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「EURO 2024 チーム別まとめ」~フランス代表編~

目次

代表メンバー

▽GK
ブリス・サンバ(RCランス)
16 マイク・メニャン(ミラン)
23 アルフォンス・アレオラ(ウエスト・ハム)

▽DF
バンジャマン・パバール(インテル)
フェルラン・メンディ(R・マドリー)
ダヨ・ウパメカノ(バイエルン)
ジュール・クンデ(バルセロナ)
17 ウィリアン・サリバ(アーセナル)
21 ジョナタン・クラウス(マルセイユ)
22 テオ・エルナンデス(ミラン)
24 イブラヒマ・コナテ(リバプール)

▽MF
エドゥアルド・カマビンガ(R・マドリー)
アントワーヌ・グリーズマン(A・マドリー)
オーレリアン・チュアメニ(R・マドリー)
13 エンゴロ・カンテ(アルイテハド)
14 アドリアン・ラビオ(ユベントス)
18 ウォーレン・ザイール・エメリ(パリSG)
19 ユスフ・フォファナ(モナコ)

▽FW
オリビエ・ジルー(ミラン)
10 キリアン・ムバッペ(パリSG)
11 ウスマン・デンベレ(パリSG)
12 ランダル・コロ・ムアニ(パリSG)
15 マルクス・テュラム(インテル)
20 キングスレイ・コマン(バイエルン)
25 ブラッドリー・バルコラ(パリSG)

■監督
ディディエ・デシャン

GS 第1節 オーストリア戦

八面六臂のカンテが圧巻のパフォーマンス

 前日にオランダが初戦勝利を挙げて順当にスタートしたグループD。本命候補のフランスがいよいよ登場する。

 ポゼッションを握るかと思われたフランスだが、立ち上がりにボールを持つ機会が多かったのはオーストリアの方。ビルドアップは2CBと2CHの4人でボールを動かしていく。CHには動きの自由が与えられており、中央にとどまる形と相手の2トップ脇に立つ形とCBの間に降りる形の3つを使い分けていく。サイバルトが後方に降りる役割を担うことが多かった。

 大外を託すのはSBであり、2列目は中央に絞る形となる。降りるアクションが多いところもショートパスでの繋ぐ意識の強さを感じる。オーストリアはこの中央のコンビネーションで勝負したさがあったけども、さすがにそこはフランス側の中央の強固さが目立つ。カンテ、ラビオ、ウパメカノ、サリバの中央のセクションは強力でパスをことごとくカットしていた。

 オーストリアの積極策は非保持でも。高い位置からボールを追いかけていきフランスのボール保持を阻害する。そこまで収支的には悪くないなと思ったが、なんせフランスの前線にはムバッペがいる。一つのミスが一大事になるだけに冷や汗をかかされたシーンもあった。

 フランスは強気のプレスに対して前線の選手のポストで対抗。楔とセットで必ずオフザボールで追い越すアクションを見せる。レシーバーが突き進むか、あるいはフリーのサイドに展開するかの二択で突き進んでいく。レシーバーとして優秀だったのはテオとラビオの2人であった。

 蹴って回収というメカニズムは相当機能していたように見えたオーストリアだったが、30分を過ぎたあたりから少しずつフランスがボールを動かしていく。サリバとカンテの落ち着きがオーストリアのプレス隊に少しずつ撤退を強いるようになっていく。

 すると、押し込むフェーズからフランスが先制。サイドに流れることが常態化していたムバッペの折り返しがオウンゴールを誘発。これで試合を動かす。オーストリアとしてはバウムガルトナーの決定機という前半最大のチャンスを逃した直後だっただけにダメージは大きかったことだろう。

 後半、オーストリアはハイプレスを再起動。高い位置から出ていってハイプレスを行うことでフランス相手に主導権を握る。しかしながら、フランスは前半よりもゆったりとプレスを回避することに成功。この辺りの耐性はさすがである。

 前半に比べてもさらにパフォーマンスを上げたなと感じたのはカンテ。出足鋭いインターセプトからカウンターの起点になったり、自陣の深い位置でのボール奪取から局面を進めるミドルパスを刺したり、プレスを自陣で回避したりなどかなり豊富な活躍。インターセプトはともかく、プレス耐性やミドルパスセンスが相当優れているのは凄まじいなという感じ。

 しかしながら、フランスはカウンターからのフィニッシュ局面が安定せず。抜け出したムバッペが決めきれずなかなかフランスは試合を仕留めることができない。

 オーストリアは70分以降から少しずつ足が止まってくるように。徐々にオーストリアはプレスの精度が落ちてくる。フランスも前線のプレスが強気というわけではなかったため、オーストリアは敵陣に運ぶことができていたが、カウンターでもブロック守備でもカンテの存在感は凄まじく、あらゆる攻撃をシャットアウトしてみせた。

 終盤はムバッペの負傷があり次節以降に不安要素があるが、まずはオーストリア相手に手堅く1勝。オランダとの直接対決に向けて弾みをつけた。

ひとこと

 ラビオ、カンテの先発からカマヴィンガとチュアメニが控えるフランスの中盤はえぐいね。

試合結果

2024.6.17
EURO 2024
グループD 第1節
オーストリア 0-1 フランス
デュッセルドルフ・アレナ
【得点者】
FRA:38‘ ウーバー(OG)
主審:ヘスス・ヒル・マンサーノ

GS 第2節 オランダ戦

またしてもバタついた終盤のオランダ

 前日のスペイン×イタリアに並び、こちらもGS屈指の好カード。連勝とGS突破をかけての大一番ということになる。

 立ち上がり、右サイドの奇襲を仕掛けたのオランダ。フリンポンの抜け出しから一気にゴールに迫る。振り返ってみればおそらくこれが前半でオランダが最もゴールに迫った瞬間のように思われる。

 フランスはすぐ左サイドのグリーズマンのミドルからすぐに応戦。これ以降はフランスがペースを握る。サイド攻撃で複数人からの抜け出しで押し下げてゴールに迫っていく。オランダは押し下げられるのを見てCHが最終ラインに入る形でカバーが入る。

 すると、その様子を見たラビオが空いた中盤に侵入。ワンツーでのパス交換からラインブレイクに成功し、グリーズマンに決定機を供給するが、チャンスを生かし切ることができない。

 オランダはこのピンチを切り抜けると2列目がインサイドに絞ることで中央を閉じることを優先。チュアメニが降りるアクションに合わせるようにラビオ、グリーズマンが中盤に動きながら撹乱するフランスと中央をどこまでこじ開けるかのマッチレースになる。間に合わずに危ういファウルを犯すシーンがちらほらデ・フライが警告を受けなかったのは幸運と言えるだろう。

 オランダがより問題だったのはやはり攻撃に出るタームだろう。カウンターは直線的に急ぐケースとタメを作れてはいるが単一ルートしかないケースが多く、このような点で合わせるアプローチだとフランスのような強固なDF陣相手に穴を開けることができない。先に挙げた二択もほぼデパイのポジション次第という感じでチームとしてどう攻めるかが共有されている感じがなく、ボールを奪う形が相当良くなければ効果的な位置でシュートを打つことすらままならない状況。前半は0-0とはいえ差がある状況というのは前日のスペイン×イタリアとそっくりである。

 後半もボールを握ったのはフランス。チュアメニの降りるアクションに合わせて空いたスペースに現れるカンテとラビオの厄介さは後半も健在。痺れを切らして出ていこう!と前に出たガクポの思いをへし折るようにサリバが背後のデンベレに通してたパスはなかなかにえぐかった。

 ゴール前でも右のハーフスペースの手前のあたりにファン・ダイクを釣り出せるシーンが増えてきたフランス。最終局面から大ボスを退かすことでよりゴールに近づくことができていたが、後半もフィニッシュでグリーズマンは決定的な仕事を果たすことができない。

 すると、徐々にオランダが反撃。左の大外のガクポを起点とした攻めで敵陣に迫ると、背負ったデパイが押し下げたところに飛び込んだシモンズがネットを揺らす。が、メニャンが横飛びするコースに立っていたダンフリースがオフサイド。オランダは貴重な先制のチャンスを逃すことに。

 ガクポとデパイが互いに利用するかのようなオフザボールを見せるようになってからはフランスを押し切れそうな雰囲気になってきたオランダ。しかし、そうなった途端に早々にクーマンはベグホルストとデパイをスイッチする。さらにはその直前に投入したヘールトロイダで急にSBを絞らせるなどよくわからない工夫をスタートする。

 可変性が増したバックラインと動きながら起点になるジルーによりオランダのバックスの負荷はさらに増えることに。結果的に守備で頑張れるベグホルストがプレスバックで存在感を見せていたのは面白かった。

 試合はそのまま終了。今大会初めてのスコアレスドローにより、共に両軍の勝ち点は4。敗退が決まったポーランドに引き分け以上で突破が決まるフランスにとっては大きな1ポイントの上乗せだったと言えるだろう。

ひとこと

 オランダ、最後の15分絶対面白いのずるい。

試合結果

2024.6.21
EURO 2024
グループD 第2節
オランダ 0-0 フランス
ツェンドラール・シュタディオン
主審:アンソニー・テイラー

GS 第3節 ポーランド戦

唯一の消化試合は痛み分け

 試合前の時点で3位以内と4ポイントを共に確保しているフランスは最終節の結果を待たずに通過が決定。一方のポーランドは第2節を終えた時点での唯一の敗退チーム。というわけではじめての突破と敗退が決まっている両チームによる消化試合が誕生したこととなった。

 どちらもなかなかモチベーションが難しい試合の中で積極性を見せたのはポーランドの方だった。前の5枚でフランスの中央の2CBと3CHを制圧にかかったポーランド。高い位置からのプレスに成功すると、ここから直線的に進むことで一気に敵陣に侵攻していく。中央への直線的なカウンターについては第3節にしてようやくレバンドフスキが起用できることの幸せを噛み締めていることだろう。やっぱり収まり方が段違いである。

 しかしながら、このポーランドのプレスは当然フランスのSBにはプレッシャーがかかり切らない。サイドからボールを運ぶと、そこから同サイドのWG、もしくは横断しての逆サイドのWGでの1on1の勝負に持ち込みボックス内に侵入していく。1on1で勝利できなくても大外を追い越すテオやエンバペがいる左サイドはかなり手ごたえがある形。逆サイドのフランスの選手もきっちりボックス内に飛び込んでおり、明確にチャンスを作っていく。

 意地を見せたいポーランドはWBが前方にスライドすることでフランスのSBにも圧力をかけていくが、ここはショートパスの連打で華麗に脱出。フランスが前からの守備をやる気がほぼなかったので、自陣での繋ぎが安定したのは救いだったが、やはり一瞬のキレは脅威。守勢に回るポーランドはゴールを脅かされながら前半を過ごすこととなった。

 迎えた後半、フランスが今度は右サイドからの進撃で圧力を増していく。ただし逆サイドからはエンバペがミドルを乱れ打ちという左右両面で攻撃力マシマシの恐怖仕様。ポーランドはスコルプスキが驚異的なセービングの連続でなんとか凌ぐ場面が続くことになる。

 苦しくなったポーランドはついに決壊。デンベレの仕掛けにキヴィオルが屈してしまいPKを献上。これをエンバぺが沈めてリードを奪う。

 リードしたフランスは4-2-3-1に移行。このゴール以降も悠々と時計の針を進めていく。

 しかしながら、ポーランドは粘ってのゴールゲットに成功。シフィデルスキのボックス内への侵入がPKを生み出す。一度はメニャンが止めたセーブだったが、足が先に離れていたためやり直し。改めて蹴ったPKをレバンドフスキが仕留めて試合を振り出しに戻す。

 終盤はフランスもさすがに緩さが見える展開。互いにゴール前では怪しい場面ができていたが、どちらも追加点を奪うことができず。試合は1-1での引き分けで幕を閉じることとなった。

ひとこと

 どちらにしても苦しい戦いにはなっただろうが、レバンドフスキがいるといないとではその中でも違いは感じた一戦。はじめ2節にいればという思いが募る90分となった。

試合結果

2024.6.25
EURO 2024
グループD 第3節
フランス 1-1 ポーランド
BVBシュタディオン・ドルトムント
【得点者】
FRA:56’(PK) エンバペ
POL:79‘(PK) レバンドフスキ
主審:マルコ・グイダ

Round 16 ベルギー戦

重たい試合の命運を分けたオウンゴール

 グループステージが死力を尽くす戦いになったベルギー。ノックアウトラウンドに対峙するのはフランスとタフなモードは続くが、絶望的な開幕戦から比べれば状態が上向きになっているのは救いだろう。

 ベルギーの保持の陣形は3-2-5。カスターニュを片上げする形での変形で4-4-2からズレを作りにいく。フランスはエンバペがややインサイドに入って前残りし、その背後をラビオがカバーする4-4-2で対応していく。バックラインにはマークをつけず、ベルギーのCBは自由にボールを持てる状態だった。

 ベルギーの起点作りは個人の質的優位ベースのものが1つ。サリバ相手でもそれなりに深さを作れるルカクやウパメカノ相手に反転を決めることができるオペンダを入れてアタッキングサードのスイッチを入れていく。回数は多くなかったが、前を向く形を作ることができればドクも勝負はできそう。フランスはグリーズマンが駆り出される上にカードを出されてしまったのは辛いところであった。

 あとは構造的にズレを作るパターンも。片上げされたカスターニュがテオを自陣に引っ張り出すことができれば、その背後をカラスコで攻め込むことができる。そういう状況になれば抜け目なくデ・ブライネが加勢して一気に攻略に挑む。個人の質と構造的のズレで先に手応えを得たのはベルギーだった。

 フランスもバックスは自由にボールは持てる状況。2人のCBにカンテとチュアメニ、あとはボールサイドのSBも時折ビルドアップに顔を出すというフランスのスタンスだった。

 アタッカーとラビオは中央に集結し、サイド攻撃は人数が少ない状態に。大外はSBが取ることが多く、スピードに乗った状態以外ではなかなかきっかけを作ることができない。その状況を変えたのは後方からのフィード。ピンポイントでの体格フィードでクンデにスペースを与えるチュアメニは見事。何もないところからテュラムのシュートシーンを作り出すことに成功する。

 左のテオもスピードに乗るシーンを作ることで40分付近にようやく押し込むフェーズに入るフランス。さらには中央のチュアメニ、サリバなどが即時奪回から波状攻撃に移行する守備を披露することでペースは緩やかにフランスに流れる。サイドの道を通し、中央ブロックのボール奪取のサイクルを回すことで停滞気味の序盤を少しずつ動かしていく。だが、こちらもベルギーと同じく得点には至らないままハーフタイムを迎えることとなった。

 後半の頭もペースはフランス。少しラインを上げたベルギーに見えたが、特にホルダーへの圧力が強まっているわけではない。よって、ベルギーは背後のスペースをフランスに渡してしまう格好に。サイドからスピードアップはもちろん、テュラムが中央で奥行きを作る動きを見せるなど、前半にあまりなかった光景も見られるようになった。

 苦しい状況となったベルギー。単発でカラスコが抜け出すシーンを作り出すも、テオが素晴らしい戻りでこのチャンスを潰す。

 ベルギーはオペンダに代えてマンガラを投入。デ・ブライネを1列上げる形の変更を施す。MF仕事をするデ・ブライネが入ったことで枚数的に優位を確保する。ただ、オナナもマンガラもデ・ブライネの引力を使う感じはせず。外にきっちりサリバに追いやられる機会が増えたルカクが孤立するとなると苦しい。

 試合は落ち着けたが、展開は引き寄せられない状況のベルギー。だが少ないきっかけでチャンスを構築に成功すると、デ・ブライネが絶好機を迎えるが、このシュートはメニャンがシャットアウト。先制を許さない。

 すると、これをひっくり返す形でフランスが先制。コロ・ムアニはサイドに押し出される格好になったが、強引に打ち切る姿勢が功を奏してオウンゴールを誘発する。

 最後は3-4-1-2にシフトチェンジしたベルギー。外から外に揺さぶることでフランスを自陣に釘付けにしたが、最後までチャンスを活かすことができなかった。

 苦しみながらもオウンゴールで勝ち上がりを決めたフランス。強豪対決を制してベスト8に駒を進めた。

ひとこと

 結構重めの試合であったが、やらせないところをきっちりやるというメリハリのところと対応できる局面の幅でフランスがやや勝っていたかなという印象の試合だった。

試合結果

2024.7.1
EURO 2024
Round 16
フランス 1-0 ベルギー
デュッセルドルフ・アレナ
【得点者】
FRA:85′ ヴェルトンゲン(OG)
主審:グレン・ニーベリ

QF ポルトガル戦

コスタの壁を乗り越えたフランスが準決勝に

 激闘を制して満身創痍で準決勝に進んだスペインの対戦相手を決める一戦。ポルトガルとフランスの大一番である。

 初手で少し変化をつけてきたのはフランス。ムバッペ、コロ・ムアニの2トップにグリーズマンがトップ下、大外はSBという4-3-1-2のようなフォーメーションでポルトガルに対してズレを作って奇襲を仕掛けていく。

 しかしながら、守勢に回ればそのギャップは自分達に跳ね返ってくる。中央に集まるフランスはポルトガルのSBを誰が監視するのかがポイントになる。グリーズマンを頂点とした4-3-3にはしているが、ムバッペとコロ・ムアニは自陣を埋める守備を常にやるわけではないため、フランスは中盤のカバーで少し仕組みに変化をつけている。

 左サイドはムバッペの背後をカマヴィンガがスライドするという流れは普段からやっているからふつうだが、気になるのは右サイド。見た感じだと、なんとなくコロムアニには戻ってきて欲しい感があるが、間に合わない時はカンテが埋めるという形。コロムアニのプレスバックは遵守されるわけではないため、ポルトガルはメンデスとレオンのところが空くことで攻め込むことができた。

 ポルトガルはベルナルド、ブルーノ、ヴィチーニャなどサイドに流れることでまずはフランスのサイドの守備の基準を確かめていた感があった。だが、結果的に前に進めるのはレオンがボールを持った時。しかしながら、追い越す選手との動きが絶望的に合わず、独力で完結する時以外はボックスに迫ることができない。

 フランスはトランジッション勝負。中盤の戻りが遅れやすいポルトガルに対して内側を進み、左に流れるムバッペで勝負。サイドからズレを作ってクロスを入れていく。

 非保持でも対策を打つフランスはレオンに対して徐々にカンテがダブルチームで監視するように。一番の攻め筋を抑えられたポルトガルだが、今度は右サイドに攻め手をシフト。ポジションを入れ替えながら抜け出す選手を作り、クロスを上げていく。だが、こちらもインサイドとのクロスのフィーリングが合わず、全くチャンスを作ることができない。

 試合は0-0。互いにチャンスが少ない展開でハーフタイムを迎える。

 迎えた後半、やや優勢だったのはフランス。4-4-2ブロックを組むポルトガルに対して、左右のサイドからボールを動かしつつ旋回と大外の裏抜けを使い分けながらボックスに侵入していく。

 ポルトガルはファストブレイクから反撃に出ていこうとするが、この点でもフランスは先手。前半の途中から右サイドに動いたカマヴィンガがポルトガルの一番有力な攻め手であるレオンの制圧に加勢。スピードに乗った状態でも追いつくことができるカマヴィンガの登場でポルトガルの左サイドを抑えにかかる。

 しかし、ポルトガルも黙っていない。それならばと左サイドに顔を出すようになったのはヴィチーニャ。自らが左サイドにボールを運ぶ機会を増やしつつ、カマヴィンガのマークを散らす役割を担う。それだけではなく自らがカマヴィンガを制してボックス内に侵入するところまで進むのだから、さすがのクオリティとしか言いようがない。

 フランスも右サイドにデンベレを登場させることでポルトガルのサイドを押し下げにかかる。これで再びフランスはこちらのサイドの主導権を握ることとなる。後半のフランスの右サイド側の攻防は非常に見応えがあるものだった。

 以降は展開が間延び。決め手を欠いたまま延長に突入した両チーム。ここからはドリブラーが独力でチャンスを生み出す根性を見せる展開となる。デンベレ、コンセイソン、バルコラなど。フランスの方が多いのは単純にポルトガルがジョッタやネトといった選手の投入を渋ったからである。

 単発となるWGの仕掛けをメニャンとコスタが食い止めた延長戦。試合はPK戦での決着となる。PK戦で唯一失敗してしまったのはジョアン・フェリックス。5人全員がコスタの壁を超えたフランスが準決勝進出となった。

ひとこと

 ネトとジョッタよりヌネスとフェリックスを入れる采配には驚いたけども、普通に実を結ばなかった。ムバッペは次の試合に出れるのだろうか。

試合結果

2024.7.5
EURO 2024
Quarter final
ポルトガル 0-0(PK:3-5) フランス
フォルクスパルク・シュタディオン
主審:マイケル・オリバー

SF スペイン戦

中盤化したヤマルが仕組みとクオリティの両面で圧倒

 1ヶ月の宴もいよいよ佳境。決勝の座をかけてここまで負けなしの2チームが激突する。ボールを持つスタートとなったのはスペイン。無理にプレスに行かないフランスに対して、スペインのバックスが余裕を持ってボールを動かす展開。

 中央が堅いフランスに対して、外から勝負をかけたいスペインだが、要注意人物であるヤマルにはラヴィオが助太刀してのダブルチーム。一方のフランスの保持も中央の噛み合わせをがっちり行ったスペインに対して、外からWGがボールを持って勝負する形に。

 この両チームの特徴はWGが単騎で勝負を仕掛けられるクオリティを持っていること。というわけでまずは両チームともサイドからWGを起点にきたチャンスメイクが序盤は炸裂。ヤマルの大外からのクロスに対してオルモの背後から飛び込んだスペインが先に決定機を迎える。

 だが、このチャンスをスペインが逃すと、次のチャンスが巡ってきたフランスが先制ゴールをゲット。右のデンベレの旋回からのサイドチェンジから、エムバペがクロスを上げてアシスト。ファーに逃げることでフリーになったコロ・ムアニのゴールでフランスが先行。サイドをめぐる決定機の応酬を制したのはフランスだった。

 シンプルなサイドアタックではフランスに軍配が上がる立ち上がりになったが、スペインはインサイドにヤマルが登場することでフランスを揺さぶる。サイドでヤマルが受ける時はテオとラヴィオのダブルチームであったが、インサイドに入るヤマルにテオはついていく素振りを見せなかったし、ラヴィオは中央にいる時はスペインの中盤と同数で噛み合っているので、ヤマルを常に監視するわけには行かなかった。

 フランスからすればいくら浮いたとはいえあんな簡単に一撃を仕留めてしまうのは聞いていない!というところだろう。ヤマルが自由になればこれくらいやれるという才能を示すミドルを放ち、試合を振り出しに戻す。

 勢いが止まらないスペインはヤマルの登場で4人になった中盤で試合を完全に掌握。中央で自由を得たオルモが追加点を奪い、あっという間に逆転する。

 リードをするとこのスペインは厄介である。フランスはマンツーでスペインの中盤を抑えているのだけども、スペインの保持はバックラインがきっちり関与するので面倒くさい。ただ回されるだけならば、まぁ放っておいてロングカウンターでもいいのかもしれないが、ミスはなかなか起きないし、ヤマルの中盤化とかナチョの列上げのように放置するとクリティカルなところまであっさり侵入されるのが面倒である。

 一方のフランスはデンベレの横断以外にアタッキングサードでの解決策を見つけることができず。チュアメニのサリーはスペイン相手にプレスを落ち着かせることはできていたが、やや攻撃が前後分断気味になることが多かったようにも思う。

 迎えた後半、スペインは同じく保持からボールを動かしていく。これに対して、フランスは強気の守備で対抗。バックスがスペインの前線にガンガンついていく姿勢でなるべく高い位置でボールを奪うためのアクションをしていく。

 一方のスペインもニコ・ウィリアムズの抜け出しから裏を取りかけるが、メニャンの驚異的な飛び出しでカバー。ゴール方向に向かってくるわけでもないニコ・ウィリアムズにあのタックルを仕掛けられるGKはエデルソンとはまた別方向の狂気を宿しているなという感じであった。

 後半もリードしているスペインは強かった。この日はやはりバックスがポゼッションへの関与が際立っている。後方からボールを運ぶことが出来るラポルト、逆サイドからのサイドチェンジを綺麗に受け取るククレジャなどプレミア経験組がきっちりとスペインの風を吹かせていたのが印象的だった。

 フランスは4-2-3-1への変更からムバッペのポスト&バルコラ、デンベレの広い攻撃から反撃を狙ったり、ジルーというポゼッション型電柱の先駆けを投入することで中央に起点を作るなど様々な工夫を見せる。しかしながら、最後までゴールを破ることはできず。出場停止多数で苦しい戦いになるかと思われたスペインだが、フランスを下して決勝戦への進出を決めた。

ひとこと

 ヤマルの中盤化を上回るアイデアがなかったフランス。まぁ、素のままでも強いんだけど、保持で機会を限定してくるスペインに対してはそれでは十分ではなかったということだろう。

試合結果

2024.7.9
EURO 2024
Semi-final
スペイン 2-1 フランス
フースバル・アレナ・ミュンヘン
【得点者】
ESP:21’ ヤマル, 25‘ オルモ
FRA:9‘ コロ・ムアニ
主審:スラヴコ・ビンチッチ

総括

堅実さはモノトーンと隣り合わせ

 優勝候補の一角だったフランスはスペインを前に準決勝敗退。決勝に残ることができないまま大会を去ることとなった。

 端的に言えば堅くて鋭いというのが今大会のフランスの印象である。優勝したスペインも含めて、今大会の列強国はCB陣に盤石感を感じるチームは少なかった。そうした中でフランスのセンターブロックの堅さは別格感があった。 

 カンテ、チュアメニを筆頭にラビオ、カマヴィンガが控える中盤にブロック守備は強固。4-3-3と4-2-3-1を行ったり来たりできるさじ加減も見事だった。その中盤の後ろを固めるのはサリバにウパメカノ。ベンチにコナテを置くという陣容は大会全体を見てもとびぬけているスカッドだったといえるだろう。そして、最後方にはメニャンである。 

 アーセナルファン目線で言えば、クラブと左右が異なる左に置かれたサリバは序盤こそ適応に苦しんでいたが、試合を重ねるたびに安定感が向上。GSで見られた怪しいプレー判断はラウンドが進むごとに減っていった。

 前方の鋭さを担うのはやはり両WGだろう。高いラインを敷く相手にエンバぺとデンベレのワイドアタッカーコンビは相当効いていた。1on1からゴール、もしくはラストパスまで持っていける強引さはさすがであった。特に左サイドは後方から飛んでくるテオの馬力も含めて、守備側には相当な負荷がかかっていたに違いない。

 堅く守って鋭く刺す。他チームの方向転換により個性面でも被るチームは少なめ。後ろを堅くしてジリジリとというテーマにはほんのりかぶりがあったポルトガルを持久戦で下すなどその道の一番前にいるチームだったことは確かである。

 ただ、この道以外のところを求められるとどうだったか。外循環で迂回して、安全なルートからWGにボールを渡すことが好まれる一方で、中央をこじ開ける手法にはあまり膨らみを感じられず。サイドにつけて強引にこじ開けるというWGの突破力頼み感が否めなかった。

 加えて、前線に大駒が多いこともあり、劣勢に陥るとギアアップできなかったのも苦しかった。ハイプレスに出て行くことができず、勝負所で強度をあげられないところはスペインと比べてしまうと、どうしても見劣りしてしまう。

 よく言えば冷静、悪く言えば淡白のモノトーンで戦い続けているのが今大会のフランス。淡々としている試合運びを打ち破る火力アップする術は今後を見据えるとほしいところではある。個人的には中盤より後ろはよくやったチームに分類できるかなと思うのだが、前がそうしたギアアップができない分の理不尽さをなかなか発揮できない大会だったように思えた。

Pick up player:エンゴロ・カンテ
 サウジに移籍はしたものの、勤勉さにボール保持の素養が備わったプレーのクオリティは変わらず。特に開幕節は多くの局面に顔を出し続けるバイタリティを見せて、カンテはここにあり!というのを存分に発揮して見せた。

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