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「EURO 2024 チーム別まとめ」~ポルトガル代表編~

目次

代表メンバー

▽GK
ルイ・パトリシオ(ローマ)
12 ジョゼ・サ(ウォルバーハンプトン)
22 ディオゴ・コスタ(ポルト)

▽DF
ネウソン・セメド(ウォルバーハンプトン)
ペペ(ポルト)
ルベン・ディアス(マンチェスター・C)
ディオゴ・ダロト(マンチェスター・U)
14 ゴンサロ・イナシオ(スポルティング)
19 ヌーノ・メンデス(パリSG)
20 ジョアン・カンセロ(バルセロナ)
24 アントニオ・シウバ(ベンフィカ)

▽MF
ジョアン・パリーニャ(フルハム)
ブルーノ・フェルナンデス(マンチェスター・U)
10 ベルナルド・シウバ(マンチェスター・C)
13 ダニーロ・ペレイラ(パリSG)
15 ジョアン・ネビス(ベンフィカ)
16 マテウス・ヌネス(マンチェスター・C)
18 ルベン・ネベス(アルヒラル)
23 ビティーニャ(パリSG)
25 ペドロ・ネト(ウォルバーハンプトン)

▽FW
クリスティアーノ・ロナウド(アルナスル)
ゴンサロ・ラモス(パリSG)
11 ジョアン・フェリックス(バルセロナ)
17 ラファエル・レオン(ミラン)
21 ディオゴ・ジョタ(リバプール)
26 フランシスコ・コンセイソン(ポルト)

GS 第1節 チェコ戦

 

ピンズドの交代策でポルトガルが薄氷の勝利

 第1節の最後を飾るのはポルトガル。初戦はチェコとの一戦となる。

 立ち上がりは高い位置から人基準でハメにいく様子も見せたチェコだったが、徐々にその形は沈静化。5-3-2で中央をきっちり守る形を組むように。トップの守備はポルトガルの中盤からスタートするイメージである。

 ポルトガルの保持はMFロールの選手が多いのが特徴である。序盤の落ち着かない展開の中で低い位置まで降りるベルナルドはシティで見る日常であるし、MFにマークが強まるのを見てインサイドに絞りながらその背後に入っていくカンセロも普段着。デフォルトで中央に立つブルーノとヴィチーニャに加えてこの2人が中盤に加わる。

 ギャップに入る中盤ロールからラインブレイクして奥を取る選手にスルーパスを出してロナウドに向かって速いパスを出すことができれば理想かなというポルトガル。ただ、出し手役が多い分、背後に走るロールをこなす選手が少し少ない感じがするのがポルトガルの微妙なところ。カウンター局面であればスペースに走る人も自ずとはっきりするので、そういう意味でもトランジッションの成分が強い方が助かるかなという感じ。

 基本的には横断をしながら薄いサイドを作って狙っていくイメージのポルトガルだが、その過程で虚をついたように縦にパスを入れるスキルがあるのが怖いところ。チェコとしては閉じているつもりの中央に刺されるシーンもあったし、パスを出した後に自らが突撃しているヴィチーニャは厄介極まりない。

 裏抜けの役割がはっきりしない分、右サイドはあまり有効な攻撃セットが見えてこなかった感じがあった。シンプルクロスでロナウドの高さを狙うパターンもあるが、外から狙うのであればドリブルがある左サイドの方が有力。レオンの仕掛けと中盤からの鋭い縦パス、そしてカウンターがポルトガルの主な攻略パターンと言っていいだろう。

 チェコの保持はゆったりとしたポゼッションが少なめ、ロナウドがマーカーであるフラナーチは左右に動けばフリーになることはできていたが、シャドーの守備意識が高いポルトガルに対して、それ以外のビルドアップ隊はあまり呼吸ができる感じはしなかった。

 チェコの攻撃は押し込まれることが多い分、ポルトガルよりもさらにトランジッション偏重。2トップへのロングボールはそれなりに収まるが、彼ら2人で攻撃を完結させられる馬力はなさそうな情勢。チェコ側もそれはわかっているようで時間を作りながら後方の攻め上がりを待つことを優先する。コーファルが大外からクロスを上げる時間を作れれば満点という感じだろう。

 それなりにチャンスメイクの形は見えていた両軍だが、クリティカルにゴールに近づくシーンは少なめ。試合はスコアレスでハーフタイムを迎える。

 迎えた後半もボール保持のベースはポルトガル。微妙な変化としてはチェコのプレスの意識は後半の頭にやや強まったこと。それに対するポルトガルはオフザボールの動きが重く、なかなか自陣からのビルドアップでズレを作ることができない。

 左右の攻撃の偏りも後半の変化点。どちらかといえば左サイドの攻め筋が多かった前半だが、後半は右のベルナルドにボールを集約。少し引いてボールを受けるベルナルドが開けたスペースに誰かが飛び込む形で奥行きを作り、ここからクロスを上げていく。

 押し込まれると苦しいチェコ。選手交代に伴い5-4-1に変更。サイドの守備を強化する。だが、この直後にチェコは先制点をゲット。数少ない攻め上がりの機会に勇気を持って後方の選手たちが高い位置に出ていく。押し下げてのクロスからのセカンドボールをミドルで叩き込んで先制。

 チェコはここから2列目がかなり低い立ち位置を取ることで自陣をプロテクト。ポルトガルは押し込みながらチェコを攻略するフェーズに突入する。

 再び試合が動いたのは選手交代がきっかけ。メンバー交代に伴い左の大外に入ったメンデスの空中戦からの折り返しがオウンゴールを誘発する。

 このファーのクロスはロナウドをターゲットにする形でも。ジョタがゴールを押し込んだように見えたが、待ち構えたロナウドが僅かにオフサイド。セレブレーションにまつわる両軍の小競り合いに基づくもやっと感がただ残るだけとなってしまった。

 以降はオープンな打ち合いに。一度引きこもるマインドからトランジッションきっかけならばきっちり前に出ていく意識を持ち直したチェコは見事なメンタリティであった。

 しかしながら、またしても試合を決めたのはポルトガルの交代策。遅過ぎたかと思われた3枚替えは見事に結実。左の大外のネトが見せた突破からの折り返しをこちらも交代で入ったコンセイソンが決めてポルトガルは土壇場で決勝点を手にする。

 試合後はロナウドのハグで祝福を受けたコンセイソン。マルティネスの冴えた交代策が炸裂したポルトガルが薄氷の勝ち点3を手にした。

ひとこと

 交代策がピンズド。終盤に出てくるネトはただの嫌がらせである。

試合結果

2024.6.18
EURO 2024
グループF 第1節
ポルトガル 2-1 チェコ
ライプツィヒ・アレナ
【得点者】
POR:69′ フラナーチ(OG), 90+2′ コンセイソン
CZE:62′ プロヴォド
主審:マルコ・グイダ

GS 第2節 トルコ戦

ミッションコンプリートのポルトガル

 初戦は快勝を決めたポルトガル。今節の相手はこちらも勝利で初戦を飾ったトルコ。勝った方の首位通過が確定するグループFの大勢を決する大一番である。

 気合い十分で入ったのはトルコ。前線と中盤が連動するハイプレスでポルトガルのバックスを追い込んでいく。ポルトガルは左サイドに出張するベルナルドの裏抜けから回避するなど、ショートパスを組み立てを軸としたパスワークでこのハイプレスを回避する。

 初手での奇襲が効かないことを悟ったトルコはここからブロックを構築してリトリート。CHのアイハンが最終ラインに入ることで5バックに変形し、5-4-1の形でミドルブロックを組んでポルトガルの保持を迎え撃つ。

 ポルトガルは右サイドは多角形のユニットでポジションチェンジを多用。大外を取ることが多かったベルナルドを基準点にカンセロ、ヴィチーニャ、時には降りてくるロナウドなどが顔を出し、ブルーノなどが裏抜けから仕上げの機会を伺う展開。

 一方の左サイドはよりシンプル。大外のレオンと連携するメンデスの二人称からシンプルにクロスを入れていく。レオンにはトルコが時折3枚で監視するなど警戒の跡が目立った。

 この二人称の攻撃から先制したポルトガル。枚数を引き付けつつ、外を回ったメンデスを活用したレオンの冷静さが際立ったシーン。メンデスの折り返しはトルコの選手に跳ね返り、目の前に転がってきたベルナルドが先制ゴールを叩き込む。

 トルコの保持はポルトガルのプレスをこちらも自陣からの保持で解決しにかかる。ベルナルドの背後に忍び込んだカディオールから逆サイドへの対角パスを飛ばし、大外のアクギュンの仕掛けに連動する形でコクチュやチェリクがサイドに顔を出す。クロスに対してはイルマズとアクチュルコールが飛び込む形だ。

 ポルトガルが先制しても互いに保持から解決策を模索する形は変わらなかったが、トルコの2点目のオウンゴールは試合の流れを変えた感。このゴールでベルナルドとレオンがかなりラインを下げて、後方を埋める形での逃げ切りモードに突入する。アクチュルコールの強引な突破は悪くなかったが、トルコにとっては攻略の難易度が上がってしまった痛恨の失点となってしまった。

 迎えた後半、ポルトガルはマネジメントを重視している感の2枚の交代でスタート。トルコはとりあえず陣形を前に押し出してのプレスを行うスタートとなったが、引き続き、右サイドにボールを預けて保持を安定させるポルトガルが特に困らない様子ということを理解してからはミドルブロックに移行した。

 トルコの前向きな姿勢をへし折ったのはポルトガルの3点目。ヴィチーニャが後方から出した柔らかい裏抜けのパスをロナウドが落としてブルーノがゴール。ここまでのポルトガルはどちらかといえば、抜け出しからフィニッシュまでが全力だった感があったので、ロナウドが見せた丁寧なラストパスが得点につながっているのはどこか象徴的でもあった。

 このゴールで試合のテンションは完全に落ちることに。特にリードをしているポルトガルは主力を積極的に入れ替えながら控え選手の強度を試すことで残り時間を過ごしていた。

 2連勝で注文通りの首位通過を決めたポルトガル。スペインと並び第2節で首位通過を確定させた2つのチームのうちの1つとなった。

ひとこと

 ひとまずミッション達成のポルトガル。トルコは2失点目が痛かった。

試合結果

2024.6.22
EURO 2024
グループF 第2節
トルコ 0-3 ポルトガル
BVBシュタディオン・ドルトムント
【得点者】
POR:21‘ ベルナルド, 28’ アカイドゥン(OG), 56′ ブルーノ・フェルナンデス
主審:フェリックス・ツバイヤー

GS 第3節 ジョージア戦

歴史的な勝利で歓喜爆発のジョージア

 スペインとともに首位通過をすでに決めているポルトガル。大幅なターンオーバーでこれまで起用していないメンバーを使い、ここは消化試合の様相である。

 突破のかかったジョージアは当然シリアスモード。前節と同じく5-3-2でシャープに構えてポルトガルのポゼッションを迎え撃つ。

 この試合のジョージアの守備はとても良かった。3-2ブロックの外を回すようにボールを動かすポルトガルに対して、ジョージアはスライドしながら同サイドへの圧縮を敢行。特に左のCBのドバリが前に出ていく姿勢がとても良かったし、周りも1人の選手がチャレンジするのにスライドして陣形を埋めていたのが印象的だった。

 ポルトガルはネトとコンセイソンが大外を取ることで外からつっつく攻撃を仕掛けていきたいところ。だが、先に述べたようなクリーンな追い込み方でなかなかいい形でボールを持つことを許してもらえない。

 さらにジョージアはミスをついてゴール。アントニオ・シウヴァのパスミスを逃さなかった2トップが一気にポルトガルのゴールを陥れることに成功する。

 これ以降もカウンターで鋭さを見せるジョージア。さらには自陣からのポゼッションでも落ち着かせる場面もあり、ジョージアは攻撃に回っても見どころのある展開となる。

 ポルトガルはダニーロがバックラインから保持の舵取りをしつつ、中央のルートを開拓しようとするが、中央のブロックに致命的なダメージを与えることはできず。試合はジョージアのリードでハーフタイムを迎える。

 後半も保持から勝負をするポルトガル。ジョージアもミカウタゼがイナシオの背後をとるなど右サイドからのキャリーで動かしていく。

 すると、再びアントニオ・シウヴァのミスがでたポルトガル。軽率なタックルでロボシヴィリにファウルを犯してしまい、PKを献上。これを仕留めたジョージアがさらにリードを広げることに。

 引き続き勝負をかけて行くポルトガル。右サイドはセメドの加勢やジョッタの登場で定点性を崩しての攻撃に出ていったが、外側でも揺さぶることができず、インサイドでは堅い守備に阻まれ続けてしまう。

 ドリブルで着実に時間を作ることも成功したジョージアは確実に時計の針を進めてリードをキープ。ノックアウトラウンド進出を決めるタイムアップの笛はまさに優勝を決めるような大騒ぎのスタートの合図。ジョージアが歴史的な勝利を挙げて次のラウンドに駒を進めた。

ひとこと

 ブロック守備と敵陣で時間を作る能力の両面でジョージアは高いクオリティを示した。

試合結果

2024.6.26
EURO 2024
グループF 第3節
ジョージア 2-0 ポルトガル
アレナ・アウフシャルケ
【得点者】
GEO:2′ クワラツヘリア, 57′(PK) ミカウタゼ
主審:サンドロ・シェーラー

Round 16 スロベニア戦

笑顔と涙を消し去ったディオゴ・コスタ

 直前の時間の勝者であるフランスとの挑戦権を賭けた一戦である。立ち上がりにペースを掴んだのはグループFの首位通過を果たしたポルトガル。メンデスを最終ラインに残し、カンセロを解放する左右非対称の形からスロベニアの4-4-2ブロックを揺さぶっていく。

 スロベニアの4-4-2は人基準が強め。低い位置にとどまるメンデスに対してはストヤノビッチが出ていくなどプレスへの意識はそれなりにあった。

 ポルトガルの攻撃の主なルートは右サイド。ブルーノ、カンセロ、ベルナルド、ヴィチーニャといったフリーダム系の選手たちが集合。人の基準を失ったスロベニアは押し込まれるフェーズに入る。

 右サイド、特にケアの甘くなる大外からクロスを入れるポルトガル。ベルナルドのインスイングのクロスや、ブルーノのマイナスからのアーリーめのクロスをなどからボックス内に迫る。だが、ファーに待ち構えるロナウドはなかなかドルクシッチ相手に壊すことはできず。単純な競り合いではなかなかアドバンテージが取れないのは切ない。ちなみに左サイドはシンプルにレオンとメンデスの突撃からクロスを上げる形である。

 仕上げがあまりなポルトガルだが、非保持ではきっちりと即時奪回で押し込むことを継続。スロベニアは逃げ出すことができず、一方的なポルトガルペースと言える立ち上がりだっただろう。

 前線への長いレンジのパスが攻撃の起点にならないスロベニア。ロングボールが収まらず、苦戦するスロベニアの2トップ。CB相手だと分が悪いということで、左右に流れてボールを受けるという工夫はいかにもスロベニアらしい。メンデス周辺を狙い撃ちにして行ったスロベニアは少しずつ押し返すチャンスも出てくるように。

 ロナウドがちっとも仕上がらないポルトガルは徐々にサイドでのロストに雑さが見えてくる。こうなるとポルトガルのDFラインの押し上げが遅れる分、トランジッションからシェシュコが中央で収まるように。どうにもならなかった前半の最後にスロベニアの希望の光が灯ったところで試合はハーフタイムを迎える。

 迎えた後半、互いに敵陣に入り込む積極的な立ち上がりとなった。ポルトガルで存在感を発揮したのは右の大外からボックスに入り込んでいくカンセロ。エンドライン側から切り込むような侵入で、スロベニア陣内に攻め込んでいく。

 しかしながら、終点となるべきロナウドは相変わらずボックス内に競り勝つことができず。仕上げのクオリティが上がらないポルトガルはゴールに手をかけることができない。

 一方のスロベニアもカウンターに出ていく頻度を上げることはできずに苦戦。右サイドのサポートに出てくるディアスの背後を取ることができても、最後の砦として君臨するぺぺの牙城を崩せない展開が続く。

 前線の選手を入れ替える余裕があったのはポルトガルだったが、ジョッタはロナウドの引力を利用することができず、コンセイソンはサイドで風穴を開けられないまま停滞。ジョーカーが本来の力を発揮できず、試合は延長戦に突入する。

 延長でも展開は重たいままだった。ポルトガルは4-3-3にシフトするが、左偏重の構造が効果的だったかは怪しかったし、ロナウドにまつわる「終点」問題も未解決。スロベニアはカンセロのミスに漬け込んでボックスに入り込むが、これを止められてしまいこちらもゴールを掴むことはできなかった。

 そうした中で絶好のチャンスを迎えたのはポルトガル。ジョッタのボックス内の突撃に対してドルクシッチがたまらずPKを献上。先制のまたとない機会を得るが、ロナウドのPKはオブラクがストップ。ロナウドが見せた涙も相まって試合は完全にスロベニアの空気感に。延長後半のシェシュコの決定機こそコスタに止められるが、スロベニアのサポーターはPK戦での勝利を確信するかのような表情で延長戦終了のホイッスルを聴いていた。

 しかし、そのスロベニアサポーターの笑顔はコスタによって一瞬で消し去られることとなる。イリチッチの一本目のPKを完璧にシャットアウトし、ロナウドに素晴らしいリベンジの舞台を用意。オブラクにロナウドがリベンジを果たした時点でこのPK戦の結末は見えてしまったといっていいだろう。

 さらに2つのPKをストップしたコスタ。ロナウドの涙とスロベニアのサポーターの笑顔を消し去ったコスタの大活躍により、ポルトガルは3-0のPK戦でのストレート勝利を達成。劇的な結末でベスト8の切符を手にした。

ひとこと

 1つのセーブで流れを引き寄せるGKの恐ろしさを痛感した試合だった。

試合結果

2024.7.1
EURO 2024
Round 16
ポルトガル 0-0(PK:3-0) スロベニア
シュツットガルト・アレナ
主審:ダニエレ・オルサト

QF フランス戦

コスタの壁を乗り越えたフランスが準決勝に

 激闘を制して満身創痍で準決勝に進んだスペインの対戦相手を決める一戦。ポルトガルとフランスの大一番である。

 初手で少し変化をつけてきたのはフランス。ムバッペ、コロ・ムアニの2トップにグリーズマンがトップ下、大外はSBという4-3-1-2のようなフォーメーションでポルトガルに対してズレを作って奇襲を仕掛けていく。

 しかしながら、守勢に回ればそのギャップは自分達に跳ね返ってくる。中央に集まるフランスはポルトガルのSBを誰が監視するのかがポイントになる。グリーズマンを頂点とした4-3-3にはしているが、ムバッペとコロ・ムアニは自陣を埋める守備を常にやるわけではないため、フランスは中盤のカバーで少し仕組みに変化をつけている。

 左サイドはムバッペの背後をカマヴィンガがスライドするという流れは普段からやっているからふつうだが、気になるのは右サイド。見た感じだと、なんとなくコロムアニには戻ってきて欲しい感があるが、間に合わない時はカンテが埋めるという形。コロムアニのプレスバックは遵守されるわけではないため、ポルトガルはメンデスとレオンのところが空くことで攻め込むことができた。

 ポルトガルはベルナルド、ブルーノ、ヴィチーニャなどサイドに流れることでまずはフランスのサイドの守備の基準を確かめていた感があった。だが、結果的に前に進めるのはレオンがボールを持った時。しかしながら、追い越す選手との動きが絶望的に合わず、独力で完結する時以外はボックスに迫ることができない。

 フランスはトランジッション勝負。中盤の戻りが遅れやすいポルトガルに対して内側を進み、左に流れるムバッペで勝負。サイドからズレを作ってクロスを入れていく。

 非保持でも対策を打つフランスはレオンに対して徐々にカンテがダブルチームで監視するように。一番の攻め筋を抑えられたポルトガルだが、今度は右サイドに攻め手をシフト。ポジションを入れ替えながら抜け出す選手を作り、クロスを上げていく。だが、こちらもインサイドとのクロスのフィーリングが合わず、全くチャンスを作ることができない。

 試合は0-0。互いにチャンスが少ない展開でハーフタイムを迎える。

 迎えた後半、やや優勢だったのはフランス。4-4-2ブロックを組むポルトガルに対して、左右のサイドからボールを動かしつつ旋回と大外の裏抜けを使い分けながらボックスに侵入していく。

 ポルトガルはファストブレイクから反撃に出ていこうとするが、この点でもフランスは先手。前半の途中から右サイドに動いたカマヴィンガがポルトガルの一番有力な攻め手であるレオンの制圧に加勢。スピードに乗った状態でも追いつくことができるカマヴィンガの登場でポルトガルの左サイドを抑えにかかる。

 しかし、ポルトガルも黙っていない。それならばと左サイドに顔を出すようになったのはヴィチーニャ。自らが左サイドにボールを運ぶ機会を増やしつつ、カマヴィンガのマークを散らす役割を担う。それだけではなく自らがカマヴィンガを制してボックス内に侵入するところまで進むのだから、さすがのクオリティとしか言いようがない。

 フランスも右サイドにデンベレを登場させることでポルトガルのサイドを押し下げにかかる。これで再びフランスはこちらのサイドの主導権を握ることとなる。後半のフランスの右サイド側の攻防は非常に見応えがあるものだった。

 以降は展開が間延び。決め手を欠いたまま延長に突入した両チーム。ここからはドリブラーが独力でチャンスを生み出す根性を見せる展開となる。デンベレ、コンセイソン、バルコラなど。フランスの方が多いのは単純にポルトガルがジョッタやネトといった選手の投入を渋ったからである。

 単発となるWGの仕掛けをメニャンとコスタが食い止めた延長戦。試合はPK戦での決着となる。PK戦で唯一失敗してしまったのはジョアン・フェリックス。5人全員がコスタの壁を超えたフランスが準決勝進出となった。

ひとこと

 ネトとジョッタよりヌネスとフェリックスを入れる采配には驚いたけども、普通に実を結ばなかった。ムバッペは次の試合に出れるのだろうか。

試合結果

2024.7.5
EURO 2024
Quarter final
ポルトガル 0-0(PK:3-5) フランス
フォルクスパルク・シュタディオン
主審:マイケル・オリバー

総括

異なる個性のサイドアタックとフィニッシュのバランスに苦戦

 おそらく、これがロナウドの最後のEUROになるであろうポルトガル。だが、8年ぶりのタイトル獲得とはならず、フランスを前に散ってしまうこととなった。

 グループステージではスペインと並び、2節目までで首位での通過を決めた2つのチームの内の1つではあった。そう聞くと順調な感じもするが、結果的に王者となったスペインと比べると、内容面ではしんどいものがあった。

 ビルドアップではCBとCHが連携し、SBを解放するのが基本線。特に右のSBに入ったカンセロはフリーロールを務めることが多かった。ビルドアップ隊は左右のサイドを解放することが最優先である。左右のサイドには前進の仕方にかなり個性があった。

 右サイドは不定形。ベルナルド、ブルーノ・フェルナンデスといったMF系の選手たちが入れ代わり立ち代わり出入りしながらフリーマンを作ってクロスを上げていく。左サイドはレオンの単騎。1on1で対面を振り回しながら根性で突破していく形からチャンスを作る。周りを使えればなおいいのだけども、連携らしい連携は見られずに最後まで単騎で押し切る!という感じ。

 単騎型にはコンセイソン、ネトというチェコ戦で結果を出したジョーカーコンビがいて、連携型としてはジョタが控えている形ではある。ジョーカーの機能性としては正直名前の割には微妙だなという気持ちもあった。単騎型はチェコ戦以外でバリューを出すのに苦しんでいたし、連携型のジョタは交代前の選手よりもFW寄りの選手なので、単純に与えられた役割に苦しんでいたように見える。

 しかしながら、やはり一番のノッキングはフィニッシャーとしてのロナウドだろう。ファーサイドを中心に競り合いを仕掛けるのだが、なかなかこのヘディングが枠に飛ばなかった。単純にこの年齢でこれだけガンガンクロスに合わせていくのはすごいなとは思うのだが、相手を外してフリーになる場面は心なしか減ったように思える。

 もっとも、これはロナウドだけの問題というよりは彼以外にターゲットマンがいないというチームの問題である。2列目から飛び込む選手がいれば、もっとクロスの幅は出てくるがそうした動きはあまり多くは見られなかった。もしかすると、崩しにかける人数とのバランスがうまくいかなかったのかもしれない。

 敗れたフランス戦では後方の堅さとトランジッション強度、サイドの大駒の生かし方など、いくつかの項目ががっちりと上位互換な相手を引いてしまった感じ。オウンゴールでビハインドに陥った後になかなか打つ手が見えなかった。今後の指針としてはロナウドに代わるフィニッシャーがラモスで十分か?ということと持て余している感のある崩しの精度の改善がメインになるだろう。

 今大会は残念な結果ではあったが、スロベニア戦はハイライトになる一戦として多くの人の記憶に残るはずだ。決めれば史上初の6大会連続得点となるPKを仕留められないロナウドの涙は画になるし、スロベニアサポーターが盛り上がる空気を涼しい顔でひっくり返したディオゴ・コスタのPK戦の1つ目のセービングも忘れられない。代表戦ってこうだよね!っていう試合を提供してくれた今大会のポルトガルには感謝したい。

Pick up player:ぺぺ
 ロナウドよりも年上で見た目もきっちり老けているのに、プレーは全然老け込まない人。ゆがんだフォーメーションのケツ拭きとかを平気でやれてしまうクオリティは今大会でも維持されていることが証明された。

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