祈りに応えたベリンガムと刻まれたエバートンのDNA
スコア推移的には危なげなくGSを突破したが、内容にザワザワするというもはやビッグトーナメントではお馴染みと言っていい状況となっているサウスゲートのイングランド。すでに今大会ではトチったビッグネーム駆逐に成功しているスロバキアがRound 16の対戦相手である。
スロバキアは4-1-4-1がベースのフォーメーション。CBは1人余らせて、あとは人基準で守ればOKというスタンス。イングランドはこのスロバキアのオーソドックスなプランに大苦戦。フリーのCBがボールを持っても誰も出しどころがなく、相手を動かすことができない。余ったストーンズが何もできないというのはプレミアファンからすれば信じられない光景である。トリッピアーのおかしなパスミスの尻拭いからグエヒが警告を受けるなどイングランドは散々な立ち上がりだった。
一方のスロバキアは少ない手数で確実に前進。ボールを奪うと素早い縦のカウンターに後方からSBの積極的なオーバーラップから勝負を仕掛けていく。さらには左サイドでズレを作ることも成功。ストレレツへのロングボールの落としからハラスリンの縦に鋭い動きから一気にゴールに迫っていく。
攻撃のメカニズムを確立したスロバキアは先制点まで到達。右サイドでクツカの前線への飛び出しからイングランドの守備基準を乱しつつ、ストレレツのポストからシュランツがゴールを奪う。イングランドは構造的にもかなり動かされてしまったし、そもそもストレレツにかなり収められるというイングランドのCB陣のフィジカル的な劣位も感じた序盤戦となった。
なんとかしたいイングランドだが、ずらしながらの前進ができずに苦戦。横断からのトリッピアーという形からほんのり手応えを感じなくもないが、スロバキアのスライドとリトリートのブロックをなんともできないままハーフタイムを迎えることに。
後半も展開は同じ。押し込む状況からイングランドは解決策を探る。前半に比べるとイングランドはゴールに迫る立ち上がりとなる。スロバキアの3センターの脇を通せるような縦パスを仕掛けることで中央に起点を作り、左右に揺さぶることができるように。スロバキアはロボツカの壁を越されるシーンが増えてくるように。
サカ→ケインの斜めのパスがようやく通ると、逆サイドのトリッピアーからの折り返しをフォーデンが仕留めてネットを揺らす。だが、これはオフサイド。確かにトリッピアーからのパスコースを作るには少し前に出ていた方が都合がいい気がするが、普段からすればこれもオフサイドに引っかかるようなポジションをとっているのが意外という感じである。
攻め込むも悪くない状況を構築できるようになったイングランド。だが、ゲンナリするパスミスから押し込む流れをあっさりと手放してしまう。
停滞した状況に加えて左の大外のトリッピアーが負傷と利き足的なものあたりなさを見せるとついにSBのサカを解禁する。しかしながら、いつもよりプレーエリアを外に追いやられた感のあるパルマーはGSのような輝きを見せることができず。左で幅取り役となったサカにはボールがそもそも届かず、まさかのトリッピアーの方がマシそうという状況に。
エゼの投入でさらにライン間の住民を増やすこととなったイングランド。最後までスムーズなレーン整理ができないまま追加タイムに突入する。「全然うまくいっていないけどもなんとかなれ!」というベンチとファンの願いを叶えたのはベリンガム。ロングスローからのアクロバティックなゴールでチームを救う。
さらには延長前半ではセットプレーからケインが一発回答。90分間での決定機逸をチャラにするゴールで早々に逆転する。
イングランドはこの日一番の組織力を発揮し、あっという間に5バックに移行。エゼとサカのWB、パルマーとベリンガムのIHという点をとりに行くことにフォーカスした面々で自陣を固める意味がどこにあるかはよくわからないし、後半にはほぼ敵陣に入ることすらままならなかったスロバキアに進んでボールを渡して自陣に丁重に迎え入れる意味も個人的には全くわからなかったのだが、まぁとにかく5バックに迷いなく移行することができたことはいいことなのだろう。たぶん。
落ち着いたキャッチングで慣れ親しんだ塹壕戦に立ち向かうピックフォードと雑なロングボールでも収めることができるトニー。イングランドの心の故郷はエバートンであることを感じる延長戦を過ごしたイングランドは余力のないスロバキアの追撃を振り切って勝利。今大会初の延長戦を劇的な形で制した。
ひとこと
ふにゃふにゃでも祈れるものがあるということは前日のイタリアを見ていると幸運なことのように思える。
試合結果
2024.6.30
EURO 2024
Round 16
イングランド 2-1 スロバキア
アレナ・アウフシャルケ
【得点者】
ENG:90+5′ ベリンガム, 91′ ケイン
SVK:25′ シュランツ
主審:ハリル・ウムト・メレル