立ち上がりの失態を保持ベースで巻き返しての逆転勝利
前回王者、イタリアの開幕戦はアルバニア。同じ組にスペインとクロアチアがいることを踏まえれば、この初戦は必勝という構えになるだろう。
だが、そんなイタリアの青写真に待ったをかけるかのようにアルバニアは開始1分で先制点をゲット。ディマルコのスローインのミスに漬け込んだバイラミが右サイドを破壊してあっという間にアルバニアにリードをもたらす。
以降の前半はイタリアの保持がほとんど。先制点がもたらした展開への影響はわからないが、おそらくゴールがあってもなくてもイタリアがボールを持ちながら支配的に振る舞うことになったのではないかと思う。
イタリアの保持のベースになるのは3-2-5。大外をディマルコ、キエーザの2人に託し、スカマッカの後ろにペッレグリーニとフラッテージが控える形になる。アルバニアは4-4-2で2トップがイタリアのCHであるジョルジーニョとバレッラが基準。
大外のSHはWBロールのディマルコとキエーザに合わせて位置を下げて後ろ重心で守る。このSHの対応もThe Athleticのプレビューには書いてあったので、少なくともキエーザに対してセフェリが下がる形はスコア推移に関わらずアルバニアの頭の中にはあったように思える。
イタリアの3-2-5はここからさらに変形する。ボールサイドの後方支援役としてアルバニアの2トップの脇にボールサイドのCBがサポートに入る。左であればカラフィオーリ、右であればディ・ロレンツォが後方からの供給役としてCH、WB、シャドーの3枚をサポートする格好である。余談だがバストーニを含めたバックラインはイタリアの系譜の中ではかなりチャラい部類になりそうだ。
サイドに枚数を十分かけたイタリアは圧力をかけて押し下げることができるように。純粋に枚数を使った崩しもあるし、右の大外にはキエーザもいるため1on1での仕掛けから剥がしてズレを作ることも見込める状態だった。
すると、イタリアはセットプレーから追いつく。大外に構えていたバストーニがフリーで合わせて先制点の10分後に試合は振り出しに戻ることとなった。
さらにはその5分後にイタリアが追加点。右サイドの後方支援役のディ・ロレンツォがナポリでの日常のようにサイドからボックス内に突っ込んで深さを作ると、その恩恵を受けたのはバレッラ。見事なミドルでゴールを打ち抜き、イタリアはリードを奪うことに成功する。
アルバニアが比較的ショートパスから繋ぎたい意思を見せたので、ボールをロストしたら即時奪回ガンガンモード!という感じのイタリアだったが、リードをしたことでアルバニアにボールを持つ時間を少し与えるように。先制点以降、ガンガンモードのイタリアに対して保持の局面では息を吐く間もないという感じであったが、ビハインドになったことで少し余裕が出る展開となった。
保持時のアルバニアは4-4-2からCHが移動をスタートする。ラマダニが2CBの右に降りて、アスラニが中央に残りつつ必要であればサリーで列を落とすという感じ。これでイタリアのプレス隊に対応を強いるという感じである。
しかしながら、前線にボールをとりあえず預けておけばOKという選手も居なそうであり、ボールを落ち着いて持てる時間はイタリアが後方のスペースを管理することを優先していた感があるので、あまり移動自体が効果を生むことはなかった。キエーザの仕掛けからスカマッカの背後に飛び込んだペッレグリーニが決定機を迎えるなど、保持での支配力を多少落としても試合の主導権は依然としてイタリアにある前半だった。
迎えた後半も前半と陸続き。ハーフタイム明けの入りということでもう一度CHをプッシュアップしたプレスからイタリアが保持で試合を支配するところからスタートした序盤となった。IHの前線への飛び出しの積極性から見ても、この時間帯に追加点を取るのが理想という感じだろう。
アルバニアもゴールが欲しいのは当然同じ。前への意識が強いイタリアのIHの背後からボールを運べば理想的であるが、なかなかそうした局面は訪れない。ということでSHが後方のスペースを埋めるのではなく、高い位置に出ていくことでボールを奪う位置を高くしようとするアプローチが見られた。
イタリアはこれを受けてボールを落ち着かせる方向性にシフト。60分以降は試合展開が再び落ち着き、保持側に時間が与えられる展開になっていく。SHの入れ替えを行いプレスの運動量を回復しようとしたアルバニアに対して、イタリアはクリスタンテを投入。より後方の安定感を担保。左サイドのユニットに後方重心の選手が増えたことで、大外のディマルコの抜け出しがアクセントになるという展開となった。
終盤はプレスから流れを活性化しようとするアルバニアに対して、イタリアが保持でそれを抑制する綱引きのような展開に。どちらかといえばこの綱引きはイタリアが主導権を握っていたと言えるだろう。降って湧いたムラニの抜け出しからのアルバニアの決定機は少し角度のないものながら、先制点以降最もゴールに近づいた瞬間だったが、シュートはゴールマウスを逸れていった。
立ち上がりにミスからバタバタしたイタリアだったが、ボールを動かしながらきっちり主導権を握り返しての逆転勝利。まずはミッションである3ポイントを手にする初戦となった。
ひとこと
イタリアのバックラインの特性を生かした保持での攻略だったように思う。アルバニアは後ろに重ためのチームだったし、より前線の破壊力があるチームに対しては少し強度面で不安がある気もするので、2節目以降のバックスの人選と役割の持たせ方に注目していきたい。
試合結果
2024.6.15
EURO 2024
グループB 第1節
イタリア 2-1 アルバニア
BVBシュタディオン・ドルトムント
【得点者】
ITA:11‘ バストーニ, 16’ バレッラ
ALB:1‘ バイラミ
主審:フェリックス・ツバイヤー