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「ゼロックスから読み取る指針」~2021.2.26 J1 第1節 川崎フロンターレ×横浜F・マリノス BBC風オカルトプレビュー

 このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第1節
2021.2.26
川崎フロンターレ(昨年1位/26勝5分3敗/勝ち点83/得点88 失点31)
×
横浜F・マリノス(昨年9位/14勝5分15敗/勝ち点47/得点69 失点59)
@等々力陸上競技場

戦績

近年の対戦成績

図1

直近5年の対戦で川崎の6勝、横浜FMの2勝、引き分けが3つ。

川崎ホームでの戦績

図2

直近10試合で川崎の5勝、横浜FMの3勝、引き分けが2つ。

Head-to-head

・直近7回の対戦で横浜FMは川崎に1勝のみ(D2,L4)。
・川崎ホームでの対戦は直近5戦で川崎の4勝。
・直近4試合の対戦では両軍合わせて17得点。
・開幕戦での激突は2015年以来。アウェイの川崎が3-1でホームの横浜FMを下している。

 サッカーファンというのは基本的には不安が先立つものだと思っている。したがって、川崎ファンには2019年の等々力での嫌な思い出が色濃いはずだ。しかし、対戦成績を紐解けば横浜FMが優勝した2019年を除いて、近年は川崎が優勢。今回の舞台となる等々力でも川崎の成績が優勢だ。

 両者のサッカースタイルを体現するようにこのカードは打ち合いが多い。直近4試合の対戦はいずれのチームも得点を決めている。直近2年の対戦では1試合平均は4得点越えだ。2015年に行われた開幕戦でも3-1での川崎の勝利と得点の取り合いになっている。

スカッド情報

【川崎フロンターレ】

・大島僚太、登里享平は負傷でゼロックスを欠場。
・塚川孝輝はゼロックスで脳震盪で途中交代。

【横浜F・マリノス】

・エウベルは欠場見込み。
・マルコス・ジュニオール、喜田拓也は出場微妙。

予想スタメン

画像6

Match facts

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts>
・ホーム開幕戦での最後の勝利は2012年。
・直近8年間のホームの開幕戦は全てドローゲーム。
・神奈川ダービーは6連勝中。
・関東勢とのホームでのリーグ戦も6連勝中。
・直近5年間のリーグ戦初得点者はいずれも主将経験者。
・三笘薫は昨季2試合の横浜FM戦で3得点。

 スロースターターというイメージのある川崎にとって象徴的なのはホーム開幕戦の成績だ。なんとホームの開幕戦は直近8年間連続の引き分け。2012年の實藤のゴールで勝利して以降、勝ちはない。負けはもっとないけども。

 なぜかジリジリする展開になるのも近年の特徴で、ここ2年間はスコアレスドロー。川崎にとっては昨年は開幕戦が唯一のスコアレスドローだった。打ち合いになることが多い横浜FM戦、そして好成績の関東勢相手にも同様の傾向は続くだろうか。昨年相性の良かった三笘を軸に3年ぶりのホーム開幕戦ゴールをまずはゲットしたいところだ。

 近年のリーグ戦初ゴールの選手を見てみると昨年は谷口彰悟、2019年と2018年は中村憲剛、それ以前の2年は小林悠といずれも主将経験者。現チームの中での主将経験者は小林と谷口の2人。彼らのどちらかが今季もゴールを決めるのだろうか。あるいは2016年の時点では小林はキャプテンに就任していなかったので、ゴールを決めた選手が未来の主将!ということもあり得るかもしれない。

【横浜F・マリノス】

<横浜FMのMatch facts>
・直近4年間の開幕戦で8得点7失点。
・昨季トップ5との試合は10戦8敗。
・アウェイでの開幕戦は2019年以来。G大阪ホームで3-2の勝利。
・昨季は75分以降の得点が24。
・マルコス・ジュニオールは直近2年でのJ1で26得点。
・パク・イルギュの移籍以降、リーグ戦でのクリーンシートはまだない。

 キャラとは違うおとなしい開幕戦を迎えることの多い川崎に対して、横浜FMの開幕戦はイメージ通りの大暴れである。優勝した2019年のようにまずはアウェイでの開幕戦を勝利してまずは弾みをつけたいところだろう。

 リーグタイトル奪還のためには昨年の課題になった上位との対戦成績は改善の必要がある。昨季トップ5との10試合で8敗、失点は25。優勝争いのライバルになるチームから勝ち点を奪わなければ、目標達成は難しい。パク・イルギュ以降のリーグ戦6節で無失点を達成できていない守備にまずは改善の余地がありそうだ。

 昨季のスタイルで言えば終盤の得点の多さが特徴的。2年間コンスタントに得点を決め続けたマルコス・ジュニオールの出場可否は不透明であり、エリキやジュニオール・サントスなど抜けた得点源の穴をどう埋めるかに注目が集まる。

展望

■補強から感じる予感

 とにかく情報がでてこない2021年シーズンにおいては開幕戦こそが最もプレビューを書きにくいはずである。事実、白状をしてしまえば横浜FMのことはちっともわからない。ちょっとゆっくりやるかもしれないとか3-3-1-3という数字が呪文のように飛び込んでくる程度しかわからない。なので当然自分が考えた予想スタメンなんてあてにならないのである。

 ただ、川崎に関してはゼロックスという材料がある。ということで展望ではゼロックスの川崎を軸に今季の戦い方についてあれやこれやしゃべっていきたいと思う。

 ゼロックスが始まる前に外野のファンがクラブの今年の取り組みを推し量れる部分といえば選手の補強だろう。補強について述べる前に、川崎の昨シーズン終盤の戦い方を簡単に振り返る。昨年のシーズンレビューでも述べたが、川崎が2020年に最終的にたどり着いたやり方は中央のエリアを空けて後方から前方に刺すようなパスを通して一気に前進するものである。背負えるダミアンと時間を作ることが出来る三笘と家長というWGの特色を生かした戦い方だ。

 このやり方のメリットとしては中盤でのデュエルを回避しながら前に進めること。大分や札幌など川崎の中盤に前を向かせずつぶすというやり方で負けたからゆえのポストプレーを主体で前を向くやり方ではないか?と自分としては考えている。余談だが中盤でのシンプルな肉弾戦で後手を踏みやすいACLでも効きそうな戦い方ではある。

 2021年シーズンに向けて川崎が獲得した選手のうち、Jの実績がすでに確立されている小塚和季とジョアン・シミッチの2人はこのサッカーで重要視される要素を持っている。小塚は2列目で時間を作ったりあるいは加速させることでチームのテンポを司ることが出来るプレイヤーで、シミッチは縦に刺すパスのスペシャリストだ。

 個人的には昨季終盤の戦い方はACLへの意識を感じつつも、家長と三笘、そして終盤戦は好調を維持したダミアンという川崎の強みを前面に押し出すようなやり方だったため、天皇杯という悲願のタイトルを得るための短期的なチューニングではないか?と思っていた。

 だが、この2人の獲得を見ると2021年シーズンは2020年と陸続きのスタートになるのかも?と思った。そして、ゼロックスを見てみるとやはり実際そうなのだなという感想を持った。

■地続きの予感と2020年からの変化

 前置きが長くなったが、さっそくゼロックスの川崎の特徴を見ていく。2020年の終盤の特色としては縦にパスが入ったタイミングで攻撃が加速すること。特に相手陣地におけるフィニッシュが素早くなる頻度が上がったことは、これまでになかった特徴である。この特徴は2021年でも踏襲されていた。

 一方で違った部分もある。2020年の川崎は縦パスの受け手はポストプレイヤーであることが多かった。すなわちキープ力のあるダミアンと家長がこの受け手の役割を担うことが多かった。特にダミアンは左右低い位置まで流れながらWGやオーバーラップするSBやIHなどに前向きにボールを渡す役割を担っていた。

画像3

画像4

 対して2021年は低い位置から大きく縦に進むパスに前線がダイレクトに裏に抜ける場面が増えた。つまり、背負うタイプのポストプレイヤー(ダミアン、家長)を介在させる頻度が減ったというイメージである。なお、ソースはない。印象論である。違ったらご指摘ください。

画像5

 この変化の主要因となったのは当然アンカーが守田英正⇒ジョアン・シミッチに代わったことだろう。縦パスの速度、精度でいえば前任者よりも上のシミッチの特色を存分活かすための変化。もちろん裏だけでなく、前線の間の選手に刺すパスも兼備する。縦に大きく進めるパスのレパートリーの増加は川崎にとって大きな武器になる。

 利点としてはダミアンを中央から動かさずに済むことである。ストライカーがゴールから離れた仕事をするということは、再度ダミアンがゴールにたどり着くための時間を稼ぐ必要があるということでもある。もちろんそのための三笘と家長!というのはあるのだが、ダミアンがゴール前の仕事に専念した状態でゴールに迫れるのならばそれに越したことはない。ポストでの前進も当然レパートリーとしてはあるので、彼らの負荷を軽減するイメージだろうか。

 今季のスカッドとともこのやり方は相性がよさそうだ。長谷川竜也や遠野大弥などのスピード豊かな前線ともシミッチの縦パスの組み合わせは今から楽しみである。空中戦の強さもシミッチが入ったことでワンランク攻守に頼もしくなった。後半に登場した塚川も含めてアンカー候補の身長は大幅にアップ。単純なロングボールへの対抗手段は昨年よりも十分に備わっているといえるはずだ。

■2021年スタイルの懸念は?

 では逆にこのゼロックスで気になった部分はどこか。真っ先に挙げられるのは登里が不在となった左サイドのビルドアップ。ゼロックスの対戦相手のG大阪はサイドに閉じ込める意識が強かった。裏を返せば、逆サイドに展開さえできれば簡単なシーンはあったのだが、谷口と旗手がコンビを組む左の低いポジションから逆サイドの展開は苦戦。体を開いての右足でのキックからのサイドチェンジは時に相手にかっさらわれて大ピンチに陥ったいた。現状のスカッドではこちらのサイドに閉じ込められた際に不安がある。

 先に述べたシミッチもアキレス腱になる可能性もある。シミッチは左足に比べて右足を使う頻度がかなり低い選手。左足側に立たれるマークのつかれ方をすれば、持ち味が出てこない可能性もある。

 少ないタッチで裏の抜け出しと阿吽の呼吸を見せるシミッチの縦パスにも懸念はある。前線のストライカーの動き出しがありきなので、前線のアタッカーが裏抜けの準備が出来ずに厳しい状態で受ける展開には向いていないように思える。試合終盤や過密日程などの疲労も味方にはならなさそうである。受ける展開が増えれば苦しい部分をカバーしていた守田の穴を痛感することになるかもしれない。機動力ではシミッチよりも守田の方が分があるだろう。

 勝負のパスにおいて息を合わせる難易度が上がるため、試合運びの安定感には欠ける展開も出てくる可能性もある。この部分が最も川崎にとって気になるところだ。強引にテンポを上げてくるチームは少し苦手かもしれない。それこそ、去年の横浜FMのような。

 良くない話で終わるのは嫌なので最後はいい話で。ゼロックスを見る限り、今年は新戦力のフィットが早そうだ。橘田、塚川、遠野は三者三様の形で存在感を見せた。昨年と同様に20人くらいの主力が遜色ない活躍を見せれば、今年も優勝争いを大いに盛り上げてくれるはず。

 横浜FMはわからん!だが、ポステコグルーは対策からシーズンを始める監督ではないだろう。3-3-1-3で中央のCBからボールを動かしてくるのだろうか。まぁ、それは蓋を開けてから見てみよう。おそらく、横浜FMは強敵であるが、相手に対して冷静な打ち手を武器にする指揮官と、フィットの期待高まる新戦力でチームとしての対応の早さと幅を見せたいところだ。

【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

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