中盤化したヤマルが仕組みとクオリティの両面で圧倒
1ヶ月の宴もいよいよ佳境。決勝の座をかけてここまで負けなしの2チームが激突する。ボールを持つスタートとなったのはスペイン。無理にプレスに行かないフランスに対して、スペインのバックスが余裕を持ってボールを動かす展開。
中央が堅いフランスに対して、外から勝負をかけたいスペインだが、要注意人物であるヤマルにはラヴィオが助太刀してのダブルチーム。一方のフランスの保持も中央の噛み合わせをがっちり行ったスペインに対して、外からWGがボールを持って勝負する形に。
この両チームの特徴はWGが単騎で勝負を仕掛けられるクオリティを持っていること。というわけでまずは両チームともサイドからWGを起点にきたチャンスメイクが序盤は炸裂。ヤマルの大外からのクロスに対してオルモの背後から飛び込んだスペインが先に決定機を迎える。
だが、このチャンスをスペインが逃すと、次のチャンスが巡ってきたフランスが先制ゴールをゲット。右のデンベレの旋回からのサイドチェンジから、エムバペがクロスを上げてアシスト。ファーに逃げることでフリーになったコロ・ムアニのゴールでフランスが先行。サイドをめぐる決定機の応酬を制したのはフランスだった。
シンプルなサイドアタックではフランスに軍配が上がる立ち上がりになったが、スペインはインサイドにヤマルが登場することでフランスを揺さぶる。サイドでヤマルが受ける時はテオとラヴィオのダブルチームであったが、インサイドに入るヤマルにテオはついていく素振りを見せなかったし、ラヴィオは中央にいる時はスペインの中盤と同数で噛み合っているので、ヤマルを常に監視するわけには行かなかった。
フランスからすればいくら浮いたとはいえあんな簡単に一撃を仕留めてしまうのは聞いていない!というところだろう。ヤマルが自由になればこれくらいやれるという才能を示すミドルを放ち、試合を振り出しに戻す。
勢いが止まらないスペインはヤマルの登場で4人になった中盤で試合を完全に掌握。中央で自由を得たオルモが追加点を奪い、あっという間に逆転する。
リードをするとこのスペインは厄介である。フランスはマンツーでスペインの中盤を抑えているのだけども、スペインの保持はバックラインがきっちり関与するので面倒くさい。ただ回されるだけならば、まぁ放っておいてロングカウンターでもいいのかもしれないが、ミスはなかなか起きないし、ヤマルの中盤化とかナチョの列上げのように放置するとクリティカルなところまであっさり侵入されるのが面倒である。
一方のフランスはデンベレの横断以外にアタッキングサードでの解決策を見つけることができず。チュアメニのサリーはスペイン相手にプレスを落ち着かせることはできていたが、やや攻撃が前後分断気味になることが多かったようにも思う。
迎えた後半、スペインは同じく保持からボールを動かしていく。これに対して、フランスは強気の守備で対抗。バックスがスペインの前線にガンガンついていく姿勢でなるべく高い位置でボールを奪うためのアクションをしていく。
一方のスペインもニコ・ウィリアムズの抜け出しから裏を取りかけるが、メニャンの驚異的な飛び出しでカバー。ゴール方向に向かってくるわけでもないニコ・ウィリアムズにあのタックルを仕掛けられるGKはエデルソンとはまた別方向の狂気を宿しているなという感じであった。
後半もリードしているスペインは強かった。この日はやはりバックスがポゼッションへの関与が際立っている。後方からボールを運ぶことが出来るラポルト、逆サイドからのサイドチェンジを綺麗に受け取るククレジャなどプレミア経験組がきっちりとスペインの風を吹かせていたのが印象的だった。
フランスは4-2-3-1への変更からムバッペのポスト&バルコラ、デンベレの広い攻撃から反撃を狙ったり、ジルーというポゼッション型電柱の先駆けを投入することで中央に起点を作るなど様々な工夫を見せる。しかしながら、最後までゴールを破ることはできず。出場停止多数で苦しい戦いになるかと思われたスペインだが、フランスを下して決勝戦への進出を決めた。
ひとこと
ヤマルの中盤化を上回るアイデアがなかったフランス。まぁ、素のままでも強いんだけど、保持で機会を限定してくるスペインに対してはそれでは十分ではなかったということだろう。
試合結果
2024.7.9
EURO 2024
Semi-final
スペイン 2-1 フランス
フースバル・アレナ・ミュンヘン
【得点者】
ESP:21’ ヤマル, 25‘ オルモ
FRA:9‘ コロ・ムアニ
主審:スラヴコ・ビンチッチ