重たい試合の命運を分けたオウンゴール
グループステージが死力を尽くす戦いになったベルギー。ノックアウトラウンドに対峙するのはフランスとタフなモードは続くが、絶望的な開幕戦から比べれば状態が上向きになっているのは救いだろう。
ベルギーの保持の陣形は3-2-5。カスターニュを片上げする形での変形で4-4-2からズレを作りにいく。フランスはエンバペがややインサイドに入って前残りし、その背後をラビオがカバーする4-4-2で対応していく。バックラインにはマークをつけず、ベルギーのCBは自由にボールを持てる状態だった。
ベルギーの起点作りは個人の質的優位ベースのものが1つ。サリバ相手でもそれなりに深さを作れるルカクやウパメカノ相手に反転を決めることができるオペンダを入れてアタッキングサードのスイッチを入れていく。回数は多くなかったが、前を向く形を作ることができればドクも勝負はできそう。フランスはグリーズマンが駆り出される上にカードを出されてしまったのは辛いところであった。
あとは構造的にズレを作るパターンも。片上げされたカスターニュがテオを自陣に引っ張り出すことができれば、その背後をカラスコで攻め込むことができる。そういう状況になれば抜け目なくデ・ブライネが加勢して一気に攻略に挑む。個人の質と構造的のズレで先に手応えを得たのはベルギーだった。
フランスもバックスは自由にボールは持てる状況。2人のCBにカンテとチュアメニ、あとはボールサイドのSBも時折ビルドアップに顔を出すというフランスのスタンスだった。
アタッカーとラビオは中央に集結し、サイド攻撃は人数が少ない状態に。大外はSBが取ることが多く、スピードに乗った状態以外ではなかなかきっかけを作ることができない。その状況を変えたのは後方からのフィード。ピンポイントでの体格フィードでクンデにスペースを与えるチュアメニは見事。何もないところからテュラムのシュートシーンを作り出すことに成功する。
左のテオもスピードに乗るシーンを作ることで40分付近にようやく押し込むフェーズに入るフランス。さらには中央のチュアメニ、サリバなどが即時奪回から波状攻撃に移行する守備を披露することでペースは緩やかにフランスに流れる。サイドの道を通し、中央ブロックのボール奪取のサイクルを回すことで停滞気味の序盤を少しずつ動かしていく。だが、こちらもベルギーと同じく得点には至らないままハーフタイムを迎えることとなった。
後半の頭もペースはフランス。少しラインを上げたベルギーに見えたが、特にホルダーへの圧力が強まっているわけではない。よって、ベルギーは背後のスペースをフランスに渡してしまう格好に。サイドからスピードアップはもちろん、テュラムが中央で奥行きを作る動きを見せるなど、前半にあまりなかった光景も見られるようになった。
苦しい状況となったベルギー。単発でカラスコが抜け出すシーンを作り出すも、テオが素晴らしい戻りでこのチャンスを潰す。
ベルギーはオペンダに代えてマンガラを投入。デ・ブライネを1列上げる形の変更を施す。MF仕事をするデ・ブライネが入ったことで枚数的に優位を確保する。ただ、オナナもマンガラもデ・ブライネの引力を使う感じはせず。外にきっちりサリバに追いやられる機会が増えたルカクが孤立するとなると苦しい。
試合は落ち着けたが、展開は引き寄せられない状況のベルギー。だが少ないきっかけでチャンスを構築に成功すると、デ・ブライネが絶好機を迎えるが、このシュートはメニャンがシャットアウト。先制を許さない。
すると、これをひっくり返す形でフランスが先制。コロ・ムアニはサイドに押し出される格好になったが、強引に打ち切る姿勢が功を奏してオウンゴールを誘発する。
最後は3-4-1-2にシフトチェンジしたベルギー。外から外に揺さぶることでフランスを自陣に釘付けにしたが、最後までチャンスを活かすことができなかった。
苦しみながらもオウンゴールで勝ち上がりを決めたフランス。強豪対決を制してベスト8に駒を進めた。
ひとこと
結構重めの試合であったが、やらせないところをきっちりやるというメリハリのところと対応できる局面の幅でフランスがやや勝っていたかなという印象の試合だった。
試合結果
2024.7.1
EURO 2024
Round 16
フランス 1-0 ベルギー
デュッセルドルフ・アレナ
【得点者】
FRA:85′ ヴェルトンゲン(OG)
主審:グレン・ニーベリ