さて今節も。
①ウォルバーハンプトン【13位】×チェルシー【5位】
■機会が均等ならば
4バックに挑戦中のウルブスだが、ここまではなかなか労力に見合った結果を出しているとはいいがたい。おそらくそういう思いはヌーノの中にもあるのだろう。この試合では5バックに回帰する。
個人的にウルブスに5バックの方が適していると思った理由は前線にバイタリティがあるから。インサイドハーフとストライカーを兼務していたネトが代表格。今季は1人2役こなすエネルギーでチームを牽引している。この試合ではポデンスやファビオ・シルバも低い位置まで引いて守備をする。入れ替わりながら中盤のネベスとデンドンケルを助ける。ロングカウンターとプレスバックする守備の兼務が可能なこの陣容ならば、多少低い位置まで引くことがあっても問題はない。
ということで気になるのはボールを持つ機会を与えられたチェルシーに対してブロックが通用するかどうかである。5-2-3気味の配置において空きやすいのはサイドの浅い位置。この位置を活かすのが上手いのは本来はジエフのクロス。しかし、彼は不在ということで、ウルブスの5バック回帰は対症療法的にも効果があったように思える。
しかしながら、チェルシーは何とかこじ開けに成功。クロスに好調のジルーが合わせて先制点を取る。ただ、少ないチャンスをウルブスがモノにして追いつくと、そこからリズムはウルブスに。攻めの機会が均等になってしまうとこの日の切れ味はウルブスの方が上。前線のコンビネーションと前がかりになるチェルシーの裏をとることでチャンスを有効利用する。
チェルシーは強引に点を取りに行くやり方がいささか中途半端。スペースがない状態のジルー⇒エイブラハムは機能しなかった上に、なんとなくテンションが下がって引き分けで店じまいするのかな?と思いきや最後の最後で決勝点を奪われるという拙い試合運びを見せてしまった。
試合結果
ウォルバーハンプトン 2-1 チェルシー
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:66′ ポデンス, 90+5′ ネト
CHE:49′ ジルー
主審:スチュアート・アットウィル
②マンチェスター・シティ【9位】×ウェスト・ブロム【19位】
■通説はマイナスだけ。獅子奮迅の3センターとジョンストン
ここ数試合はボールを持ちながらバックスの脆さを隠すことに取り組んでいたウェストブロム。しかし、相手はその道の大家ということで、今回は潔くボールを渡して守備に専念する。だとしたら4バックなの?と思いきや、SHも下がることを義務付けられている6バック気味であった。
さて、本来ならばこれはウェストブロムの完敗パターンである。引いて受けた時の脆さは今シーズン要所要所で見られており、決してPAに要塞を築けるようなタイプのチームではない。
それにシティ相手に90分間ボールを渡して主導権を握らせるというのは自殺行為に等しい。無抵抗な相手を粉砕できる攻撃力があるチームにブロックを敷いて迎え撃つのは座して死を待つことに等しいのである。しかし、この通説は残念ながら一昔前の物になってしまったようだ。
縦に揺さぶりをかけられればシティは先制点のシーンのようにマイナスのスペース創出でシュートシーンを作れるが、それが出来るのはカンセロ⇒スターリングの得点シーンを除けば、ワンツーでレーン移動していくデ・ブライネくらいの物。いつもなら引いて受けるのがしんどいウェストブロムだがソーヤーズ、ギャラガー、リバモアのユニットとしては初先発となる3センターのスライドにシティは手を焼いていた。
結局、押し込むもののシュートチャンスを作れないシティは最後の一手としてデ・ブライネのアレクサンダー=アーノルド化に走る。確かにSHが下がるので、SBの位置はフリーになりやすいのだが、まさかそんなことをはじめるとは思わなかった。そして割と惜しかった。しかし、そこはジョンストン。
時にはアワアワする場面も目立つウェストブロムの守備陣相手にこじ開けられなかったシティ。自らのバックスが少ない守備機会でアワアワしてしまうというマイナスの通説だけを残して、ウェストブロムにとどめを刺せないまま試合が終わってしまった。
試合結果
マンチェスター・シティ 1-1 ウェスト・ブロム
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:30′ ギュンドアン
WBA:43’ OG
主審:ピーター・パンクス
③アーセナル【15位】×サウサンプトン【4位】
■共にアンハッピーな退場劇
昨季と今季でこんなにも下馬評の違う対戦カードもなかなかない。今季、このタイミングならば明らかにサウサンプトンが有利の対戦だろう。直近のブレイズ戦では、ボール保持でも試合をコントロール。大人な一面を見せた。
この試合でもボール保持でリズムを作る。アーセナルは前線の流動的な動きに対して、過剰に動かされてしまうばかりでボールを取り返すことができず。さらにサウサンプトンはポスト+裏抜けのコンビネーションで先制点を確保。先制点を手に試合をコントロールしていく。
アーセナルの光明はやっと流れの中からの得点をオーバメヤンがゲットできたこと。それ以外の懸念についてはレビューを読んでくれ!その後、数的不利になったことで試合は逆に膠着。広いスペースを柔軟に使うことで生き生きしていたサウサンプトンの攻撃は、引きこもるアーセナル守備陣相手に鈍器で殴る方針にせざるを得なくなる。元々に比べるとやや不得手な形になってしまったかなと思う。アーセナルが10人になったことであまり幸せになったチームはいなかったエミレーツであった。
試合結果
アーセナル 1-1 サウサンプトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:52′ オーバメヤン
SOU:18′ ウォルコット
主審:ポール・ティアニー
④リーズ【14位】×ニューカッスル【12位】
■タガが外れた3失点目、右往左往の行く先は?
共に少し調子が上がらないチームの対戦となった。リーズの肝は相手に対してテンポを引き離すことができるかどうか?という点なのだが、この試合では立ち上がりから撤退するニューカッスル相手に手を焼いていた。
しかしながらニューカッスルもまた難しい展開になった試合。高い位置からのボール奪取はままならないし、かといって裏を消すわけではない。一時期はボール保持に舵を切ったものの、直近では撤退して質の高い前線の選手たちにゆだねる。ウィルソン、ジョエリントンなど好調を維持するストライカーにすべてを託すことは悪いことではないのだが、いかんせん守備のブロックの強度が低い。
ボール保持で自分たちの時間帯を作りつつもセットプレーの甘さで追いつかれるリーズ。一進一退の攻防の中で試合を決定づけたのは終盤に決まった3得点目。これで明らかにニューカッスルのタガが外れてしまう。緩慢なリトリートが相手ならば一気に展開はリーズの独壇場に。ここからタコ殴りにして流れを圧倒的に引き寄せた。
ニューカッスルは集中力が完全に切れてしまった部分もあるが、質の高い前線を活かすためのブロック守備を仕込めていないのが気掛かり。今季はボール保持に振れた後に、堅守速攻系に戻ろうとしているが、そのベースがない状況だ。クオリティもそうだが、まずは向かう先を定めたいところである。
試合結果
リーズ 5-2 ニューカッスル
エランド・ロード
【得点者】
LEE:35′ バンフォード, 61′ ロドリゴ, 77′ ダラス, 85′ アリオスキ, 88′ ハリソン
NEW:26′ ヘンドリック, 65′ クラーク
主審:シモン・フーパー
⑤レスター【3位】×エバートン【7位】
■強引さを武骨さでねじ伏せる
チェルシー相手に見せたソリッドなベースはこの日も健在だったエバートン。中盤の徹底マーク色はチェルシー戦に比べれば薄まったものの、4-3-3に回帰してからは2試合連続で堅実なパフォーマンスを見せている。やはり対人に強度がある3センターの行動範囲を抑制したのが1つポイントになるか。1人の賄う範囲を少し狭くすることで間をこじ開けたいレスターの門番として3センターが守備で優位に立つことができる。
負傷交代したアランよりもBtoB色が強いドゥクレがアンカーに入っても成立するのはこのため。マンマークで追いかけるところと、引き下がって受ける部分の使い分けが今のエバートンはいい。
レスターはヴァーディの裏抜けからシュート機会はあったが、チャンスは散発的。マークの受け渡しを惑わせるのに有効なのは斜め方向の動きだが、レスターは両ワイドのアタッカーが内側から斜めにゴール方向にドリブルをする以外はこの日の斜め成分は少なかった。バーンズもウンデルも優秀な選手だが、網を張った中央に突っ込んでいくのはあまり賢くはない。
攻撃において存在感を出しているのはイウォビ。右サイドから内に入り込むような細かいドリブルで時間を稼ぎ、左の大外でリシャルリソンが勝負するシチュエーションやそのあとのキャルバート=ルーウィンへのクロスへの道筋を整えている。決して豊富なバリエーションはないが、少ない手段を精度が高く実施することで今のエバートンの攻撃は成り立っている。
スマートさや柔軟さは課題になるだろうが、武骨に持っている武器を活かすための4-3-3回帰で上昇気流に乗りつつあるエバートン。欠点を覆い隠すことに成功したアンチェロッティのエバートンはどこまで進むことができるだろうか。
試合結果
レスター 0-2 エバートン
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
EVE:21′ リシャルリソン, 72′ ホルゲイト
主審:リー・メイソン
⑥フルハム【18位】×ブライトン【16位】
■理屈は詰め切れず
強い相手を苦しめることもある両チームだが、いずれも相手を苦しめる際には理詰めの色合いが強い。理に適った前進ができるかどうかが彼らの勝利の第一条件である。
そういう意味ではこの試合は理詰め対決。より論理的にボールを前に進めることができたのはブライトンの方だったか。フルハムのプレスに対して、うまく配置をずらしつつ、大外を使いながらも前進していく。ただし、この日は仕上げのクオリティがイマイチ。最終局面での崩しの質が高くシュートの数は多いものの、得点が決まらないというのはブライトンあるある。しかしながらこの日はその頻度がやや乏しかったか。頻度が少ないとなるとちょっとこのチームは厳しい。
プレスに苦しんだのはフルハム。ハイプレスで後方にスペースがあるという状況自体はフルハムにとっては悪い状況ではなかったが、この日は少し剥がすところで苦労。ブライトンを押し下げるほどのビルドアップを見せることは稀で、プレスを外す軽さを見せることはできなかった。
ようやく前進できた場面でも、相手のブロックが整うのが先。どうも崩しのキッカケがつかめない。細い糸口は前線の個人技。ロフタス=チークが抜け出した場面はこの試合では最も決定的な場面だったが、ここはライアンの穴を埋めるべく奮闘したサンチェスが立ちはだかる。
決定的なチャンスはむしろフルハムの方があったかもしれないが、決め手を欠くのは両者同じ。理屈を詰め切れずに残留争いのライバルに勝利することはできなかった。
試合結果
フルハム 0-0 ブライトン
クレイブン・コテージ
主審:ロベルト・ジョーンズ
⑦リバプール【2位】×トッテナム【1位】
■策を打ち砕いた光と影の若武者
中堅の突き上げが目立つ今季のプレミアリーグだが、対照的にビッグマッチの内容が軒並み見掛け倒しというのが今季のあるあるである。ビック6はまるで頼りない大関陣のような今季においては、彼らの対戦がジリジリはじまり痛み分けの引き分けに終わることも珍しくはない。
そんな中で迎えた首位決戦は看板に見合った素晴らしい内容だったといえるだろう。はじめに仕掛けたのはトッテナム。メンバー表を見る限りはソンとベルフワインを両翼に配し、トップ下にロチェルソを置く4-2-3-1かと思ったのだが、蓋を開ければトップ下にはソン、サイドにはシソコを配置するやり方に打って出る。
トッテナムのブロック守備の問題点は、中央にいるシソコがサイドに釣りだされた時に空く内側のスペースが埋められないこと。シソコの初期配置をサイドにしたということは、初めから彼にサイドを任せることでインサイドにできるズレを回避しようということだろう。
トッテナムは明らかに中央を封鎖し、長いカウンターを主体で戦う意志を見せていた。タメの効く役割だったエンドンベレよりも、奥行きをもたらせるソンを中央でスタートさせるということはいつもよりも直線的にゴールに向かうという意志の表れ。実際にそれで得点まで行っているのだから大したもの。アーノルドの裏を突くように開き、内に入り込むようにフィニッシュをするソンの見事なオフザボールの動きだった。
そんなトッテナムの目論見がかなわなかったのは準備したブロック守備で逃げ切れなかったからである。1得点目はラッキーな部分もあったが、カーティス・ジョーンズがパス交換からトッテナムにとっては入られたくない(だからシソコをサイドに置いた)ハーフスペースに侵入したご褒美といえそうだ。
そして最後のセットプレーではフィルミーノがヘッドを叩きこみ決勝点。1点目の際の大きな展開で起点として働き、2点目の時はアルデルワイレルドに競りかけるようにしてフィルミーノのマークを分散させたウィリアムズは殊勲。90分間輝きを放ち続けたジョーンズほどは目立たなかったが、彼もまた影の立役者。若手の活躍でモウリーニョの策を打ち砕いたリバプールであった。
試合結果
リバプール 2-1 トッテナム
アンフィールド
【得点者】
LIV:26′ サラー, 90′ フィルミーノ
TOT:33′ ソン
主審:アンソニー・テイラー
⑧ウェストハム【6位】×クリスタル・パレス【11位】
■致し方のない4バック移行、数的優位を前に停滞
この試合に限らずミッドウィークの試合を見ていて思ったのが、中堅チームたちのパフォーマンスが息切れ気味だなということ。ここまでは週2を義務付けられている欧州組を尻目に、1週間のインターバルを活かして善戦というパターンが多かった。
しかし、ここから2か月ほどはそのアドバンテージは薄まる。むしろ選手層の薄い中堅チームの方が厳しい。ここまで好調なウェストハムや強いクラブ相手にも一泡吹かせるポテンシャルがあるクリスタル・パレスもこの試合ではやや低調気味だ。
ざっくりとした展開を言うと、共に中盤でのボールロストが頻発し、落ち着いたボール保持でゴールまで進むことができない。ウェストハムは5バック⇒4バックへの移行に苦労しており、5バックのノリで最終ラインが守っているシーンが散見。アーセナルほどではないけど、空いていいスペースとそうでないスペースの区別がやや怪しく、従来ほどのブロックの堅さは感じない。先制点とベンテケのゴールも、その直後の突破の許し方も5バックだったらあまり見なかったシーンである。
ただ、ウェストハムの場合は長いボールを収めてキープできるタイプではないアレが1トップだと孤立してしまうのでトップ下に誰かしら置きたいのはよくわかる。4バックにシフトする理由はあるチームだと思う。
一方でパレスも苦戦。まず、直近の守勢に回るチーム相手にはそれになりに機能していたマッカーサーとミリボイェビッチのコンビはとにかく運べない。そして押し込まれた時のサイドの守備が怪しい。アレのアクロバティックなシュートは褒められるべきだが、エゼがなぜサイドを捨ててPA内に入っていったのかはよくわからない。この日のパレスは攻守にソリッドではなかったといえる。
先制ゴールしたベンテケが退場してからはウェストハムがブロック攻略をすることに。しかし、これはそこまでありがたいことではなかったように思える。パレスを仕留め損ねたハマーズ。上位進出にはもう一味足りないようだ。
試合結果
ウェストハム 1-1 クリスタル・パレス
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:55′ アレ
CRY:34′ ベンテケ
主審:デビット・クーテ
⑨アストンビラ【10位】×バーンリー【17位】
■チャンス作りは理想的も
圧倒的なシュート数の差を見るとアストンビラが一方的にバーンリーを釘付けにして攻め立てたように見える。確かにそういう時間帯もあった。ナロー気味に守るバーンリーのバックスに対して、外から押し込んでマイナスにスペースを作り、SBからのクロスでエリアを狙う。エル=モハマディとターゲットの2枚が放り込み役となる。
しかしながら、チャンスのほとんどはカウンター気味な局面から。バーンリーのDF陣を背走させる状況がこの日のシュートチャンスのほとんどであった。セットプレーを除けば、高さで勝るわけではないアストンビラのオフェンス陣がこの局面で優位を取るのは難しい。チャンスをつくるという意味合いではこの手法は悪くはなかったのだが、得点を決めるにはややシュートの精度が伴わなかった。
ただ、バーンリーにもチャンスはあった。この日のアストンビラのメンバー構成はややスタメンを入れ替えたもの。そして、入れ替えた分だけの甘さはあった。特に中盤より後方は軽いファウルが目立ち、バーンリーに落ち着かせる時間ときっかけを与えることになる。
残念ながらバーンリーにも決め手は欠けているのでそのきっかけを決勝点につなげることはできなかった。ただし、アストンビラにも選手層に大きな懸念を残すドローになった。
試合結果
アストンビラ – バーンリー
ビラ・パーク
主審:クレイグ・ポーソン
⑩シェフィールド・ユナイテッド【20位】×マンチェスター・ユナイテッド【8位】
■対策で先制点、裏をかかれ逆転
前の5枚で相手をサイドに誘導し、追い込んだところを潰す。ブレイズのマン・ユナイテッド対策はそんなところだろうか。ビルドアップに不慣れなマン・ユナイテッドのバックスにこれは効果的。そして、対策が成果に現れるのは非常に早かった。前半5分、最終ラインがビルドアップに手間取ったところを見逃さなかったマクゴールドリックが先制点をあげる。
しかしながら、ブレイズの対策には穴があった。マンマークで強く当たるタイプのプレスではないため、最終ラインにはプレッシャーがかからない。それを見逃さなかったのがリンデロフ。そして動き出しをサボらなかったラッシュフォードである。ブレイズの最終ラインはミドルゾーンを位置どるものの、統率されているラインとはいいがたい。ブレイズの対策は早い段階で結果が出たが、それに対するマン・ユナイテッドの対応策も早く結果が出た。
ブレイズにとっては面倒なことに、マン・ユナイテッドにはプレッシャーをかけたとて、それをはねのける実力がある選手もいる。もちろん、ポール・ポグバ。相手を弾き飛ばしつつ、前線裏に決定機となるパスを送ることができる。出し手はポグバ、裏を狙うはラッシュフォードとわかっていても止められないこともある。
対策は良かったが、対応策へのカウンターは用意できなかったブレイズ。トンネルはまだ続いてしまうことになる。
試合結果
シェフィールド・ユナイテッド 2-3 マンチェスター・ユナイテッド
ブラモール・レーン
【得点者】
SHU:5′ 87′ マクゴールドリック
Man Utd:26′ 51′ ラッシュフォード, 33′ マルシャル
主審:マイケル・オリバー
おしまいじゃ!!