代表メンバー
▽GK
1 インジフ・スタニェク(スラビア・プラハ)
16 マチェイ・コバージュ(レバークーゼン)
23 ビテツラフ・ヤロシュ(シュトルム・グラーツ)
▽DF
2 ダビド・ジマ(スラビア・プラハ)
4 ロビン・フラナーチ(ビクトリア・プルゼニ)
5 ブラディミール・ツォウファル(ウエスト・ハム)
6 マルティン・ビティーク(スラビア・プラハ)
12 ダビド・ドウデラ(スラビア・プラハ)
15 ダビド・ユラーセク(ホッフェンハイム)
18 ラディスラフ・クレイチー(スラビア・プラハ)
24 トマーシュ・ブルチェク(スラビア・プラハ)
▽MF
3 トマーシュ・ホレシュ(スラビア・プラハ)
7 アントニン・バラーク(フィオレンティーナ)
8 ペトル・シェフチーク(スラビア・プラハ)
14 ルカーシュ・プロボド(スラビア・プラハ)
20 オンドジェイ・リングル(フェイエノールト)
21 ルカーシュ・チェルフ(ビクトリア・プルゼニ)
22 トマーシュ・ソウチェク(ウエスト・ハム)
25 パベル・シュルツ(ビクトリア・プルゼニ)
26 マチェイ・ユラーセク(スラビア・プラハ)
ミハル・サディーレク(トゥエンテ)
▽FW
9 アダム・フロジェク(レバークーゼン)
10 パトリック・シック(レバークーゼン)
11 ヤン・クフタ(スラビア・プラハ)
13 モイミール・ヒティル(スラビア・プラハ)
17 バーツラフ・チェルニー(ボルフスブルク)
19 トマーシュ・ホリー(ビクトリア・プルゼニ)
GS 第1節 ポルトガル戦
ピンズドの交代策でポルトガルが薄氷の勝利
第1節の最後を飾るのはポルトガル。初戦はチェコとの一戦となる。
立ち上がりは高い位置から人基準でハメにいく様子も見せたチェコだったが、徐々にその形は沈静化。5-3-2で中央をきっちり守る形を組むように。トップの守備はポルトガルの中盤からスタートするイメージである。
ポルトガルの保持はMFロールの選手が多いのが特徴である。序盤の落ち着かない展開の中で低い位置まで降りるベルナルドはシティで見る日常であるし、MFにマークが強まるのを見てインサイドに絞りながらその背後に入っていくカンセロも普段着。デフォルトで中央に立つブルーノとヴィチーニャに加えてこの2人が中盤に加わる。
ギャップに入る中盤ロールからラインブレイクして奥を取る選手にスルーパスを出してロナウドに向かって速いパスを出すことができれば理想かなというポルトガル。ただ、出し手役が多い分、背後に走るロールをこなす選手が少し少ない感じがするのがポルトガルの微妙なところ。カウンター局面であればスペースに走る人も自ずとはっきりするので、そういう意味でもトランジッションの成分が強い方が助かるかなという感じ。
基本的には横断をしながら薄いサイドを作って狙っていくイメージのポルトガルだが、その過程で虚をついたように縦にパスを入れるスキルがあるのが怖いところ。チェコとしては閉じているつもりの中央に刺されるシーンもあったし、パスを出した後に自らが突撃しているヴィチーニャは厄介極まりない。
裏抜けの役割がはっきりしない分、右サイドはあまり有効な攻撃セットが見えてこなかった感じがあった。シンプルクロスでロナウドの高さを狙うパターンもあるが、外から狙うのであればドリブルがある左サイドの方が有力。レオンの仕掛けと中盤からの鋭い縦パス、そしてカウンターがポルトガルの主な攻略パターンと言っていいだろう。
チェコの保持はゆったりとしたポゼッションが少なめ、ロナウドがマーカーであるフラナーチは左右に動けばフリーになることはできていたが、シャドーの守備意識が高いポルトガルに対して、それ以外のビルドアップ隊はあまり呼吸ができる感じはしなかった。
チェコの攻撃は押し込まれることが多い分、ポルトガルよりもさらにトランジッション偏重。2トップへのロングボールはそれなりに収まるが、彼ら2人で攻撃を完結させられる馬力はなさそうな情勢。チェコ側もそれはわかっているようで時間を作りながら後方の攻め上がりを待つことを優先する。コーファルが大外からクロスを上げる時間を作れれば満点という感じだろう。
それなりにチャンスメイクの形は見えていた両軍だが、クリティカルにゴールに近づくシーンは少なめ。試合はスコアレスでハーフタイムを迎える。
迎えた後半もボール保持のベースはポルトガル。微妙な変化としてはチェコのプレスの意識は後半の頭にやや強まったこと。それに対するポルトガルはオフザボールの動きが重く、なかなか自陣からのビルドアップでズレを作ることができない。
左右の攻撃の偏りも後半の変化点。どちらかといえば左サイドの攻め筋が多かった前半だが、後半は右のベルナルドにボールを集約。少し引いてボールを受けるベルナルドが開けたスペースに誰かが飛び込む形で奥行きを作り、ここからクロスを上げていく。
押し込まれると苦しいチェコ。選手交代に伴い5-4-1に変更。サイドの守備を強化する。だが、この直後にチェコは先制点をゲット。数少ない攻め上がりの機会に勇気を持って後方の選手たちが高い位置に出ていく。押し下げてのクロスからのセカンドボールをミドルで叩き込んで先制。
チェコはここから2列目がかなり低い立ち位置を取ることで自陣をプロテクト。ポルトガルは押し込みながらチェコを攻略するフェーズに突入する。
再び試合が動いたのは選手交代がきっかけ。メンバー交代に伴い左の大外に入ったメンデスの空中戦からの折り返しがオウンゴールを誘発する。
このファーのクロスはロナウドをターゲットにする形でも。ジョタがゴールを押し込んだように見えたが、待ち構えたロナウドが僅かにオフサイド。セレブレーションにまつわる両軍の小競り合いに基づくもやっと感がただ残るだけとなってしまった。
以降はオープンな打ち合いに。一度引きこもるマインドからトランジッションきっかけならばきっちり前に出ていく意識を持ち直したチェコは見事なメンタリティであった。
しかしながら、またしても試合を決めたのはポルトガルの交代策。遅過ぎたかと思われた3枚替えは見事に結実。左の大外のネトが見せた突破からの折り返しをこちらも交代で入ったコンセイソンが決めてポルトガルは土壇場で決勝点を手にする。
試合後はロナウドのハグで祝福を受けたコンセイソン。マルティネスの冴えた交代策が炸裂したポルトガルが薄氷の勝ち点3を手にした。
ひとこと
交代策がピンズド。終盤に出てくるネトはただの嫌がらせである。
試合結果
2024.6.18
EURO 2024
グループF 第1節
ポルトガル 2-1 チェコ
ライプツィヒ・アレナ
【得点者】
POR:69′ フラナーチ(OG), 90+2′ コンセイソン
CZE:62′ プロヴォド
主審:マルコ・グイダ
GS 第2節 ジョージア戦
特徴くっきりな両チーム一戦は痛み分け
まず、ボールを握ったのはチェコ。ビルドアップ時にはホレシュがSBに入り、クファルがSHにシフトする4バック化でボールを動かしていく。
ズレは作るが仕上げはシンプルなチェコ。5-3-2で中央を固めるジョージアに対して無理をせずに外循環でボールを動かしていく。中央で横断ができれば、サイドのより深くまで入り込むことができるが、ジョージアはなかなかこれを許さず。チェコとしてはジリジリとした展開が続く。
それでも高さがあるチェコ。サイドからのクロスやセットプレーから制空権を握り、チャンスを作っていた。シンプルな破壊力勝負でチェコはジョージアのゴールに迫る。
一方のジョージアは保持に回るとそれなりに手応えがあった。序盤はクワラツヘリアとツィタイシュヴィリの左サイドのコンビの前進から一気に陣地回復を行うことで景色を変える展開が目立った。しかしながら、時間の経過とともにジョージアは守備陣を動かしながら堅実に前進をするように。マンツー気味にプレスを仕掛けてきたチェコに対して、ジョージアは味方がオフザボールでスペースを作りながらホルダーをサポート。スペース創出と細かいパス交換で前進をしていく。
ジョージアは全員ドリブルが上手いけども、やはりクワラツヘリアは別格。崩しの局面は彼に託されることが多く、左サイドから中央を中心にボックスに迫るためのアプローチを託されていた。
というわけで、圧倒していたシュート数ほど主導権は明確にチェコペースというわけではなかった前半。それを最後に裏付けるようにジョージアは最後の最後にPKを獲得。ハンドで巡ってきたチャンスを仕留めてハーフタイムをリードで迎える。
リードをしたこともあり、ジョージアは後半に5-4-1にきっちりと自陣にブロックを組む方向にシフト。チェコは前半以上にボールを持ちながら攻略に挑む展開となる。
3-1-6と前に重きを置く布陣となっているチェコだが、大外のWBが早い段階で止められることが多く、サイドから抉ることができない。むしろ、チャンスと言えるチャンスは長い距離のカウンターで鋭さを見せたジョージアの方があったと言っていいだろう。
だが、そうした状況をよく救ってくれるのがセットプレーである。ニアで合わせたCKの跳ね返りを押し込み試合を振り出しに戻す。
以降もボールを持つチェコ、カウンターベースのジョージアで試合は展開。だが、チェコはシックが負傷交代、ジョージアは前線がガス欠気味と全体的にジリ貧の流れとなる。
ラストプレーは3対2のカウンターというジョージアの絶好機。終盤にようやく訪れた大チャンスだが、このシュートは枠外。最後の最後に巡ってきたチャンスを決めることはできず、試合はドローのまま決着することとなった。
ひとこと
どいつもこいつもドリブルで仕掛けられるジョージア、面白いね。
試合結果
2024.6.22
EURO 2024
グループF 第2節
ジョージア 1-1 チェコ
フォルクスパルク・シュタディオン
【得点者】
GEO:45+4′(PK) ミカウタゼ
CZE:59′ シック
主審:ダニエル・シーベルト
GS 第3節 トルコ戦
乱戦に持ち込まれるも最後の最後に決勝点を掴み取る
シンプルに勝った方が突破というグループステージ最終節。特に、ここまで勝利がないチェコには3ポイントが大事ということになる。
よって、バタバタを演出したのはチェコ。立ち上がりから中盤でボールを奪い合いつつゴールに迫るアクションに先に手をかけていく。奪ったら少ない人数でフィニッシュまでかけていくチェコは早々に得点を決めようという気概が見えた。
一方のトルコは試合を落ち着かせたい。ギュレルが列を落ちることでボールを受けて少しずつ状況を沈静化。左右にボールを動かしながら、敵陣に進んでいく。敵陣に入っていくと追い込みながら勝負をかけるプレスに出ていくトルコ。CBが開くチェコのポゼッションを片側サイドに追い込んでいく。
徐々にチェコはトルコのポゼッションに対してプレスに行くのがキツくなる。シャドーの位置が下がることで少しずつトルコの保持の時間が長くなる。さらには20分にはバラークが2枚目の警告で退場。これで残り時間は10人になる。
5-3-1のような5-4-0のような形で自陣を固めるチェコに対して、トルコが一方的に押し込んでいく流れに。それでもチェコはカウンターから決定機を創出。左サイドに流れて大チャンスを迎えるが、ギュノクのファインセーブでスコアレスでハーフタイムにたどり着く。
後半も数的優位のチェコが畳み掛ける流れは継続。左右からクロスを上げ続け、セカンドボールを拾うことで波状攻撃を生み出し、最後はチャルハノールが先制ゴールを決める。
失点でいよいよ追い込まれたチェコ。ここからは死なば諸共で前からのプレスで乱戦を仕掛けていく。トルコはこのチェコの姿勢に対して、前半ほど落ち着いて試合を鎮めることができなかった。その結果、チェコはセットプレーからソーチェクが追いつくことに成功。試合は1-1のタイスコアになる。
10人で追いつければ上々ではあるけどもこの試合でチェコに必要なのは勝利。引き続き、乱戦に持ち込みながら落ち着かない展開を仕掛けていく。トルコはカウンターに打って出る機会が当然生まれたが、チャルハノールやギュレルがいなくなった状態では精度が足りない。
どちらに転がるかわからない試合を制したのはトルコ。カウンターからなかなか存在感を発揮することができなかったトスンが終盤にマッチウィナーとなるゴールを決めて勝負あり。乱戦に持ち込んだチェコに屈せず、ノックアウトラウンド進出を決めた。
ひとこと
審判のコントロールもゲーム運びも不安なトルコだったが、なんとか目標達成。ノックアウトラウンド進出を決めた。
試合結果
2024.6.26
EURO 2024
グループF 第3節
チェコ 1-2 トルコ
フォルクスパルク・シュタディオン
【得点者】
CZE:66′ ソーチェク
TUR:51′ チャルハノール, 90+4′ トスン
主審:イシュトヴァン・コヴァーチ
総括
押し込みやすい組み分けでなお・・・
ポーランドと同じく、チェコも欧州を席巻するようなタレントが少なくなり苦しい時期を迎えている印象。この大会でもそうした印象を覆すのは難しいまま大会を終えることとなってしまった。
初戦のポルトガル相手に引く展開になるのは仕方ないところだろう。そういう意味ではきっちりと守るところからの反発力がどこまであるのか?を試される初陣となったともいえる。
結果としていうと、押し込まれるところから反発力に十分なものはなかったなという感じ。前線のシックとクフタの2トップは収まらないことはないのだけども、この2人へのロングボールだけでなんとか攻撃を完結させるのは難しいなという感じ。チェコ側もそれをわかっている様子で、じっくり攻め上がりを待って何とか大外からのクロスまでこぎつけて、全体を押し上げたところから波状攻撃を持っていこうという算段である。
先制点を取ったことである意味この目論見は成功したともいえるのだが、セットプレーとサイドを破られての失点で逆転負け。がっちり引いて守るための後ろの強度もリードした状況でさらにチャンスを作る余裕もないまま叩きのめされてしまった。
ジョージア戦ではより保持に傾倒した流れを試されることとなった。サイドからの保持ベースの流れはシンプルではあったが、ポルトガル相手と異なり高さではアドバンテージを取ることができたので、カウンターでやられて失点をしてしまった分の命綱として機能していた。
最終戦は突破が必須ということで3試合の中でももっとも強度を重視する流れに。しかしながら、そうした勢いが裏目に出ることは往々にしてよくある話。シャカリキに頑張った結果、20分で10人での戦いを余儀なくされることになる。もっとも、後がなくなって乱戦に持ち込むと手ごたえがあったのは興味深かった。
基本的には高さでアドバンテージを取れる相手には押し込むところまで持っていければ通用するが、そうじゃない相手にはかなり手を焼く印象はある。少人数でのカウンターから押し込まれる状況をひっくり返す手段は持っていないので、シンプルな方策で地道に大外からのクロスという素朴な戦い方がメインになるのだろう。
ポルトガルはともかくとしてトルコ、ジョージアは押し込む難易度的にはそこまで高くはないので、組み分け的には恵まれている方だとは思う。が、それでも突破ができなかったことはチェコにとって重くのしかかるかもしれない。
Pick up player:トマシュ・ソーチェク
乱戦になって空中戦で生き生きしだすのはプレミアで何度も見た姿であった。