目まぐるしくスコアと主導権が入れ替わる一戦に勝者はなし
互いに初戦は敗れてしまっているチーム同士の一戦。最終節がそれぞれイタリアとスペインであることを考えれば、ここは生き残りのために必勝と言ったところだろう。
立ち上がりにボールを持ったのはクロアチア。大外にSBを置いてWGはやや絞りつつSBと大外をシェア。その分、中盤が下がってビルドアップに関与するといういつものスタイルであった。
アルバニアはSHとCHがかなり後ろ重心でのスタート。時折6バックになるような形にもなっており、これで陣地回復は望めるのか?というような陣形になっていた。
ところが、アルバニアはボールを奪った後にクロアチアをきっちり押し込むスキルがあることを証明。中盤のパスワークでクロアチアのユニットを翻弄して、サイドにボールを預けてリポジションの時間を稼ぐ。右サイドでボールを動かしつつ、インスイングでボールを入れる形は鉄板。先制点以外のところでもこの形はボックスに迫る必殺パターンとなっていた。
アルバニアはマナイへのロングボールも収まるなど、陣地回復の手段が複数あることを証明。先制点をとって以降はSHの位置を時折高く見せるなど、自信を持って守れているのだろうなという挙動が際立つこととなった。
クロアチアとしてはやはりネガトラの遅れから後手の連鎖が始まっている。気になるのは3センター。ボックス突撃、サイドへのヘルプ、そしてビルドアップと多岐に渡るタスクのせいでロスト時にかなり陣形が間延びしている。やり切れるのであればそれでもいいけども、この日のクロアチアは中盤起因のミスもそれなりにあり、自分たちでアルバニアの反撃を受けるトリガーを引いていたのが印象的だった。
サイドの仕掛けの成功率も低い。単純に崩しにおけるポケットを取る動きが少ないし、あったとしても手前を作れないから簡単にバレてアルバニアに先に潰されてしまう。1on1で打開できるWGはペリシッチより上のクオリティの選手がおらず、そのペリシッチにはアルバニアはダブルチームで警戒を払っていた。
ブロックを組んでからの守備もまずいなという感じ。先に挙げたアルバニアの右ユニットのクロスには完全に後手に回ってしまっているし、インスイングのクロスに対するCBの対応も混乱気味。先制点の場面もサイドに流れるヒサイに釣られたグバルディオルのカバーをブロゾビッチが仕切れなかったのが要因である。
保持でも非保持でも完全に後手を踏んでいるクロアチア。唯一の救いはリヴァコヴィッチの奮闘で先制点以降の失点をなんとか食い止めたことくらいだろう。まるで悪夢のような45分でなんとか1点差でハーフタイムを迎えることとなった。
後半、クロアチアはスチッチとパシャリッチを投入。ともに右サイドにセットで組み込まれる交代となった。ブロゾビッチを削ったのはビルドアップ隊にかける成分を前線のオフザボールとハイプレスのエネルギーに変えましょうという判断だろう。
右サイドは彼ら2人にユラノビッチを加えたユニットを後方からモドリッチが操る形。保持のベースポジションは4-3-3にも見えたが、モドリッチが右に流れる頻度が増えたため、コバチッチと左右対称の4-2-3-1と見ることもできるなという感じだった。非保持はスチッチをトップ下に置く4-2-3-1だったけども。
右サイドはこのユニットの活用で一気に活性化。奥行きを取るアクションができるようになり、クロスに一気に殺傷性が生まれることとなった。左サイドに顔をだすグバルディオルも含めて、両サイドから総攻撃を仕掛けていく。
クロアチアのプレスが強まる中でアルバニアは前半ほどロングボールが刺さらず。トップのマナイがオフサイドを連発していたことを踏まえると、ここはラインコントロールの局面でクロアチアが上回ったということだろう。
このロングボールが60分を過ぎたあたりで収まるようになり、少しずつアルバニアにも攻撃の目が出てくる。しかしながら、攻撃を焦ってしまったのか前半ほどフリーランで動き回る味方を使うことができない場面がちらほら。攻撃を完結できないとコバチッチのキャリーなどクロアチアからのしっぺ返しが待っているので、二重の意味で地獄である。
クロアチアの同点ゴールのキーになったのはコバチッチのキャリー。アルバニアの守備陣を切り裂くように行われたドリブルを起点にブディミルを経由したボールは逆サイドのクラマリッチに。簡単ではないシュートだったが、見事股下を抜いて仕留めてみせた。アルバニアは直前の攻撃で簡単にキャッチされる選択をしてしまったことが悔やまれる。
このゴールで勢いに乗るクロアチア。ブディミルのポストで手前にフリーの選手を作り、裏抜けの破壊力を増幅させるパターンからチャンスを量産。逆転となるオウンゴールを誘発する。
4-5-1へのシフトで中盤の飛び出しにケアをしたが間に合わなかったアルバニア。苦しくなった後半だがグヴァルディオルではなくシュタロにつっかけることでなんとか前線に起点を作り、ここから左サイドに流して攻撃に打って出る。終盤のキーになったのは交代で入ったホッジャ。マーカーを2枚引きつけつつ、エリア内にラストパスを送ることでチャンスメイクを行う。
すると、この左サイドの集中攻撃が実ったのは後半追加タイム。ギャスラのゴールで試合を振り出しに戻す。
終盤まで息つく間もなくチャンスが生まれたスリリングな展開は痛み分け。直接対決を控えるイタリアとスペインにとってはありがたい結果となった。
ひとこと
シンプルに面白い試合だった。欧州ならアンダードックでも止まって味方を解放できるドリブラーがいるのだなと思った。
試合結果
2024.6.19
EURO 2024
グループB 第2節
クロアチア 2-2 アルバニア
フォルクスパルク・シュタディオン
【得点者】
CRO:74′ クラマリッチ, 76′ ギャスラ(OG)
ALB:11′ ラチ, 90+5′ ギャスラ
主審:フランソワ・ルティグシェ