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「塞がれた出口を取り戻そう」~2018.9.23 プレミアリーグ 第6節 アーセナル×エバートン レビュー

スタメンはこちら。ズマとキーンの位置は逆でした。脳内補完してください。

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目次

【前半】
異なるアプローチでいつも通りのスロースタート

 アーセナルはスタメンにトレイラを起用。よっしゃ!これで不安定なビルドアップとはさよなら!と思ったアーセナルファンは多いはず。エバートンはトム・デイビスが腕章まくんですね。驚いたよ。ジョナサン・モスすげー太ってるな。。

 試合の序盤に主導権を握ったのはエバートン。ボールを持ったエバートンはゲイェが最終ラインに下がり、デイビスが中盤に残る役割。アーセナルはラカゼットとラムジーの2枚でプレスに行く。ただ、エバートンのサイドバックへのアーセナルのマークはそこまでタイトではなく、縦パスでスイッチを入れる役割の中盤のデイビスは割と放置されていた。エバートン的にはサイドバックは逃がしところとして安全だし、ビルドアップの出口のデイビスもフリー!というわけでカルバート=ルーウィンに抜け出されたこの試合初めての決定機は、サイドバックからパスを受けたデイビスが起点になっている。絶対に失点したと思ったぜ。

 エバートンとしてはとにかくデイビスを使ってスイッチを入れたい。縦パスが入った段階で一気呵成に攻められればそれでもいいし、少し時間がかかったら中盤から圧力をかけてサイドを攻略する。左右のサイドの攻略はそれぞれで異なっていて、右は人数をかけたパス交換で崩す意図が見えるのに対し、左はリシャルリソンたのんだ!という感じであまりサポートにはいかない。スペースがある中で1on1をやらせるほうが得策を考えたのだろう。アーセナルとしてはまずデイビスにチェックをかけたいところだが、特に前半は誰がチェックに行くのかがあいまいで手を焼いていた印象だ。

【前半】-(2)
出口をふさぎましょう

 でもさ!トレイラいるじゃん?ボール保持の局面はよくなったでしょ!というのがアーセナルファンとしての気持ち。ちなみにアーセナルのここまでのビルドアップについてはこの記事で書いてるんで、いつものやり方って何?って方はこれを読んでください。

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 ボール非保持のエバートンはそこまで強烈にプレスをかけてはこなかった。アーセナルの両CBは放置。無論、アーセナルがボールをマイナス方向に戻せば、深追いプレスはしてきたけども。後ろの足元が怪しいのはもはやプレミアでは共通認識なので。とにかく、平時においてはエバートンの2トップが気にしているのは、ホルダーよりも受け手となるトレイラやジャカのほうだった。このボランチコンビはジャカーゲンドゥージコンビよりも互いの距離感が近かったので、2トップはそこまで自分たちの位置を動かさずにプレスをかけられていた。
 ただ、おそらくエバートンが意識していたのはむしろサイドの部分。モンレアルとベジェリンをウォルコットとリシャルリソンでデートさせよう!という方に気を使っていたと思う。

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 前プレ捨てて、サイドバックにサイドハーフを当てる意図としては
・アーセナルのビルドアップの出口となっているサイドバックをふさぐため
・カウンターに転じた時の1on1に両サイドとも自信があるため

という2点だろうか。

 あくまで今までと同じビルドアップで解決したいなら、まずはサイドバックへのプレッシャーを軽減したいアーセナル。有効なのは役割がはっきりしてしまっているエバートンのマークマンを乱すこと。そのために必要なのはジャカートレイラ間の距離を開けることだ。

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 ボランチの距離が開くと今度は決断を迫られるのはエバートン側。ウォルコットとリシャルリソンはマークを捨ててあたりに行くべきか決断する必要がある。サイドは2対1でエバートンの数的不利だ。仮にサイドハーフがアーセナルのボランチに当たりに行けば、アーセナルのサイドバックはフリーになる。望み通りの展開だ。

 もし、2トップがボランチに当たりに行くことを決めたら今度は開くのは中央だ。空洞化した中央にエジルやラムジーが下りてきて最終ラインからボールを引き出すという選択肢も持つことができる。

 トレイラとジャカがこの形を初めて利用したのは11分20秒付近からのこと。この形を始めてからすぐにチャンスを作っててめっちゃ笑った。このシーンではハーフスペースに流れるトレイラにシグルズソンが引っ張られる。間に降りてきたラムジーにムスタフィが縦パスを入れる。そこからラムジーがさらに楔をラカゼットに当てることでチャンスを作った。

 こういった試合中の修正ができるのがトレイラのインテリジェンスを感じさせる部分だ。なめてもらっちゃ困るぜ、トレイラ。

 ちなみにこういう軸を動かすプレーが得意なのがゲンドゥージである。

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 図はカーディフ戦のもの。相手のプレスの枚数は異なるが、サイドでフリー+マークマンずらしというコンセプトは同じ。この図では表しにくい部分だが、ゲンドゥージの場合は一番近い味方と近い距離でプレーすることでより細かく相手の軸をずらしていることが多い。この日はベンチに座っていたが、19歳でいなくてわかるありがたみがあるとは、末恐ろしい選手だ。

 いつものサイドバックを使った前進に加えて中央に降りてくるエジルとラムジーも使えるようになったアーセナル。選択肢が豊富になってきたため、この場面以降前進する機会が増えた。いつもより人数を後ろにかけた副作用としては、サイドを使うときにラカゼットやオーバメヤンがヘルプに行く必要が増えたことか。アーセナルがいつもより相手陣内で迫力を出せなかったのはこの影響もあるかもしれない。

 エバートンもロングカウンターで脅威をちらつかせることができるので、全くダメな状況というわけではないが、アーセナルが深い位置にくるまでそこまで多くのミスをしなかった。深い位置でロストしても、アーセナルは攻撃に人数をかけているので、即時奪回に来る。チームの重心が上がればさらに輝きを増すのがトレイラ。高いスキルと広い視野で、安定したかじ取りを発揮しやすくなる。ロストした後のボールへのアプローチも秀逸で、ボール奪取の起点としても機能していた。身長差があるカルバート=ルーウィンもつぶしていた。ほかのアーセナルのボランチにはできないことだ。

 それでもエバートンはプレスを回避できれば、前線にはカウンターの駒があるのでチャンスは作っていた。というかシュート自体はアーセナルより多かった。ウォルコットは出し手となる機会がたまにあったのは面白い。リシャルリソンはマジで無理。この選手を簡単に止められるなら、ベジェリンは普段からそんなに批判されません。。

 というわけで前半はこれ以降は押し上げるアーセナルとときどきカウンターのエバートンの構図で進んでいく形。アーセナル目線で少し気になったのはサイドの守備。懸念していたベジェリンサイドより、左サイドのほうが破られる回数が多かった。モンレアルは前半を通じて受けになると対応に難があったのは気になった。

 ポジティブな点としては前半途中でソクラティスに代わって入ったホールディングだろう。途中から入ったCBが気にならないというのは。試合に入れている証拠だ。そしてもう一つ。何よりもチェフだ。

【後半】
得意分野で質の違いを見せる

 後半に再び気合を巻きなおしたエバートン、ビルドアップで降りてくるエジルやラムジーにはCHが追撃をかける形で前がかりにプレスを敢行した。その結果、エバートンにもボール保持の時間が徐々に増えてくる。
 しかし、ブロック攻略に一日の長があるのはアーセナルのほうだった。先制点のシーン。ボール奪取で波状攻撃の起点となったのはまたしてもトレイラ。前方の味方の位置取り把握がさえていたラムジーも素晴らしかった。ラカゼットのフィニッシュのクオリティについては改めて述べるまでもない。オーバメヤンが同サイドCBのキーンを引っ張っていったのも地味に効いていた。オーバメヤンをサイドで使う利点が活きた格好だ。
 エバートン側から見れば、ラムジーに入れ替わられてしまったデイビスが痛恨。攻撃においても少し個人でミスが続いていただけに、悔やまれる後半立ち上がり10分といえるだろう。

 その数分後にはアーセナルに追加点。ベジェリンのロングパスが起点になっているのはとても珍しかった。まぁ、これはオフサイドだが。アーセナルはボールを押し込んだり、得点を重ねることによってバリエーションが出てきていてつくづく面白いチームだなと思う。人は入れ替わっても、得点が入るとノリノリになるメンタリティは変わらない。エバートンの選手(ハンドを見逃してもらったケニーを除けば)としては文句の一つも言いたいところだが、入ってしまったのだから前を向くしかない。

 アーセナルの2枚目の交代はオーバメヤン→イウォビ。後半左サイドの高い位置で見られたモンレアル+ジャカのおなじみの連携に加わること、そして前プレ強化のための交代だろう。対するエバートンもトスンとベルナルジで前線をリフレッシュした。しかし試合の展開は大幅には変わらず。時たま訪れるチャンスも、残念そこはチェフ。だった。すっかりクローザーが板についたウェルベックもエバートンのビルドアップ阻害に貢献。試合はこのまま2-0で終了する。

エメリ的トップ下の役割を考察

 少し後半は書くことが少なめだったので、考察を足したい。エジルの適性を考えると、おそらくトップ下が最適なポジションだろう。だが、ここまでエメリが継続してトップ下として使っているのはラムジーである。エジルが主戦場としているのは右サイドだ。理由を考えたい。

 エメリのアーセナルにおいてラムジーに求められていることは、
①(主に左の)サイドバック起点のビルドアップ時にサポートに行くこと
②中央を使ったビルドアップの最終ラインからのボールを引き出すこと
③サイドからのラストパスが出るときにPA内に飛び込むこと
④非保持時に相手のCBに1stプレスを敢行すること

 この4つプラスアルファといった形になる。すんごい量が多い。さらに求められるプレーエリアは広大だ。②は自陣低い位置でのタスクだが、③はPA内で飛び込むこと。①ではサイドによらなければいけない。

 ここまでのアーセナルのビルドアップ、サイドの崩し、ラストパス時のPA時の人の配置等を考えると、数的優位によるところが大きい。
エメリがトップ下(ラムジー)に求めていることは「ピッチ上のあらゆる場所でプラスワンになること」ではないだろうか。この試合でも②においてラムジーがプラスワンをこなすことで、ボールの前進に成功している。
 この役割であれば、エジルではなくラムジーが選ばれるのは合点がいく。それどころか90分を通してこの役割を完遂できるのは、アーセナルにはラムジーしかいないのではないか。仮に彼が不在になった場合は、イウォビとムヒタリアンが1試合の中で出場時間を分けながら、プラスワンの役割を行っていくのではないだろうか。

まとめ

 メンバーはいるのに結果が出ないエバートン。この試合では前線の決定力不足に泣いた。とはいえある程度攻撃の形も見えている。デイビスとグイェの補完性の高いコンビも熟成が進んでいくだろうし、シーズンが進めば調子を上げてくるのではないか。

 アーセナルはまたしても後半に調子を上げて勝利。トレイラが入ってもスムーズにならないのかよ!と思った人もいたかもしれないが、むしろすんなり試合中に修正して見せたところに能力の高さを感じさせた。守備における貢献度も高い。この試合もそうだが、アーセナルの課題はどうやってボールを前に進めるか。現状のアーセナルは序盤、手探りの時間帯での失点を避けていることで連勝を重ねている。この日はチェフ!!!ありがとう!!!

 というわけで、ピッチの上での機能不全を解決するまでに、失点を避けてボールを前に進める。これがアーセナルが今後も連勝重ねていくキーになるだろう。

試合結果
2018/9/23
プレミアリーグ 第6節
アーセナル2-0エバートン
エミレーツ・スタジアム
得点者 ARS:56′ ラカゼット,59′ オーバメヤン
主審:ジョナサン・モス

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