エリクセンの特別なゴール
ボールを持つ側になったのはデンマーク。上のフォーメーションの図では5-3-2のような形になっているが、実際にはエリクセンがシャドーの一角のような振る舞い。ヒュルマンドとは明確な前後関係が形成されている状態で保持を行う。
一方のスロベニアは4-4-2で構える形。デンマークのバックラインはプレスに行かず、2トップは中盤を基準として守備を行っていく。前述のシャドーのエリクセンは前線に飛び出す役割を行っているのだが、その場合はスロベニアのCHは縦関係となり、片方が最終ラインに入る形でケアする。
デンマークはスロベニアの2トップの脇から進撃。ここから2トップを目掛けてボールを入れて攻撃を構築する。ホイルンドとウィンドの2トップは左右に動きながら起点となり、中盤からの飛び出しを促すようなポイントの作り方を行う。
この形が実ったのが先制点。サイドに流れてスロベニアを押し下げたホイルンドが作ったスペースに飛び込んだのはエリクセン。ウィンドのラストパスを受けて4年前のEUROの悲劇を塗り替えるようなメモリアルなゴールを決めた。
以降も主導権を握るのはデンマーク。3バックを基調とした安定したポゼッションから押し込む状況を続けていく。スロベニアもスポラルとシェシュコの2トップにボールを放り込んでいくが、なかなか起点を作ることができず。頼みのセットプレーを稼ぐために、後方を3枚にすることでボールを持つ安定感を増していこうという考えのように見えたが、デンマークほどの保持の基盤は作れなかったという印象だった。
後半の両チームはとにかくセットプレーからのチャンスメイクが目立つ流れ。互いにボックス付近でファウルを得るとここからハイボールでゴールチャンスを迎えることに。
トップに収めてチャンスを作るのが上手いのはリードをしているデンマーク。さらにはカウンターからホイビュアがボールを運び、サイドに流れるウィンドからの折り返しから決定機を作る場面もあった。同様にスロベニアもCFのサイドフローからチャンス。セットプレーもオープンプレーも似た形からチャンスを作る両チームであった。
均衡ムードの流れを変えたのはビハインドのスロベニア。シェシュコのミドルがポストを捉えたことで勇気を得ると、直後のCKからヤンザの豪快なミドルがネットを突き刺す。
このゴールで試合の流れは一変。試合の主導権はスロベニアに。サイドに流れるスポラルや中央で起点になることができるシェシュコからのチャンスメイクでデンマークのゴールに迫る。
CFを起点に使った攻撃の機能性が主導権に直結したこの試合。前半はデンマーク、後半はスロベニア優勢というコントラストがくっきりの引き分けとなった。
ひとこと
エリクセンがこの舞台でゴールを決めたこと、とにかく感慨深い。あの時のデンマークには勇気をもらったことを覚えている。
試合結果
2024.6.16
EURO 2024
グループC 第1節
スロベニア 1-1 デンマーク
シュツットガルト・アレナ
【得点者】
SVN:77‘ ヤンザ
DEN:17’ エリクセン
主審:サンドロ・シェーラー