八面六臂のカンテが圧巻のパフォーマンス
前日にオランダが初戦勝利を挙げて順当にスタートしたグループD。本命候補のフランスがいよいよ登場する。
ポゼッションを握るかと思われたフランスだが、立ち上がりにボールを持つ機会が多かったのはオーストリアの方。ビルドアップは2CBと2CHの4人でボールを動かしていく。CHには動きの自由が与えられており、中央にとどまる形と相手の2トップ脇に立つ形とCBの間に降りる形の3つを使い分けていく。サイバルトが後方に降りる役割を担うことが多かった。
大外を託すのはSBであり、2列目は中央に絞る形となる。降りるアクションが多いところもショートパスでの繋ぐ意識の強さを感じる。オーストリアはこの中央のコンビネーションで勝負したさがあったけども、さすがにそこはフランス側の中央の強固さが目立つ。カンテ、ラビオ、ウパメカノ、サリバの中央のセクションは強力でパスをことごとくカットしていた。
オーストリアの積極策は非保持でも。高い位置からボールを追いかけていきフランスのボール保持を阻害する。そこまで収支的には悪くないなと思ったが、なんせフランスの前線にはムバッペがいる。一つのミスが一大事になるだけに冷や汗をかかされたシーンもあった。
フランスは強気のプレスに対して前線の選手のポストで対抗。楔とセットで必ずオフザボールで追い越すアクションを見せる。レシーバーが突き進むか、あるいはフリーのサイドに展開するかの二択で突き進んでいく。レシーバーとして優秀だったのはテオとラビオの2人であった。
蹴って回収というメカニズムは相当機能していたように見えたオーストリアだったが、30分を過ぎたあたりから少しずつフランスがボールを動かしていく。サリバとカンテの落ち着きがオーストリアのプレス隊に少しずつ撤退を強いるようになっていく。
すると、押し込むフェーズからフランスが先制。サイドに流れることが常態化していたムバッペの折り返しがオウンゴールを誘発。これで試合を動かす。オーストリアとしてはバウムガルトナーの決定機という前半最大のチャンスを逃した直後だっただけにダメージは大きかったことだろう。
後半、オーストリアはハイプレスを再起動。高い位置から出ていってハイプレスを行うことでフランス相手に主導権を握る。しかしながら、フランスは前半よりもゆったりとプレスを回避することに成功。この辺りの耐性はさすがである。
前半に比べてもさらにパフォーマンスを上げたなと感じたのはカンテ。出足鋭いインターセプトからカウンターの起点になったり、自陣の深い位置でのボール奪取から局面を進めるミドルパスを刺したり、プレスを自陣で回避したりなどかなり豊富な活躍。インターセプトはともかく、プレス耐性やミドルパスセンスが相当優れているのは凄まじいなという感じ。
しかしながら、フランスはカウンターからのフィニッシュ局面が安定せず。抜け出したムバッペが決めきれずなかなかフランスは試合を仕留めることができない。
オーストリアは70分以降から少しずつ足が止まってくるように。徐々にオーストリアはプレスの精度が落ちてくる。フランスも前線のプレスが強気というわけではなかったため、オーストリアは敵陣に運ぶことができていたが、カウンターでもブロック守備でもカンテの存在感は凄まじく、あらゆる攻撃をシャットアウトしてみせた。
終盤はムバッペの負傷があり次節以降に不安要素があるが、まずはオーストリア相手に手堅く1勝。オランダとの直接対決に向けて弾みをつけた。
ひとこと
ラビオ、カンテの先発からカマヴィンガとチュアメニが控えるフランスの中盤はえぐいね。
試合結果
2024.6.17
EURO 2024
グループD 第1節
オーストリア 0-1 フランス
デュッセルドルフ・アレナ
【得点者】
FRA:38‘ ウーバー(OG)
主審:ヘスス・ヒル・マンサーノ