに乗っかる形でニューカッスルは勢いのままにハイプレスに移行。一気にブレントフォードに圧力をかけていく。すると、ブレントフォードのバックラインはミスを連発。ピノックのミスを見逃さなかったイサクが2点目をアシストすると、立て続けに3点目をゲット。自陣でのロスト直後とは思えないほどリスキーなプレー選択からレギロンがロストをすると、今度はイサクがフィニッシャーとなりゴールを決めた。

 完全にこの時間に勢いを失ってしまったブレントフォード。サイドからチャンスを作っていこうとするが、なかなか崩し切ることができないまま前半を終える。

 後半、引き続きポゼッションするブレントフォードはなんとか一点を返す。遅れて入ってきたジャネルトがゴールを決めて点差を縮めるスタートとなった。

 遅攻での攻撃はもちろんのこと、トニーの収まり方を利用した速攻も見事。ウィサの2点目のゴールも今季の彼らしいスーパーな一撃であった。

 ニューカッスルはポープのセービングでなんとか2失点目で食い止めると、サイドからきっちりと押し下げていきながら敵陣でのプレー時間を稼ぐ。するとムベウモの軽率なプレーから獲得したFKのこぼれ球をギマランイスが押し込んでリードを再び2点に広げる。

 ニューカッスルは5バックに移行して試合をクローズ。珍しい布陣変更からは今度こそきっちりクローズするという強い意志が感じられた。

 試合はニューカッスルが大量得点で逃げ切りに成功。7位をきっちり確保してシーズンを終えた。

ひとこと

 ブレントフォードは集中が一気に途切れた前半の終盤の過ごし方があまりにももったいなかった。

試合結果

2024.5.19
プレミアリーグ 第38節
ブレントフォード 2-4 ニューカッスル
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:48′ ジャネルト, 70′ ウィサ
NEW:21′ バーンズ, 36′ マーフィー, 38′ イサク, 77′ ギマランイス
主審:サイモン・フーパー

クリスタル・パレス【12位】×アストンビラ【4位】

好調の終盤戦の詰め合わせ

 シーズン終盤に最も勢いがあるチームとなったパレス。ホーム最終節はすでに今季のミッションをコンプリートしたアストンビラである。

 ボールを持つ流れになったのはパレス。3バックと大外のWBから縦横にコンパクトな陣形のアストンビラの4-4-2に対して外からアプローチをかけていく。押し込むところまではスムーズに進み、敵陣に押し込んで勝負をかける。

 アストンビラも保持に回ればショートパスを繋いでいきたい意向。ただし、CHにチェンバース、そしてバックスにパウ・トーレスとマルティネスがいないとなると、保持局面での組み立て精度は低下。狙い目になるのは降りるアクションを見せるCFでパレスのバックスを釣り、そのギャップにWGのディアビを流して一発で裏を取るルートだった。

 瞬間的な飛び道具を優先した感があったビラに対して、パレスが押し込む頻度で優位を握るのは必然な流れ。外から押し下げるルートを見つけてもインサイドを除く意識を失わないのが今の彼らのいいところ。ウォートン→オリーズ→マテタと縦にパスを繋いだ先制ゴールは今のパレスの良さが凝縮された一幕と言っていいだろう。

 勢いに乗るパレスは前半のうちに追加点をゲット。ほぼ先制点と同じ中央に差し込むパスに大外のムニョスをラストパスのフェーズで組み込むという形でさらにゴールを決めてみせた。以降は試合を完全に沈静化。パレスがボールを持ちながらゆったりと試合を運ぶ終盤戦となった。

 後半もペースを握ったのはリードしているパレス。ビラはほんのりとハイプレスに出ていく姿勢を示してはいたが、ボールを奪い切ることはできずにゆったりとパレスにボールを持たれる。

 全体の重心が前に向いたことでパレスの崩しは少しファストブレイク風味が強くなった印象を受けた。そうなると輝いてくるのは前線の3枚。特に後半に輝いたのはエゼだった。急ぐだけでなく止まれるようになった強みを存分に発揮。運ぶところはきっちりと仕上げの前に減速してラストパスやシュートの間合いを作るという後半戦のエゼらしいパフォーマンスで速攻のパフォーマンスを一段も二段も上げる。

 マテタへのアシスト、そして自らもゴールも決めたエゼ。後半は彼が一気に畳み掛ける攻撃を先導する。

 新装パレスのバリエーション博覧会となった最終節。CLを決めたビラ相手に勢いとモチベーションの差を見せつけて上昇気流のままでシーズンを終えることとなった。

ひとこと

 これを見ればパレスの今がわかる!っていう試合だった。

試合結果

2024.5.19
プレミアリーグ 第38節
クリスタル・パレス 5-0 アストンビラ
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:9′ 39′ 63′ マテタ, 54′ 69′ エゼ
主審:クリス・カバナフ

バーンリー【19位】×ノッティンガム・フォレスト【17位】

「ほぼ確実」を「確実」に変える3ポイント

 一応数字の上では降格の可能性は残されていなくもないが、ほとんど残留は確定していると言っていいフォレスト。すでに降格となってしまったバーンリーのホーム最終戦には気楽に立ち向かうことができる。

 そんなフォレストはあっさりと先制ゴールをゲット。右サイドのエランガの1on1からファーのウッドのクロスが通り、2分で先制点を奪う。

 保持で押し込もうとしていたバーンリーとしてはかなり面食らった立ち上がりとなった。フォレストは先制点を奪ったこともあり、バックラインにはプレッシャーもかけず、バーンリーに自由にボールを持たせていく。バーンリーはフリーになったエステーヴからキャリーして前にボールを運び、サイドに展開して1on1を作る。

 だが、ここはフォレストのSBがストップ。抜き切らないクロスを上げることもあったが、バーンリーはなかなかこじ開けることができない。この流れは前半が終わるまで続く。

 一方のフォレストは虎視眈々とカウンターから追加点を奪いにいく流れ。無理なくバーンリーのゴールに迫っていく。すると14分に追加点をゲット。左サイドから押し下げたところからのミドルにウッドが触ってボールはゴールイン。オフサイド判定にはやや時間がかかったが、ゴールは認められることに。これ以降もフォレストが試合をコントロール。バーンリーをきっちりと受け止めてのカウンターで、安定した試合運びを見せる。

 後半、バーンリーは2人を入れ替え。引き続きボールを持ちながら解決策を探しにいく。右に入ったグズムンドソンはアクセント。前半よりはゴールに迫る可能性があるクロスを上げて勝負に出ていく。

 ハドソン=オドイが列を下げて自陣のプロテクトを行うフォレストだが、カウンターからの反撃は十分に健在。少ない人数での攻撃でもお構いなし。敵陣にスピードに乗った状態で襲いかかる。

 バーンリーはカレンのミドルが幸運な形で跳ね返り1点差に。これ以降はバーンリーの攻撃の精度が増したことを感じたのかフォレストは本格的にDFを揃えて5バックにシフト。自陣を固めて逃げ切りを図る。

 結局試合はそのまま終了。終盤は少し危うさを感じさせたフォレストだが、速いクロスをきっちり跳ね返すことにフォーカスして逃げ切りに成功し、「ほぼ確実」を「確実」に変える3ポイントを手にした。

ひとこと

 受けて跳ね返すことに終始すればOKのフォレスト。バーンリーは与しやすいタイプの相手だったと思う。

試合結果

2024.5.19
プレミアリーグ 第38節
バーンリー 1-2 ノッティンガム・フォレスト
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:72′ カレン
NFO:2′ 14′ ウッド
主審:グラハム・スコット

チェルシー【6位】×ボーンマス【11位】

逆転のカップ戦確保に相応しい内容で着地

 欧州カップ戦の出場権確保を目指しているチェルシー。6位を確保すればFA杯の決勝の結果次第にはなるが、ELの出場権確保も見えてくる。

 ボールを持ちながら試合を進めていきたいチェルシー。ククレジャがいつものようにインサイドに絞りながらの勝負を仕掛けていく。ボーンマスは強気のプレスに出ていくという今季のスタイルを象徴するスタイルで対抗する。

 ボーンマスの強気のスタンスは裏へのカバーリングも悪くはなく、手応えとしてはいいものだった。しかしながら、快調さが目立つチェルシー。裏へのカバーをひっくり返す形で先制。背後のカバーに出てきたネトがガラ空きにしたゴールマウスをカイセドが長いレンジで狙い撃ちしてゴールを決めた。

 保持のフェーズでもチェルシーの手応えは良好。前線の降りるアクションに加えて、後方の選手の動き直しもマメ。パスコースを作る動きをきっちり見せることでボーンマスのプレスに対しては一手先を行っていた印象である。

 ボーンマスは保持局面になれば押し込む機会をきっちりと作っていくが、チェルシーはこれをリトリートできっちりと跳ね返す。保持でも非保持でもチェルシーの手堅さが見える前半となった。

 迎えた後半。先にチャンスを迎えたのはボーンマス。中盤から左右に揺さぶるクリスティによってウナルが決定機を掴むが惜しくもゴールを掴みきれない。

 しかしながら、勢いをきっちりとひっくり返すことができるのがこの日のチェルシー。左サイドを打ち破ったスターリングが決定機を仕留めてさらにリードを広げる。

 だが、直後にファーのウナルがククレジャに対してミスマッチを作り、オウンゴールを誘発。あっという間に試合は1点差に逆戻りとなる。ファー待ちのウナルは彼が入っている時の黄金パターンである。

 この追撃弾以降は押し込むアクションが目立つボーンマス。チェルシーはきっちりと受けにまわり、跳ね返していくフェーズに突入する。

 ボーンマスはソランケを投入しつつ、サイドアタッカーをリフレッシュして強化していくがチェルシーのバックラインを打ち破る決め手にはならない。チェルシーは逆に徐々に背後を固めるような用兵で自陣の守備を強化していく。

 最後まで粘り切ることに成功したチェルシー。欧州カップ出場権を確実にする6位をキープ。終盤戦での猛チャージで最低限のノルマに滑り込むこととなった。

ひとこと

 相手の狙いをきっちりひっくり返したチェルシー。堅実な終盤戦の内容は順位のジャンプアップに相応しいものだった。

試合結果

2024.5.19
プレミアリーグ 第38節
チェルシー 2-1 ボーンマス
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:17′ カイセド, 48′ スターリング
BOU:49′ バディアシル(OG)
主審:アンソニー・テイラー

今節のベストイレブン

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